大学路

[MUSICAL]『狂炎ソナタ』韓国初!12公演を日本/世界でライブ配信

[MUSICAL]『狂炎ソナタ』韓国初!12公演を日本/世界でライブ配信

 

ミュージカル『狂炎ソナタ』(カンヨムソナタ)が、8月公演に続き9月11日からアンコール公演を上演中。劇場に直接足を運べない韓国内外の観客のために、9月18日(金)から韓国初の12公演有料オンライン世界同時配信と、26日(土)には韓国CGV、香港の映画館ではライブビューイングも実施される。
日本では9月18日(金)~26日(土)の8日間、全12公演を「テレ朝動画」が独占ライブ配信(日本語字幕付)。オン&オフラインの両方で舞台を体感できる画期的な試みが行われる。

『狂炎ソナタ』は、韓国近代文学の重要作家の一人、キム・ドンイン(金東仁)が1930年に発表した同名短編小説をモチーフにした創作ミュージカル。新作舞台の開発・制作を支援する「創作産室」の2016年度優秀作に選定後、2017年からほぼ毎年再演されてきた作品だ。
本作を生み出したのは脚本家チョン・ミナ(『風月主』『サリエリ』他)と、作曲家ダミロ(『蘭雪(ナンソル)』『リトル・ジャック』『伝説のリトルバスケットボール団』他)。話題作を次々と手掛け、韓国舞台シーンでいま最も忙しいクリエイターと言われる2人がタッグを組んだ作品だけに、初演時から舞台ファンの期待を集め、チケットが完売続出する人気を博した。2018年には東京・大阪で来日公演も行われている。

脚本・作詞にも参与したダミロ作曲家が「芸術至上主義」をテーマにした三部作の第1作目と謳うこの作品は、長年曲が書けなかった作曲家Jが、不運な事故を経て狂気の1曲が生まれたことで破滅の道に向かう姿を描く“スリラーミュージカル”だ。
周囲からは天才と呼ばれながらも自信喪失していたJが、殺人を犯すも曲を仕上げたことで覚醒していく様が見もの。そんなJを守ろうとするSとの友情物語やJの才能を悪用しようとする教授Kとの葛藤など、次々とドラマチックな展開が畳みかける。各キャラクターを演じる俳優たちが劇中ピアノの生演奏を披露するのも見どころの一つで、ストリングスを多用したスコアも耳に残るはずだ。

(写真左から)19歳でデビューし、若き天才と呼ばれながらも次の1曲が書けない作曲家のJ役のキム・ジチョル、リョウク、フイ

(写真左から)天性の音楽的才能を持ちながらも、憧れのJを親友として見守ってきたS役のユ・スンヒョン、フェスン、ジュチャン

(写真左から)私欲のためJに危険な提案をするクラシック界の著名な教授K役のキム・ジュホ、イ・ソングン

J(リョウク)が死を目にして極限の状態で書いた1曲「狂炎ソナタ」を初めて評価する教授K(キム・ジュホ)

今回のライブ配信では、劇場内に10台のカメラを設置予定。最前列でも見られないような俳優のアップ映像や普段観劇中には絶対に見ることができないアングルからの視聴も可能となっている。俳優たちの熱演や微妙な表情の変化も逃さず観ることができるだろう。

S(ジュチャン)とJ(フイ)の友情物語も見どころ

視聴チケットの購入者には、視聴日の開幕直前ライブ映像に加え、出演キャストインタビュー映像(日本語字幕付)が見られる特典もついている。
そのほか配信全公演が視聴可能な「全12公演セット」をはじめ、リョウク(6公演)、フイ(5公演)、ユ・フェスン(6公演)、ジュチャン(5公演)の各キャスト別セット視聴チケットも販売。メイキング映像やオンラインサイン会など作品をより身近に、より深く堪能できる6つの購入特典もついている。
なかでも「マルチアングル配信」は配信最終日、9月26日(土)の14時公演(J役フイ/S役ユ・フェスン/K役キム・ジュホ)と18時公演(J役リョウク/S役ジュチャン/K役キム・ジュホ)の2公演で実施。これはライブ配信映像以外にJ役、S役を中心にした別アングルの映像を同時生配信し、視聴者自身が好きなカメラに切り替えて視聴できるというもの。まるで劇場にいるような臨場感あふれるインタラクティブな映像体験が楽しめそうだ。

視聴チケットの購入、キャストスケジュール、特典内容の詳細などの全情報は「テレ朝動画」の『狂炎ソナタ』配信スペシャルサイト⇒https://www.tv-asahi.co.jp/douga_mv/live200918/ で公開中だ。

ダミロ作曲家作品の常連俳優J役(キム・ジチョル)とS役(ユ・スンヒョン)の演技力にも注目


【公演情報】
ミュージカル『狂炎ソナタ』(광염소나타)
2020年9月18日~27日 大学路ユニプレクス1館

●日本ライブ配信
2020年9月18日(金)~9月26日(土)(全12公演)
視聴・チケット購入:「テレ朝動画」特設サイト⇒https://www.tv-asahi.co.jp/douga_mv/live200918/

<出演>
●J役:キム・ジチョル、リョウク(SUPER JUNIOR)、フイ(PENTAGON)
●S役:ユ・スンヒョン、ユ・フェスン(N.Flying)、ホン・ジュチャン(Golden Child)
●K役:キム・ジュホ、イ・ソングン

原作:キム・ドンイン「狂炎ソナタ」(狂炎쏘나타)/作・作詞:チョン・ミナ、ダミロ/作曲:ダミロ/演出:キム・ジホ/振付:ホン・ユソン

写真・資料提供:SHINSWAVE
●公式サイト:http://shinswave.com/
●Facebook:https://www.facebook.com/shinswave/
●ツイッター:https://twitter.com/shinswave
●インスタグラム:https://www.instagram.com/shinswave/

<2020年『狂炎ソナタ』ハイライト リョウク/フェスン/キム・ジュホ編>

<2020年『狂炎ソナタ』ハイライト フイ/ジュチャン/イ・ソングン編>

<2020年『狂炎ソナタ』ハイライト キム・ジチョル/ユ・スンヒョン/キム・ジュホ編>


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[PLAY]『アナザー・カントリー』ガイ&トミー イメージカットを公開

[PLAY]『アナザー・カントリー』ガイ&トミー イメージカットを公開

 

2019年に韓国初演し、有望な新人俳優を多数生み出して話題を呼んだ演劇『アナザー・カントリー』。再演を控えて、主人公のガイとトミー役のイメージカットが公開された。

ガイ役のイ・へジュン(左)とトミー役のムン・ユガン ©Page1

『アナザー・カントリー』は、1981年にイギリスで発表されたジュリアン・ミッチェルの同名戯曲が原作。名門パブリックスクールを舞台に、伝統と規律を重んじる学園生活のなかで葛藤するガイとトミーを中心に、英国の階級社会をそのまま映し出したような人間模様を描いた作品だ。舞台版に主演していたルパート・エヴェレットが主人公のガイを演じて1984年に映画化され日本でも大ヒット。『英国王のスピーチ』『キングスマン』で人気のコリン・ファースがガイの親友トミーを演じ、俳優デビューした作品としても知られている。

今回公開されたイメージカットからは、自由奔放であるがゆえに、周囲と衝突を繰り返すアウトサイダーのガイと、彼の唯一の理解者であり、マルクス主義に傾倒しているトミー。正反対のキャラクターながら、無二の親友である2人の関係性が読み取れる。

