キム・グァンポ

[Special Interview]イ・スンジュ【後編】

[Special Interview]イ・スンジュ【後編】

 

●今回はせっかくゆっくりとお話しを伺える機会なので、もっと遡って、演技を始めたきっかけの話もお聞きしたいです。
「学生の時は、哲学科に行きたかったです。哲学科に行くと、自分自身を知ることができるだろうし、いろいろと考えられるのではないか? そうすれば僕は本当に何がしたいのかを分かるだろうと。幼い頃から、自分が何をやりたいか、知りたかったです。人は皆、生まれた理由があると思うんです。それを知ってから死ぬのが人生の目標です。なるべくそれを早く知って生きていたい。それで漠然と哲学科に行きたかったです。格好いいし、当時好きだった歌手、詩人、アーティストが哲学科を出た人が多くて。自然と興味を持つようになりました」

●そういえば昨年別のカンパニーで上演した『セールスマンの死』に主演されたイ・スンジェ先生はソウル大学哲学科出身で有名ですよね。
「でも成績がよくなかったので、哲学科はただ、憧れだったんです。なぜかと言うと、僕は子どものときからスポーツをやっていたんです。テコンドーを。後から哲学科という目標が出来て、一所懸命に勉強しましたが、難しかった。でも映画を見たり本を読むのが好きだったので、ある日、映画を見て突然カッコいいと感じました。ある意味、俳優は哲学に似ていると思ったんです。結局、人を探求して、人について勉強するんです。哲学はそれを学問として接していき、演技は実践としてやっていくのではないか? と気付いたんです」

●ちょっと大人びた考えの子というか…不良じゃないけど、先生が結構手を焼くタイプの学生だったのでは?(笑)
「このエピソードを聞くとすぐわかると思います。高校のときだったんですが、試験の一週間前、突然海に行きたくなったんです。それで、先生に“海に行ってきます”って言ったんです。唖然としていた先生の顔を未だに忘れられません。”あ、こいつどうしよう”と言いそうな顔でした(笑)。
先生は“お父さんの許可をもらって来なさい”とおっしゃいました。つまり、“許さない”という意味ですよね。でも、父が許可書を書いてくれたんです。怒らないで、“どうした?”と聞いてくれました。“いま考えたいことがあって、こういう時間が必要だ”と答えたんです。すると“行ってきたら何か変わりそうなのか?”と聞かれたので“変わるように努力する”と、答えました。父は許可してくれそうな人ではないんですが、その時は男として通じた何かがあったかもしれません。それで“行ってこい”と。そして先生に電話して“自分が責任を取るから勝手にさせましょう”と話してくれました。結局、試験に間に合うように戻ったんですが、海辺にずっと寝ていたから一人だけ日焼けして真っ黒になってて(笑)。とにかく試験には間に合いましたけど、バカでしたね、バカ(笑)」

高校時代、試験前に突然海に行ったエピソードには爆笑!

●舞台での優等生イメージがだいぶ壊れました(笑)。これまで様々なキャラクターを演じてきましたが、実際の性格はどんな感じですか?
「最もよく言われるのは、シャイだとか。静かだとか。あと“もうちょっと何か言えよ”と、よく言われます。でも、両面性があると思います。結構喋ったりもするんですよ。親しい人たちと一緒にいる時や、話したいことがあったら良くしゃべります。ただ、話すことがないから黙っているんです。無理やりに沈黙を埋めようと意味のない会話をするのは嫌いなんです。だから、何も言わない時間があるんです」

