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[PLAY]『人形の家 Part.2』フォトギャラリー

[PLAY]『人形の家 Part.2』フォトギャラリー

 


【公演情報】
演劇『人形の家 Part.2」(인형의 집 Part.2)
2019年4月10日(水)~28日(日) LGアートセンター

<出演>
●ノラ役:ソ・イスク、ウ・ミファ
●トルヴァルト(トラヴァル)役:ソン・ジョンハク、パク・ホサン
●アン・マリー役:チョン・グギャン
●エミー役:イ・ギョンミ

原作:ルーカス・ネイス/演出:キム・ミンジョン/翻訳:ヨ・ジヒョン、キム・ミンジョン/舞台:キム・ジョンソク/照明:チャン・ウォンソプ/音響:カン・グクヒョン/衣装:パク・ソヨン/ヘアメイク:キム・ナムソン/音楽:キム・ドンビン

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[PLAY]『アンチェイン』フォトギャラリー

[PLAY]『アンチェイン』フォトギャラリー

 


【公演情報】
演劇『アンチェイン』(언체인)
2019年4月3日(水)~6月9日(日) コンテンツグラウンド(大学路)

<出演>
●マーク役:チョン・ソンイル、イ・ガンウ、ヤン・スンリ
●シンガー役:キム・デヒョン、キム・パダ、チェ・ソクジン、カン・スンホ

総括プロデューサー:ノ・ジェファン/プロデューサー:パク・インソン/作:Sneil/演出:シン・ユチョン/舞台:ナム・ギョンシク/照明:イ・ジュウォン/音響・音楽:ジミー・セル/衣装:ホン・ムンギ/小道具:ノ・ジュヨン/ヘアメイク:カミスピア

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[PLAY]若手イケメン俳優集結!『アナザー・カントリー』5月開幕

[PLAY]若手イケメン俳優集結!『アナザー・カントリー』5月開幕

 

2019年上半期の注目作、演劇『アナザー・カントリー』の全キャラクターイメージ写真が公開された。

『アナザー・カントリー』は、1981年にイギリスで発表されたジュリアン・ミッチェルの同名戯曲が原作。舞台版に主演していたルパート・エヴェレット主演で1984年に映画化され、日本でも大ヒット。当時、英国パブリックスクールものや美形俳優ブームを巻き起こすきっかけを作った。近年また世界的に英国俳優ブームが再燃しているが、『英国王のスピーチ』『キングスマン』で人気のコリン・ファースが俳優デビューした作品としても広く知られている。

英国舞台版当時のポスター(コリン・ファース)

 

 

 

物語の舞台は1930年代の英国、良家の子息たちが集う名門パブリックスクール。自由奔放なガイと、共産主義に傾倒するトミー……伝統や規律を重んじる寮生活のなかでは“はみ出し者”の2人を中心にストーリーが展開する。生まれながらにして社会的地位を保証されているはずの学生たちが、校内の人間関係によりその後の人生までも左右されてしまうという悲哀を描いて話題を呼んだ作品が、2019年、韓国で初めて舞台化される。

注目のキャストは、韓国舞台シーンですでにキャリアをもつ6名に加え、750分の1という驚異的な倍率でオーディションを勝ち抜いた若手俳優13名が出演する。

(写真左から)ガイ役のイ・ドンハ、パク・ウンソク、ヨン・ジュンソク

本作の主人公となる自由を求める同性愛者のガイ・ベネット役は、イ・ドンハ、パク・ウンソク、ヨン・ジュンソクと近年ドラマで活躍している3人が演じる。『憎くても愛してる』『シグナル』などに出演していたイ・ドンハは、2年ぶりの舞台復帰。そして現在出演ドラマ『ドクター・プリズナー』が放送中のパク・ウンソクは、演劇『ヒストリー・ボーイズ』以来の“制服モノ”主演となる。

今回舞台初挑戦となるヨン・ジュンソクは『華麗なる遺産』(09年)、『サメ~愛の黙示録~』(13年)などで子役俳優として活躍。その後も『応答せよ1984』などさまざまなドラマ、映画に出演してきた逸材だ。演劇の名門、中央大学演劇映画科で演技を学んだという彼が舞台でこれまでの活動をどう昇華させてくれるのか期待される。

トミー役のイ・チュンジュ(左)とムン・ユガン

ガイの親友トミー・ジャッド役は昨年演劇『アマデウス』でサリエリを好演していたイ・チュンジュと、新人ムン・ユガンが演じる。ガイとは思想も性格も正反対ながら、彼を常に尊重しつつも影響を与えていく盟友トミーを2人がどのように演じるのか注目だ。

そのほか、ガイとトミーを取り巻く寮生たちを演じる新人俳優たちは、熾烈なオーディションを経て選ばれただけに、いずれもヴィジュアルと演技力を兼ね備えた実力派だという。

(写真左から)バークレイ役のイ・ジヒョン、デヴィニッシュ役のカン・ヨンソクとぺ・フン

学生自治会のメンバーで、ガイの行動に頭を悩ませる学生寮の寮長バークレイ役は、映画やウェブドラマなどで経験を積んできたイ・ジヒョン。ガイとトミーの同級生デヴィニッシュ役は、現在出演中のミュージカル『あの日々』をはじめ『地球を守れ!』『スリル・ミー』『ママ、ドント・クライ』など小劇場では常に主役級俳優として活躍するカン・ヨンソクと本作で俳優デビューとなるぺ・フンが演じる。

(写真左から)メンジーズ役イ・テビン、ファウラー役イ・ジュビンとチェ・ジョンウ

次期学生代表の座を狙うメンジーズ役は、グループMYTEENの元メンバーで、日本のドラマ『リッチマン、プアウーマン』の韓国リメイクドラマ『リッチメン』にも出演していたというイ・テビン。規律からはみ出す行動を繰り返すガイを目の敵にするファウラー役はイ・ジュビンとチェ・ジョンウが演じる。『君に光の速度で行く』などに出演していたイ・ジュビン。一方、同名映画が原作の『二十歳』、ドラマ原作の『恋愛プレイリスト』に出演していたチェ・ジョンウ、と舞台経験豊富な2人が冷酷なファウラーに変身する。

(写真左から)デラヘイ役キム・ウィダム、サンダーソン役キム・ギテクとファン・スンジョン

寮長バークレイの側近的存在だが、ガイにある弱みを握られているデラヘイ役は昨年演劇『アマデウス』で舞台でビューしたキム・ウィダム。常にメンジーズやファウラーに同調するサンダーソン役は新人キム・ギテクとファン・スンジョンが演じる。キム・ギテクは昨年「第16回オフ大学路フェスティバル」というイベントで上演された演劇『妖精の歌』という作品で注目された新鋭だという。

(写真左から)ハーコート役イ・ゴニ、ウォートン役のチェジン(MYNAME)とチョン・ビョンヒョン

ガイが一目ぼれしてしまう美少年ハーコート役は本作でデビューとなるイ・ゴニ。上級生たちの命令に付き従う下級生ウォートンは、日本でも活躍中のMYNAMEメンバー、チェジンとチョン・ビョンヒョンが演じる。

本作の演出も務めるキム・テハン(左)とユン・ソグォンはミスターカニンガム役

最後に、デヴィニッシュの叔父であり文学者のミスターカニンガム役は本作の制作会社Page1作品ではおなじみのキム・テハンとユン・ソグォンが演じる。
なかでも今回演出家デビューを果たすキム・テハンは『ジーザス・クライスト・スーパースター』『ドリアン・グレイ』『アマデウス』など本作の芸術監督であるイ・ジナ演出作品の常連俳優として知られるベテラン俳優。イ・ジナの描く世界観を最もよく理解しているであろう彼が演出家としてどのような手腕を見せてくれるのか注目だ。

未来のスター俳優候補たちが一堂に会した『アナザー・カントリー』は5月21日から8月11日まで大学路ユニプレクス1館で上演。5月21日~26日のプレビュー公演のチケットは、全席50%OFFで3月26日(火)午前11時よりインターパークとメロンチケットで発売される。プレビュー期間は、ガイ役ヨン・ジュンソク、トミー役ムン・ユガンを中心に、新人俳優のみで上演される予定だ。



【公演情報】
演劇『アナザー・カントリー」(어나더 컨트리)

2019年5月21日~8月11日 大学路ユニプレクス1館

<出演>
●ガイ・ベネット役:イ・ドンハ、パク・ウンソク、ヨン・ジュンソク
●トミー・ジャッド役:イ・チュンジュ、ムン・ユガン
●バークレイ役:イ・ジヒョン
●デヴィニッシュ役:カン・ヨンソク、ぺ・フン
●メンジーズ役:イ・テビン
●ファウラー役:イ・ジュビン、チェ・ジョンウ
●デラヘイ役:キム・ウィダム
●サンダーソン役:キム・ギテク、ファン・スンジョン
●ハーコート役:イ・ゴニ
●ウォートン役:チェ・ジン、チョン・ビョンヒョン
●ミスター カニンガム役:キム・テハン、ユン・ソグォン

プロデューサー:イ・ソンイル/芸術監督:イ・ジナ/演出:キム・テハン/協力演出:イ・スイン/助演出:チョン・ユジョン/振付:シム・セイン/音楽監督:シン・ウンギョン/舞台:イ・オムジ/衣装:ドヨン/照明:ウォン・ユソプ/音響:キム・ピルス/小道具:キム・リナ/ヘアメイク:キム・ナムソン/舞台監督:ノ・ジェミン

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[コラム]2018年韓国舞台読者アンケート結果発表

[コラム]2018年韓国舞台読者アンケート結果発表

 

1月末に公開しました「2018年韓国ミュージカル/演劇の見どころは?」という記事のなかでお願いした読者アンケートを集計しました。回答にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。
いま韓国の舞台に興味をお持ちの方が、注目されている作品や俳優を知ることができて、とても興味深い結果となりました。


3年ぶりの再演は11月、ブルースクエア インターパークホールで上演 ©EMKミュージカルカンパニー

【2018年に見たい韓国ミュージカルは?】
2018년에 보고 싶은 한국 뮤지컬은?