トミー役のソン・ユドン(左)とガイ役のカン・ヨンソク ©Page1

 

今年の再演でも多数の新人俳優を起用。またも足繁く劇場に通うリピーター観客を生みそうだ。

主人公ガイ役は『スリル・ミー』『ラフマニノフ』などの小劇場ミュージカルで活躍を続けるイ・へジュンと、初演ではデヴィニッシュ役だったカン・ヨンソク。そしてオーディションで大抜擢された新人チ・ホリムが演じる。

トミー役は『ママ、ドント・クライ』『ザ・デビル』『ロッキー・ホラー・ショー』などに出演してきたキム・チャンホと『女神様が見ている』『ファンレター』『R&J』などに出演してきたソン・ユドンが初出演。そして昨年の初演で俳優デビューし、破格の新人と話題を呼んだムン・ユガンが再び出演する。

問題多き生徒たちに悩まされる寮長バークレイは初演でも同役を演じたイ・ジヒョンと『マリー・キュリー』『ザ・キャッスル』などに出演したチョ・フンが初出演する。

トミー役のキム・チャンホとガイ役のチ・ホリム ©Page1

ガイとトミーの同級生で楽天的なデヴィニッシュ役は、中央大学演劇学科の学生で今作でデビューするナム・ガラムが抜擢された。

次期寮長候補と目される野心家メンジーズ役は『グリース』『オー!キャロル』などに出演したキム・テオと、本作初演では陽気なデヴィニッシュ役だったぺ・フンが今回は正反対の役柄に挑戦する。

常にガイを敵視しているファウラー役はハン・ドンフン、キム・ユンドンの新人2人を起用。寮長の側近的存在のデラヘイ役は『スワッグエイジ:叫べ、朝鮮!』やtvNのアンサンブルオーディション番組『ダブルキャスティング』に出演して注目されたシム・スヨンが演じる。
純粋無垢な少年サンダーソン役のキム・ヨングク、ガイと恋に落ちる美少年ハーコート役のチェ・ユヒョン、従順な下級生ウォートン役のキム・リアンの3人は本作でデビューを飾る新人たちだ。

デヴィニッシュの叔父で平和主義の文学者ミスターカニンガムは、初演に続き出演するユン・ソグォンと『地球を守れ!』で一人21役のマルチマンとして熱演しているキム・チョリュンが初出演する。

2020年『アナザー・カントリー』全キャスト ©Page1

演劇『アナザー・カントリー』は6月10日から大学路の西京(ソギョン)大学公演芸術センタースコーン1館で開幕。プレビューチケットは現在発売中。6月16日公演からの1次チケットを5月12日(火)から発売予定だ。


©Page1

【公演情報】
演劇『アナザー・カントリー』(어나더컨트리)
2020年6月10日~8月16日 西京(ソギョン)大学公演芸術センタースコーン1館(大学路)

<出演>
●ガイ・ベネット役:イ・へジュン、カン・ヨンソク、チ・ホリム
●トミー・ジャッド役:キム・チャンホ、ソン・ユドン、ムン・ユガン
●バークレイ役:イ・ジヒョン、チョ・フン
●デヴィニッシュ役:ナム・ガラム
●メンジーズ役:キム・テオ、ぺ・フン
●ファウラー役:ハン・ドンフン、キム・ユンドン
●デラヘイ役:シム・スヨン
●サンダーソン役:キム・ヨングク
●ハーコート役:チェ・ユヒョン
●ウォートン役:キム・リアン
●ミスターカニンガム役:ユン・ソグォン、キム・チョリュン

プロデューサー:イ・ソンイル/芸術監督:イ・ジナ/演出:イ・スイン

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[MUSICAL]2年ぶりにニュープロダクションで再演『スリル・ミー』12月開幕

[MUSICAL]2年ぶりにニュープロダクションで再演『スリル・ミー』12月開幕

 

2017年に歴代キャストが参加して10周年記念公演を行った『スリル・ミー』が、キャスト、制作陣を一新して、2年ぶりに大学路に戻ってくる。

『スリル・ミー』は、米・オフブロードウェイで2003年に初演。脚本、作詞、作曲を手掛けたステファン・ドルギノフが、1920年代に起きた大学生による誘拐殺人事件「レオポルト&ローブ事件」をモチーフに作り上げた2人芝居のミュージカルだ。韓国では2007年にリュ・ジョンハン、チェ・ジェウン、キム・ムヨル、イ・ユルの主演で初演。衝撃的なストーリーと、ピアノ1台による伴奏のみで展開する斬新な上演スタイルは、現在に至る韓国の小劇場ミュージカルに革命をもたらした作品のひとつとして知られている。韓国プロダクションをもとに日本でも2011年から上演され、いまや日本でも人気作として定着している。

2年間の空白を経て発表されたニュープロダクションのキャストは、いま大学路で注目度上昇中の若手俳優を揃えている。

(左から)“私”ネイサン役のヤン・ジウォン、キム・ヒョンジン、キム・ウソク

裕福な家庭に育ち、真面目で成績も優秀だったが、“彼”の魅力にはまり狂った愛から抜け出せなくなってしまう“私”ネイサン役はヤン・ジウォン、キム・ヒョンジン、キム・ウソクが演じる。
ポップスやCCM歌手として芸能活動を始めたというヤン・ジウォン。近年は『ロッキー・ホラー・ショー』『HOPE』など所属するR&D Works制作作品に出演し、小劇場を中心にミュージカル俳優として人気を博している注目株だ。
キム・ヒョンジンは『マディソン郡の橋』『英雄』『伝説のリトルバスケットボール団』などに出演。少年性を残したピュアなイメージの役柄を多く演じてきた彼が“私”役を通してどう変貌を遂げるか期待したい。
人気デュオMeloManceのキム・ミンソクを兄にもつキム・ウソクは、イ・ジヌク、イ・ハナ主演のクライムドラマ『ボイス』シーズン2、3への出演や、昨年多数のミュージカル賞を受賞した『レッド・ブック』に出演するなど、舞台とドラマを股にかけ活動を始めた新人俳優だ。

(左から)“彼”リチャード役の、イ・へジュン、ク・ジュンモ、ノユン

恵まれた環境と秀麗な容姿、生まれ持った弁才で周囲の人々を魅了。ニーチェの超人思想を信奉し、破滅的な行為に快感を覚えて完全犯罪へと突き進む“彼”リチャード役は、イ・へジュン、ク・ジュンモ、ノユンが演じる。

2013年にミュージカル『ウエディング・シンガー』のアンサンブルとして俳優活動を始めたイ・へジュンは『ドッグ・ファイト』『私の愛、私の新婦』『アルターボーイズ』などに主演。2016年のホームドラマ『いつも春の日』や、映画『仁川上陸作戦』などにも出演し、今後さらに多角的な活動が期待されている俳優だ。

ク・ジュンモといえば2017~18年にかけて上演された『ビリー・エリオット』の兄トニー役だ。半年にわたりトニーを一人で演じ切り、その熱血キャラクターとあいまって彼の名前を広く知らしめることになった。以降は『再生不良少年』『伝説のリトルバスケットボール団』と主演級での出演が続くなかで“彼”役に抜擢された。

