「唱劇『コーカサスの白墨の輪』の稽古場スケッチ」
3月21日、国立劇場のヘオルム劇場で初日を迎える『コーカサスの白墨の輪』。鄭義信(チョン・ウィシン)演出家をはじめ、国立唱劇団(국립창극단 クン二プチャングクダン)のメンバーたちは今年の1月末から、国立劇場の片隅にある国立唱劇団稽古場でハードな稽古を重ねています。しかし、ハードとはいえ、皆さんは落ちていく体力を補充するためにそれぞれ持ってきた美味しい食べ物を分け合いながら、笑顔で汗をかいています。
稽古場に入ると、20代の若手から、先生と呼ばなくてはならない先輩まで、俳優の広い年齢層がまず目に入ります。さすが1962年に旗揚げした国立の劇団です。先輩たちは後輩に演技のアドバイスをしたり、面白い掛け声をかけたりします。「オルシグ(얼씨구 あらら)!」「チョッタ(좋다 よし)!」などパンソリでは欠かせない掛け声の「チュイムセ(추임새)」もあれば、若手の演技に対するツッコミに近いかけ声もあって、これは本番の時にも堪能できると思います。このようにみんなが暖かい心を持っている俳優たちは韓国語がお上手な鄭義信さんにも頻繁に声をかけ、作品に対して素直に意見交換をしています。
パンソリと唱劇は韓国人にとっても少し距離を感じさせる伝統芸能のイメージがあるのですが、休憩時間におしゃべりをしているかわいい女優さんや良い体を作るために炭水化物を一切食べないハンサムな男優さんなど、若い劇団員の生き生きした雰囲気が好奇心を刺激します。でも、彼らが歌いだすと、数十年も磨いてきた芸が感じられ、圧倒されてしまいます。本作の音楽はまるでミュージカルのように、大衆的な感受性を備えたメロディが心を揺らしますが、パンソリ特有の、語りなのに音楽のように聞こえる情味ゆたかな箇所も勿論あります。やはり「唱劇」ですので、音楽が果たす役割は大きいでしょうが、細かく計算された振り付けとアクションも、思わず声を出して笑うくらい面白いです。
さて、この作品の舞台は裁判所です。裁判長のアツダクがこう語り始めます。
― 一人の子どもを巡って、自分こそが母親だと主張する二人の女。
― そのどちらが本物の母親であるか?
そしてこの興味深い事件が劇中劇として描かれます。二人の女にこれまでの事情を聞いた後、アツダクは「地面に白墨の輪を描け」と命令します。その中に子どもを立たせ、二人に子どもを輪の中から自分のほうに引き寄せるようにしたのです。いったいアツダクは最後にどのような判決を下すのでしょう? どこかで一度は聞いたような話ですね。ただ、物語はこれで終わらないのです。ブレヒトなのに、唱劇なのに、鄭義信作品として成立している『コーカサスの白墨の輪』にご期待ください。
『コーカサスの白墨の輪』
3月21日~28日 国立劇場ヘオルム劇場
21日のみ19:00開演、平日20:00/週末15:00開演 (月曜は休演)
⇒国立劇場 作品紹介ホームページ(韓国語)
出演:ユ・スジョン、ソ・ジョングム、チョ・ユア、チェ・ヨンソク、ホ・ジョンヨル、キム・ミジン、ナム・へウン、イ・グァンウォン、イ・グァンボク
※この作品を引っ張っていくアツダク役はダブルキャストで、唱劇団のベテラン女優、ユ・スジョンさんとソ・ジョングムさんが演じます。お二人の魅力は全く異なりますので、見比べる楽しさもあると思われます。
もう一つ、良い情報があります!
演劇『青い日に(푸르른날에)』の演出やミュージカル『ウェルテルの恋(젊은 베르테르의 슬픔)』の脚本などでよく知られているコ・ソンウンのリライティング・バージョン唱劇『ピョンガンセ、オンニョ(변강쇠 점찍고 옹녀)』が5月1日から23日まで国立劇場タルオルム劇場で再演されます。
⇒国立劇場 作品紹介ホームページ(韓国語)
韓国の古典『ピョンガンセ伝』を原作しているこの作品は、顔も可愛く、心優しい完璧な女性なのに、彼女と結婚すると夫が死んでしまうという運命を持って生まれた「オンニョ」が主人公です。15歳で最初に結婚して、20歳になるまでに6人の夫が亡くなり、結局彼女は村から追い出されることになります。この彼女の運命に挑戦するのがピョンガンセという男です。2人のロマンスはハッピーエンドになるのでしょうか? 昨年、18禁唱劇として初演され、話題を呼んだセクシーな古典ですが、客席から爆笑が止まらないコメディーでもあります。去年大好評だった初演を見逃した方に、おすすめいたします。
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