1位『エリザベート』(엘리자벳)
2位『フランケンシュタイン』(프랑켄슈타인)
3位『ファントム』(팬텀)
4位『ジキル&ハイド』(지킬 앤 하이드)
5位『ドクトル・ジバゴ』(닥터 지바고)

見事、過去にヒットした大型ミュージカルの再演作品が並びました。なかでも『エリザベート』はぶっちぎりの1位です。アンケートには3作品記入可能なように設定していましたが、『エリザベート』は項目①②へ優先的にご記入いただいた方が多かったです。2位の『フランケンシュタイン』は韓国創作(オリジナル)作品のなかでは他を圧倒。ほか項目①にご記入が多かったのが『三銃士 10周年記念公演』でした。上位作品は日本版が上演されているものも多く、既にストーリー等を理解していて、安心して観られる作品を好まれる印象を受けました。
一方、日ごろ創作ミュージカルや小劇場作品まで幅広くご覧になっているんだろうな、という印象を受けた回答を下さった方は全体の1割程度だったのは少々残念でした。

ちなみに公演情報サイトPlay DBの調査では、新作は『笑う男』『マチルダ』、再演作は『フランケンシュタイン』『バンジージャンプする』という結果が。

公演情報サイトStage Talkの調査では新作『マチルダ』『レッド・ブック』、再演作では『フランケンシュタイン』『ストーリー・オブ・マイライフ』と、韓国では日本の観客とは作品の嗜好が若干異なる結果となっています。


モーツァルト役はチョ・ジョンソク、キム・ジェウク、キム・ソンギュ(INFINITE)とトリプルキャストとなった『アマデウス』はチケット争奪戦必至の話題作。©Page 1

【2018年に見たい演劇は?】2018년에 보고 싶은 한국 연극은?
1位『アマデウス』(아마데우스)
2位『ネヴァー・ザ・シナー』(네버 더 시너)
3位『リチャード三世』(리처드 3세)
4位『ミザリー』(미저리)
5位『Bea』(비)

演劇は『アマデウス』ほぼ一択という結果に。有名キャストが名を連ねるだけに、改めて人気を実感しました。ミュージカルの欄に『アマデウス』と書かれていた方が多かったのですが(今回は演劇として集計しました)、歌を歌うかどうかよりも作品を(俳優を)とにかく見たい、というお気持ちの現れかと思いました。また、ミュージカルにはたくさんのタイトルをご記入いただいている方が、演劇で見たいものは「ない」もしくは無回答の方もかなりいらっしゃいました。
日本国内だとミュージカルよりも演劇ファンのほうが幅広くいらっしゃる印象があるのですが、やはり言葉の問題か……韓国で演劇までご覧になるのはハードルが高いようです。演劇のほうがチケットも安いし、多様な作品が見られると思うんですけどねぇ。。。

公演情報サイトのPlay DBStage Talkも共に、人気作家東野圭吾原作で、朗読公演も好評だった『ナミヤ雑貨店の奇跡』が期待作1位となっています。再演作ではStage Talkの調査で『カポネ・トリロジー』が1位となっています。


日本の観客にはダントツの1位を誇ったパク・ウンテさん主演の『ドクトル・ジバゴ』は2月27日よりシャーロッテシアターで開幕。©ODカンパニー

【好きな韓国舞台俳優は?】좋아하는 한국 배우는?
1位:パク・ウンテ(박은태)
2位:ホン・グァンホ(홍광호)
3位:オク・ジュヒョン(옥주현)
4位:チョン・ドンソク(전동석)
5位:チョ・ジョンソク(조정석)

好きな俳優も3名まで記入いただけるよう設定していましたが、おそらく韓国国内で人気投票したら結果が違うかも? と思いました。優先順位①の項目に最も多く名前が挙がっていたのがパク・ウンテさん。最近大作に次々と主演されていますが、日本の皆さんがどの作品でウンテさんに魅了されたのか? とても気になりました(『フランケンシュタイン』再演への期待度?)。そして、チョン・ドンソクさんの人気が高いのは、現在『ザ・ラスト・キス』が上演中であることと、過去に何度か日本でコンサートをされたことが大きいのかな? と思いました。また、女優さんの名前はほとんど挙がらなかったなか、オク・ジュヒョンさんが男優陣を抜いて3位というのはさすが。韓国ミュージカル界の女王の面目躍如です。

実は俳優部門は、歌手やアイドル出身俳優が上位に入るのでは? と予想していたのですが、兵役で活動休止中だったり、特に出演予定作がないときは大きく関心度が落ちるということが分かりました。K-POPファンの方が、もう少し舞台にも興味を持ってくだされば、韓国の公演界をさらに盛り上げることができるのではないでしょうか?

俳優に関しては、かなり票が割れてしまい、1票しか入らなかった方については、以下にお名前だけ紹介します。なかには筆者が名前を知らなかった俳優もいて、まだ無名の俳優を日本から応援されている、というその情熱に感服しました。

<グラフ掲載外の俳優(あいうえお順)>
イ・ジフン/イ・チャンヨン/イ・ドンファ/イ・ホウォン/イ・ユル/イム・ヒョンス/イム・へヨン/オ・マンソク/カン・ヨンソク/キム・ウヒョン/キム・ソヒョン/キム・ソンチョル/キム・チャンジョン/キム・チャンホ/キム・デヒョン/キム・ヨンチョル/クォン・ギジュン/クォン・ヨングク/コ・ウンソン/コ・フンジョン/コ・ヨンビン/シン・ソンウ/ソ・スンウォン/ソ・ヨンジュ/ソン・ヨンジン/ソンジェ/チェ・ウォンソプ/チェ・ミンチョル/チャ・ジヨン/チャン・ウナ/チャン・スンジョ/チュウォン/チョ・グォン/チョ・スンチャン/チョ・ソンユン/チョ・ヒョンギュン/チョ・プンレ/チョン・カフィ/チョン・ソンウ/チョン・テグン/チョン・ドンファ/チョン・ミド/パク・ジュンフィ/パク・ソングォン/パク・トンハ/パク・ハングン/パク・ミンソン/パク・ヨンス/ハン・ジュニョン/ピョン・ヨハン/ファン・チャンソン/ぺク・ヒョンフン/ユン・ジオン/ユン・ジュンサン/ユン・ソホ/ユン・ナム/リョウク/ルイス・チョイ


【今まで見た韓国舞台作品で良かったものは?】지금까지 본 공연 중 가장 사랑하는 작품은?
1位『フランケンシュタイン』(프랑켄슈타인)
2位『エリザベート』(엘리자벳)
3位『ジキル&ハイド』(지킬 앤 하이드)
4位『ファントム』(팬텀)
5位『レベッカ』(레베카)

上位は「2018年に見たい作品」とほぼ同じような結果となりました。大作ミュージカルは、人気俳優が出演し、セットや衣装も豪華なので、チケットはどうしても高くなりますが、そのぶん満足度も高いようです。日本から韓国に行かれる場合、多くの方が週末利用のケースが多いと思うのですが、限られたスケジュールの中で何を観るか? と考えると、未知の作品に挑戦するよりは、こういうセレクトにならざるを得ないのかもしれません。

俳優同様、良かった作品も投票はかなり割れました。1票のみの作品は以下の通りです。
演劇が1作も入ってなかったのはこれまた残念です。

<グラフ掲載外の作品(あいうえお順)>
30の頃に/愛は雨に乗って(サ・ビ・タ)/阿娘歌(アランガ)/イン・ザ・ハイツ/オー!キャロル/オール・シュック・アップ/キム・ジョンウク探し/共同警備区域JSA/ゴレゴレ/30の頃に/ジャック・ザ・リッパー/スウィーニー・トッド/ストーリー・オブ・マイライフ/砂時計/洗濯(パルレ)/ドリアン・グレイ/ナポレオン/ファリネッリ/僕とナターシャと白いロバ/マイ・スケアリー・ガール/マタ・ハリ/マディソン郡の橋/モンテクリスト/ラフマニノフ/ルドルフ/忘れられた顔1895/私の愛 私の花嫁

今回は150名ほどの方にご回答いただきました。改めてアンケートにご協力いただいた皆様、ありがとうございました。今後もまた機会を見て、このようなアンケートを実施してみたいと思っています。
その際はご協力をお願い致します。

文:さいきいずみ(韓劇.com)

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[コラム]2018年韓国ミュージカル/演劇の見どころは?

[コラム]2018年韓国ミュージカル/演劇の見どころは?

 

シンシカンパニー2018年作品(左から『ビリー・エリオット』『シカゴ』『マチルダ』と演劇『The Play That Goes Wrong』)

早くも1月が終わろうとしていますが、韓国では2月中旬の旧正月以降が本格的な新年度のスタートとなります。そのお正月休みを前にようやく2018年ラインナップが出そろいました。そこで今年のおすすめ作品を紹介します。

※大手制作会社や、公営劇場は年間スケジュールを早々に決めて動くため、ほぼ予定は確定していますが、大学路の小劇場などで上演されるミュージカル、演劇は、長期スケジュールを事前に公開しないためラインナップに漏れている作品が多数あることをあらかじめご了承ください。

【ミュージカル】

2018年も昨年に引き続き新作は少なめ。しかし、大劇場ヒット作の再演タームが来た年となっており、人気作の再演が多いのが特徴です。

ODカンパニー2018年作品(左から『タイタニック』『ドクトル・ジバゴ』『マン・オブ・ラ・マンチャ』『ジキル&ハイド』『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』)

ライセンスミュージカルの新作はティム・バートンの同名映画が原作の『ビッグ・フィッシュ』と、映画『ジャイアント・ピーチ』や『チャーリーとチョコレート工場』で知られるロアルド・ダールの児童文学が原作の『マチルダ』が韓国初演となります。特に5歳の少女が主人公となる『マチルダ』は現在再演中の『ビリー・エリオット』をはじめ、英国ウエストエンドの人気作を韓国で上演し、着実に実績を残しているシンシカンパニーが制作するとあって、クオリティの高さは保証できると思います。一方『ビッグ・フィッシュ』は、『キンキーブーツ』『ボディーガード』と映画を舞台化した作品を精力的に上演しているCJ E&Mが制作。昨年日本版が上演されたようですが、原作映画のファンタジックな作品世界を、どう舞台に落とし込み、韓国の観客に見せてくれるのか楽しみです。

EMKミュージカルカンパニー2018年作品(左から『笑う男』『エリザベート』『ファントム』)