演劇の名門、中央大学演劇学科に在学中のノユンは、2017年に『ベア:ザ・ミュージカル』でデビュー。『TRACE U』『海賊』と小劇場ミュージカルマニアに愛された作品に主演し、ファンを増やしている新進俳優だ。

今回のニュープロダクションを制作するのは、2016年に「イェグリンミュージカルアワード」で革新賞、主演男優賞などを受賞した『阿娘歌(アランガ)』の演出&音楽監督コンビだ。

演出のイ・デウンは、ミュージカル『星の王子さま』や演劇『醜男、美女』のほか、ヤン・ジョンウン主宰の劇団「旅行者」制作の舞台も多数演出している。
音楽監督のイ・ハンミルは、作曲家、音楽監督としての活動と並行して俳優としても活躍する稀有な人物だ。現在『マリー・アントワネット』にルイ16世役で出演中のほか、『アマデウス』『ヴァン・ゴッホとひまわり少年』『30歳のころに』などにも出演した。
そのほか舞台美術は『蘭雪(ナンソル)』『R&J』や、来日公演も行われた星新一のSF小説を原作にした演劇『ボッコちゃん』などのデザインを手掛けたパク・サンボン。衣装は『TRACE U』『ジャングルライフ』のイ・スワンと、スタッフもすべて『スリル・ミー』に関わるのは初めての面々だ。

舞台セットや演出方法など、10周年公演までは2013年に栗山民也が演出したスタイルを踏襲し、あまり大きな変化をもたらしていなかったが、今回は制作陣も俳優も『スリル・ミー』未経験。2年間のブレイクを経て、大胆なリニューアルが行われるのか、多くのマニアが注目しているだろう。

『スリル・ミー』は、12月10日~2020年3月1日まで、大学路のYES24 STAGE2で上演。1次チケットは10月11日(金)午後4時からYES24単独で販売される。


【公演情報】
ミュージカル『スリル・ミー』(쓰릴 미)
2019年12月10日~2020年3月1日 YES24 STAGE2

<出演>
●私役:ヤン・ジウォン、キム・ヒョンジン、キム・ウソク
●彼役:イ・へジュン、ク・ジュンモ、ノユン

原作・作曲:ステファン・ドルギノフ/演出:イ・デウン/音楽監督:イ・ハンミル/美術:パク・サンボン/照明:キム・ソング/音響:キム・ソンイク/衣装:イ・スワン/ヘアメイク:キム・ナムソン

写真提供:ダルカンパニー
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[PLAY]大学路の劇場“精米所”閉館作『娘への手紙』6月上演

[PLAY]大学路の劇場“精米所”閉館作『娘への手紙』6月上演

 

ユン・ソクファ

1970年代から、舞台を中心に活動してきた女優ユン・ソクファが、劇場街大学路(テハンノ)で運営してきた劇場「精米所(ジョンミソ)」の閉館を前に、最後の作品となる一人芝居『娘への手紙』を上演する。
5月16日に行われた制作発表会は、ユン・ソクファと、演出家キム・テフン、作曲家チェ・ジェグァンが出席。司会進行を、当劇場とは縁の深い俳優イ・ジョンヒョクが努めた。

ユン・ソクファは1975年に演劇『蜜の味』でデビュー。多数の演劇、ミュージカルに出演してきたが、現在でも上演されている作品のなかではミュージカル『ガイズ&ドールズ』『明成皇后』などがある。また、80年代にはシン・ソンイルと共演した『レーテの恋歌』(1987年)をはじめ、映画、ドラマでも活躍してきたベテラン女優だ。

「精米所」は、彼女が2002年に沐浴湯(목욕탕=銭湯)だった建物を買い取り、建築家チャン・ユンギュらとともに劇場に改装してオープン。「精米所」という一風変わった名前は、「精米所が米をつくように芸術の香りを咲かせ、隠れた原石を磨きたい」と命名したという。

大学路で17年運営され、多くの名作を生んだ「設置劇場 精米所(ジョンミソ)」

この日MCを務めたイ・ジョンヒョク

当時としてはモダンな造りで、開館から切れ目なく様々な公演が行われていたこの小劇場では、2015年にカン・ハヌルが主演した『ハロルドとモード』の基となったパク・チョンジャ主演の演劇『19そして80』(2003年)、オム・ギジュン、キム・ムヨル、パク・ホサンらが主演したチョ・グァンファ作・演出の『狂ったキス』(2007年)、チェ・ドンムン、イ・ソクジュンらが主演した劇団メンシアターの『Some Girls』(2008年)、ドラマ『刑務所のルールブック』で注目を浴びたパク・ヘスが頭角を現すきっかけとなった創作ミュージカル『思春期』(2008年)、ホ・ギュ、ジョンミンらが主演した2人劇ミュージカル『ママ、ドント・クライ』初演(2010年)などが上演されてきた。
制作発表で司会進行を務めたイ・ジョンヒョクは、開館直後の2003年にパク・チョンジャと共に『19そして80』に主演。「当時出演中だった楽屋で、のちに彼の出世作となった映画『マルチュク青春通り』のオーディション合格の報せを受けた」と語るなど、新人時代を過ごした思い出深い場所だったようだ。

2010年代までは、ユン・ソクファが主催する作品の上演と併せ、話題作が多数上演される場として知られてきた「精米所」だったが、大学路が劇場街から商業エリアへと急激に移行した近年は、不動産バブルや著しい賃貸料の上昇により、この劇場のみならず劇場運営者にとっては厳しい環境となっている。「慢性的な赤字は、他の仕事をして埋め合わせをしていた」そうだが、ついに劇場ビルの売却が決まり閉館を決めたという。「精米所」も、この商業化の流れに抗うことは難しかったのだ。
劇場を運営してきた17年間で最も幸せだった瞬間は? と質問されたユン・ソクファは、「情熱がある若い後輩たちに少しずつ後援した『精米所プロジェクト』という企画があった。観客は多くなかったが演劇の精神が生きている作品だった」と、あふれ出る涙をぬぐいながら邂逅していた。

「静かに劇場のドアを閉めようと思っていたが、観客の皆さんと最後に笑って泣ける作品を選んだ」という『娘への手紙』は、英国の劇作家アーノルド・ウェスカーが1990年に発表した戯曲を劇団サヌリム(산울림=こだま)のイム・ヨンウン演出、ユン・ソクファ主演で1992年に韓国初演した作品。未婚の母である歌手のメラニーが、12歳となり思春期を迎えた娘に宛てこれからどう生きるべきかを伝えていく物語だ。本作は2020年にロンドンで公演が予定されており、今回は台詞も歌詞も全編英語で進行。公演は韓国語字幕をつけて、英国公演を控えたオープンリハーサルという形式で上演される。
「上手くできるか心配ではあるが、やらなければ後悔しそうだった。韓国で上演するつもりはなかったが、初演当時にこの作品を好きだった娘が、今は母親となったんだな、と思った。彼らに謙虚に挨拶をしていくことが美しい道理だと思い、最善を尽くして準備している」と語っていた。

演出は、演劇『RED』『大虐殺の神』の演出や、ミュージカル『ビリー・エリオット』『ONCE』『シカゴ』の協力演出など、シンシカンパニーで裏方を務めてきたキム・テフン。劇中歌の作曲を『ブロードウェイ42番街』『アサシンズ』『ナンセンス』など多くの作品で音楽監督を務めてきたチェ・ジェグァンが担当している。

