[コラム]2018年韓国ミュージカル/演劇の見どころは?

 

シンシカンパニー2018年作品(左から『ビリー・エリオット』『シカゴ』『マチルダ』と演劇『The Play That Goes Wrong』)

早くも1月が終わろうとしていますが、韓国では2月中旬の旧正月以降が本格的な新年度のスタートとなります。そのお正月休みを前にようやく2018年ラインナップが出そろいました。そこで今年のおすすめ作品を紹介します。

※大手制作会社や、公営劇場は年間スケジュールを早々に決めて動くため、ほぼ予定は確定していますが、大学路の小劇場などで上演されるミュージカル、演劇は、長期スケジュールを事前に公開しないためラインナップに漏れている作品が多数あることをあらかじめご了承ください。

【ミュージカル】

2018年も昨年に引き続き新作は少なめ。しかし、大劇場ヒット作の再演タームが来た年となっており、人気作の再演が多いのが特徴です。

ODカンパニー2018年作品(左から『タイタニック』『ドクトル・ジバゴ』『マン・オブ・ラ・マンチャ』『ジキル&ハイド』『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』)

ライセンスミュージカルの新作はティム・バートンの同名映画が原作の『ビッグ・フィッシュ』と、映画『ジャイアント・ピーチ』や『チャーリーとチョコレート工場』で知られるロアルド・ダールの児童文学が原作の『マチルダ』が韓国初演となります。特に5歳の少女が主人公となる『マチルダ』は現在再演中の『ビリー・エリオット』をはじめ、英国ウエストエンドの人気作を韓国で上演し、着実に実績を残しているシンシカンパニーが制作するとあって、クオリティの高さは保証できると思います。一方『ビッグ・フィッシュ』は、『キンキーブーツ』『ボディーガード』と映画を舞台化した作品を精力的に上演しているCJ E&Mが制作。昨年日本版が上演されたようですが、原作映画のファンタジックな作品世界を、どう舞台に落とし込み、韓国の観客に見せてくれるのか楽しみです。

EMKミュージカルカンパニー2018年作品(左から『笑う男』『エリザベート』『ファントム』)

韓国創作ミュージカルの新作では『レッド・ブック』『笑う男』は必見です。
『レッド・ブック』は名作『女神さまが見ている』を生んだ、ハン・ジョンソク脚本家とイ・ソンヨン作曲家が再タッグを組んだ作品。“女性の性表現の解放”をテーマに、『女神さま~』同様に楽曲のバリエーションと独自のストーリー展開が群を抜いていた作品です。昨年、新作の創作を支援する「創作産室」の選定作としてショーケースとして上演済で、準新作的作品ですが、今年初めて長期本公演が行われます。
一方、『笑う男』は、韓国を代表するミュージカル制作会社EMKミュージカルカンパニーが、5年の準備期間を経て『マタ・ハリ』に継ぎ発表するオリジナル作品です。『レ・ミゼラブル』の原作者でもあるヴィクトル・ユーゴーの同名小説が原作。口が大きく裂かれて常に笑ったように見えるグウィンプレンを主人公に、彼の数奇な運命と当時の貴族社会を鋭く風刺した作品です。演出に『レベッカ』『マリー・アントワネット』などを手掛けたロバート・ヨハンソン、作曲フランク・ワイルドホーン、作詞ジャック・マーフィー、音楽監督キム・ムンジョン、美術オ・ピリョンと過去のEMK作品に参加した豪華スタッフが揃い、『マタ・ハリ』同様に海外での上演も視野に入れた作品になりそうです。

HJカルチャーの新作『ジョン・ドゥ』と『ザ・フィクション』キャスト写真

小劇場では『ファリネッリ』『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』など世界の偉人を取り上げた作品群で知られるHJカルチャーが、初めて韓国の偉人、世宗大王を主人公にした『1446』をはじめ、米映画『群衆』原作の『ジョン・ドゥ』、大邱ミュージカルフェスティバルから誕生した創作劇『ザ・フィクション』、イタリアの名バイオリニストを取り上げた『パガニーニ』など新作4本を上演予定で、他を圧倒しています。

6年ぶりの再演となる『ドクトル・ジバゴ』(©ODカンパニー)