韓国創作ミュージカルの新作では『レッド・ブック』『笑う男』は必見です。
『レッド・ブック』は名作『女神さまが見ている』を生んだ、ハン・ジョンソク脚本家とイ・ソンヨン作曲家が再タッグを組んだ作品。“女性の性表現の解放”をテーマに、『女神さま~』同様に楽曲のバリエーションと独自のストーリー展開が群を抜いていた作品です。昨年、新作の創作を支援する「創作産室」の選定作としてショーケースとして上演済で、準新作的作品ですが、今年初めて長期本公演が行われます。
一方、『笑う男』は、韓国を代表するミュージカル制作会社EMKミュージカルカンパニーが、5年の準備期間を経て『マタ・ハリ』に継ぎ発表するオリジナル作品です。『レ・ミゼラブル』の原作者でもあるヴィクトル・ユーゴーの同名小説が原作。口が大きく裂かれて常に笑ったように見えるグウィンプレンを主人公に、彼の数奇な運命と当時の貴族社会を鋭く風刺した作品です。演出に『レベッカ』『マリー・アントワネット』などを手掛けたロバート・ヨハンソン、作曲フランク・ワイルドホーン、作詞ジャック・マーフィー、音楽監督キム・ムンジョン、美術オ・ピリョンと過去のEMK作品に参加した豪華スタッフが揃い、『マタ・ハリ』同様に海外での上演も視野に入れた作品になりそうです。

HJカルチャーの新作『ジョン・ドゥ』と『ザ・フィクション』キャスト写真

小劇場では『ファリネッリ』『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』など世界の偉人を取り上げた作品群で知られるHJカルチャーが、初めて韓国の偉人、世宗大王を主人公にした『1446』をはじめ、米映画『群衆』原作の『ジョン・ドゥ』、大邱ミュージカルフェスティバルから誕生した創作劇『ザ・フィクション』、イタリアの名バイオリニストを取り上げた『パガニーニ』など新作4本を上演予定で、他を圧倒しています。

6年ぶりの再演となる『ドクトル・ジバゴ』(©ODカンパニー)

再演作品のなかでは、リュ・ジョンハン、パク・ウンテ主演で6年ぶりに上演する『ドクトルジバゴ』。初演メンバーを筆頭に日本でも人気のキャストが揃った『三銃士 10周年記念公演』。2017年のミュージカル賞を総なめした『もしかしてハッピーエンディング』の脚本家・作曲家コンビによる同名映画原作『バンジージャンプする』の5年ぶりの再演も見逃せません。
ほかにも『マン・オブ・ラ・マンチャ』『ノートルダム・ド・パリ』『フランケンシュタイン』『ジキル&ハイド』『エリザベート』『ファントム』と、豪華キャストは必至の大作が目白押しです。

まだ発表されていない大学路の小劇場ミュージカルはどのような作品が上演が上演されるのか? 今後の情報解禁にもご注目ください。


【演劇】

公営劇場である国立劇団南山(ナムサン)芸術劇場や、韓国の2代企業メセナであるドゥサンアートセンターLGアートセンターを中心に、今年も興味深い作品が揃いました。
李明博、朴槿恵政権時代の「文化芸術人ブラックリスト」問題が明るみとなり、これまで大きな影響を受けていた演劇界は徐々にではありますが、作品や運営方法に風通しの良さを感じさせ始めています。
国立劇団は新しい芸術監督に劇団「白手狂夫(ぺクスカンブ)」を主宰するイ・ソンヨルを迎え、“シーズン団員”と呼ばれる専属俳優を一新しました。メンバーにはキム・ハン、チョン・ウォンジョ、イ・ジョンム、チュ・イニョンなど、過去数々の演劇に主演した実力派俳優も含まれており、彼らの活躍に期待が膨らみます。

国立劇団2018シーズン団員紹介映像(国立劇団公式YouTubeより)

一方、公営劇場でありながら、社会問題をテーマにした作品を積極的に上演してきた南山芸術劇場は、その矜持は保ちつつもより多彩な作品を上演しようとしています。両劇場ともに新人演出家、脚本家に上演の機会を与えて次世代演劇人を育てようという姿勢も見えます。
また、数年をかけて改装工事中の国立劇場は、通常は大劇場のヘオルム劇場で上演しているパンソリの芝居=唱劇(チャングク)2作を明洞芸術劇場を借りて上演します。アクセスしやすく、舞台も見やすい同劇場でこの機会に伝統演劇の世界に触れてみてはいかがでしょうか?

 

『アマデウス』に主演するチョ・ジョンソク(左)とキム・ジェウク(©Page 1)

『ネヴァー・ザ・シナー』ポスター(©ダルカンパニー)

一方、民営の制作会社作品のなかでは、やはりチョ・ジョンソク&キム・ジェウク主演の『アマデウス』が上半期の注目度ナンバー1と言えるでしょう。加えてファン・ジョンミン10年ぶりの演劇主演作『リチャード三世』、キム・サンジュン、キム・スンウなどが出演する『ミザリー』など、ドラマ、映画で活躍する人気俳優が出演する作品が人気を集めそうです。

またミュージカル『スリル・ミー』のモチーフとなった実在する殺人事件「レオポルト&ローブ事件」を取り上げた、演劇『RED』の脚本家ジョン・ローガン原作の『ネヴァー・ザ・シナー』はマニアならずとも必見。キャストには『スリル・ミー』や名作演劇『ヒストリー・ボーイズ』経験者など若手からベテランまで実力者ぞろいです。

韓国では最近日本原作の映画やドラマの制作が増えているのですが、舞台シーンでもその動向が見えます。韓国では村上春樹の人気を抜いたと言われる東野圭吾原作『ナミヤ雑貨店の奇跡』は、朗読ショーケースが好評でした。実際にセットを組んでの本公演ではどういう仕上がりになるのか注目です。ほかショーケースではチョン・ミドの熱演が話題を呼んだ『Bea』の本公演は再度彼女が主演した場合は見ておきたい一作です。そしてシンシカンパニーが今年唯一上演するコメディ『The Play That Goes Wrong』はキャスティングも含め、年末の注目作の一つとなりそうです。

2016年にチョン・ミド主演で上演された演劇『BEA』ハイライト映像(ウラン文化財団公式YouTube映像より)

演劇はミュージカルと比べると上演期間も短く、情報も多くはないため海外の観客にはハードルが高いかもしれませんが、意外と台詞を正確に聞き取れなくとも十分に楽しめます。さらに秀作に出会えたときに得られる感動や印象深さはミュージカルの比ではありません。俳優たちの高い演技力や息遣いの醍醐味を一人でも多くの方に直接劇場で体感してほしいと思います。

※2月8日まで公開しておりました、ダウンロード済みの年間ラインナップ表は個人の閲覧用にのみご利用ください。ブログやネット上での公開や転載、転用、商用利用は禁止です。

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イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.25

イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.25

 

ケラリーノ・サンドロヴィッチの作品が韓国初上陸!
『消失(The Disappearance)』

兄チャズ役のイ・ガプソン(左)と弟スタンリー役のキム・ドゥボン(以下写真はすべて稽古場にて撮影)

今年、6周年を迎える韓国大田(テジョン)市のフェスティバル「大田アーティエンス2017」にケラリーノ・サンドロヴィッチ作の演劇『消失』が9月27日から3日間上演されます。この公演は、ケラリーノ・サンドロヴィッチの作品が初めて韓国に紹介されるという点で、とても意味深い公演となりそうです。

原作では大倉孝二が演じた兄チャズは弟思いだが、その優しさの裏には狂気を秘めている

原作ではみのすけが扮したピュアな弟スタンリー。演じるキム・ドゥボンは2013年の演劇『兄弟の夜』で大きく注目された

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が主宰する劇団「ナイロン100℃」で2004年に初演された『消失』は、数ある彼の作品のなかでも評価の高い作品です。
二つの月が空に浮かんでいる、廃墟になった町。時は未来、もしくは架空の時代を舞台にしています。主人公は28年前、親に捨てられ、互いを頼りに生きてきたチャズとスタンリー兄弟。クリスマス・パーティを準備していたある日、弟スタンリーは、片思い中のスワンレイクに告白を決意します。兄チャズも積極的に手伝おうとするのですが、作戦は失敗してしまいます。その次の日から、スタンリーの主治医ドーネンをはじめ、空き部屋を借りに来た女性ネハムキン、ガスの点検にきたというリント…と、兄弟の家には怪しい客が次々とやってきます。悪人は一人も登場しないこの物語は、登場人物6人それぞれの秘密が明かされながら、とんでもない結末へと向かいます。

スタンリーの担当医師ドーネン役のチョン・ミョングン(左)と、空き部屋を借りにやってきたネハムキン役のイ・ジョンヒョン

この作品を上演する大田は、ソウルから高速鉄道のKTXまたはSRTを利用すれば約1時間で行けるほど近い、韓国中部の都市です。大田には韓国科学技術院(KAIST)をはじめ、韓国最高の科学大学や研究所が集まっていて、昔から「科学都市」として名高いところです。その特徴を生かし、大田文化財団が芸術(アート)+科学(サイエンス)を融合した「アーティエンス」というフェスティバルを作ったのです。当初は主に美術作品の展示が中心でしたが、一般市民が参加したキャンプ、科学者と芸術家をつなぐレジデンス・プログラム、科学に関する映画の上映、演劇の上演まで、徐々に幅を広げています。特に、演劇の上演はまだ2年目で、初年度だった去年は日本の劇団「青年団」によるロボット演劇『働く私』と『さようなら』が上演されました。

原作では八嶋智人が演じた謎の男リントは、キム・グァンボ演出作や、劇団メンシアター作品などに出演してきたパク・ギドク。彼の持ち味であるとぼけた味のあるキャラで笑わせる

