COLUMN

木村典子の「お隣の演劇」Vol.4

木村典子の「お隣の演劇」Vol.4

 

鄭義信ワールドの魅力『歌うシャイロック』

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「歌うシャイロック」シーン写真より シャイロック役を演じたのは演劇、ミュージカルと多くの舞台に立ってきたパク・ギリュン  写真提供:国立劇団

4月5日から20日まで春満開の南山の国立劇場で、鄭義信演出『歌うシャイロック』(原作/シェイクスピア「ベニスの商人」)が公演されました。1年に2~3作品は必ず韓国でも公演される鄭義信さんの作品は、韓国でも多くの観客を得、鄭義信ワールドに魅了されたファンもいます。私が見に行った日も500席の客席は満席!

『歌うシャイロック』は、『赤道直下のマクベス』(ソン・ジンチェク演出)に続く韓国での新作。シェイクスピア誕生450周年を記念して、国立劇団が製作した作品です。「ベニスの商人」はご存知のように、友人バサーニオの結婚のためにユダヤ人の金貸しシャイロックから金を借りた貿易商アントーニオは、期日までに返済できない時は肉1ポンドを与えると契約します。しかし、財産を積んだアントーニオの船は難破し、全財産を失った彼はシャイロックに金を返すことができなくなってしまいます。そんな中、シャイロックの娘ジェシカはロレンゾと駆け落ちします。友人の助けで富豪の娘ポーシャと結婚したバサーニオは、この知らせを聞き、金を手に裁判に駆けつけますが、シャイロックは頑なにアントニオの肉1ポンドを要求。そこに若い法学者に扮したポーシャが登場し、肉は切り取ってもいいが、一滴の血でも流せば契約違反であると裁判を収拾します。シャイロックはならば金を受け取ると申し出ますが一度拒絶しているため認められず、アントーニオの命を奪おうとした罪で全財産を没収されるという話です。

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「歌うシャイロック」 写真提供:国立劇団

原作「ベニスの商人」はアントーニオのこと。しかし、鄭義信さんはシャイロックに焦点を当てて『歌うシャイロック』として音楽劇に脚色しました。とはいえ、シャイロックに焦点を当てながらも、鄭義信ワールドの魅力のひとつであるひとりひとりの登場人物の悲喜劇こもごもの人生を描き出し、業突く張りな金貸しシャイロックも含め登場するすべての人々が悲しくも愛おしい人間たちとして観客に伝わってきました。実は私、中学生の頃にはじめて「ベニスの商人」を読んで、まったく納得できませんでした。(その後は一度も読んでいませんが)でも、鄭義信版「ベニスの商人」は、誰もがそれぞれ事情を抱え、それぞれの事情のなかで人生の悲喜劇が生まれ、それらが絡み合い、私たちの日常を作っているのだなと妙に納得。これが鄭義信ワールドなのでしょう。

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イ・ジェグン演じる“ヒゲの女中”ネリッサ(写真中)をはじめ、ポーシャの家に仕えるメイドはみな男性が演じて笑いを誘った。 写真提供:国立劇団

今年はシェイクスピア誕生450周年ということで、韓国では続々とシェイクスピア作品が上演されます。言葉はわからなくとも、シェイクスピアの作品ならどんな作品か知っている方も多いと思います。旅行にシェイクスピア観劇を組み込むのもをいいかもしれません。

「テンペスト」写真提供:国立劇団

「テンペスト」写真提供:国立劇団

 ■国立劇団『テンペスト』(キム・ドンヒョン演出)⇒公式サイト
5月9日~25日 国立劇場タルオルム劇場 出演:オ・ヨンス、オ・ダルスほか
■明洞芸術劇場『ジュリアス・シーザー』(キム・グァンボ演出)⇒公式サイト
5月21日~6月15日 明洞芸術劇場 出演:ソン・ジュンハク、ユン・サンファほか
■シェイクスピア演劇祭⇒公式サイト
6月20日~7月20日 忠武アートホール 中劇場ブラック
・7月1日~8日 劇団旅行者『ロミオとジュリエット』(ヤン・ジョンウン演出)
・7月12日~20日 劇団76団&演戯団コリペ『狂ったリア2』

 

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土田真樹の「エーガな日々」Vol.3

土田真樹の「エーガな日々」Vol.3

 

「今、韓国インディーズが面白い」

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映画『萬神』試写会より(写真左)から、パク・チャンギョン監督、ムン・ソリ、キム・グムファ、リュ・ヒョンギョン、キム・セロン

