■ ディズニープラス 編■
ディズニープラスはその名の通りディズニーアニメや映画を筆頭に、マーベル、ピクサーにスター・ウォーズシリーズなどがすべて見放題。米国発の映像エンタテイメント好きには垂涎のコンテンツが揃っています。
韓ドラに関しては、『キミと僕の警察学校』を皮切りに、2022年からオリジナル作品を配信。ラブコメからクライムものまでジャンルも幅広いですが、特に近年のオリジナル作品は群を抜くクオリティ。加えて強力な独占配信作も増加中でラインナップが充実してきています。
昨年配信されるやいなや下半期韓ドラの話題を一気にさらったのが『ムービング』でした。各所で絶賛の嵐、韓国の配信コンテンツランキングサイト「Kinolights」では8週連続1位、年間総合ランキング1位を獲得していました。
2023年の韓ドラ全体を見ても、ディズニープラスの配信作品はクオリティ高かったんじゃないですかね? 『ムービング』以降のラインナップも良かったのでディズニープラスに新規入会して見たっていう韓ドラファンが多かったと思います。
昨年は韓国テレビドラマガイドOnlineで、ディズニープラスの配信作3本の出演者インタビューを担当させてもらったので、がっつり集中してドラマを見ましたが、やはり『ムービング』が圧倒的に面白かった。私は、リュ・スンボムが1話から登場して得意なキレのいいアクションを久々に見せてる、というだけでもうブチ上がりました(笑)
リュ・スンボムが演じたCIA要員のフランクは原作漫画にはないキャラだそうで。下の動画で原作者のカン・プルが兄のリュ・スンワン監督を通じて直接連絡してキャスティングしたと言っています。チョ・インソンにも直接話したらしくて、ひとりずつ丁寧にキャストを集めていったおかげか、役柄と俳優のシンクロ率が高いですよ。
チャ・テヒョンが演ってたポンゲマンの役もドラマ用に作ったキャラなんですよね。そうやって集めた各キャラクターのビハインドを1話ずつ明かしていって、全20話構成にしたっていう韓ドラのセオリーを覆した漫画的なエピソードの割り方が斬新だった。
カン・プルは、当初12話だった企画をそれでは出来ないと突っぱねたそうです。ディズニープラスを選んだのも、早送り再生機能がないからだとか。自作を映像化するにあたり、かなり慎重に作業していったみたいですよ。
最初に7話まで一度に公開したのも視聴者の興味を惹けて良かったと思います。毎回微妙に余韻を残すような終わり方をしてたので、1話ずつ公開だったらストレス溜まって仕方がなかっただろうな、と(笑)
そして8話以降からググッと話が動き出すんですよね。それまで描かれていた各キャラクターの伏線が一気に回収されていくので、毎週楽しみに見ていました。
コ・ユンジョンとイ・ジョンハの初恋エピソード。ハン・ヒョジュとチョ・インソンのロマンス……とメロ要素の加減もちょうど良くて、さらに親子愛、夫婦愛などヒューマニズム要素も入ってくる。内容てんこ盛りで韓国風に言うなら「総合贈答品セット(종합선물세트)」って感じですよ。
制作発表会では、ハン・ヒョジュが劇中同様にイ・ジョンハを息子みたいにフォローしていたのが微笑ましかったです。撮影中も実際にオンマ(ママ)、アドゥル(息子)と呼んでいたとか。最初は「ハン・ヒョジュがお母さん役?」 と思っていたんですけど杞憂でした。まさにお母さんだった。
世界的にもディズニープラスで最も視聴された韓国ドラマになったので、シーズン2を期待する声も多いです。韓国型ヒーローものをもっと作ろう! 的な盛り上がりも見せていますよね。
カン・プル原作・脚本の2作目となる『ライトショップ(原題)』がチュ・ジフンとパク・ボヨン主演で2024年中の配信確定しましたね。ミステリー作品だそうですが、どんな仕上がりになるのか楽しみです。