原作では三宅弘城が演じたヤブ医者のドーネンを独特の怪しさで好演していたチョン・ミョングン。新進劇団「炎の戦車」の看板役者

前回のコラムでも紹介したようにSFものの上演が少ない韓国では、まだ「科学演劇」を発掘し開発することは簡単なことではありません。将来的には演劇人と科学者とのマッチングを課題にしながらも、今の段階では優秀なSF演劇を探して、その作品を大田から発信している状態です。このような大田側の努力と、長い間『消失』の上演を準備してきたaSocietyが出会い、韓国で初演が決まったのです。

aSocietyは、旗揚げしたばかりのカンパニーですが、主宰者兼演出家のイ・ウニョンは、キム・グァンボ演出家が率いる劇団チョンウの演出部に所属し、大小様々な作品で演出及び演出助手をした経験を持っています。演出家としての代表作は、平田オリザ作の『隣にいても一人』、アイルランドの詩人・劇作家イェイツの詩を基にして脚色/演出を務めた音楽劇『妖精の歌』などがあります。とても美人な彼女ですが、実は元アイドル歌手で、元女優でもあり、世界的な演出家である鈴木忠志の『リア王』にも出演、日本や中国ツアーにも参加するなど演技経験も豊富な人です。いま何よりも演劇に情熱を傾けている彼女は、丁寧なテキストの分析と着実な作品作りで俳優やスタッフからの信頼も厚く、同世代の若手演出家の中でも目立つ存在になっています。それもあってか、今回の上演チームには、豪華なメンバーが集まりました。

日本で女優として舞台経験もある美貌の若き演出家イ・ウニョン。真剣なまなざしで稽古を見守る

原作舞台では大倉孝二が演じた兄のチャズ役は、演劇『容疑者Xの献身』韓国版で主人公の湯川に扮したイ・ガプソン。みのすけが演じた弟のスタンリー役キム・ドゥボンは『隣にいても一人』(平田オリザ作)『偉大なる生活の冒険』(前田司郎作)に出演と、日本戯曲の翻訳作品に縁の深い二人が主演します。ほかのキャストも日本の原作舞台で演じた各俳優のイメージにピッタリな面々が勢ぞろい。さらに制作陣もミュージカル『インタビュー』『スモーク』『ロミオとジュリエット』の舞台デザイナー、イ・ウンソクをはじめ、数々の話題作を創り上げた最高のスタッフが集結しています。

スタンリーと恋仲になったものの問題続出! 原作では犬山イヌコが演じたスワンレイク役のハ・ヒョンジ(左)は『小人たち』初演に出演するなどミュージカルでも活躍中

演劇を観る習慣があまりないという大田の観客のために、日本語の言葉遊びのような台詞を中心に少しカットし、約2時間の上演時間になりましたが、それでも内容は忠実に再現できたと確信しています。前半はコミカルな展開ですが、見終わったときには、“善人だけでも悲劇は起きる”という憂うつなテーマに気付かされるはずです。劇中で多様な感情を表現しなければならないこの作品は、俳優にとっては楽しい挑戦であり、観客にとっては最もドキドキするポイントとなることでしょう。『消失』は、地球上には世界をより良くしようとする人たちがたくさんいるのに、人も地球も、もしくは宇宙もいつかは無くなってしまうのでは? という、切ない未来図を見せているのです。これは時代や国境を越えて共感できるテーマではないかと思います。韓国版『消失』がSF演劇という新たな概念を提示しながら、新作の発信地を目指す大田から、次はソウルなどの他の都市や、日本をはじめ他の国でも上演できたらいいなと思っています。

ドーネンの往診を受けるスタンリー。物語は中盤から徐々に彼らの秘密が明かされていく


【公演情報】
演劇『消失(The Disappearance)』(소실-언젠가는 없어져버릴 우주 이야기)
2017年9月27日~9月29日 大田芸術家の家(대전예술가의 집)

<出演>
●チャズ・フォルティー役:イ・ガプソン
●スタンリー・フォルティー役:キム・ドゥボン
●ホワイト・スワンレイク役:ハ・ヒョンジ
●ドーネン役:チョン・ミョングン
●エミリア・ネハムキン役:イ・ジョンヒョン
●ジャック・リント役:パク・ギドク

原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/翻訳:イ・ホンイ/演出:イ・ウニョン/美術:イ・ウンソク、照明:イ・ドンジン/衣装:ホン・ムンギ/音楽:チャン・ハンソル/小道具:チョン・ソユン/舞台監督:コ・ソビン/企画:チョ・ヒョンジ、シン・ジュフン

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[Special Interview]イ・デヨン【前編】

[Special Interview]イ・デヨン【前編】

 

韓国の劇場街、大学路(テハンノ)で観劇する際の醍醐味のひとつは、ドラマや映画に出演している演技派俳優たちの名演をじかに見られることです。アイドルや若手俳優などの主演陣を陰でサポートしつつ、さりげなく深みのある演技を見せる彼らは映像作品になくてはならない存在。特に“中堅俳優”と呼ばれる40~50代の俳優は、さまざまな現場で常にひっぱりだこです。今回インタビューをお届けするイ・デヨンさんはまさにそんななかの一人。常に多数の撮影現場を掛け持ちする多忙なスケジュールをこなしながら、いまもコンスタントに舞台に立ち続けている生粋の演劇俳優なのです。
今回、SF推理劇『The Nether(ネダー/네더)』で、これまでにないキャラクターに挑むデヨンさんへの取材が実現。人間味溢れるベテラン俳優に注目したインタビューは、韓国でも読める機会は少ないと思います。3つに分けた長い内容となりましたが、韓国演劇の近代史も垣間見える貴重なインタビューをご堪能ください。

*     *     *

●今回は翻訳劇、しかもSFという斬新な『The Nether』への出演はちょっと意外でした。翻訳家のマ・ジョンファさんのたっての希望で決まったそうですね。
「ジョンファさんとは今回初めてお会いしました。実は『春の日(봄날)』※1(7月28日~8月6日までアルコ芸術劇場で上演された)への出演がもう決まっていて、終わった2週間後にこの作品が始まるスケジュールだったので、他にドラマの撮影もあるし、舞台に2作続けて出るのはちょっとしんどいなとも思いましたが、作品を気に入って出演を決めました。2月に『縁側のある家(툇마루가 있는 집)』という演劇に出たのですが、劇場にジョンファさんが演出家と二人でやってきて“どうしても先輩に演じてもらいたい”と。そこまで僕を欲しているなら、と (笑)」

●デヨンさんが『The Nether』で演じるドイルは、ペドフィリア(小児性愛者)の中年教師という難しいキャラクターです。なぜこの役をデヨンさんに演じて欲しかったのか、ちょっとマ・ジョンファさんにも伺いたいと思います。
マ・ジョンファ「イ・デヨン先輩が出演された作品を見ると、ほとんどが善人で、とても苦悩する男性の役でした。もっと面白い役がたくさんあるのに、男優も女優もある程度年齢を重ねると同じような役ばかりを演じるようになるんですね。それをいつも勿体ないと感じていたんです。実は、先輩がかなり前に主演された映画『ラクダ(たち)낙타(들)』(2001年作品)が大好きだったんですが、その映画は、偶然知り合い旅に出た男女が一夜限りの関係を持つという作品でした。デヨン先輩は劇中で自分が傷ついたときに、外にではなく内に向かうようなキャラクターをこういう風に演じるんだなと印象的で、それ以来ずっと興味を持っていたんです。私は俳優に会うといつもどんな役が合うだろう? と想像するのですが、昨年飲みの席で偶然お会いできて。この作品を翻訳したとき、個人的にはドイルのキャラクターに一番惹かれたのですが、とても善い方だと感じた先輩が、最悪の選択をして崩れてしまうような役を演じたら、どんなに面白いだろう? と思いました(笑)。それで、上演が決まったときに演出家にお願いしたんです。“じゃあドイル役は絶対イ・デヨンさんで”と。でも連絡先も知らなかったので、演出家に連絡してもらって(笑)。とてもお忙しい方なので実現するかな…? と思っていました」

●でも普通は、翻訳家がキャスティングまではしないですよね(笑)
マ・ジョンファ「ええ。最初は忙しいとおっしゃったので、また私が演出家と一緒にお願いしに行ったんですよ。“これでダメだったらどうする? 次は手紙でも書く?”とか言って(笑)。そうしたらスケジュールを調整してくださることになって。実際、翻訳家の望み通りの配役になるというのはほぼ不可能なんですが、今回は理想のキャスティングなので、もう作品が完成したような感じです。だから私は稽古で怠けているんです。(何も言わなくても)俳優さんたちが全部やってくれますから(笑)」

●デヨンさんは、ジョンファさんのラブコールを受けていかがでしたか?
「ここまで詳しく理由は言われなかったけど(笑)“ いくら考えても先輩にお願いしたい”と言ってくれて。時間的にちょっと無理みたいだからと丁重にお断りしたんだけど、ここまで言ってくれるなら、無理してでもやりましょう、ということになったんです。作品の設定そのものが興味深い状況だし、サイバー世界、仮想現実についても魅力的で。 人間という存在に対して、とても知的な質問を投げかける作品なのが魅力でした」

●ドイルがどんなキャラクターなのか教えていただけますか?
「ドイルは、定年を半年後に控えた優秀な教師です。教育者としての使命感に溢れ、 とても誠実で、それは家庭でも同じです。そんな男ですが、劇中の近未来では、学生たちがNetherのなかで勉強するので、実際の教育現場で教師は子どもたちがハッキングしてポルノを見ていないかと監視する役割に転落しています。この現実に深く挫折して昔のアナログ的時代の美しさに戻りたい、という思いがある人です。 その後、シムズが作ったNetherの空間に入り、自分で気づいていなかった性的嗜好の発見と、シムズという運営者に出会って、久々に知的な会話が可能なパートナーに会えたという喜びを覚えるんです。そのうちにますますこの世界に溺れていくのですが、結局はドイルもシムズも崖っぷちに立たされている人だと思いました」

稽古中もイ・ゴン演出家と丁寧に台詞について相談

●稽古を拝見したら、演出家や翻訳家と役柄や場面の解釈についてちょっと話し合っただけで同じシーンでもガラリと演技を変えられていて、こんなにも変化するのか! と感動しました。さすがはデヨンさんだ!と思いました。
「稽古というものは相手役がいて、俳優同士で互いに影響を与え合いながらやるものですからね。例えば翻訳家のアドバイスを聞いて、それに応じて自分もそのシーンに対する考えが変わるし、相手役も変わるんです。そしてその変化にまたお互いが呼応する…そんなところが、演劇の稽古の大きな楽しみですね。 そしてその過程で見つけたものが本物で、正解の時が多いんです。ひとりでぶつぶつと台本を呼んでいるだけでは絶対見つからない瞬間が訪れる時があります。 そしてまた、演劇が魅力的なのは、劇場で観客に会うと稽古の過程では探し出せていない答えが、観客を通じて探せる時があります。 演劇はそういう過程があるから本当に面白いんですね」