タイトルのごとく、ここ最近劇場公開されている韓国インディーズが熱い。イタリアのネオレアリズモ、フランスのヌーベルヴァーグ、ニューヨークを中心としたアメリカン・ニューシネマなどなど、いつも新たな波はインディーズ映画からやってきた。
ここでなぜ、韓国インディーズが熱いかというと、商業映画とのボーダレス化が進んできたことと、商業映画では扱いそうなテーマや視点から実験とも違う、ある種の冒険的作品が登場してきたことによる。

韓国におけるインディーズ映画といえば、民主化運動の啓蒙手段であり、大学の教室や労働組合の集会所などでひっそりと上映されてきた。いわゆる386世代(注)の監督には民主化啓蒙映画出身の監督も少なくない。

彼らは韓国映画界の寵児となり、韓国映画界に新たなうねりを起こしたが、いかんせん韓国の映画人のライフサイクルは短い。韓国の撮影現場に行ってみると、若いスタッフが多いことに驚く。ほとんどが20代で、30代だとちらほらだ。で、彼らが年を重ねてからの行き場といえば、監督や撮影監督など撮影現場の管理職的なポストにある者は、大学の講師となって後輩育成に邁進する。
一部の売れっ子監督を除いては大手の映画会社から声をかけられることもなく、現役にこだわるのであればインディーズに身を置くしかないのである。

『南部軍』や『ホワイトバッジ』などの戦争大作映画で一世を風靡したチョン・ジヨン監督らが第一線から退いて久しい。冤罪事件をテーマにチョン・ジヨン監督がアン・ソンギ主演で撮った『折れた矢』は、インディーズ映画ながらも数々の映画賞を受賞し、チョン・ジヨンの復活とまで言われた。その後も社会問題に切り込んだ作品を監督、および制作し続けており、すっかり社会派映画人のイメージが定着した感がある。また、イ・ジャンホ監督はオ・グァンノクを主演に迎え、19年ぶりの新作長編映画『視線』を監督し、健在ぶりをアピールしていた。
人間国宝となったムーダン(巫堂)キム・クムファの人生を描いた『萬神』は、ドキュメンタリーと再現フィルムが混在したユニークな作品。子供時代、少女時代、中年時代をそれぞれ、キム・セロン、リュ・ヒョンギョン、ムン・ソリが演じている。観客動員数1万人を超えればヒット作と言われる韓国インディーズにあって、公開3週目で3万人を超えるヒットとなった。

昏睡状態に陥って数十年間眠っていた売れない小説家が、彼が目覚めたときには有名作家になってたというエピソードを描いた『ロシアン小説』、花札の出目の数字が韓国の成人ならば誰でも持っている住民登録番号と一致した者が死ぬ『ゴーストップ殺人』など、インディーズならではともいえるユニークな作品が続々と発表されている。女子高生レイプ事件を描き、海外の映画祭で高評価を得て数々の賞を受賞した『ハン・ゴンジュ』も最近劇場公開され、話題を集めている。

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映画『ハン・ゴンジュ』試写会より (写真左から)キム・ソヨン、チョン・ウヒ、チョン・インソン、イ・スジン監督

既存世代の返り咲きと新しい才能の台頭が韓国インディーズを活気づかせ、韓国映画界全体に少なくないシナジー効果を与えている。インディーズという小さな波が、やがて上記したようなうねりに変わっていく時を僕たちは生きている。

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映画『ゴーストップ殺人』記者会見より (写真左から)イ・スンジュン、クォン・ナムヒ、ソン・ヨンジェ、キム・ジュングォン監督

注:1990年後半に監督デビューした、当時30代で1980年代に大学に入学した1960年代生まれの映画監督のことを指す。インテル製のCPUである386プロセッサーにちなんだ呼び名でもあり、現在はほとんどの監督が40代となった今、486世代とも呼ばれるようになった、中には50代となった者もおり、ペンティアム世代(586世代)とも呼ばれるとか。いずれにしろ、韓国映画界は中堅監督が主流を成している。

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木村典子の「お隣の演劇」Vol.2

木村典子の「お隣の演劇」Vol.2

 

 「日本現代戯曲リーディング」

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本谷有紀子作・キム・ハンネ演出「乱暴と待機」公演の様子

いつの間にか黄色のケナリが咲き始め、春の気配。演劇界もこれから秋までが各種演劇フェスティバルも開催されシーズンに突入。今年はどんな話題作が登場するのか楽しみです。