父ウイリーに抱えていた苦悩を吐露する後半のシーンでは圧巻の演技を見せた。『セールスマンの死』2017年公演写真より ©芸術の殿堂

●そういう性格だと、俳優としてやっていくには大変なことも多いかと思います(笑)。
「演劇をやってていい部分は、他のジャンルに比べて稽古期間が長いじゃないですか。いくら主人公といっても、たった2時間の作品で、しゃべる言葉は限られているわけです。でもそれを、2カ月、3カ月と稽古をするんです。ある意味、非生産的ですね。でも、それほど深くその人物に近付くことができます。だから他のジャンルより演劇が好きなんです。
今回の『セールスマンの死』の場合も、ビフについて深く理解することができるんです。アーサー・ミラーが作り上げた人物ですが、僕自身についても感じるものがあるんです。あ、自分がこういう人だったんだ。そういう人物が一つ一つ(作品に)残るというか。だから、やっぱり演劇が好きです。哲学と似ているんです。本を読んで、音楽を聴いて、思想を勉強してやっと分かることもあれば、感情対感情で、舞台上でぶつかり合いながら得ることもあります。作品を一つ終えると、本を何十冊も読んだ気持ちになるんです。だいたい、戯曲に登場する人物は、極端なキャラクター、極限に向かうキャラクター、崩れ落ちるキャラクター、理想と現実の間で苦しむキャラクターが多いですね。そうじゃないと、戯曲にわざわざ登場する必要もないでしょう。そのような人物を研究するので、いろいろ考えるようになります。そんな人物を演じることが、僕にはよく合うと思います」

●作品してはとても見ごたえがある一方で、演じるには本当に難しい役柄が多いですよね。そういうキャラクターをあえて選んできたんですか?
「そうですね。僕がそういう人物にカタルシスを覚えるみたいです。ただ、これは単なる欲求解消ではないです。僕が求めている作品は、ある程度、考えさせる作品です。演劇を観て、自分を振り返ってみたり、自分の隣にいる人や自分が属している社会をもう一度見直してみたりしてほしいです。『セールスマンの死』が名作である理由は、家族の亀裂を描きながら、アーサー・ミラーは社会を批判しているんですね。当時、資本主義の考え方が蔓延していて、みんな良い暮らしをしているように見えるけど、こんな生き方はダメだと、語ってくれた作品です。戯曲が発表された当時は、非常にセンセーショナルだったそうですが、今の観客にとっては現実的過ぎる。当時は、未来を考えて書いた作品なのに、現代だと凄絶に共感するんです。でも、共感するだけで終わってはダメです。単なる解消ではなく、考えないといけない。
例えば、とても憂うつな日に劇場で思いっきり笑えたら、それはそれで価値のある作品だったと思います。そのような作品も必要ですが、僕は重くても作品が内包している何かを通して、観客とコミュニケーションしたいので、その結果、ほとんど重い人物を演じてきましたね」

2016年の演劇『二つの部屋』では、レバノンでテロリストに拉致された主人公マイケル役で出演。劇中のほとんどを目隠しされ、手を縛られた状態で演じた

●これまで出演した作品は、キム・グァンボ演出家の作品が多いです。「キム・グァンボのペルソナ」とも呼ばれていますが?
「演劇をちゃんとやり始めるきっかけになった作品が、クァンボさんの作品でしたから。ペルソナと言われたりもしますけど、違いますね。演出家と俳優の作業って、お互いに慣れてしまうのはもちろん良くないですが、演出家と俳優が初めて顔を合わせて作品を作る時は、お互いを把握する時間がどうしても必要になってきますよね。グァンボさんが僕を呼んでくださるのは、単純に僕のことをよく知っているからです」

●一度キム・グァンボさん演出作で、日本の舞台に立ったこともあるとか!?
「ええ。いつだったかもう正確な年度は覚えていませんが。その頃、偶然グァンボさんに会ったんです。で、“お前、今何やってる?”と聞かれて、“いきなり日本に行かなければならないんだけど行く?”と言われて。韓国人俳優が必要な状況で、誰が良いか悩んでいたところ、僕と会ったんです。だからペルソナではないんですよ(笑)。公演は北海道の札幌でした。美味しいものもいっぱい食べて、とても楽しかったです。劇場はコンテナを改造した感じで、風情のある屋根もあって。韓国では見たことがない、工場のような劇場で上演した覚えがあります。終演後には、地域の方々だと思いますが、老夫婦からパンをいただいたんです。そんな文化があるんですね! 韓国は主な客層が若い人ですので、そういうのがとても新鮮で羨ましかったです」

●それはどんな作品だったのでしょう?
『蟹と彼女と隣の日本人』(2011年6月、札幌座で上演)という作品で、劇中の僕の設定は日本に定住しようとする韓国人でした。日本語と韓国語を半分ずつ使いましたが、僕が日本語でしゃべると、観客はみんな笑うような、そんな日本語をめちゃくちゃに喋りました。台詞は覚えていませんが、『お~いお~い北海道』みたいな歌は覚えています。グァンボさんが、北海道に行くとこの歌が24時間流れているんだとおっしゃったので、まさかと思ったんですが、街で本当に流れてたんです!(笑)それがとても面白かったです」