●観客から予想もしなかった反応が返ってくることもあるでしょうね?
「誰かが言ってたけど、劇場の扉が閉まった瞬間、その中にいる人たちの間に一種の共同体というか、同じムードが流れて、それに俳優が影響を受けるんです。 そして、“あ、自分の考えは合ってたな”と快感を得られるときもあるし、観客の反応を通して正解が分かるときもありますね」

●韓国は未成年への性犯罪者に対し、日本以上に厳しい視線が向けられるのでぺドフィリア(小児性愛者)を取り上げた作品がどう受け止められるか気になります。この作品を観客にどう見てもらいたいでしょうか?
「ん~そうですね…敏感なストーリーでもありますが、具体的に表現するのではなく、台詞で暗示する感じです。この仮想世界では小児性愛だけでなく、例えば、斧で少女の体をメッタ刺しにしたりもするんです。だけど、それは言葉だけで表現されますから。この仮想現実について説明するセリフのなかに魅力的な表現がいくつかあるんです。“自分たちが選んだ形で、自身の体外で交流して関係を結ぶようなこの驚異的な世の中”という台詞があるのですが、これは結局、疎外(感)に対する話ではないだろうか? と。 疎外や孤独、存在に対する質問や疑問など、私は疎外に対する問題だと受け取りました」

●8月初旬まで出演されていた『春の日』の初日前にあばら骨にヒビが入るケガをされて、それを押して出演を続けられ、『The Nether』の稽古にも参加されていたと聞いて驚きました
「それでも私はほとんどケガをしないほうです。しかし周りでは例えばクォン・ヘヒョさんは『私に会いに来て(날 보러와요)』という作品に出たとき、暗転するシーンで骨が曲がるほど鼻をぶつけたんです。彼が演じていた刑事は連続殺人犯が捕まえられず、後半で泣くシーンがあるのですが、演出家が“今日の演技は最高だ!”と思ったら、実は鼻が痛くて泣いてた(笑)。カン・シニルさんは昔『アリラン』という作品で舞台から落ちて仙骨を痛めて立ち上がれなくなり、公演が中止になったとか、こういう話が多いんです。僕がケガした日は、『春の日』の最終稽古のあと、テレビ局での撮影が入っていたので後半出演がない場面の間に、早く帰れるよう服を準備しておこうと、普段は通らない通路を通ったらぶつけてしまって(笑) 」

●『春の日』はかなり前から上演されているイメージがあるんですが、初演から出演されているんですか?
「2009年からです。 初演は1984年ですが、09年にソウル演劇祭30周年記念として、これまで出品した作品のなかから“再び見たい作品10”に『春の日』が選ばれたんです。 初演の時からオ・ヒョンギョン先生が父親役でしたが、その時はまだ40代後半で、09年からはどんどん役柄の年齢に近くなられ、むしろ今では超えていらっしゃいますが、09年、11年、12年、そして今年また再演となりました」

●『春の日』で演じられていた長男は、常に弟たちを想い、まるで母親のごとく温かく包みこむような役柄でしたね。
「写実主義のような作品ではなく、 一種のファンタジーのような物語ですよね。父親はものすごいケチで、息子たちから搾取する権力者のような人ですが、そんな父にも老いはやってきます。そして病弱な末っ子の存在。彼ら弟たちを受け入れる長男の母性愛的な姿……これは脚本家が最初から書いていたんです。それで、設定に合わせて表現しようとしました」

●この作品と役柄に、とても愛着をもっていらっしゃるようです。
「そうですね。 愛着がある作品だし、私が本当に尊敬していて、ロールモデルでもあるオ・ヒョンギョン先生と一緒に演じられるので、再演のたびに良くてやっていますね。多少の義務感もあり(笑)、また再演するとしても特別な理由がない限りはやらねばならないでしょう」

※注1:演劇『春の日』は、山村に貧しく暮らす、老いてもなお絶対的な権力をもつ父親と7人の息子たちの姿を通して家父長制を問う作品。イ・デヨンは弟たちと頑固な父親の間をとりもち、家事も引き受けて母親代わりを務める思いやり溢れる長男を演じている。
韓国演劇界を代表する元老俳優の一人で、現在81歳となるオ・ヒョンギョンが、1984年の初演から父親役を演じ、09年に25年ぶりとなった再演以降も出演を続けている。09年からは劇団「白首狂夫(백수광부)」の代表でもあるイ・ソンヨルが演出し、イ・デヨンも継続して出演している。

2011年公演の様子。父親役オ・ヒョンギョン、長男役イ・デヨンのほか、11年公演では三男役に映画、ドラマで活躍するチョン・マンシクも出演していた(アルコ芸術劇場公式映像より)

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作品に向かう姿勢、ストーリの解釈などベテランならではの重みを感じていただけたと思います。⇒インタビュー中編からは、イ・デヨンさんの“俳優人生”について伺っています。

【インタビュー中編→】 【インタビュー後編→】


【公演情報】
演劇『The Nether(ネダー)』(네더)
2017年8月24日~9月3日 東洋芸術劇場3館(大学路)

<出演>
●ドイル役:イ・デヨン
●シムズ役:キム・ジョンテ
●モーリス役:キム・グァンドク
●ウードナッツ役:イ・ウォンホ
●アイリス役:チョン・ジアン

原作:ジェニファー・ヘイリー(Jennifer Haley)/演出:イ・ゴン/翻訳・ドラマターグ:マ・ジョンファ/舞台:イム・ゴンス/照明・映像:シン・ジェヒ/映像共同制作:ソン・ギョンビン/衣装:チョン・ミンソン/小道具:パク・ヒョニ/ヘアメイク:キム・グニョン/音楽監督:ピ・ジョンフン/振付:イ・ハンナ/助演出:アン・ミビン/舞台監督:イ・ヒョンジン

写真提供:劇団的(チョク)


取材・文:さいきいずみ 翻訳:イ・ホンイ ポートレート撮影:キム・ジヒョン

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[Special Interview]イ・デヨン【中編】

[Special Interview]イ・デヨン【中編】

 

ここでいきなり筆者の個人的な話で恐縮ですが、俳優イ・デヨンに興味を持つきっかけとなったのが、2005年の『復活(부활)』というドラマでした。主演したオム・テウンの出世作として知られるこの作品は、ある事件をきっかけに主人公ハウンの出生の秘密、事件の背後にある巨悪を暴いていく巧妙なストーリーで放送当時「復活パニック」という熱狂的なファンを生んだ作品でした。劇中でイ・デヨンさんは刑事ハウンの上司であるキョン・ギド班長を演じ、事件の重要なカギを握る役を担っていたのです。

*     *     *

●2005年に出演されたドラマ『復活』は助演陣に渋いベテラン俳優がたくさん出演していましたが、俳優のプロフィールを調べてみると、ほとんどが演劇俳優だったんですよね。
「そう、演劇出身俳優が多かったですね。(キム・)ガプス兄さん、(キ・)ジュポン兄さん……。『復活』は韓国で今でもファン層が形成されていて、マニアのファンがとても多いです。ファンの希望が通って初めてディレクターズカット版DVDも出たし、劇場を丸ごと借りてイベントをやったりもしました」

●演出したパク・チャンホン監督のファンクラブもありましたよね(笑)。このドラマでデヨンさんは警察の捜査班の班長役でした。
「はい。キョン・ギド班長(笑)(※名前の発音は、韓国の地域名、京畿道にかけてある)班長は、ドラマの中盤で刺されるのですが、ストーリー上、重大な秘密を握っているので殺すことはできない。それで、3、4話くらいは病院で横になっているだけで出演料をもらいました(笑)」

●(笑)。このドラマ以降、大学路(テハンノ)でデヨンさんの出演作もいろいろと見るようになりましたが、『春の日』や『私に会いに来て』のように韓国の創作演劇に出演されることが多かったように思いますが?
「創作劇だけではなく、翻訳劇も実はたくさんやってきたんですよ。私が所属してきた劇団『シンシ(신시 現シンシカンパニー)』や、劇団『演友(ヨヌ)舞台(연우무대)』、キム・ガプス先輩が主宰していた『俳優世界(배우세상)』でもちょっとやっていたんです。それぞれが創作劇を優先的に作る劇団だったので、その劇団に所属していたときはほとんど創作劇でしたが、2006~7年? くらいからは大学路で、劇団(で作品を制作、上演する)という概念がやや瓦解していって、プロダクションによる制作システムに変わってからは翻訳劇にもたくさん出演してきました」

●ここからはデヨンさんのこれまでのキャリアについてお伺いしたいです。プロフィールには名門、延世大学の神学科出身となっています。
「はい、延世大の神学科出身はほかにアン・ネサン、ウ・ヒョン。もっと上にはミョン・ゲナム先輩がいますね。アン・ネサンさんは神学科の中にある演劇サークルで活動していて、ウ・ヒョンさんはほとんどやってなかったけど、二人ともデモを一生懸命やっていたほうでした(笑)。実は私と同じ歳なんですが、二人とも浪人したから1学年下で、今も会うと“兄さん”とか“先輩”と呼ばれるんけど、ほぼ友達ですよ。同い年なんだから(笑)」

●やはり皆さん演劇出身俳優ですよね。でも一般的に神学を学ぶ人は神聖でお堅いイメージがあり、なぜ演劇を始めたのか、どうにも結びつかなくて不思議だったんです(笑)
「他の教団の神学校と違って、延世大の神学科は、特定の教団が設立したものではなく、教派連合的な性格もありました。民衆神学と1970~80年代に南米で起きた解放の神学の影響を受けて、若干の政治的な性向も帯びた民衆神学の本山でした。それですごく自由主義的な性向が強く、デモなどの社会運動にもたくさん参加していたんです。一般的に神学校を卒業すると牧師になったり、神学科の教授になる学校とは違って、延世の場合はとてもリベラルで総合大学の中にあるからか、いろんな関心も持てたんです。卒業後にも牧会や一般神学の勉強を続ける比率が50%にも満たない。 30~40%ぐらいかな? それで変わった奴が出ているんです。例えば同級生には映画監督や演劇演出家、警察官もいて、金融監督院に入った奴もいます。神学科にしては幅が広いんですよ」