IMG_5086aその前に、2月21日から23日まで明洞芸術劇場で開催された『日本現代戯曲リーディング』のご報告!韓日演劇交流協議会(会長キム・ガンポ)が主催するこの交流事業は、今年第6回を迎えました。2002年、日本側のカウンターパートナーである日韓演劇交流センターと共に「韓国現代戯曲リーディングVol.1」を開催以来12年間、隔年で相手国の作家と作品を紹介してきました。初期には“戯曲リーディング”という公演スタイルが普及していなかったこともあり、観客が少なく関係者は苦労もしましたが、今では明洞芸術劇場が満席になるほどです。

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観客のQ&Aに応える、「ぬけがら」の作者、佃典彦(写真右から2人目)と演出家リュ・ジュヨン(同3人目)

今年は、本谷有希子『乱暴と待機』(キム・ハンネ演出)、前田司郎『偉大なる生活の冒険』(キム・ジェヨプ演出)、佃典彦『ぬけがら』(リュ・ジュヨン演出)と、今注目される作家の作品がリーディング公演され、宮本研『美しきものの伝説』、藤田傳『とりあえずの死』を含めた「現代日本戯曲集6」(演劇と人間)が出版されました。

今注目されている若手演出家たちが演出したリーディング公演は、映像を使ったものから観客を湧かせるパフォーマンスを導入したものまで、ただ耳で聞くだけではない、観客の想像力を刺激するもので、作品とリーディング公演の面白さを伝えてくれました。毎回のことですが、日本から参加した作家たちが驚くのは、韓国の観客の反応のよさと積極的さです。劇場で演劇をともに作り上げる観客の姿勢は、韓国演劇にとって大きな力であり、大きな財産です。これをあらたえて痛感した時間でもありました。
来年1月には、日本で韓国の若手作家3名の話題作がリーディング公演されます。ぜひ、韓国演劇の今を見に、足を運んでみてください。

「韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.7」
2015年1月13日(火)~18日(日)
会場:世田谷パブリックシアター/シアタートラム
日韓演劇交流センター http://www.tckj.org/

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さいきいずみの「韓劇日誌」Vol.3

さいきいずみの「韓劇日誌」Vol.3

 

「実力派俳優集結!AMTガラコンサート」

【風月主】

2013年6月21日~7月21日までAMTで上演された「風月主」

ギリギリの紹介になりましたが明日25日に「アミューズ・ミュージカル・シアター(AMT)」で韓国ミュージカル俳優によるガラコンサートが開催されます。

1年前の4月に幕開けした同劇場では1作目の「カフェ・イン~愛は偽り?!~」を皮切りに韓国の小劇場ミュージカルを全8本上演。このコンサートが劇場のクロージングイベントでもあります。昨年開幕してからずっと、一度帰国して劇場に見に行きたいな~と思っていたのですがタイミング合わず、結局観劇は叶いませんでした(残念ㅠㅠ)。当サイトをご覧いただいている方のなかにはAMTで初めて韓国ミュージカルを見て、いわゆる“韓流スター”だけではない、実力ある“舞台俳優”が存在することを知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか? AMTでの上演中は関係者やファンの方から賛否両論、さまざまな話を聞いていましたが、個人的には有名なドラマや映画には出ていなくても、無限に存在する個性豊かで確かな演技力をもつ舞台俳優たちの魅力を日本で体感する機会があったことだけでも、意義はあったと思っています。AMTはクローズしてしまいますが、アミューズをはじめ日本の公演関係者の方々には今後も継続して韓国作品を日本で上演する機会を作っていただければうれしいな、と思います。