『M.Butterfly』では、妻がありながらオペラ『蝶々夫人』で見染めたソン・リリンに惹かれていくフランス人、ルネを熱演。ファンが急増した。(2014年公演より)

『M.Butterfly』2014年公演より

 

●キム・グァンボ演出作といえば『M.Butterfly』で演じられたルネの人気は凄かったです。
「僕が出演した作品のなかでは一番大衆的な作品でした。初演には参加してなくて、再演から出たんですが、もう既に作品自体を愛するファンが多かったので、そのおかげですね。この作品に出たことでいろんな方々に出会えました。それから、キム・グァンボ演出家作品のファンもとても多いんです。『M.Butterfly』はまた再演されるそうですよ。4回目になりますが、今回はグァンボさんも参加しないそうですので、出演する俳優も全員変わるのではないかと思っています」


●2015年に出演された土田英生原作の『少しはみ出て殴られた』は、登場する囚人たちのなかでもちょっと間の抜けた面白い役でした(笑)
「僕はバカ専門俳優ですよ。大韓民国のダメ男はほとんど演じてみましたけど(笑)。実はいっぱいやってるんですよ。何が面白いか……見かたによっては意味も変わるかもしれません。ある人物が、一つの方向に向かって一所懸命にやっていく姿を傍から眺めると、ある意味とても滑稽ですよね。そういう人物をよく演じてきたなと思います。だからダメな人物を演じるのが好きなんです。恰好つけるような演技は苦手です」

LGアートセンターで上演されたキム・グァンボ演出作には2年連続で出演。ともにコミカルなキャラクターだった。『社会の柱』(2014年 写真左)、『少しはみ出て殴られた』(2015年 写真右)

●そういえば、韓国オリジナル作品よりも翻訳劇への出演が圧倒的に多いですね。そんな中で最も気に入っている作品は何でしょう?
「国立劇団で上演した『ガラスの動物園』。あとはいま出演している『セールスマンの死』です。作品の情緒が、自分に良く合っていると思います。テネシー・ウィリアムズ、アーサー・ミラーと、両方とも古典作品ですね。最も残像が強く残ったんです。今回も強く残る気がします」

●そしてスンジュさんが主演した作品は、好評で再演されることも多いです。
「正直、一番またやりたい作品が『ガラスの動物園』です。俳優として舞台上でやらなければならないことがあるんですけど、十分発揮できなかったんです。もっと複雑な人物だったのに断片的に考えてしまった。トムという人物を、親、自分の夢に対する気持ち、姉への愛憎…だけで作り上げようとしてたんです。原作者のテネシー・ウィリアムズはもっと大きい話がしたかったと思うんですが……。再演までやったので、もう僕がスーパースターにならない限り(笑)、3度目の再演する機会はなかなか得られないでしょうね。とても残念です」

●お話しを伺っていると、作品や役柄をとても深く考えられるタイプだと感じました。演出家や劇作家など、制作者にも向いているのでは? と思ったんですが。
「実は児童劇を作ってみたいんです。良い児童劇が何かはよく分かりませんが、音楽とかいろいろ使って、大人たちが純粋な気持ちで、本当に子どもたちのために作る作品を。そういう児童劇を作って子どもたちの人生の1ページを飾ってあげたいです。そうすればその子どもが成長後、自然に演劇を観に行ったりするでしょう? 今の子どもたちは、英語を使う幼稚園に通って、お芝居も英語演劇(のような教育的なもの)しか見ていないんですよ。そんな子供たちは大人になってダンスや音楽会に行こうとしても、いきなりそれを楽しめないと思うんです。良い映画や音楽などに触れて、休むことって大事だと思うんです。長期的に見て、韓国演劇の発展のためにも必要なことだと思っています」

●もしかして劇作にも興味ありますか?
「あります。たいしたことではないですが。劇作に関する本を読んでいます。でも劇作にはあまり自身がなくて、それよりは演出をやってみたいです。知識がないので、もっと勉強しなければならないですけど、俳優としても良い影響を与えられたらいいなーと。それが1次目標です。何かを始められる影響力というか。そのために、もっとがんばって演劇をやりたいです。とにかく演劇はこれからずっと頑張ってやっていきたいですから」

●3時間の公演を終えられた後で、とてもお疲れだったと思いますが、今日はいろんなお話を伺うことができて、とても楽しかったです!本当にありがとうございました!
「こちらこそ、ありがとうございました。食事も本当に美味しかったです!」