カン・プルはほかにもヒーローものをいくつか描いていて、『ムービング』には続編的な『ブリッジ』っていう作品があるんですよ。なので、シーズン2というよりもこの『ブリッジ』が映像化されるのでは? と予想しています。
『愛だと言って』はキム・ヨングァンとイ・ソンギョンというモデル出身の2人が、華やかなイメージを封印して影のある役柄を演じていたのが新鮮でした。演出は『ミョヌラギ わが嫁たちの物語』が好評だったイ・グァンヨンという女性監督。ちょっと引き気味に撮ったり、上から撮ったりする独特のカメラワークも興味深かったし、フィルターをかけて乾いた感じにした映像全体のトーンも良かった。たぶん『私の解放日誌』を好きな人は、この作品も好きだと思います。
『初対面だけど愛してます』の監督さんなので、キム・ヨングァンとは2度目の作品。すでに彼の良さを熟知していたんでしょうね。演じたドンジンのようにこんなしっとりと静かな役にもハマるんだ! という新鮮さもあって、魅せられました。彼はさりげなく相手役を引き立てることもできる俳優ですよね。
イ・ソンギョンが演じたウジュのように一見ツンツンして冷酷に見えるようなキャラクターを韓国ではよく「까칠하다(カチラダ/気難しい、不愛想)」と形容しますが、実は内面にものすごい優しさをもっている。突き放したいのに、ドンジンに近づいていくほど動揺が隠せなくなっていくウジュが何とも言えず切ないんですよ。
復讐から始まりますが、完全に愛の物語ですよね。傷、重荷を背負った男女が互いの存在のおかげで癒されていく、2人のことはもちろん、周囲の人々のことも、都合よく展開しない。心の揺れや様子を端折らずに繊細に描いてあるし、セリフも響きました。OSTもロイ・キムのやさしい歌声がしみました。
繊細な心にしみるラブストーリーと言えば『愛していると言ってくれ』もそうでしたね。チョン・ウソンが版権を買って自分で主演までして……と、相当な思い入れが伝わってくる。下に貼ったように、版権を獲得して15年以上も誰にも渡さないでくれと頼んでいたという原作脚本家の北川悦吏子さんのツイートを見て驚きました。
入院して暇だったので、Disney➕で「愛していると言ってくれ」韓国版1話を見た。泣いた。チェンウソンに手紙書こかな。15年(それ以上?)もの間、私に「愛していると言ってくれ」の原作を誰にも渡さないでくれ、と言い続けてくれた。生まれ変わった「愛していると言ってくれ」は静かで胸に迫る。私の…
— 北川悦吏子 (@halu1224) January 25, 2024
聴覚障がいをもつ役だから当然セリフはないけど、心の声のナレーションが入るのでチョン・ウソンのイケボがものすごく映えるんですよ。実は『パラサイト 半地下の家族』が記録を塗り替えるまで長いこと、日本での韓国映画興収1位って『私の頭の中の消しゴム』(2005年日本公開)だったんです。日本原作ものと相性がいいんでしょうね。あの頃に知ったチョン・ウソンの魅力、穏やかなオーラや、醸し出す色気をこのドラマで再び浴びてる気がします。
昔一度インタビューしたことあるんですけど、あの大きな目で、あまり瞬きもせずジッと相手を見て話されるんですよ。その時一緒に取材した人は完全KOされてました(笑)。彼が演じているジヌは言葉を発することができないので、ジッと見つめて目で訴える。見た者を虜にするあの眼差しをこのドラマで疑似体験できると思います(笑)
『愛だと言って』や『愛していると言ってくれ』は、現在主流のロマンス×サスペンス+αといったハイブリッド作、あれこれつめこんだ作品とは一線を画すものでした。時間もゆっくりと流れていく、刺激的な要素がない作品は貴重です。こういう風に作られた作品が生まれたことにも、すごく感謝しています。
昨年見たなかでは、ナム・ジュヒョクが兵役入隊前最後に出演した『ヴィジランテ』も面白かったです。ウェブトゥーン原作なんですが、原作を見るとなぜ彼が主人公にキャスティングされたのか分かると思います。イケメンキャラでめっちゃ似てるんですよ。