2キム・ジェボム

 「AMTガラコンサート」に出演するのは、いままさに小劇場のメッカ大学路で活躍中の人気俳優たち。「カフェ・イン」「兄弟は勇敢だった」に主演したキム・ドヒョンさんは、現在話題の創作ミュージカル「シャーロック・ホームズ2:ブラッディゲーム」でホームズ役を演じています。シリアスからコメディまでこなせるオールラウンドプレーヤーのドヒョンさん、実は演劇界の大御所俳優だった故キム・ドンフンを父に、声優を母にもつ演技をするために生まれてきたようなサラブレッドなんですよ。そして「風月主」「兄弟は勇敢だった」に主演したキム・ジェボムさんはスマートで中性的なルックスと安定した表現力が魅力。いつも複数作掛け持ち出演が多いジェボムさん、演劇「悪い磁石」を終えたあと、いまは珍しくしばしお休み中ですが、次も注目作への出演は確実です。「風月主」で真聖女王を演じたキム・ジヒョンさんは「バンジージャンプする」のヒロインなど、清楚なイメージの役柄が多い方ですが、オムニバス演劇「オールモスト・メイン」では自己中キャラを実にうまく演じていて驚かされました。素のジヒョンさんの姿が見られるコンサートは貴重かもしれません。そしてスペシャルゲストで登場するソン・ドゥソプさん! AMTで上演した作品の多くに過去主演していたにもかかわらず、日本公演には残念ながら参加できていなかった彼がついに初来日。甘い歌声と、昔ダンスをやっていただけあって身のこなしが美しい俳優さんです。“殺人微笑”と呼んでもいいくらいに優しそうな笑顔が素敵なので、コンサートに参加される方は「堕ち」ないように注意してくださいね(笑)。

7キム・ナムホ

 「僕らのイケメン青果店」に出演していたカン・インヨンさんと「恋の駆け引きの誕生」に出演していたユク・ヒョンウクさんは2006年に上演された韓国版の「THE CONVOY SHOW-ATOM」に出演していたんですよ。実はもの凄いダンスの実力を持つ2人、コンサートでも披露してくれるといいですね。キム・ナムホさんは先日まで新大久保で上演していた「僕らのイケメン青果店」に主演していましたが、普段は末っ子キャラなど可愛いい役が多い方です。4月11日から人気ドラマを舞台化したミュージカル「フルハウス」に出演されるので、また明るく楽しいキャラクターを演じてくれそうです。チョン・ソンウさんは現在自身初となる演劇「M.Butterfly」で主人公ルネを誘惑するソン・リリン役で美しい女装姿を披露しています。これまでミュージカルへの出演が多かったソンウさんですが、本当は演劇をやりたいと言っていたので、今後はさらに活動の幅を広げていきそうです。最後に、ピアニストのシン・ジェヨンさんは昨年「スリル・ミー」の伴奏をしていた“第3の出演者”のひとり。演奏のさじ加減が重要な「スリル・ミー」は俳優のみならずピアニストで見に行くマニアファンもいて、サイン会では俳優と並んで出席するほど人気があります。

さてさて、長くなりましたがAMTはこれまでと同様、当日券5000円の「テハンノシート」も用意されているので、当日駆けつけても大丈夫だと思います。韓国国内でもこれだけのメンバーが揃うコンサートはなかなか難しいと思いますので、この貴重な機会を逃さず見に行ってほしいと思います。

2013年7月30日~9月1日に上演された「兄弟は勇敢だった?!」

2013年7月30日~9月1日に上演された「兄弟は勇敢だった?!」

「AMTガラコンサート」 ⇒公演詳細

3月25日(火) 16時/20時(全2回公演)

会場:アミューズ・ミュージカル・シアター(⇒アクセス)

S席10000円、テハンノシート5000円(当日券のみ) ※全席指定、税込、未就学児童入場不可

 

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さいきいずみの「韓劇日誌」Vol.2

さいきいずみの「韓劇日誌」Vol.2

 

「2014春 注目の新作韓ドラ<地上波編>」

SBS月火ドラマ「神の贈り物-14日」ハイライト映像(SBS公式YouTubeチャンネルより)

韓国ではいま、春ドラマの改変時期。すでに3月上旬から地上波を中心に新作が次々と始まっていますが、いやぁ~もう、気が付けばサスペンスドラマだらけですね(笑)。

韓劇.comとして注目したいのは、ミュージカル界のカリスマ俳優チョ・スンウのテレビドラマ2作目となるSBS月火ドラマ「神の贈り物-14日」です……が、実はこの作品、「君の声が聞こえる」で2013年SBS演技大賞まで獲り、ただいま公私ともに絶好調のイ・ボヨン主演で、物語も彼女を中心に進みます。イ・ボヨン扮する放送作家スヒョンの娘セッピョルの誘拐事件が発生。結局娘は死体で発見され、スヒョンはその発見現場である池に飛び込み自殺を図ろうとします。時同じくして、探偵のキ・ドンチャン(チョ・スンウ)がやくざによって池に沈められ、死刑囚だったドンチャンの兄の死刑が執行。そこで魂の奇跡が起き、事件発生の14日前に戻るのです。(前フリ長い~!)