演出のキム・テフン(左)と、劇中歌を作曲したチェ・ジェグァン(右)

ユン・ソクファが自ら作り上げた劇場を自らの手で、幕を下ろす『娘への手紙』は6月11日~22日まで上演される。


【公演情報】
演劇『娘への手紙』<딸에게 보내는 편지>
2019年6月11日(火)~22日(土) 大学路 設置劇場 精米所(ジョンミソ)

<出演>
ユン・ソクファ

原作:アーノルド・ウェスカー/演出:キム・テフン/作曲:チェ・ジェグァン

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[PLAY]『報道指針』フォトギャラリー

[PLAY]『報道指針』フォトギャラリー

 


【公演情報】
演劇『報道指針』<보도지침>
2019年4月26日(金)~7月7日(日) 大学路TOM2館

<出演>
●キム・ジュヒョク(社会部記者)役:パク・ジョンボク、イ・ヒョンフン
●キム・ジョンべ(編集長)役:チョ・プンレ、カン・ギドゥン、キ・セジュン
●ファン・スンウク(弁護士)役:オ・ジョンテク、ソン・ユドン
●チェ・ドンギョル(検事)役:クォン・ドンホ、アン・ジェヨン
●ソン・ウォンダル(判事)役:チャン・ヨンチョル、ユン・サンファ
●男役:チャン・ギョクス、チェ・ヨンウ
●女役:イ・ファジョン、キム・ヒオラ

プロデューサー:チャン・サンヨン/責任プロデューサー:チェ・ギョンファ/作・演出:オ・セヒョク/音楽:イ・ジヌク/振付:イ・ヒョンジョン/舞台:キム・デハン/音響:キム・ソンイク/照明:イ・ジュウォン/衣装:ドヨン/ヘアメイク:チョン・ソジン/舞台監督:イ・ジョンウ/制作プロデューサー:イ・イェジ

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[コラム]ミュージカル『1976 ハーラン・カウンティ』レビュー

[コラム]ミュージカル『1976 ハーラン・カウンティ』レビュー

 

主人公ダニエル役のチョ・サンウン、ソ・スンウォン、キム・ダヒョン

日本はゴールデンウイーク10連休突入でこの記事をご覧になる方も少ないと思いますが、2019年上半期のベスト創作ミュージカルとなりそうな作品を見てきました。

実はこの作品、5月5日(日)で閉幕します。すでにご覧になった方には「何を今ごろ!」と言われそうですが、もしGWに韓国にいらっしゃる方は可能であれば、ぜひ見ておいてほしい! と思い、遅ればせながら記事にした次第です。

『1976ハーラン・カウンティ』は、1976年制作の米ドキュメンタリー映画『ハーラン・カウンティUSA』をモチーフにした創作ミュージカルです。
原作映画はケンタッキー州南東部にあるハーラン郡で起きた炭鉱労働者のストを追った内容でしたが、これに奴隷解放から100年以上経っても当時のアメリカ南部には根強く残っていた黒人労働者差別の物語を交錯させ、オリジナルストーリーに仕上げています。
釜山文化財団の青年演出家製作支援事業の支援作に選定され、2年ほどの準備期間を経て、今年1月に釜山でショーケースが行われたあと、4月からソウル公演が始まっています。

作・演出は『三銃士』の武術監督からスタートし、『ロビンフッド』『オール・シュック・アップ』などのワン・ヨンボム演出作品での助演出などを担当していたユ・ビョンウン。
彼は2016年に初の作・演出を手掛けた『ザ・アンダードッグ』という作品で、ひとり立ちしていたのですが、この作品は制作会社に問題が生じて早期終了してしまい、不運なデビューとなっていました。その後表立った活動をしていないなと思っていたのですが、この新作を準備していた、というわけですね。
そういえば『ザ・アンダードッグ』も、人間の都合で捨てられた犬たちを主人公にした物語でした。彼はまだ30代の若い演出家ですが、社会問題に切り込むような作品を好んで生み出しているようです。

主人公の白人青年ダニエル役は、釜山初演から引き続き出演しているソ・スンウォン、チョ・サンウンに加え、キム・ダヒョンが新加入。演技スタイル、歌声、ルックスと全く個性の異なるトリプルキャストとなっています。
この3人が、韓国公演情報サイトPlayDBで揃ってインタビューに答えています。
●「なかなかない作品、どんな俳優で見ても同じ感動を与えたい」(PlayDB)

●ソ・スンウォン単独インタビュー(ニュースカルチャー)

●チョ・サンウン単独インタビュー(ニュースカルチャー)

ダニエルは両親を亡くした自分を、長年親代わりのように面倒を見てくれた聾唖の黒人男性ライリーが自由に生きられるよう、ニューヨークへ向けた旅に出ます。
一方、ケンタッキー州の炭鉱の町ハーラン郡では、会社の暴挙に反発した鉱夫たちの労働組合が激しいストを敢行中。しかし鉱夫たちを率いていた労働組合長モリソンが何者かに襲われます。モリソンは死の直前、旅の途中で偶然居合わせたダニエルとライリーにある物を託すのです。

「私たちが生きていく世界」(ソ・スンウォン主演Ver.)

この事件をきっかけに、ダニエルはモリソンの娘エレナや鉱夫たちと出会い、彼らの労働運動に加担せざるをえなくなっていくのですが、とにかく驚いたのが鉱夫を演じるアンサンブルを含めた合唱シーンの声の厚さ。それもそのはず。実はこの作品、さまざまな作品で助演やアンサンブルを多数経験済みの百戦錬磨のメンバーが揃っているのです。
鉱夫たちがストを起こすミュージカル、と聞いて『ビリー・エリオット』を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。本作には組合長モリソン役のオム・ジュンシク、鉱夫役のコ・チョルスンと2017年の『ビリー・エリオット』でも鉱夫を演じていた俳優が起用されているのです。
ほかにも鉱夫のリーダー的存在ながら、会社側におもねるベイジル役のワン・シミョンは『タイタニック』『ゴースト』『ジキル&ハイド』などに出演。ベイジルWキャストのイ・ギョンスは劇団四季出身で、持ち前の歌声を買われ、ヤン・ジュンモ演出の小劇場オペラ『リタ』にチェ・ジェリムと共に主演していました。

●ベイジル役イ・ギョンス単独インタビュー(Stage Talk)

ほかにも、エレナ役は『女神様が見ている』の元祖女神様イ・ジスク。鉱夫たちに圧力をかける悪役ピーターソン役には『三銃士』のジュシャク役を長年演じていたキム・サンヒョン。鉱山会社社長トニー・ボイル役は『風月主』『レッド・ブック』『ファリネッリ』などで見せた一癖あるサブキャラクターが上手いウォン・ジョンファン……などなど、韓国のミュージカルファンに、その実力を認められている「信じて観る俳優(믿고 보는 배우)」たちが揃っているのです。

tbsの番組「公演に熱くハマった」解説映像

●稽古場映像 「誤解」(キム・ダヒョン)

●稽古場映像 ダニエルソロナンバー(ソ・スンウォン)

●NAVER生中継ハイライト(チョ・サンウン主演Ver.)