●元々キリスト教徒なんですよね?
「うちは三代キリスト教の母体信仰(※生まれながらにしてキリスト教を信仰していること)で、幼いころから自然に教会に通っていた敬虔なキリスト教徒でした。でも高校3年生のとき、むやみに胸が熱くて、空しくて、訳もなく世の中が悲しくなり、死にたくなったことがあったんです。ところが自分が20年近く信じて来た信仰がそれを助けることが出来なかったんですよ。 それでさらに迷って彷徨もたくさんしました。その頃に酒も覚えて(笑)。それから大学入試のとき本当は哲学科とか国文科くらいに行ければいいかと思っていたけど試験の点数が微妙で、哲学科はちょっと危なく、神学科は安全圏でした。それで神学だろうが哲学だろうがもう、反抗心のようなものもあり、迷いが生じた時には何の役にも立たなかったこの信仰に一度正面からぶつかってみようという子供じみた考えもありました。当然延世大という看板にも惹かれ、ロマンももっていました。イ・ムンヨル(이문열)という作家の『人の息子(사람의 아들)』という小説を読んで感じた、神が人間の問題で悩む神学が、格好よく見えたりもして神学科に行きました」

●そういえば以前インタビューした俳優(⇒イ・スンジュ編参照)も、本当は哲学科に行きたかったと言っていました。
「だけど、いざ神学科に入ったら、民衆神学を支持した教授たちはみな追い出され、とても厳格でつまらない教授だけが残っていて、思っていたほどの面白さがなかったんです。 春に入学したばかりの新入生がデモして連行されている姿ばかり見てとても胸が痛むけど、石を投げる勇気はない……そんな憂鬱な日々を送っていたら、ある日高校の同級生がすごく楽しそうにしているんですよ。“お前、何やってんの?”と訊いたら、“演劇をやっていてすごく面白い”と。それで“僕もそこに入ってみるか?”となったんです。その演劇サークルに入る前は、実は演劇を1作しか見たことがなかったんです。『エクウス(에쿠우스)』※2 という作品で、その頃ずっと信仰や異性の問題に悩んでいた自分とぴったり合致する作品でした。それまでは演劇に魅力を感じたことがなかったのに、作品が本当に強烈で。今でこそ俳優が全裸で出るような作品もありますが、当時は舞台で女性が下着しか身に着けていない姿を間近で初めて見てかなりショックを受けました。それでその友達にくっついて演劇サークルに入りました。演劇自体の面白さはよく分からなかったけど、若者たちがひとつのことにこだわり、今にして思えば大したことでもないのに、酒を酌み交わしながら演劇や芸術の話をするのが素晴らしく思えたんです。メンバーもとてもいい人たちで、俺が夢見ていた大学生活はこれだ!と。演劇自体よりも人と会って騒いで少し芝居する……すると、格好よく見えるし、その雰囲気が好きでサークル活動をしていました」

※注2 演劇『エクウス』は英国の劇作家ピーター・シェーファーが1973年に発表した戯曲。愛馬の目を突いた少年アランと精神科医ダイサートとの対話から家族の問題、思春期の性など、彼の背景が徐々に明らかになっていく。韓国では劇団実験劇場が1975年に初演し、チェ・ミンシク、チョ・ジェヒョンなど多数の有名俳優が出演してきた。2016年には韓国40周年記念公演も行われた。

●大学を卒業したあと、本格的に演劇俳優として活動を始められたんでしょうか?
「大学1、2年生の時は、本当にただ友達と話してお酒を飲んで遊ぶ楽しさだけでした。そのあと、短期間軍隊(兵役)に行ったあと、演劇の勉強をきちんとしてみようと思い、本も一生懸命に読んだし、舞台もマメに見に行って、これを自分の一生の仕事にしようかな?と悩んだ末に、やろう、と決めました。他に面白さを感じるものもなく、自信もなく、 サラリーマンはやりたくなかった。私はたまたまタイミングが良かったんです」

●でも、ご両親は反対されたのではないですか?
「当然反対しました。 私は父が50歳を過ぎてできた子なんです。両親は朝鮮戦争のときに越南(北朝鮮から韓国に降りて来た)してきたのですが、姉が二人いたけど、歳を取ってからできた長男だから大事に育てられました。そんな息子が演劇をするというんだから(笑)。しかし父は理解がある人でしたから“演劇をやるのはいいけど、それは金持ちの子がすることで、自分がいつまで助けてやれるか分からない”と、そういう心配をしてくれたんです。私は二代独子※3 だったので、本当は兵役が30カ月のところを6カ月だけ勤務をしたのですが、“軍隊に行ったつもりで2年だけやってみます”と言い張ったんです。 ですが、それが30年になりましたね」

※注3 二代独子(イデドクチャ/이대독자)とは、父、子二代続けての一人息子(=一家の跡取り)という意味。二代独子の場合、以前は兵役期間が短縮されたり公益勤務に着いたりしていた。現在は一人息子でも基本的にはこのような優遇措置はないという。

●最初に出演されたのはどんな作品でしたか?
「サークル外の作品に出たのは大学3年の冬休み、1987年でした。演劇部の先輩であるキム・テス演出家※4 が他の演出家の作品の助演出をしていました。『不細工な美女(米女)못생긴 미녀』※5 という作品でしたが、アメリカを風刺するような一種の反米演劇でした。出演者の中の一人が、初日の3週間前に突然逃げたんですよ。それで俳優が一人いなくなったので誰か探して来い、と言われたテス兄さんが、まだ学生だけど、そんなに大きな役ではないので、演出家に一度使ってみてくださいと言って、私が起用されたんです。それが87年の1月か2月でした。ちょうどパク・ジョンチョル※6 が拷問されて死んでから間もないころでした。 これが最初ですが、大学を卒業してから出演したのは『立ち上がれアルバート(일어나라 알버트 原題は「WOZA ALBERT!」)』という作品が私のデビュー作だと思います」

※注4 キム・テス(김태수)演出家 劇団「卍模様(완자무늬)」の代表。同劇団は、イ・デヨンと同じく延世大学神学科出身の俳優ミョン・ゲナムらと共に1984年に設立。社会問題を題材にした創作劇や、翻訳劇も硬派な作品を多数上演している。
※注5 韓国語ではアメリカのことを美国(미국 ミグク)と表記するため、美女=アメリカ人女性の意味。美女を指すのは同じ文字・発音の(미녀 ミニョ)。
※注6 パク・ジョンチョル(박종철) 当時ソウル大学の学生だった民主活動家。全斗煥(チョン・ドファン)大統領が独裁体制を敷いていた第5共和国末期の1987年に公安当局に拘束され、拷問を受けて死亡した。これを政権が隠蔽しようとしたことから「6月抗争」と呼ばれる多数の民主化運動が起こり、のちに13代大統領となる盧泰愚(ノ・テウ)が「6.29民主化宣言」を出すことになった。

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中編では俳優イ・デヨンの誕生秘話をじっくり語っていただきました。⇒インタビュー後編 では、これまで出演してきた演劇について。そして出演作が50本を超える映画やドラマについても伺っています。

【←インタビュー前編】 【インタビュー後編→】


取材・文:さいきいずみ 翻訳:イ・ホンイ ポートレート撮影:キム・ジヒョン

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[Special Interview]イ・デヨン【後編】

[Special Interview]イ・デヨン【後編】

イ・デヨンさんをはじめ、彼と同世代の演劇出身俳優たちの多くは、80年代末から90年代以降の韓国舞台シーンを席巻した名優たちです。確かな演技力と存在感で、映像界でも確固たる地位を築いている理由が、デヨンさんのお話しからも伝わってくると思います。

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演劇『私に会いに来て』20周年記念公演ではキム班長を演じた(2016年)プレスコールより

●初舞台以降、本当にいろんな作品に出演されましたがデヨンさんの出演作を調べると、ドラマと映画だけでも100本くらいはありました。
「データが出てないものもありますからね。映画が40~50本くらい? ドラマが70作くらいかな。演劇も同じくらいあると思います。でも数が多いだけですね(笑)」

●膨大な数の中で今も記憶に残っているのはどんな作品ですか?
「そうですね……演劇だと『私に会いに来て(날 보러와요)』※7、それと『アート(아트)』※8 という作品も忘れられないですね」

●個人的にデヨンさんの芝居を大学路で初めて見たのが『アート』でした。めちゃくちゃ面白かったです!
「そうでしたか。『アート』は本当に面白かったでしょう? クォン・ヘヒョ、チョ・ヒボンとの息もピッタリで。面白かったことも印象深いけど、もう一つは普段の僕イ・デヨンと、劇中の役ドクスとのキャラクターがあまりにも似ていたので、俳優として人物を作り出すのに大して悩みもせずとも答えが出たような作品でした。 賞までもらえたのでさらに記憶に残る作品です」(05年『アート』で第41回東亜演劇賞男性演技賞を受賞)

※注7 『私に会いに来て』 韓国の代表的な未解決事件として知られる「華城(ファソン)連続殺人事件」を題材に、劇団「演友(ヨヌ)舞台(연우무대)」創立メンバーだったキム・グァンリムが1996年に発表した戯曲。連続猟奇殺人を捜査する捜査本部を舞台に、犯人に振り回される刑事たちと、彼らをめぐる人間模様がリアルかつコミカルに描かれる。ポン・ジュノ監督はこの作品をもとに名作映画『殺人の追憶』を創り上げた。
※注8 『アート』 原作戯曲はフランスのヤスミナ・レザが1994年に発表したブラックコメディ。長年の親友関係にある男3人のうちの一人が、キャンバスに白一色の絵画を高額で購入したことで、その絵の価値をめぐって論戦を繰り広げ、3人が長年抱えていた本音が露になっていく。

演劇『私に会いに来て』20周年記念公演プレスコールより (写真左からクォン・ヘヒョ、ユ・ヨンス、キム・レハ、イ・デヨン)