*     *     *

俳優の類型を大きく二つにわけるなら、このように分けられるのではないかと思います。輝きたくて俳優になるタイプ。一方、物語の世界が好きでその中に入ろうとして俳優になるタイプ。これまで稽古場で出会った俳優たちを見ると、意外にも後者のほうが多いです。有名になることにはあまり興味がなく、見られることを恥ずかしがるような人たちです(俳優なのに!)。その代わり、彼らは意味のある作品で、そのキャラクターとして存在するときには自信を持って舞台に立つのです。イ・スンジュさんもそんな俳優の一人。加えて彼は、作品を作るたびに共演した俳優のみならず、作品を裏で支えたスタッフとも良い仲間になれる人です。彼と一度仕事をすれば、またぜひ彼と一緒に仕事をしたいと思わせてくれるような俳優さんです。
私が今まで出会った俳優のなかで、最も丁寧に戯曲を読む印象があったスンジュさん。やはり演出にも興味を持っていて、児童劇を作りたいとは驚きました! その素敵な夢に向かってさらなる活躍を期待しています。

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【Profile】イ・スンジュ(이승주 Lee Seung-Joo)
東国大学演劇学科卒。2008年にKBS公式採用21期に合格し、数作のドラマに出演。10年の『追跡(추적)』から本格的に演劇中心の活動をはじめ、確かな演技力に加え、モデル並みの長身と甘いルックスで観客を魅了し、演劇界で一躍注目の若手俳優となる。その後も『私の心臓を撃て(내 심장을 쏴라)』(10年)、『ロマンチスト殺し(로맨티스트 죽이기)』(12年)、『戦場を盗んだ女たち(전쟁터를 훔친 여인들)』(13年)など公立劇場作品への出演が多かった彼が、14年に再演した『M.Butterfly』で主人公ルネを好演し、ファン層を大きく広げた。その後も『社会の柱たち(사회의 기둥들)』(14年)、『ガラスの動物園(유리동물원)』(14、15年)、『少しはみ出て殴られた(살짝 넘어갔다가 얻어맞았다)』『俺は兄弟だ(나는 형제다)』(15年)、『セールスマンの死(세일즈맨의 죽음)』(16、17年)『グロリア(글로리아)』『二つの部屋(두 개의 방)』(16年)など、演技巧者が揃う話題の演劇にコンスタントに出演している。

取材:イ・ホンイ/さいきいずみ 文:イ・ホンイ 撮影:キム・ジヒョン

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イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.16

イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.16

 

ハムレットとして生まれ、ジュリエットを夢見る女『ハムイク』

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キム・ウンソン脚本家 ©ドゥサンアートセンター

今回は、今月、韓国演劇界で最も注目されている人を紹介したいと思います。劇作家キム・ウンソンです。彼の新作『ハムイク(함익)』(演出:キム・グァンボ 김광보)が9月30日から世宗(セジョン)文化会館Mシアターで、そしてもう一つの新作『サンシャインの戦士たち(썬샤인의전사들)』(演出:ブ・セロム 부새롬)が9月27日から、ドゥサン・アートセンター スペース111で上演されるからです。2作とも評論家と観客の両方から今月最高の期待作と言われています。

話題の主人公キム・ウンソン(김은성)は、1977年生まれ。2006年『シドン仕立て店(시동라사)』でデビュー以来、『スヌ伯父さん(순우삼촌)』(2010)、『延辺母さん(연변엄마)』(2011)、『月の国連続ドラマ(달나라연속극)』(2012)、『ロプンチャン流浪劇場(로풍찬유랑극장)』(2012)、『木蘭姉さん(목란언니)』(2012)、『ぐるぐるぐる(뺑뺑뺑)』(2014)等々、数多くの話題作を発表してきた劇作家です。特に、脱北して韓国に来た女性を主人公にした『木蘭姉さん』は日韓演劇交流センターが主催する「韓国現代戯曲ドラマリーディング」(2015年1月 世田谷パブリックシアター シアタートラム)で、日本語朗読上演され、両日満席を記録するほど日本の観客からも多くの支持を得ました。この『木蘭姉さん』のように彼のオリジナル戯曲も高く評価されていますが、彼が最も得意とするのは、西欧の古典戯曲を現代韓国社会に置き換え、緻密でユーモア溢れる脚色バージョンを書き上げることです。チェーホフの『ワーニャ伯父さん』を『スヌ伯父さん』に、リュボミル・シモヴィチ(Ljubomir Simovic)の『ショパロヴィチ流浪劇団(The Traveling Troupe Sopalovic)』を『ロプンチャン流浪劇場』に、テネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』を『月の国連続ドラマ』にと、有名な原作を全く新しい作品に変身させる奇抜さは、ほかの作家は真似できない彼の武器です。今月の新作のなかでも、その系譜を継ぐ作品があります。シェイクスピアの『ハムレット』を脚色した『ハムイク』がそれです。