劇中でダニエルと聾唖者のライリーが交わす会話には必ず手話を付けていたのがとても新鮮に映りました。この部分を除けばユ・ビョンウン演出家の演出スタイルや物語の進めかたは、極めてベーシック。ストーリーの流れに破綻した部分などはなく、初めて見た人にも分かりやすく入り込めるようエピソードを繋げてありました。シリアスなストーリーのなかに時折、思わず吹き出すようなセリフやシーンも盛り込んであり、それも良い具合に息抜きになっていたのではないかと思います。
また、最近の新作創作ミュージカルは曲が練られておらず、マイナーコードを多用し、キツめのストリングスが入った似たようなメロディーの楽曲が散見されるのですが、本作の場合は過度にドラマチックにしたり、妙な転調を入れたりもせず、スタンダードながら大劇場でも十分成立するナンバーが多かったのも好印象。助演陣にもソロナンバーが与えられ、難度の高い曲もしっかりと演じ歌いこなしていて、とても安心して見ることができました。これも、キャリアを重ねている俳優が多いからできたことだと思います。

ベイジル役の見せ場となったソロナンバー「夢を見る」稽古場映像(ワン・シミョンVer.)

日本の多くの方がご覧になったことがあるであろう、大劇場ミュージカルで見られるような甘いロマンスや豪華な舞台、きらびやかな衣装などとは対極にある作品ですが、じんわりと深い感動が残りました。
カーテンコールでは筆者を含む多くの観客が、“ご贔屓への義理”や“前が見えないから”立つのではなく、心からのスタンディングオベーションで俳優を出迎えていました。
残念ながら、この作品は上演期間が約1カ月と短いため、プロモーションもあまりできていなかったせいか、満席とはいかない状態でしたが、残りわずかな公演をご覧になれる方は今すぐチケッティングを! そして、将来再演された際にはぜひ観劇してみてください。

カーテンコール映像(キム・ダヒョン主演Ver.)


【公演情報】
ミュージカル『1976ハーラン・カウンティ』〈1976 할란카운티〉
2019年4月2日(火)~5月5日(日) 弘益大大学路アートセンター 大劇場

<出演>
●ダニエル役:キム・ダヒョン、ソ・スンウォン、チョ・サンウン
●ライリー役:キム・ユンホ、イ・ジュンヨン
●エレナ役:イ・ジスク、イ・ハギョン
●ジョン役:キム・ヒョンギュン、ユン・ソグォン
●ナタリー役:リュ・スハ、グ・オクブン
●ベイジル役:イ・ギョンス、ワン・シミョン
●ピーターソン役:カン・ソンジン、キム・サンヒョン
●トニーボイル役:ウォン・ジョンファン
●フランク役:キム・ユル、パク・サムソプ
●モリソン役:オム・ジュンシク
●オリバー役:ソン・イル
●アンバー役:キム・ミンソル、チョ・へイン
●アンサンブル:コ・チョルスン、イ・ドクジェ、イ・ジンソン、キム・ヒョビン、シン・ウンジョン、イム・チャンヨン、ウ・ジニョン、チョン・ウンジ

プロデューサー:シム・ムンソプ、カン・ホウォン/芸術監督:ソ・ビョング/作・演出:ユ・ビョンウン/作曲・音楽監督:カン・ジンミョン/振付:ユ・ナレ/小道具:キム・ジョンヒ/ヘアメイク:チェ・リラ/技術:イ・ユウォン/舞台監督:キム・ボムシク/助演出:チン・ソユン/音楽助監督:イ・ヘス/制作総括:イ・スギョン/制作PD:カン・ヒョミ/カンパニーマネジャー:パク・ミソ

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文:さいきいずみ(韓劇.com)

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[MUSICAL]『ザ・キャッスル』フォトギャラリー

[MUSICAL]『ザ・キャッスル』フォトギャラリー

 


【公演情報】
ミュージカル『ザ・キャッスル』(더캐슬)
2019年4月15日(月)~6月30日(日) 大学路YES24ステージ1館(旧デミョン文化工場1館)

<出演>
●ホームズ役:キム・ジェボム、チェ・ジェウン、エノク、チョン・サンユン
●ベンジャミン役:キム・ギョンス、チョン・ドンファ、ユン・ソホ
●ケリー役:キム・リョウォン、カン・へイン、キム・スヨン
●トニー役:イ・ヨンギュ、ぺ・スンリョル、カン・ウニル、チョ・フン

プロデューサー:キム・スロ、キム・ミンジョン/芸術監督:シン・ヨンソプ/脚本:キム・ソンミ/作曲:キム・スンジン、ホ・スヒョン/演出:ソン・ジョンワン/音楽監督:ホ・スヒョン/振付:イ・ヒョンジョン

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[PLAY]『アンチェイン』フォトギャラリー

[PLAY]『アンチェイン』フォトギャラリー

 


【公演情報】
演劇『アンチェイン』(언체인)
2019年4月3日(水)~6月9日(日) コンテンツグラウンド(大学路)

<出演>
●マーク役:チョン・ソンイル、イ・ガンウ、ヤン・スンリ
●シンガー役:キム・デヒョン、キム・パダ、チェ・ソクジン、カン・スンホ

総括プロデューサー:ノ・ジェファン/プロデューサー:パク・インソン/作:Sneil/演出:シン・ユチョン/舞台:ナム・ギョンシク/照明:イ・ジュウォン/音響・音楽:ジミー・セル/衣装:ホン・ムンギ/小道具:ノ・ジュヨン/ヘアメイク:カミスピア

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[Special Interview]イ・デヨン【前編】

[Special Interview]イ・デヨン【前編】

 

韓国の劇場街、大学路(テハンノ)で観劇する際の醍醐味のひとつは、ドラマや映画に出演している演技派俳優たちの名演をじかに見られることです。アイドルや若手俳優などの主演陣を陰でサポートしつつ、さりげなく深みのある演技を見せる彼らは映像作品になくてはならない存在。特に“中堅俳優”と呼ばれる40~50代の俳優は、さまざまな現場で常にひっぱりだこです。今回インタビューをお届けするイ・デヨンさんはまさにそんななかの一人。常に多数の撮影現場を掛け持ちする多忙なスケジュールをこなしながら、いまもコンスタントに舞台に立ち続けている生粋の演劇俳優なのです。
今回、SF推理劇『The Nether(ネダー/네더)』で、これまでにないキャラクターに挑むデヨンさんへの取材が実現。人間味溢れるベテラン俳優に注目したインタビューは、韓国でも読める機会は少ないと思います。3つに分けた長い内容となりましたが、韓国演劇の近代史も垣間見える貴重なインタビューをご堪能ください。

*     *     *

●今回は翻訳劇、しかもSFという斬新な『The Nether』への出演はちょっと意外でした。翻訳家のマ・ジョンファさんのたっての希望で決まったそうですね。
「ジョンファさんとは今回初めてお会いしました。実は『春の日(봄날)』※1(7月28日~8月6日までアルコ芸術劇場で上演された)への出演がもう決まっていて、終わった2週間後にこの作品が始まるスケジュールだったので、他にドラマの撮影もあるし、舞台に2作続けて出るのはちょっとしんどいなとも思いましたが、作品を気に入って出演を決めました。2月に『縁側のある家(툇마루가 있는 집)』という演劇に出たのですが、劇場にジョンファさんが演出家と二人でやってきて“どうしても先輩に演じてもらいたい”と。そこまで僕を欲しているなら、と (笑)」