●そして『私に会いに来て』は昨年20周年記念公演もありましたが、この作品でもデヨンさんは捜査チームの班長役でした(笑)
「記念公演も見ましたか。実は初演の時はキム班長役じゃなかったんですよ。他の作品に出演していて最初から稽古に参加できなかったんです。結局、演じる予定だった容疑者役をユ・テホ兄さんがやることになり、私は容疑者の友人として少しだけ登場する役を演じました。でもそれで百想芸術大賞演劇部門の新人賞を受賞したんです。チャ・ボムソク先生※9 が審査委員でしたが、“確かにあの役を上手く演っていたけど、いや、なんで5分しか出てこない役なのに”とおっしゃって(笑)。当時演劇界の新人賞は飛行機のマイレージのような感じで、ある程度いいね、という作品が4、5個貯まるといい俳優だからと新人賞が与えられるという慣行が以前はあったんです」

※注9 チャ・ボムソク(차범석)戦後の韓国演劇を率いた劇作家、演出家の一人。2006年、82歳で没。

●てっきり百想芸術大賞の新人賞は、班長役で受賞されたと思っていました(笑)
「その時は容疑者の友達役でした。周りのみんなにも“どうやったら5分出ただけで新人賞がもらえるんだ”と冷やかされたりもしました(笑)」

演劇『私に会いに来て』20周年記念公演プレスコールより(2016年)

●これまで所属されていた劇団について教えていただけますか?
「私が最初に劇団に所属したのは『シンシ』という、故キム・サンヨル先生が創られた劇団でした。創立公演だった『エニケーン(애니깽)』という作品を見て“わぁ、この劇団に入りたい!”と思ったのですが、新人は採用していないと入団できなかったんです。その後、ある音楽劇をシンシと合同公演をやることになり、キム先生にお会いできたんです。先生は噂に聞いていたとおり演劇を始めたばかりの者からすれば学ぶことがとても多い方でした。その公演が終わるころに、いまはシンシカンパニーの代表で、当時は企画室長だったパク・ミョンソンさんに“君、劇団に入らない?”と声をかけられて“僕は元々入りたかったんですよ!”と、即入団しました。時々俳優は他の人の芝居を見ていると、時々“あ、あの役は自分のものだ”と思うときがあります。『エニケーン』を見ていたときがそうで、主人公はキム・ガプス兄さんらが演じた平民たちでしたが、私はチェ・ジョンウ兄さんが演じていた高宗(朝鮮末期26代王)を自分が上手くできそうだと思っていたんです。ところが、突然ジョンウ兄さんが出演できなくなり私にチャンスが回ってきて、入団したての新入に大役を任せられてとても気分が良かったですね。入りたかった劇団で、演じたかった役もできて……それから4、5年活動したんですが、だんだんと劇団がお金になるライセンスミュージカルを制作するようになって。そこに、外部公演の出演オファーが来たので、キム先生に許可を得て一つ、また一つと出るようになったんです」

●近年は現在所属していらっしゃる劇団「チャイム」※10 のイ・サンウ先生の作品への出演が多いですよね。
「外部公演に出るようになってから劇団『演友(ヨヌ)舞台』に出るようになったのですが、イ・サンウ先生も演友舞台出身なんです。劇団『漢陽(ハニャン)レパートリー(한양레퍼토리)』 のチェ・ヨンヒ先生、劇団『ハクチョン(학전)』のキム・ミンギ先生も演友舞台の団員から分化して自分の劇団を創ったんです。演友舞台での最初の作品は『夕暮れ(해질녘)』という作品で、もともとはソン・ガンホがワークショップから出演していた作品でした。評判がいいので本公演をやることになったのですが、ガンホが出演できなくなり、私にオファーがきて演友舞台との縁ができたんです」

劇団「チャイム」20周年記念公演記者会見より(2015年)(左からイ・ソンミン、ミン・ボッキ代表、劇団創立者、作・演出家イ・サンウ)

●イ・サンウ先生とのご縁はここから始まったんですね?
「公演を見にいらして目に留まったようで“チャイムで一緒にやろう”となったんです。シンシでは演劇を始めたばかりだったのでキム・サンヨル先生から多くを学びましたが、シンシの作品は厳しくて堅苦しくて、先生は元々恐い方だったので、よくいじけていたんです。でも演友は作品自体もそうだけど、俳優や演出家の年齢も自分に近いし、作品もコメディーが多いから、気楽に演ってるのが面白い、上手いと言ってもらえて。それまで演技は当然、かしこまって恰好つけてやるものだとばかり思っていたのが、演友に来てから自分自身も楽しみながら面白く、軽くできる他の演技方法に出合えて楽しかったんです。 それでチャイムにも入ることにしました。その他には、キム・ガプス兄さんが、チョ・ジェヒョン、コ・インベさんらと出資して作った『俳優世界(배우세상)』という劇団にもちょっとだけ参加したことがあります」

※注10 劇団「チャイム」 は、劇作家・演出家のイ・サンウが1995年に創団。創設メンバーにはソン・ガンホ、ユ・オソンらもいた。現在の所属俳優はムン・ソングン、カン・シニル、チェ・ドンムン、パク・ウォンサン、イ・ソンミン、オ・ヨン、パク・ジア、チョン・へジンなど、映画、ドラマで活躍するそうそうたる顔ぶれがそろっている。

●ところで、劇団「チャイム」の俳優たちはなぜ、ドラマにたくさん出るんでしょう?(笑)
「そうなんです。 よくわからないけど、あえて劇団で言うなら、劇団『木花(モッカ)』と『チャイム』出身が多いんですよ。ムン・ソングン、カン・シニル、イ・ソンミン、私、チェ・ドンムン、パク・ウォンサン、チョン・ヘジン、ミン・ソンウクなどたくさんいますね」

●例えばKBSの時代劇とか見ると、必ず何人か一緒に出ています(笑)
「別に何かあるわけではないのですが、テレビや映画の関係者はいつも演劇に注目しているんですよ。そういう関係者がチャイムの舞台をたくさん見に来ました。いまもKBSにいますが、ハム・ヨンフンというプロデューサーがいて、彼がチャイムの俳優を監督たちにたくさん紹介してくれました。『復活』のときもそうです。だから私たちは彼をチャイムの秘密団員だと(笑)冗談で言ったりしていますが、チャイムの俳優たちは、リラックスした演技ができて、瞬発力もあり、若干のユーモアのセンスもある。ドラマに適合した俳優たちが集まっている劇団だからではないでしょうか?」

●それでは映画のほうはどうですか? かなりたくさん出演されていますよね。
「大体50作くらい出たでしょうか。『明日に流れる川(내일로 흐르는 강)』(1996年)という作品が最初の映画でしたが、これも私には人に会う縁、人福があるようです。製作者が演劇部の先輩でしたから。イ・チャンホ(이장호)監督の助監督出身でしたが、生活苦のために映画を辞めて、映像制作をやっていたんです。私もその会社でナレーションなどのアルバイトをしていましたが、ある日その先輩が突然“映画をやるぞ”というので、出演することになりました。それからパク・ジェホ(박재호)監督が意気投合して参加しました。当時韓国映画の平均制作費が20~30億ウォンの頃に、10分の1の予算で製作したんです。その作品は1、2部に分かれていたのですが、2部の主人公を演じて、それがデビュー作になりました。これをきっかけに映画界に繋がりができたんです。観客は多くなかったけど、映画関係者たちは全部見てますから。 それから映画のほうもたくさんやるようになりました」

●そのなかで記憶に残る作品は?
『JSA』(2000年)は記憶に残っていますね。それと 『復讐者に憐れみを(복수는 나의 것)』(2002年)、『オールドボーイ(올드보이)』(2003年)、『親切なクムジャさん(친절한 금자씨)』(2005年)と、パク・チャヌク監督の“復讐三部作”には唯一私がすべてに出演した俳優になりました。『親切なクムジャさん』では、刑務所長役でしたがほとんど編集されてしまい、よーく見ないとわかりませんが(笑)。最近撮ったのは『思悼(사도)』『誠実な国のアリス(성실한 나라의 앨리스)』『チャイナタウン(차이나타)』(すべて2014年)、『セシボン(쎄이봉)』(2015年)は特別出演でしたね」

2014年に出演した演劇『マン・フロム・アース』プレスコールより(左からイ・デヨン、ソン・ジョンハク、イ・ウォンジョン)

●出演作すべてを追いきれないほどの多さです(笑)。これにドラマや舞台も入るわけで。スケジュール調整はいったいどうされてるのでしょう?
「1年に少なくとも演劇を一本はやろう、というのは今まで守ってきています。でも今年はこれで演劇が3本目なので、ちょっと多いですが、それでもスケジュールを調節すれば済むことです。主人公だったら時間をやりくりするのは難しいですよね。いま放送している『名不虚伝(명불허전)』でも、もちろん主演俳優たちは撮影が終わるまで他の仕事は出来ない状態です。でも私が担当する役はそれほど時間を割くような役ではないですから」

●いつも気になっていました。映画やドラマに切れ目なく出演されているのに、必ず舞台にも出演されているので。
「そうです。 演劇が面白いから。 無理に誰かの指示を受けているわけじゃないです」

●演劇は映像の仕事とどんな違いがありますか?
「そうですね、先ほどお話ししたように、演劇は稽古の過程がとても大きいです。演劇は“作る”という感じだとすれば、映画やドラマは“する”という感じなんです。映画では監督と作品や背景の話を一緒に悩む時間はあまりもらえないです。もちろん主演俳優は監督と話しますよ。でも演劇は一緒に作る過程が重要で、またその過程が結果として出てきますから。演劇はそういう楽しさがあります。 ところが映画やドラマは、あるものをポンと投げて出なきゃならない。ある俳優が“映画やドラマは自分を貸し出す感じだ”と、そんな表現をしている人もいました」

●いま撮影中のドラマ『名不虚伝(명불허전)』では初めて医師役を演じているそうですね。
「そうなんですよ。医師、教授役は今までやったことがなかったんです。私があまり知的に見えないのか(笑)、医師や弁護士などを演じたことはほとんどないです。ドラマでは胸部外科課長で、主人公のキム・アジュンさんの指導教授です。でもずっとアジュンさんを苦しめて、無理を強いるような役柄です(笑)」

ドラマ『名不虚伝』1話予告編(tvN公式映像より)

●こんな風にスタジオと劇場を行き来して、お仕事ばかりなんでしょうか? 趣味などは?
「私はそういうのがないんですよ。時間があればちょっと登山に行ったり、あとは他の人の公演を見に行ってお酒飲んで。こういうのが趣味です。良い作品を見たら楽しく飲んで、つまらない作品を見たら悪口言いながら飲んで(笑)。それが楽しいです。趣味というものがないので、本当に面白くない人間ですよ(笑)」