現時点で4話まで放送が終わり、ストーリーの背景や伏線を説明し終え、14日後の記憶があるスヒョンとドンチャンが、事件を未然に防ごうと動きはじめたところです。チョ・スンウの演技が見たい人(私ですが^^)には物足りない露出具合で、名優がある意味贅沢な使われ方をしています。「一枝梅~イルジメ」のチェ・ラン脚本家が6年ぶりに執筆する新作だけに、今後の展開には期待したいですが、果たして?

SBS水木ドラマ「3days」ハイライト映像(SBS公式YouTubeチャンネルより)

また、SBSはパク・ユチョン主演で水木ドラマ「3days」を放送中。失踪した大統領を救おうと奮闘する警護員の活躍を描く作品で、つまりユチョンは韓国のキーファー・サザーランドa.k.a「24」ジャック・バウアーなワケです(笑)。脚本のキム・ウニはパク・シニャン主演の「サイン」やソ・ジソブ主演「ファントム」と欧米のクライムドラマを彷彿とさせる作品でスマッシュヒットを飛ばした売れっ子作家。前2作がお好きな方は作品のトーンが似ているので楽しめるかと思います。それにしても作品ごとに俳優としてどんどん凄くなっていくユチョンに感心。そしてヒロインのパク・ハソンが化粧っ気のない巡査役を演じ、女優として新境地を見せているのがかなり良いですよ。

この2大話題作に、KBS2で放送中のユン・ゲサンハン・ジヘ主演「太陽がいっぱい」も、4月からKBS2水木ドラマ枠で放送のキム・ガンウオム・ギジュン出演の「ゴールデンクロス」もサスペンスタッチの復讐劇です。こうしたサスペンス作品が増えてきたのは「3days」で大統領を演じているソン・ヒョンジュが2012年に主演した「追撃者-ザ・チェイサー」が当たってから。ただ、サスペンス作品の弱点は欠かさず放送を見ないと話についていけないことで、同時期に似た作品が集中するとクオリティの差が際立ち、よほど面白くないと重い内容の作品を見続けるには忍耐力が必要になってくるんですよね。加えて特に日本では、ドラマの主な視聴者層である女性にはあまりウケないというのも悩ましいところです。

 今後放送が始まる作品のなかで個人的に期待している作品をいくつか紹介します。

「神の贈り物-14日」の後続で4月下旬から放送予定のSBS月火ドラマ「ドクター異邦人(仮)」は脱北した天才医師が韓国の病院に勤務するストーリーだそうで、新ジャンルの医療ドラマとなるか? 主演にいまをときめくチョ・ジョンソク×「主君の太陽」「シティハンター」のチン・ヒョク監督ということで、ヒットは堅いですね。

4月14日からKBS2で始まる月火ドラマ「ビックマン」は昨年SBSの「金の化身」でさらなる評価を得たカン・ジファンが再び挑む復讐劇。共演に、近年ますます安定した演技が光るチェ・ダニエルと「君の声が聞こえる」「秘密」で好演して株を上げたイ・ダヒと、派手ではないですが万全の布陣で面白いドラマになりそうです。

4月下旬放送スタート予定のMBC水木ドラマ「改過遷善(かいかせんぜん/韓国語では개과천선 ケグァチョンソン)(仮)」は「ゴールデンタイム」「愛の選択~産婦人科の女医~」とヒューマンドラマの良作を生んでいるチェ・ヒラ脚本家の新作。現在、キム・ミョンミンが出演を検討中というこのドラマは、冷酷な弁護士だった主人公が事故で記憶喪失となり、かつて所属していた弁護士事務所と対立することになるという。まさにタイトル通り“過ちを認めて善に還る”物語のようです。また、 5月スタート予定のイ・ボムス主演のMBC月火ドラマ「トライアングル(仮)」には、映画『弁護人』で破格の演技を披露したZE:Aシワンの出演が決まり、俳優としてステップアップできるか注目です。

個人的には、最近ドラマはもっぱらケーブルテレビチャンネルの作品にハマるものが多いのですが、春の新作も興味をひかれるものが多数。ケーブルドラマについてはまた後日別記事で紹介したいと思います。

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土田真樹の「エーガな日々」Vol.2

土田真樹の「エーガな日々」Vol.2

 