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『ハムイク』の主人公ハム・イク役のチェ・ナラ(左)と、幻覚のなかに登場するもう一人のハム・イクを演じるイ・ジヨン ©ソウル市劇団

『ハムイク』の最も大きな特徴は、ハムレットを女性にしたところです。韓国の財閥「マハ・グループ」オーナーの娘であるハム・イクは、イギリス留学で演劇(悲劇)を専攻した秀才です。彼女は、マハ・グループ傘下にある大学の教授に就任し、才色兼備な女性として上流社会の注目を浴びます。しかし彼女は長い間、復讐心を胸に秘めています。子どもの頃、自殺した母が、父と継母によって殺されたと思っているからです。しかし父の権威の前では一言も言えない彼女には、婚約者のオ・ピリョンも何の役に立ちません。その代わりに、ボンドを吸って幻覚の中だけで存在するもう一人の自分と会話しながら復讐を夢見ます。そんなある日、大学で『ハムレット』の上演に向け指導している中、ハムレットに夢中になっている学生「ヨヌ」が彼女の目に留まります。ヨヌの登場で、彼女の心は揺れ始めるのです。

先に稽古を見られる幸運を得て稽古場を覗いてみたら、まさに息詰まる100分でした。分厚い台本を消化した26名の俳優たちが、約100分間という短い時間の中に『ハムレット』と今の韓国を生きる人々を表現していたからです。そしてこの世界を作っていくのは、韓国屈指の演出家キム・グァンボです。彼が団長を務めているソウル市劇団は、今年の上半期の定期公演でもシェイクスピアの『ヘンリー4世』を上演して好評を得ましたが、素敵なチームワークは今回も舞台上で輝くだろうと感じられました。

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『ハムイク』制作発表より (写真左から)キム・ウンソン脚本家、ユン・ナム、チェ・ナラ、イ・ジヨン、キム・グァンボ演出家 ©ソウル市劇団

稽古の前には「たくさんの方々が期待してくださっているんですが、実は心配です」と自信なさげに語っていたキム・ウンソンさんも稽古を見ながら感嘆詞を連発!ソウル市劇団の団員でハム・イクを演じるチェ・ナラ、彼女の幻覚の中に現れるもう一人の自分を演じるイ・ジヨンは驚くほどの呼吸で悲劇の主人公を表現していました。また、劇団外から今回特別参加している人気俳優のユン・ナムは、明るく熱心で演技そのものにはまっている、普段の彼とほぼ変わらないようなヨヌを演じていました。三人だけではなく、26名の俳優の一人ひとりの集中力と熱気は本当にすごくて、見ているこちらも緊張するしかなかったほどです。でも決して嫌な緊張感ではなく、この物語の悲劇性にとても似ていて、一層この作品世界に入り込ませてくれました。

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『ハムイク』制作発表より ヨヌ役を演じるユン・ナム ©ソウル市劇団

学生たちに「あんたたちに悲劇がわかる?」と叫んだハム・イクは、結局最後には凄絶に壊れてしまいます。ヨヌを見て揺れ始めた恋心、彼女の陰によって執着やヒステリーのような醜い形になってしまいます。優柔不断なハムレットのキャラクターから彼の女性性に注目し、この作品を執筆をしたというキム・ウンソン。この作品はオリジナルの創作劇だと言ってもいいくらい原作を大胆に脚色していますが、『ハムレット』のストーリーを知った上で観劇すると、より面白くなる作品です。400年前にイギリスで誕生した物語が、ソウルのどこかで実際に今起こっていることと言っても違和感がないほど生々しい物語になっているからです。ハム・イクが客席に向かって、「生きるべきか死ぬべきかは問題ではない。“生きているか死んでいるか、それが問題だ”」と問う、『ハムレット』の有名なセリフを活用したシーンも胸を打ちます。