再演作品のなかでは、リュ・ジョンハン、パク・ウンテ主演で6年ぶりに上演する『ドクトルジバゴ』。初演メンバーを筆頭に日本でも人気のキャストが揃った『三銃士 10周年記念公演』。2017年のミュージカル賞を総なめした『もしかしてハッピーエンディング』の脚本家・作曲家コンビによる同名映画原作『バンジージャンプする』の5年ぶりの再演も見逃せません。
ほかにも『マン・オブ・ラ・マンチャ』『ノートルダム・ド・パリ』『フランケンシュタイン』『ジキル&ハイド』『エリザベート』『ファントム』と、豪華キャストは必至の大作が目白押しです。

まだ発表されていない大学路の小劇場ミュージカルはどのような作品が上演が上演されるのか? 今後の情報解禁にもご注目ください。


【演劇】

公営劇場である国立劇団南山(ナムサン)芸術劇場や、韓国の2代企業メセナであるドゥサンアートセンターLGアートセンターを中心に、今年も興味深い作品が揃いました。
李明博、朴槿恵政権時代の「文化芸術人ブラックリスト」問題が明るみとなり、これまで大きな影響を受けていた演劇界は徐々にではありますが、作品や運営方法に風通しの良さを感じさせ始めています。
国立劇団は新しい芸術監督に劇団「白手狂夫(ぺクスカンブ)」を主宰するイ・ソンヨルを迎え、“シーズン団員”と呼ばれる専属俳優を一新しました。メンバーにはキム・ハン、チョン・ウォンジョ、イ・ジョンム、チュ・イニョンなど、過去数々の演劇に主演した実力派俳優も含まれており、彼らの活躍に期待が膨らみます。

国立劇団2018シーズン団員紹介映像(国立劇団公式YouTubeより)

一方、公営劇場でありながら、社会問題をテーマにした作品を積極的に上演してきた南山芸術劇場は、その矜持は保ちつつもより多彩な作品を上演しようとしています。両劇場ともに新人演出家、脚本家に上演の機会を与えて次世代演劇人を育てようという姿勢も見えます。
また、数年をかけて改装工事中の国立劇場は、通常は大劇場のヘオルム劇場で上演しているパンソリの芝居=唱劇(チャングク)2作を明洞芸術劇場を借りて上演します。アクセスしやすく、舞台も見やすい同劇場でこの機会に伝統演劇の世界に触れてみてはいかがでしょうか?

 

『アマデウス』に主演するチョ・ジョンソク(左)とキム・ジェウク(©Page 1)

『ネヴァー・ザ・シナー』ポスター(©ダルカンパニー)

一方、民営の制作会社作品のなかでは、やはりチョ・ジョンソク&キム・ジェウク主演の『アマデウス』が上半期の注目度ナンバー1と言えるでしょう。加えてファン・ジョンミン10年ぶりの演劇主演作『リチャード三世』、キム・サンジュン、キム・スンウなどが出演する『ミザリー』など、ドラマ、映画で活躍する人気俳優が出演する作品が人気を集めそうです。

またミュージカル『スリル・ミー』のモチーフとなった実在する殺人事件「レオポルト&ローブ事件」を取り上げた、演劇『RED』の脚本家ジョン・ローガン原作の『ネヴァー・ザ・シナー』はマニアならずとも必見。キャストには『スリル・ミー』や名作演劇『ヒストリー・ボーイズ』経験者など若手からベテランまで実力者ぞろいです。

韓国では最近日本原作の映画やドラマの制作が増えているのですが、舞台シーンでもその動向が見えます。韓国では村上春樹の人気を抜いたと言われる東野圭吾原作『ナミヤ雑貨店の奇跡』は、朗読ショーケースが好評でした。実際にセットを組んでの本公演ではどういう仕上がりになるのか注目です。ほかショーケースではチョン・ミドの熱演が話題を呼んだ『Bea』の本公演は再度彼女が主演した場合は見ておきたい一作です。そしてシンシカンパニーが今年唯一上演するコメディ『The Play That Goes Wrong』はキャスティングも含め、年末の注目作の一つとなりそうです。

2016年にチョン・ミド主演で上演された演劇『BEA』ハイライト映像(ウラン文化財団公式YouTube映像より)

演劇はミュージカルと比べると上演期間も短く、情報も多くはないため海外の観客にはハードルが高いかもしれませんが、意外と台詞を正確に聞き取れなくとも十分に楽しめます。さらに秀作に出会えたときに得られる感動や印象深さはミュージカルの比ではありません。俳優たちの高い演技力や息遣いの醍醐味を一人でも多くの方に直接劇場で体感してほしいと思います。

※2月8日まで公開しておりました、ダウンロード済みの年間ラインナップ表は個人の閲覧用にのみご利用ください。ブログやネット上での公開や転載、転用、商用利用は禁止です。

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