「ゆうばりファンタに愛されたミューズ、キム・コッピ」

OLYMPUS DIGITAL CAMERAここ数年、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭(以下、ゆうばりファンタ)に毎年参加しているキム・コッピ。
彼女の知名度を高めたのは、ヤン・イクチュン監督作品『息もできない』であるが、ゆうばりファンタが彼女の映画人生を変えたといって過言ではない。演技力の高さとピュアな癒し系ともいえる美貌に魅了された日本の映画関係者は少なくない。KレコードのYプロデューサーもそんなひとり。筆者のところに、彼女の連絡先を知りたいと連絡が来たのが3年前。その縁は『クソすばらしいこの世界』(2013年 監督・脚本/朝倉加葉子 ⇒公式サイト)で結実した。
そして、今年は『グレイトフルデッド』(2013年 監督・脚本/内田英治 ⇒作品情報)を引っさげてゆうばりに帰ってきた。『グレイトフルデッド』は、超高齢化社会というズシリと重いテーマを背景に、孤独な老人たちを観察するという趣味を持つ“孤独ウォッチャー”の女。人生に失望し、今まさに孤独死をを迎えようとする老人。そんなふたりが繰り広げる破壊力満点の愛憎劇であるが、キム・コッピ演じるスヨンは、老人たちの家を訪ねて話を聞くテラピーのボランティア。しかしながら、ふたりの愛憎劇に巻き込まれてしまう不運な韓国人女性である。
彼女に出演を決めた理由を聞くと「内田監督から会いたいと連絡があり、韓国で会ったのですが、そのときは具体的な話は出なかったのですが、『君を僕の映画に出演して欲しい』と口説かれたのは覚えています」と、内田英治監督からの積極的なアプローチがあったという。
出演が決まり、スヨンの役作りで苦労した点を問うと、特になかったという「スヨンは他人に愛を分かつ慈愛に満ちた女性です。ボランティア活動に共感する気持ちもありますし、最大限自分の中にあるものを引き出そうとしました」と等身大で演じられたと語った。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAところで、近年立て続けに日本映画に出演しているキム・コッピだが、日韓の映画作りの違いをどのように感じているのだろうか。「映画作りは、日本も韓国も特に違いを感じることはありません。やはり違いは作品によってですね。内田監督は役者に一任して、自分から演技指導をしません。塩見役の笹野高史さんとのやり取りは自分たちで考えながら演じました」と、ベテラン役者同士がわかる阿吽の呼吸があった。「笹野さん、撮影の合間は、いつも最新スマートフォンをいじっているんです。あのお年でIT機器を使いこなしているのはすごいなと思いました(笑)」と感心しきりだった。

今や日本映画界のホラークィーンの座を着々と固めつつあるが、ホラー映画にこだわる理由について「ゆうばりで会った映画関係者からオファーをもらうので、そんな作品ばかりなんです。もちろん、違ったジャンルの映画もやってみたいですよ」と笑っていたのが印象的だった。
キム・コッピの今度の活動が気になるところだが、日本映画だけでなく韓国映画もラインナップされている。まずは、今年の秋にはキム・ドンヨン監督の『嘘(거짓말)』が公開を控えており、香港で撮影するドイツ映画への出演も決まっている。座右の銘は「あるがままに」。向上心よりも、今の自分が好きだ。これからも自然体の演技で世界の映画監督を魅了し続けるのだろう。

木村典子の「お隣の演劇」Vol.1 

木村典子の「お隣の演劇」Vol.1 

 

「2013韓国演劇プレイバック」

「アリバイ年代記」 国立劇団&劇団ドリームプレイ(作/演出キム・ジェヨプ) 写真提供/国立劇団、撮影/パク・ジョンミョン

「アリバイ年代記」
国立劇団&劇団ドリームプレイ(作/演出キム・ジェヨプ)
写真提供/国立劇団、撮影/パク・ジョンミョン

今年も面白い芝居に出会えますように!と願いつつ、2013年韓国演劇界を振り返ってみたいと思います。毎年年末になると、各種演劇賞が発表されますが、これら受賞作に注目すれば、翌年活躍する劇団や演劇人の顔が見えてきます。

(以下、公演タイトルのリンクは公式サイトおよびPlay DBの作品紹介ページに飛びます)

月刊『韓国演劇』(韓国演劇協会刊)が選ぶ「2013公演ベスト7」

<演劇部門>

<再演部門>

<海外公演部門>

  • ロシア・チェーホフ・フェスティバル『テンペスト』 <템페스트>

韓国演劇評論家協会主催の「2013今年のベスト3」

この中でも、圧倒的な支持で注目されたのが『アリバイ年代記』と作/演出のキム・ジェヨプ(43)です。この作品は、作家が父と兄、そして自分、家族の物語と歴史を淡々と描いた秀作です。1930年植民地時代に日本で生まれて教育を受け、祖国に戻り、1955年定年になるまで大邱中央高校で数学教師として勤めた父キム・テヨンをドキュメンタリー的に回想しつつ、父親の年代記を通じて韓国近現代史の暗部が告白されていきます。丁寧に深く個人の人生を掘り下げることで歴史を描き出す手法は、韓国演劇における政治劇に新しい可能性を見せたと評価されました。