●デヨンさんが『The Nether』で演じるドイルは、ペドフィリア(小児性愛者)の中年教師という難しいキャラクターです。なぜこの役をデヨンさんに演じて欲しかったのか、ちょっとマ・ジョンファさんにも伺いたいと思います。
マ・ジョンファ「イ・デヨン先輩が出演された作品を見ると、ほとんどが善人で、とても苦悩する男性の役でした。もっと面白い役がたくさんあるのに、男優も女優もある程度年齢を重ねると同じような役ばかりを演じるようになるんですね。それをいつも勿体ないと感じていたんです。実は、先輩がかなり前に主演された映画『ラクダ(たち)낙타(들)』(2001年作品)が大好きだったんですが、その映画は、偶然知り合い旅に出た男女が一夜限りの関係を持つという作品でした。デヨン先輩は劇中で自分が傷ついたときに、外にではなく内に向かうようなキャラクターをこういう風に演じるんだなと印象的で、それ以来ずっと興味を持っていたんです。私は俳優に会うといつもどんな役が合うだろう? と想像するのですが、昨年飲みの席で偶然お会いできて。この作品を翻訳したとき、個人的にはドイルのキャラクターに一番惹かれたのですが、とても善い方だと感じた先輩が、最悪の選択をして崩れてしまうような役を演じたら、どんなに面白いだろう? と思いました(笑)。それで、上演が決まったときに演出家にお願いしたんです。“じゃあドイル役は絶対イ・デヨンさんで”と。でも連絡先も知らなかったので、演出家に連絡してもらって(笑)。とてもお忙しい方なので実現するかな…? と思っていました」

●でも普通は、翻訳家がキャスティングまではしないですよね(笑)
マ・ジョンファ「ええ。最初は忙しいとおっしゃったので、また私が演出家と一緒にお願いしに行ったんですよ。“これでダメだったらどうする? 次は手紙でも書く?”とか言って(笑)。そうしたらスケジュールを調整してくださることになって。実際、翻訳家の望み通りの配役になるというのはほぼ不可能なんですが、今回は理想のキャスティングなので、もう作品が完成したような感じです。だから私は稽古で怠けているんです。(何も言わなくても)俳優さんたちが全部やってくれますから(笑)」

●デヨンさんは、ジョンファさんのラブコールを受けていかがでしたか?
「ここまで詳しく理由は言われなかったけど(笑)“ いくら考えても先輩にお願いしたい”と言ってくれて。時間的にちょっと無理みたいだからと丁重にお断りしたんだけど、ここまで言ってくれるなら、無理してでもやりましょう、ということになったんです。作品の設定そのものが興味深い状況だし、サイバー世界、仮想現実についても魅力的で。 人間という存在に対して、とても知的な質問を投げかける作品なのが魅力でした」

●ドイルがどんなキャラクターなのか教えていただけますか?
「ドイルは、定年を半年後に控えた優秀な教師です。教育者としての使命感に溢れ、 とても誠実で、それは家庭でも同じです。そんな男ですが、劇中の近未来では、学生たちがNetherのなかで勉強するので、実際の教育現場で教師は子どもたちがハッキングしてポルノを見ていないかと監視する役割に転落しています。この現実に深く挫折して昔のアナログ的時代の美しさに戻りたい、という思いがある人です。 その後、シムズが作ったNetherの空間に入り、自分で気づいていなかった性的嗜好の発見と、シムズという運営者に出会って、久々に知的な会話が可能なパートナーに会えたという喜びを覚えるんです。そのうちにますますこの世界に溺れていくのですが、結局はドイルもシムズも崖っぷちに立たされている人だと思いました」

稽古中もイ・ゴン演出家と丁寧に台詞について相談

●稽古を拝見したら、演出家や翻訳家と役柄や場面の解釈についてちょっと話し合っただけで同じシーンでもガラリと演技を変えられていて、こんなにも変化するのか! と感動しました。さすがはデヨンさんだ!と思いました。
「稽古というものは相手役がいて、俳優同士で互いに影響を与え合いながらやるものですからね。例えば翻訳家のアドバイスを聞いて、それに応じて自分もそのシーンに対する考えが変わるし、相手役も変わるんです。そしてその変化にまたお互いが呼応する…そんなところが、演劇の稽古の大きな楽しみですね。 そしてその過程で見つけたものが本物で、正解の時が多いんです。ひとりでぶつぶつと台本を呼んでいるだけでは絶対見つからない瞬間が訪れる時があります。 そしてまた、演劇が魅力的なのは、劇場で観客に会うと稽古の過程では探し出せていない答えが、観客を通じて探せる時があります。 演劇はそういう過程があるから本当に面白いんですね」

●観客から予想もしなかった反応が返ってくることもあるでしょうね?
「誰かが言ってたけど、劇場の扉が閉まった瞬間、その中にいる人たちの間に一種の共同体というか、同じムードが流れて、それに俳優が影響を受けるんです。 そして、“あ、自分の考えは合ってたな”と快感を得られるときもあるし、観客の反応を通して正解が分かるときもありますね」

●韓国は未成年への性犯罪者に対し、日本以上に厳しい視線が向けられるのでぺドフィリア(小児性愛者)を取り上げた作品がどう受け止められるか気になります。この作品を観客にどう見てもらいたいでしょうか?
「ん~そうですね…敏感なストーリーでもありますが、具体的に表現するのではなく、台詞で暗示する感じです。この仮想世界では小児性愛だけでなく、例えば、斧で少女の体をメッタ刺しにしたりもするんです。だけど、それは言葉だけで表現されますから。この仮想現実について説明するセリフのなかに魅力的な表現がいくつかあるんです。“自分たちが選んだ形で、自身の体外で交流して関係を結ぶようなこの驚異的な世の中”という台詞があるのですが、これは結局、疎外(感)に対する話ではないだろうか? と。 疎外や孤独、存在に対する質問や疑問など、私は疎外に対する問題だと受け取りました」

●8月初旬まで出演されていた『春の日』の初日前にあばら骨にヒビが入るケガをされて、それを押して出演を続けられ、『The Nether』の稽古にも参加されていたと聞いて驚きました
「それでも私はほとんどケガをしないほうです。しかし周りでは例えばクォン・ヘヒョさんは『私に会いに来て(날 보러와요)』という作品に出たとき、暗転するシーンで骨が曲がるほど鼻をぶつけたんです。彼が演じていた刑事は連続殺人犯が捕まえられず、後半で泣くシーンがあるのですが、演出家が“今日の演技は最高だ!”と思ったら、実は鼻が痛くて泣いてた(笑)。カン・シニルさんは昔『アリラン』という作品で舞台から落ちて仙骨を痛めて立ち上がれなくなり、公演が中止になったとか、こういう話が多いんです。僕がケガした日は、『春の日』の最終稽古のあと、テレビ局での撮影が入っていたので後半出演がない場面の間に、早く帰れるよう服を準備しておこうと、普段は通らない通路を通ったらぶつけてしまって(笑) 」

●『春の日』はかなり前から上演されているイメージがあるんですが、初演から出演されているんですか?
「2009年からです。 初演は1984年ですが、09年にソウル演劇祭30周年記念として、これまで出品した作品のなかから“再び見たい作品10”に『春の日』が選ばれたんです。 初演の時からオ・ヒョンギョン先生が父親役でしたが、その時はまだ40代後半で、09年からはどんどん役柄の年齢に近くなられ、むしろ今では超えていらっしゃいますが、09年、11年、12年、そして今年また再演となりました」