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『サンシャインの戦士たち』イメージ写真 ©ドゥサンアートセンター

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『サンシャインの戦士たち』チョン・バクチャン(左)と、シム・ジェヒョン ©ドゥサンアートセンター

キム・ウンソンのもう一つの新作『サンシャインの戦士たち』も、韓国の現代史の素顔をそのまま見せてくれる作品です。3年以上の時間をかけて執筆したというこの戯曲は、娘を失った小説家を主人公にし、彼の目に映る、繰り返される歴史の悲劇を描いています。彼が主宰する劇団「月の国椿の花」によって上演されるこの作品は、彼がドゥサン・アートセンターのヨンガン財団から受賞した「第3回ドゥサン・ヨンガン芸術賞」の副賞として企画・制作されました。ドゥサン・アートセンターは若手アーティストを継続的にサポートする活動をしているのですが、彼はそのサポートを受けている一人でもあります。今後ドゥサン・アートセンターが制作した彼の代表作『木蘭姉さん』もオーディションを行い新メンバーによる再演を計画しているそうですので、これからのキム・ウンソン脚本家とドゥサン・アートセンターのパートナシップにもご注目ください。


hamikposter【公演情報】
演劇『ハムイク』(함익)
2016年9月30日~10月16日 世宗文化会館Mシアター

<出演>
カン・シング、チェ・ナラ、イ・ジヨン、ユン・ナム、ファン・ソンデ、パク・ギドク、グ・ドギュン、イ・ウォニ、キム・ドゥボン、キム・スア、ナ・ソクミン、ソン・チョルホ、チョン・ウンジョン、イ・ジョンジュ、チョン・ボヨン、イ・セヨン、パク・ジンホ、ホ・ヒョホン、チョン・ソクファン、チョン・ユジン、ユ・ウォンジュン、ハン・ジョンフン、パク・ヒョン

脚本:キム・ウンソン/演出:キム・グァンボ/音楽監督:チャン・ハンソル/振付:クム・ベソプ/美術:パク・ドンウ/衣装:ホン・ムンギ/ヘアメイク:イ・ドンミン


sunshineposter演劇『サンシャインの戦士たち』(썬샤인의 전사들)
2016年9月27日~10月22日 ドゥサン・アートセンター Space111

<出演>
ウ・ミファ、キム・ジョンテ、イ・ファリョン、クァク・ジスク/クォン・テゴン・チョン・バクチャン/チョン・セビョル/イ・ジへ/シム・ジェヒョン/チョ・ジェヨン/ノ・ギヨン/チャン・ユル/パク・ジュヨン

脚本:キム・ウンソン/ドラマターグ:ソン・ウォンジョン/演出:ブ・セロム/美術:パク・サンボン/照明:チェ・ボユン/映像:チョン・ビョンモク/音楽:チェ・ゴウン、ファン・ヒョヌ/音響:イム・ソジン/衣装:ぺ・ウンチャン、リュ・ヘソン/小道具・ヘアメイク:チャン・ギョンスク

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[PLAY]劇団メンシアター新作『デビル・インサイド』7月上演!

[PLAY]劇団メンシアター新作『デビル・インサイド』7月上演!

 

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(写真上段左から)キム・テフン、ウ・ヒョンジュ、パク・ホサン (同中段左から)チョン・スヨン、イ・チャンフン、グ・ドギュン (同下段)イ・ウン

『ディナー』『SOME GIRL(S)』『隠密な喜び』など、優れた海外戯曲を韓国に初めて紹介し、『ターミナル』『フフフ、ヒヒヒ』などオリジナル作品でも洗練された舞台を披露して、常に観劇ファンに厚い支持を得ている劇団メンシアターが、新作『デビル・インサイド』を7月に上演する。

『デビル・インサイド』の原作者、アメリカの劇作家デヴィッド・リンゼイ=アベアーは、ブロードウェイでいま注目を浴びる劇作家の一人。2006年発表の『ラビット・ホール』でピューリッツァー賞を受賞しており、同戯曲は『ヘドウィグ』で知られるジョン・キャメロン・ミッチェルが監督し、ニコール・キッドマン主演で2010年に映画化されている。