そして、もう一本注目されたのが1977年に旗揚げされ今も話題作を公演し続けている劇団演友(ヨヌ)舞台『七軒梅』(イ・ヤング作、ムン・サンファ演出)。米軍キャンプ近くの‘基地村’のクラブで働いていた七人の女性たちが年をとって七つの小さな部屋を借りて姉妹のように同居する物語を通して、‘基地村’に象徴される不条理な社会構造と不条理さの中で生きるしかないそれぞれの人生を描いています。

韓国演劇の面白さは何か?と聞かれたら、上記の二作品のように市井の人々の中にあるそれぞれのドラマとそこから韓国の社会や歴史が見えてくる点だと答えるでしょう。ここ数年、演劇界の停滞が指摘されてきた中、四十代の演出家たちが韓国演劇の面白さを再認識させてくれた2013年でした。今年も期待したいと思います。

mozart【おまけ】韓国演劇評論家協会が主催する「今年のベスト3」の授賞式は、大学路・アルコ芸術劇場小劇場の向かいにある「ギャラリーカフェ・モーツアルト」で、評論家と演劇人が集まり、まるで小さな忘年会のようにアットホームな雰囲気でおこなわれています。「モーツアルト」は、最近コーヒーチェーン店が増えた大学路で古くからある隠れ家的な喫茶店。大学路の喧騒に疲れたら、クラシック音楽が流れるここでで静かに一息つくのもいいですよ。私のオススメは「しょうが茶」です。

ギャラリーカフェ「モーツァルト」(갤러리카페 모짜르트)

住所:ソウル市鍾路区大学路8街道119(서울특별시 종로구 대학로8가길 119 )

地図: NAVER地図

営業時間:12:00~22:00(月曜休業)

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さいきいずみの「韓劇日誌」Vol.1

さいきいずみの「韓劇日誌」Vol.1

 

「何見る!? 2014韓国ミュージカル」

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豪華キャストが勢ぞろい!ミュージカル「フランケンシュタイン」

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Facebookでは先行公開しておりました、今年の韓国ミュージカルラインナップです。画像をダウンロードして今年の観劇計画に役立てていただければと思います。

※無断転載、商用利用はご遠慮ください。また、表中の日程は確定したものではありませんのでご注意ください。

2013年に比べると作品数減。大型作品の新作は数えるほどしかありません。海外ライセンスの新作はEMKの「太陽王」「マリー・アントワネット」と、フランス王宮ものが目立っている一方、「プリシラ」「キンキーブーツ」というドラァグクイーンが主人公の作品が面白そうです。今年は「ヘドウィグ」「ラ・カージュ」の再演もありますので、何気に“綺麗なお兄さん(オネエさん?)”がたくさん観れる1年ですね。

韓国オリジナル作品は何と言っても「フランケンシュタイン」がキャスティング、制作規模ともに群を抜いた豪華さです。あとは作品自体のクオリティが高ければ、韓国から海外に向けて本格発信できる大型ミュージカルの先駆となれるでしょう。中、小劇場作品では「シャーロック・ホームズ2~ブラッディ・ゲーム」「共同警備区域JSA」は必見作。「~ホームズ」はパート1の日本版が2月に上演されたのでご覧になった方も多いはず。パート2は“切り裂きジャック”の話がベースになっています。「~JSA」は昨年のトライアル公演を好評に終え、劇場サイズを格上げして早くも本公演化。予習したい方は舞台版とは若干違いますが、イ・ビョンホン、ソン・ガンホらが主演した、パク・チャヌク監督の映画「JSA」(2000年)を観てお出かけください。

2014公演ラインナップmusical2再演作品では「スウィーニー・トッド」がもっともホットな話題を提供しています。初めて韓国ミュージカルの演出を手掛ける宮本亜門さんが、オーディションを実施し、「やはり声が生半可じゃない!」と韓国俳優を絶賛するツイートをされるほど。豪華キャスト発表を楽しみにしておきましょう。