●『春の日』で演じられていた長男は、常に弟たちを想い、まるで母親のごとく温かく包みこむような役柄でしたね。
「写実主義のような作品ではなく、 一種のファンタジーのような物語ですよね。父親はものすごいケチで、息子たちから搾取する権力者のような人ですが、そんな父にも老いはやってきます。そして病弱な末っ子の存在。彼ら弟たちを受け入れる長男の母性愛的な姿……これは脚本家が最初から書いていたんです。それで、設定に合わせて表現しようとしました」

●この作品と役柄に、とても愛着をもっていらっしゃるようです。
「そうですね。 愛着がある作品だし、私が本当に尊敬していて、ロールモデルでもあるオ・ヒョンギョン先生と一緒に演じられるので、再演のたびに良くてやっていますね。多少の義務感もあり(笑)、また再演するとしても特別な理由がない限りはやらねばならないでしょう」

※注1:演劇『春の日』は、山村に貧しく暮らす、老いてもなお絶対的な権力をもつ父親と7人の息子たちの姿を通して家父長制を問う作品。イ・デヨンは弟たちと頑固な父親の間をとりもち、家事も引き受けて母親代わりを務める思いやり溢れる長男を演じている。
韓国演劇界を代表する元老俳優の一人で、現在81歳となるオ・ヒョンギョンが、1984年の初演から父親役を演じ、09年に25年ぶりとなった再演以降も出演を続けている。09年からは劇団「白首狂夫(백수광부)」の代表でもあるイ・ソンヨルが演出し、イ・デヨンも継続して出演している。

2011年公演の様子。父親役オ・ヒョンギョン、長男役イ・デヨンのほか、11年公演では三男役に映画、ドラマで活躍するチョン・マンシクも出演していた(アルコ芸術劇場公式映像より)

*     *     *

作品に向かう姿勢、ストーリの解釈などベテランならではの重みを感じていただけたと思います。⇒インタビュー中編からは、イ・デヨンさんの“俳優人生”について伺っています。

【インタビュー中編→】 【インタビュー後編→】


【公演情報】
演劇『The Nether(ネダー)』(네더)
2017年8月24日~9月3日 東洋芸術劇場3館(大学路)

<出演>
●ドイル役:イ・デヨン
●シムズ役:キム・ジョンテ
●モーリス役:キム・グァンドク
●ウードナッツ役:イ・ウォンホ
●アイリス役:チョン・ジアン

原作:ジェニファー・ヘイリー(Jennifer Haley)/演出:イ・ゴン/翻訳・ドラマターグ:マ・ジョンファ/舞台:イム・ゴンス/照明・映像:シン・ジェヒ/映像共同制作:ソン・ギョンビン/衣装:チョン・ミンソン/小道具:パク・ヒョニ/ヘアメイク:キム・グニョン/音楽監督:ピ・ジョンフン/振付:イ・ハンナ/助演出:アン・ミビン/舞台監督:イ・ヒョンジン

写真提供:劇団的(チョク)


取材・文:さいきいずみ 翻訳:イ・ホンイ ポートレート撮影:キム・ジヒョン

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[Special Interview]イ・デヨン【中編】

[Special Interview]イ・デヨン【中編】

 

ここでいきなり筆者の個人的な話で恐縮ですが、俳優イ・デヨンに興味を持つきっかけとなったのが、2005年の『復活(부활)』というドラマでした。主演したオム・テウンの出世作として知られるこの作品は、ある事件をきっかけに主人公ハウンの出生の秘密、事件の背後にある巨悪を暴いていく巧妙なストーリーで放送当時「復活パニック」という熱狂的なファンを生んだ作品でした。劇中でイ・デヨンさんは刑事ハウンの上司であるキョン・ギド班長を演じ、事件の重要なカギを握る役を担っていたのです。

*     *     *

●2005年に出演されたドラマ『復活』は助演陣に渋いベテラン俳優がたくさん出演していましたが、俳優のプロフィールを調べてみると、ほとんどが演劇俳優だったんですよね。
「そう、演劇出身俳優が多かったですね。(キム・)ガプス兄さん、(キ・)ジュポン兄さん……。『復活』は韓国で今でもファン層が形成されていて、マニアのファンがとても多いです。ファンの希望が通って初めてディレクターズカット版DVDも出たし、劇場を丸ごと借りてイベントをやったりもしました」

●演出したパク・チャンホン監督のファンクラブもありましたよね(笑)。このドラマでデヨンさんは警察の捜査班の班長役でした。
「はい。キョン・ギド班長(笑)(※名前の発音は、韓国の地域名、京畿道にかけてある)班長は、ドラマの中盤で刺されるのですが、ストーリー上、重大な秘密を握っているので殺すことはできない。それで、3、4話くらいは病院で横になっているだけで出演料をもらいました(笑)」

●(笑)。このドラマ以降、大学路(テハンノ)でデヨンさんの出演作もいろいろと見るようになりましたが、『春の日』や『私に会いに来て』のように韓国の創作演劇に出演されることが多かったように思いますが?
「創作劇だけではなく、翻訳劇も実はたくさんやってきたんですよ。私が所属してきた劇団『シンシ(신시 現シンシカンパニー)』や、劇団『演友(ヨヌ)舞台(연우무대)』、キム・ガプス先輩が主宰していた『俳優世界(배우세상)』でもちょっとやっていたんです。それぞれが創作劇を優先的に作る劇団だったので、その劇団に所属していたときはほとんど創作劇でしたが、2006~7年? くらいからは大学路で、劇団(で作品を制作、上演する)という概念がやや瓦解していって、プロダクションによる制作システムに変わってからは翻訳劇にもたくさん出演してきました」

●ここからはデヨンさんのこれまでのキャリアについてお伺いしたいです。プロフィールには名門、延世大学の神学科出身となっています。
「はい、延世大の神学科出身はほかにアン・ネサン、ウ・ヒョン。もっと上にはミョン・ゲナム先輩がいますね。アン・ネサンさんは神学科の中にある演劇サークルで活動していて、ウ・ヒョンさんはほとんどやってなかったけど、二人ともデモを一生懸命やっていたほうでした(笑)。実は私と同じ歳なんですが、二人とも浪人したから1学年下で、今も会うと“兄さん”とか“先輩”と呼ばれるんけど、ほぼ友達ですよ。同い年なんだから(笑)」

●やはり皆さん演劇出身俳優ですよね。でも一般的に神学を学ぶ人は神聖でお堅いイメージがあり、なぜ演劇を始めたのか、どうにも結びつかなくて不思議だったんです(笑)
「他の教団の神学校と違って、延世大の神学科は、特定の教団が設立したものではなく、教派連合的な性格もありました。民衆神学と1970~80年代に南米で起きた解放の神学の影響を受けて、若干の政治的な性向も帯びた民衆神学の本山でした。それですごく自由主義的な性向が強く、デモなどの社会運動にもたくさん参加していたんです。一般的に神学校を卒業すると牧師になったり、神学科の教授になる学校とは違って、延世の場合はとてもリベラルで総合大学の中にあるからか、いろんな関心も持てたんです。卒業後にも牧会や一般神学の勉強を続ける比率が50%にも満たない。 30~40%ぐらいかな? それで変わった奴が出ているんです。例えば同級生には映画監督や演劇演出家、警察官もいて、金融監督院に入った奴もいます。神学科にしては幅が広いんですよ」