*     *     *

時間が出来ても他の作品を見に行ってしまうというデヨンさん。「演出などには興味はないんですか?」と訊くと「あぁ」と首を横に振り「演じるほうがいいね」との答え。芝居に魂を捧げ、志を貫いてきた“役者バカ”の横顔が見えました。

そしてここで朗報をひとつ。11月に立教大学で行われるという、詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)の生誕100年行事に、デヨンさんも参加される予定だそうです。取材時点ではまだ具体的なことは決まっていないとのことでしたが「詩の朗読をするのかな?」とおっしゃっていました。映画『空と風と星の詩人 尹東柱の生涯』などで、尹東柱の再評価が高まるなかでのイベントだけに、日韓で注目されるのは間違いなし。まだ一度も日本に行ったことがないという名優イ・デヨンを見られるチャンスです。詳しい情報は分かり次第、別途お知らせしたいと思います。

【←インタビュー前編】 【←インタビュー中編】


【プロフィール】イ・デヨン(이대연 Lee Dae-Yeon)
1964年11月13日生まれ。延世大学神学科在学中から「延世劇芸術研究会」という演劇サークルに所属し、1987年に初舞台を踏む。その後劇団「シンシ」の専属俳優となり、劇団「演友舞台」での活動を経て、現在は名優が名を連ねる劇団「チャイム」に所属。『年老いた泥棒話(늘근도둑 이야기)』『そこ(거기)』『蜚言所(B언소)』など、チャイムを主宰するイ・サンウの作、演出作品に多数出演している。2007年にはチェ・ミンシク、ユン・ジェムン、チェ・ジョンウと共演した『ピローマン(필로우맨)』が大きな話題を呼んだ。また2012年にはシンシカンパニー制作、キム・グァンボ演出で上演した畑澤聖悟原作の『親の顔が見たい(니 부모 얼굴이 보고 싶다)』にも出演している。テレビドラマは現在、韓国で放送中のキム・ナムギル、キム・アジュン主演『名不虚伝』に出演中。ほかナ・ムニ、イ・ジェフンと共演した映画『アイ・キャン・スピーク(아이 캔 스피크)』が9月に公開を控えている。
●公式サイト:http://justright.co.kr/lee-dae-yoen/


取材・文:さいきいずみ 翻訳:イ・ホンイ ポートレート撮影:キム・ジヒョン

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イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.24

イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.24

 

仮想世界の中の倫理を問うSF捜査劇『The Nether』

SF推理劇に挑む、名優イ・デヨン

韓国人である私にも中々解けない韓国の謎が一つあります。それは、なぜか韓国では推理やSFなどのジャンルがあまり愛されていないことです。物語より目の前の現実がもっとドラマチックだったからでしょうか? 小説や映画も見ても、歴史物やドキュメンタリーの方がずっと人気があるのです。推理とSFはマニア=少数が楽しむジャンルだという認識があり、私も子どもの時から推理小説やSF小説が読みたくなったら、図書館の海外文学コーナーの隅で本を探すのが当たり前でした。欧米ドラマのヒットにより、推理やサスペンスはどんどん人気を得てきましたが、それに比べても特にSFはいつも遠い存在でした。勿論、これは演劇界も同じで、今まで韓国演劇の歴史のなかで「SF」と言えるような作品はほぼなかったと言えます。
しかし最近、人工知能の人気が高まり、科学と芸術の融合事業を支援する基金が設立されたことで、演劇界のなかでもSFに対する関心が増えています。翻訳者としても、変化を実感していて、ほんの2年前にはSF的な要素が入った作品をプロデューサーや演出家に紹介すると断られてしまいましたが、最近は新鮮な素材に興味を持つ創作者が出てきています。こんな雰囲気のなかで、8月24日から大学路で上演される演劇『The Nether(네더 ネダー)』がどのような成果を見せるか、興味津々です。

稽古中のドイル役イ・デヨン

『The Nether』は、アメリカの女性作家ジェニファー・ヘイリー(Jennifer Haley)が2012年に発表した作品です。本作でヘイリーは、優れた女性作家に与えられるSusan Smith Blackburn賞を受賞し、翌年にはLA Ovation awards Best Play賞も受賞しました。それだけではなく、イギリス、ドイツ、スウェーデン、トルコ、ノルウェーなど16カ国で上演されました。
この作品が好評を得た理由は、未来の物語ですが、今からよく考えて討論しなければならない問題を扱っているからだと思います。SFといえば映画のように華麗なCGの画面をイメージされる方が多いかもしれませんが、『The Nether』は、最初のSF小説だと言われている『フランケンシュタイン』がそうだったように、人間の欲望から生まれた科学の成果が我々の価値観にどのような変化をもたらすかを問う作品です。

物語は、女刑事モーリスが事業家シムズを未成年売春の容疑で取り調べをするシーンから始まります。しかしモーリスが把握している容疑者の情報とは全く異なる人物であるシムズは堂々と嫌疑を否定します。やがて、その容疑者の情報が、シムズが「Nether」のなかで作ったアバターのような仮想の彼自身と一致することが明らかになっていきます。

刑事モーリス(キム・グァンドク)は、容疑者シムズを追求する

「Nehter」とは、現在のインターネットに当たる仮想世界です。本作の舞台となる近未来では、この「Nether」の空間を通して人間の五感すべてを生々しく感じることができるようになっています。会員となってログインすれば現実と同じ仮想のファンタジーが体験でき、教育や仕事はもちろん、売春などの違法行為まで「Nether」を通して行われるため、身体に生命延長装置を付着して「Nether」のなかに完全に入りこんでしまった人まで出てくるほど、ユーザーを支配しています。
シムズは、自身の小児性愛嗜好がどんな薬でも治らないことに気付き、「Nether」のなかに秘密の空間を作った人物です。クラシカルな美しい邸宅に純粋な女の子たちを集め、彼女たちに“パパ”と呼ばれているシムズは、現実では決して許されない欲求を会員たちに提供しているのです。次にモーリスはこの空間の会員である中年の化学教師ドイルを参考人として呼び、捜査に協力するよう依頼。やがてモーリスはウードナッツという男性として「Nether」にログインし、シムズが作った秘密空間に潜入して、その空間で生きる少女アイリスと出会ったことで、事件の真相に迫っていくのです。

(左から)ドイル役イ・デヨン、シムズ役キム・ジョンテ、モーリス役キム・グァンドク

Netherに秘密の空間を創るシムズ役キム・ジョンテ

モーリスに追求されたシムズは彼女に問い返します。「私たちは現実では絶対許されない欲求を仮想世界で解決する。現実では誰も傷つかない。この空間を無くしてしまうとどうなるか分かっているのか。それでも無くしたいのか」と……。
このサイバー空間で人間の本質を問うという、これまでにない物語に挑むため、韓国演劇界でも屈指の実力派俳優が揃いました。小児性愛者のシムズを演じるのは『トイレットピープル』『テンペスト』『デモクラシー』など、公立劇場の演劇に多数出演してきたキム・ジョンテ。15年には密室で展開する英国発の翻訳劇“トリロジー”シリーズの第2弾『カポネトリロジー』にも出演して注目されました。
シムズを追う刑事モーリス役を『サム・ガールズ』『ノイズ・オフ』『下女たち』など数々の話題作に出演してきたキム・グァンドク。そして、もう一人の重要な容疑者となるドイルを、ドラマ『雲が描いた月明り』、映画『思悼(サド)』など、数々のドラマ、映画に出演してきた名優イ・デヨンが演じます。

アイリス役:チョン・ジアン(左)、ウードナッツ役イ・ウォンホ

鋭い論戦が展開される取調べ室、そして実在しないNetherの秘密空間……この二つの空間を往来しながら展開する、この作品世界を構築するのは、演出家イ・ゴン(コラムVol.15『短編小説集』参照)と翻訳家でドラマターグも務めるマ・ジョンファ(コラムVol.2『傷だらけの運動場』、15『短編小説集』を参照)です。このコンビの実力は、去年上演した演劇『短編小説集』の大成功で検証済みですが、実はその前から『Nether』の上演を企画していたそうで、それほど入念な準備期間を経て、上演するに至った作品なのです。
帰国子女だったマ・ジョンファは演劇学を専攻した研究者でもあるため、稽古にも積極的に参加するドラマターグですが、彼女とパートナーを組んだイ・ゴンもアメリカ留学派で、現在は青雲(チョンウン)大学演技芸術学科の教授です。二人のエリートが「シムズが正しいか、モーリスが正しいのか」という問いを投げかけるこの戯曲に惹かれたのは当然だったかもしれません。『Nether』は間違いなく観劇後、観客がテーマや内容について討論したくなるような作品だからです。

ドイル(イ・デヨン)はシムズ(キム・ジョンテ)に同志にも似た感情を覚える

個人的には、『Nether』の最も魅力的な部分は、物語自体はSFの領域なのに、それを表現する様式がアナログな演劇的方法を取っていることです。推理・SF小説が好きで、幼い頃から海外文学に親しんできた韓国の読者たちが、この作品をきっかけに演劇で楽しむ推理・SFの新鮮さを体験し、新しい「観客」になってくれることを期待しています。そしてこの作品が、韓国の劇作家にも良い刺激になればいいなと思います。

⇒ドイル役、イ・デヨンさんのスペシャルインタビューへ


【公演情報】
演劇『The Nether(ネダー)』(네더)
2017年8月24日~9月3日 東洋芸術劇場3館(大学路)

<出演>
●ドイル役:イ・デヨン
●シムズ役:キム・ジョンテ
●モーリス役:キム・グァンドク
●ウードナッツ役:イ・ウォンホ
●アイリス役:チョン・ジアン

原作:ジェニファー・ヘイリー(Jennifer Haley)/演出:イ・ゴン/翻訳・ドラマターグ:マ・ジョンファ/舞台:イム・ゴンス/照明・映像:シン・ジェヒ/映像共同制作:ソン・ギョンビン/衣装:チョン・ミンソン/小道具:パク・ヒョニ/ヘアメイク:キム・グニョン/音楽監督:ピ・ジョンフン/振付:イ・ハンナ/助演出:アン・ミビン/舞台監督:イ・ヒョンジン

写真提供:劇団的(チョク)


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