そして、10年ぶりの「ブラッド・ブラザーズ」、6年ぶりの「ギャンブラー」(偶然2作とも過去にイ・ゴンミョンさんが出演)や、5年ぶりの「思春期」、かつてはこの作品がMミュージカルの代表作だった「愛は雨に乗って~サ・ビ・タ」が3年ぶりにカムバック、など久々の再演作品も気になります。また、昨年から制作予定に入っていた「嫌われ松子の一生」や今年新たにラインナップに入ってきた「ナミヤ雑貨店の奇蹟」、そして2年ぶりに再演する「深夜食堂」など、日本原作の作品は、ストーリーをご存知の方も多いと思いますので、韓国語のセリフがまだ聞き取れなくても楽しめるのではないかと思います。

すでにリピーターの方も多いですが、韓国ミュージカルは情熱的な俳優とノリの良い観客たちと一緒に楽しめる本場韓国で観るのが断然楽しいです。まだ韓劇デビューしていない方は、思い切って飛んでいらっしゃることをおすすめします!

 

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土田真樹の「エーガな日々」Vol.1

土田真樹の「エーガな日々」Vol.1

 

「映画女優はアラサー全盛時代」

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映画「朝鮮美女三銃士」(韓国で2014年1月29日公開)に主演した、(写真左から)ガイン(Brown Eyed Girls)、ハ・ジウォン、カン・イェウォン ©Maki Tsuchida

長い不況に喘いできた韓国映画界だが、2013年はソン・ガンホ主演の『スノーピアサー』『観相師』『弁護人』が大ヒット。他にも多くのスマッシュヒット作品が登場したが、そのほとんどが男優主演の作品であり、主演とは名乗っているものの、女優は男優の当て馬、ヒロイン的な扱いがほとんどであり、女優が単独主演と呼べるのは、『かくれんぼ』のムン・ジョンヒくらいのものだ。

男優の影にあって、注目度がイマイチ劣る女優陣だが、いやいやそんなことはありません。彼女たちもがんばっているのです。しかもアラサーの範疇に入る女優たちが。

韓国映画界にも若手アイドルスターがいないわけではない。シン・セギョンやコ・アソンといった知名度のある女優はいるが、映画女優と呼べるほどのバリューには残念ながら至っていない。10年前に活躍した若手アイドル女優というと、キム・ハヌル、ソン・イェジン、チョン・ジヒョンらがいるが、彼女たちがアラサーとなった今、韓国映画界(女優部門に限る)を牽引しているといっても過言ではない。

それだけではない。遅咲きで注目される女優も少なくないのだ。キム・ギドク監督の映画『メビウス』に主演し、青龍映画賞新人女優賞にノミネートされたイ・ウンウは1980年生まれ、『アーティスト ポン・マンデ』主演のクァク・ヒョンファは1981年生まれと、いずれも遅咲きの新人女優といえるが、20代の女性にも劣らない美しい肢体をスクリーンに惜しみなく披露している。

ではなぜ、アラサーがもてはやされているのか。

自分が年をとったせいとは思いたくないが、アラサーの女性は男目線から見ても可愛いのだ。二十歳以上は法的には大人ではあるが、昨今の若者を見ると精神的な成長が追いついていないように思える。そう思うことそのものが年寄りのヒガミであると言われればそれまではあるが、ともあれアラサー女優は元気なのである。

そして、今をときめく(?)アラサー女優がスクリーンをところ狭しと闊歩しているのが、1月29日に韓国で公開された『朝鮮美女三銃士』。三銃士といっても銃を扱うわけではなく、アメリカの人気ドラマ『チャーリーズ・エンジェル』の韓国題が「美女三銃士」であったため、朝鮮時代が背景ということでタイトルをもじっただけである。

主演は、ハ・ジウォン、カン・イェウォン、ソン・ガインと今をときめくアラサー女優が出演。ベリーダンスやサングラスなど時代錯誤的なアイテムも登場するが、そこはおちゃらけ娯楽映画。アクションにお色気少々と3人の女優の魅力を最大限に引き出している。

話は飛ぶが、『エヴァンゲリオン』の主人公の年齢が子供とと少女の境界ともいる14歳であったとするならば、アラサーというのは少女から大人、そして熟女の域に入るやもしれない危うげなお年頃であるといえる。アラサー女優は過ぎ行き時間に刻まれる年齢に抗うことはできない。若手女優の台頭に期待したいところだが、暫くはアラサー女優全盛の勢いは衰えることはないと思われる。

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