●元々キリスト教徒なんですよね?
「うちは三代キリスト教の母体信仰(※生まれながらにしてキリスト教を信仰していること)で、幼いころから自然に教会に通っていた敬虔なキリスト教徒でした。でも高校3年生のとき、むやみに胸が熱くて、空しくて、訳もなく世の中が悲しくなり、死にたくなったことがあったんです。ところが自分が20年近く信じて来た信仰がそれを助けることが出来なかったんですよ。 それでさらに迷って彷徨もたくさんしました。その頃に酒も覚えて(笑)。それから大学入試のとき本当は哲学科とか国文科くらいに行ければいいかと思っていたけど試験の点数が微妙で、哲学科はちょっと危なく、神学科は安全圏でした。それで神学だろうが哲学だろうがもう、反抗心のようなものもあり、迷いが生じた時には何の役にも立たなかったこの信仰に一度正面からぶつかってみようという子供じみた考えもありました。当然延世大という看板にも惹かれ、ロマンももっていました。イ・ムンヨル(이문열)という作家の『人の息子(사람의 아들)』という小説を読んで感じた、神が人間の問題で悩む神学が、格好よく見えたりもして神学科に行きました」

●そういえば以前インタビューした俳優(⇒イ・スンジュ編参照)も、本当は哲学科に行きたかったと言っていました。
「だけど、いざ神学科に入ったら、民衆神学を支持した教授たちはみな追い出され、とても厳格でつまらない教授だけが残っていて、思っていたほどの面白さがなかったんです。 春に入学したばかりの新入生がデモして連行されている姿ばかり見てとても胸が痛むけど、石を投げる勇気はない……そんな憂鬱な日々を送っていたら、ある日高校の同級生がすごく楽しそうにしているんですよ。“お前、何やってんの?”と訊いたら、“演劇をやっていてすごく面白い”と。それで“僕もそこに入ってみるか?”となったんです。その演劇サークルに入る前は、実は演劇を1作しか見たことがなかったんです。『エクウス(에쿠우스)』※2 という作品で、その頃ずっと信仰や異性の問題に悩んでいた自分とぴったり合致する作品でした。それまでは演劇に魅力を感じたことがなかったのに、作品が本当に強烈で。今でこそ俳優が全裸で出るような作品もありますが、当時は舞台で女性が下着しか身に着けていない姿を間近で初めて見てかなりショックを受けました。それでその友達にくっついて演劇サークルに入りました。演劇自体の面白さはよく分からなかったけど、若者たちがひとつのことにこだわり、今にして思えば大したことでもないのに、酒を酌み交わしながら演劇や芸術の話をするのが素晴らしく思えたんです。メンバーもとてもいい人たちで、俺が夢見ていた大学生活はこれだ!と。演劇自体よりも人と会って騒いで少し芝居する……すると、格好よく見えるし、その雰囲気が好きでサークル活動をしていました」

※注2 演劇『エクウス』は英国の劇作家ピーター・シェーファーが1973年に発表した戯曲。愛馬の目を突いた少年アランと精神科医ダイサートとの対話から家族の問題、思春期の性など、彼の背景が徐々に明らかになっていく。韓国では劇団実験劇場が1975年に初演し、チェ・ミンシク、チョ・ジェヒョンなど多数の有名俳優が出演してきた。2016年には韓国40周年記念公演も行われた。

●大学を卒業したあと、本格的に演劇俳優として活動を始められたんでしょうか?
「大学1、2年生の時は、本当にただ友達と話してお酒を飲んで遊ぶ楽しさだけでした。そのあと、短期間軍隊(兵役)に行ったあと、演劇の勉強をきちんとしてみようと思い、本も一生懸命に読んだし、舞台もマメに見に行って、これを自分の一生の仕事にしようかな?と悩んだ末に、やろう、と決めました。他に面白さを感じるものもなく、自信もなく、 サラリーマンはやりたくなかった。私はたまたまタイミングが良かったんです」

●でも、ご両親は反対されたのではないですか?
「当然反対しました。 私は父が50歳を過ぎてできた子なんです。両親は朝鮮戦争のときに越南(北朝鮮から韓国に降りて来た)してきたのですが、姉が二人いたけど、歳を取ってからできた長男だから大事に育てられました。そんな息子が演劇をするというんだから(笑)。しかし父は理解がある人でしたから“演劇をやるのはいいけど、それは金持ちの子がすることで、自分がいつまで助けてやれるか分からない”と、そういう心配をしてくれたんです。私は二代独子※3 だったので、本当は兵役が30カ月のところを6カ月だけ勤務をしたのですが、“軍隊に行ったつもりで2年だけやってみます”と言い張ったんです。 ですが、それが30年になりましたね」

※注3 二代独子(イデドクチャ/이대독자)とは、父、子二代続けての一人息子(=一家の跡取り)という意味。二代独子の場合、以前は兵役期間が短縮されたり公益勤務に着いたりしていた。現在は一人息子でも基本的にはこのような優遇措置はないという。

●最初に出演されたのはどんな作品でしたか?
「サークル外の作品に出たのは大学3年の冬休み、1987年でした。演劇部の先輩であるキム・テス演出家※4 が他の演出家の作品の助演出をしていました。『不細工な美女(米女)못생긴 미녀』※5 という作品でしたが、アメリカを風刺するような一種の反米演劇でした。出演者の中の一人が、初日の3週間前に突然逃げたんですよ。それで俳優が一人いなくなったので誰か探して来い、と言われたテス兄さんが、まだ学生だけど、そんなに大きな役ではないので、演出家に一度使ってみてくださいと言って、私が起用されたんです。それが87年の1月か2月でした。ちょうどパク・ジョンチョル※6 が拷問されて死んでから間もないころでした。 これが最初ですが、大学を卒業してから出演したのは『立ち上がれアルバート(일어나라 알버트 原題は「WOZA ALBERT!」)』という作品が私のデビュー作だと思います」

※注4 キム・テス(김태수)演出家 劇団「卍模様(완자무늬)」の代表。同劇団は、イ・デヨンと同じく延世大学神学科出身の俳優ミョン・ゲナムらと共に1984年に設立。社会問題を題材にした創作劇や、翻訳劇も硬派な作品を多数上演している。
※注5 韓国語ではアメリカのことを美国(미국 ミグク)と表記するため、美女=アメリカ人女性の意味。美女を指すのは同じ文字・発音の(미녀 ミニョ)。
※注6 パク・ジョンチョル(박종철) 当時ソウル大学の学生だった民主活動家。全斗煥(チョン・ドファン)大統領が独裁体制を敷いていた第5共和国末期の1987年に公安当局に拘束され、拷問を受けて死亡した。これを政権が隠蔽しようとしたことから「6月抗争」と呼ばれる多数の民主化運動が起こり、のちに13代大統領となる盧泰愚(ノ・テウ)が「6.29民主化宣言」を出すことになった。

*     *     *

中編では俳優イ・デヨンの誕生秘話をじっくり語っていただきました。⇒インタビュー後編 では、これまで出演してきた演劇について。そして出演作が50本を超える映画やドラマについても伺っています。

【←インタビュー前編】 【インタビュー後編→】


取材・文:さいきいずみ 翻訳:イ・ホンイ ポートレート撮影:キム・ジヒョン

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