ナム・ジュヒョクって、これまで長身と甘いルックスを生かした役が多かったと思うんですけど、今作ではそういった要素をすべて封印しています。いつもは淡々とした佇まいの彼が、感情を爆発させて内面を吐露するようなシーンもあり、あ、こういう演技も出来るんだな、って彼の新境地を見た感じでした。
ユ・ジテと顔つき合わせて演技するときも全く引けを取らない迫力でした。ユ・ジテは自分と身長がほぼ同じで体格もいいナム・ジュヒョクがキャスティングされたことで、本気でトレーニングして身体を大きくしたと言っていました。
個人的にはイ・ジュニョクを再発見したドラマでした。インタビューのときに「チョ・ガンオクはめっちゃハイテンションなキャラですよね」って訊いたら「ちょうどこういうヘンな役をやりたかった」とノリノリで返してくれて。あ、おもろい人だなと(笑)。
改めて彼のフィルモグラフィーを調べたら多作で役柄も多様。実はカメレオン俳優だと今さらながら気づきました。
『リセット~運命をさかのぼる1年~』、『ダークホール-愛を奪う闇-』や『裸の消防士』など、刑事や消防士が似合う人なんですよね。『秘密の森』のような悪役でも光りますが、敏腕秘書役なんかもしっくりくる。役者としての柔軟性がハンパないというか、何をやらせても出来る人だと思います。
イ・ジュニョクは今年『秘密の森』のスピンオフドラマ『良いか悪いドンジェ』、ハン・ジミンと共演する『挨拶する仲』と主演ドラマが2作も控えているので、2024年下半期は大ブレイクするのでは? と予想しています。
今年に入って見た新作の中で、他を圧倒する面白さだったのが『殺し屋たちの店』でした。『調査官ク・ギョンイ』で完全にイ・ヨンエを食っていたキム・ヘジュンがまたしてもやってくれたというか、こういう役をやらせたら右に出る者はいない素晴らしさでした。イ・ドンウクが裏稼業の叔父さんをミステリアスに演じているのも素敵でした。
このドラマは小説原作なんですけど、韓国のディズニープラス公式YouTubeに、珍しく原作の小説家と監督が制作ビハインドを語る動画が公開されていて興味深かったです。このハードボイルドな物語を女性作家が書いているというのに驚いたし、監督は作家の前作を原作にしたドラマ『殺人者の買い物リスト』を2022年に制作していて、コラボ2作目なんですね。
特に男優は兵役を経てるからかな? と勝手に思ってるんですが(笑)、昔から韓国の俳優はガンアクションが上手いんですよね。ゴツいスナイパーたちが大小あらゆる銃器を打ちまくる! 加えてボブヘアの殺し屋ミンへ役クム・ヘナの動きも凄かった。ドローン兵器に四足歩行の犬型ロボットまで登場するアクションシーンの見せ方が面白くて監督の美学を感じたし、こういうバイオレンスシーンなら痛快なので大歓迎です。
ラスボス的に登場するチョ・ハンソンが久々にハマり役!って感じでした。名子役の代表格だったパク・チビンが、大人の俳優として一皮むけた演技を見せているのにも注目してほしいです。
ドラマを見ながら、打ち込みを多用したOSTが格好良いなぁと思っていたら、プロデューサーはなんと『D.P.』シリーズや『弱いヒーロー Class1』のOSTを手がけたプライマリーでした(納得)。インタビュー映像が公開されていたので音楽好きな人はチェックしてみてください。
私の最近のおすすめは『ワンダフルワールド』です。Netflixの『ザ・グローリー』のように「命がけの復讐」が去年までのスタンダードだとしたら、今年は「どう生き直すか」という段階に進んだんじゃないかなって思った作品です。愛する者を失った人々の絶望や痛みはもちろん、周囲の人々の姿や感情が丁寧に描かれている。私は、復讐と痛み、そして再生の物語として見届けました。
チャウヌが大ベテランのキム・ナムジュにどう対峙して演じるのか、キャスト発表時から気になっていて。どう隠しても溢れ出すイケメンオーラは漂っていたものの(笑)、最初の登場シーンからこの作品に賭ける気迫が伝わってきました。
私が「おぉ!」となったのは、ジャージャー麺の食べ方。ワイルドでタフな男の香りを漂わせていました。ワントーン下げた発声に、どんより曇った瞳。微笑むこともあるんですが、何か企みを秘めた顔でぞっとするんです。チャウヌの笑顔を怖いと思う日がくるとは! シリアス演技で開花した俳優チャウヌの進化をぜひ見てほしいです。
『ヴィンチェンツォ』の演出家キム・ヒウォンが手がけるミュージックラブストーリーの2作目『サウンドトラック #2』も個人的に好きな作品でした。今回は「別れた男女の再会」がテーマ。なぜ彼らが別れたか、そしてまた惹かれるか。好きだからこそ言えないこと、勝手に誤解して傷付いたり、成功への嫉妬や焦り、気持ちの揺れだったりが丁寧に描かれています。
『カーテンコール』、『エージェントなお仕事』でノ・サンヒョン気になってたんですよ。元カノに未練、いや、恋心ありありでもがく姿はかなり愛おしかったです。人に頼ることを極端に嫌うヒロインって韓ドラにわりと多いと思うんですけど、クム・セロクが演じたヒョンソもそうで。もっと人を信じて甘えてみたらいいのに。なんて思いながら見守っていました。
スホが才能を見出すミュージシャン、K役のソン・ジョンヒョクいいなぁと思ってたら、彼自身ネットでの活動から発掘されてデビューした歌手だと知って納得。ヌナを惑わす年下男ポジションがハマっていました。『サウンドトラック』というタイトルだけに、劇中のBGMにも注力してあって、ドラマ映像を使ったMVが韓国ディズニープラスのYouTubeで公開されているので要チェックです!
最後に、いま話題沸騰中の最新作が、韓国を代表する名優ソン・ガンホがついにドラマ初主演した『サムシクおじさん』ですね。Netflixではソル・ギョングが主演する『旋風』も配信予定ですし、今年は映画界の大御所俳優がドラマに次々と参入しています。この流れは2022年にチェ・ミンシクが『カジノ』に主演したのが大きな契機かと。配信系作品の台頭で、映画とドラマの境界がなくなってきたことと、新作がなかなか撮れなくなっている映画界の不況も背景にあると思います。
「ドラマは初なので新人俳優のつもりで挑んだ」というソン・ガンホのコメントがニュースになっていましたね。
休戦後の混沌とした時代に、国を豊かにしたいと切望する2人の男の熱き物語。サムシクおじさんと共闘する若き政治家キム・サンをピョン・ヨハンが演じています。久しぶりにドラマで骨太なイメージのピョン・ヨハンが見られるのも嬉しいですね。
最初に5話公開されましたが、政界、経済界と軍部、そして裏社会とが密接に絡み合って新キャラが次々と登場するので、頭のなかで関係性を整理しながら見た感じでした。1950~60年代という時代背景についても、少し前知識を入れておくと見え方が変わるかも? 地上波の時代劇みたいに、顔写真入りで人物相関図作ってくれると分かりやすいんだけどな……と思ってたらキター! 韓国公式SNSにUPされてました! やはり韓ドラファンの望むことは同じなんだなと思いました(笑)
上↑のポスターに並ぶメインキャスト以外に、多数登場する助演俳優の顔ぶれにも感服しました。序盤だけでもパク・ヒョックォン、ムン・ジョンウォン、ノ・ジェウォン、イ・ガソプ、チ・ヒョンジュンなど、派手ではありませんが確実に演技が上手くて存在感ある俳優がぞろぞろ出てくる。今後のエピソードにどんな名優が出てくるかも楽しみに見ていきたいと思っています。
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