アベアーが1997年に発表した処女作である『デビル・インサイド』は、母子家庭で育ったジンが主人公。誕生日を迎え、成人となった朝に、母親から突然14年前に登山中に心臓麻痺で死んだと聞かされていた父が、実は他殺だったと明かされる。さらに犯人を捜して復讐しろと命じられ、困ってしまうジン。彼は復讐よりも大学でロシア文学の講義を一緒に受けているケイトリンに夢中。しかし、ケイトリンは講義をするカール教授が好きで……と、ジンから派生した奇妙な人間関係のなかで、ある日予期せぬ事故が起こり、復讐の連鎖となっていく。サブタイトルに“誰もが心の奥底に悪魔のひとつくらいは持っている”とついているように、人間の心の闇をユニークな方式で暴き出すブラックコメディだ。

青年ジン役には、独特の間合いととぼけたキャラクターで『ターミナル』『フフフ、ヒヒヒ』など、近年のメンシアター作品には欠かせない存在となりつつあるイ・チャンフン。そしてジンに復讐をけしかける母スレイター夫人役には劇団代表のウ・ヒョンジュ。ジンが片思いするケイトリン役には、『ターミナル』などで、イ・チャンフンとの絶妙な相性を見せてきたイ・ウン。ケイトリンが執着するカール教授役は、『桜の園』『14人(in)チェーホフ』『ターミナル』などのメンシアター作品に客演してきたキム・テフンと、ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』『ラブレター』『氷』『デストラップ』と舞台シーンで精力的に活動し、メンシアター作品にも多数出演しているパク・ホサンがWキャストで演じる。
そのほか、彼らの複雑な人間関係に絡んでくるキャラクターとして、ミステリアスなアーティスト、リリー役に『M.Butterfly』に出演していたチョン・スヨン、常に「違う何か」を求めている平凡な男、ブラック役は『望ましい青少年』や鄭義信演出『歌うシャイロック』などで、抜群のコメディセンスを見せていたグ・ドギュンが演じる。

演出は、韓国演劇界で由緒ある「イ・へラン演劇賞』を今年受賞したキム・グァンポ。彼は2015年にメンシアターが上演した『フローズン』の演出も手掛け、全公演が完売する大ヒット作に導いている。

韓国の舞台シーンでは一目置かれている演出家と俳優たちが揃い、期待がふくらむ『デビル・インサイド』は7月8日から、大学路アートワンシアター2館で開幕する。


davilinsideposter【公演情報】
演劇『デビル・インサイド』(데블 인사이드/A Devil Inside)
2016年7月8日(金)~7月31日(日) 大学路アートワンシアター2館

<出演>
キム・テフン、パク・ホサン、ウ・ヒョンジュ、チョン・スヨン、グ・ドギュン、イ・チャンフン、イ・ウン

原作:デヴィッド・リンゼイ=アベアー(David Lindsay-abaire) 演出:キム・グァンポ

写真提供:劇団メンシアター ©韓劇.com All rights reserved. 記事・写真の無断使用・転載を禁止します。

[PLAY]韓国の名優を集め、土田英生原作『少しはみ出て殴られた』開幕!

[PLAY]韓国の名優を集め、土田英生原作『少しはみ出て殴られた』開幕!

 

sukosi13 韓国演劇界の演技派俳優を集めて上演される『少しはみ出て殴られた』のプレスコールが開幕を控えた11月5日、LGアートセンターで行われた。
『少しはみ出て殴られた』は、京都を活動拠点にしている劇団MONOの代表を務める、劇作家・演出家、俳優の土田英生(つちだひでお)が2012年に発表した戯曲が原作。物語の舞台は、軽犯罪の常習犯を収監している刑務所「第45更生施設」。6人の囚人と2人の看守が、ある日お遊びで刑務所内に一本の線を引いて国境をつくったところ、それまで平和的に刑務所生活を送っていた彼らが、この線のために不自由を強いられ始めるというシニカルなブラック・コメディだ。
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演出家キム・グァンポ(左)と原作者の土田英生

演出のキム・グァンポは昨年、同劇場でノルウェーの劇作家イプセン原作の『社会の柱』を上演し、今回でLGアートセンターとコラボレーションした新作上演は2回目となる。本作については「決して重くない作品です。原作と大きく変えたところはなくて、観客が分かりやすいように人名や地名などを変えただけ。線を引いたことで派閥ができる、人間の隠された本性を逆説的に面白く表現しようと思いました」と紹介した。

試演後の記者会見には、日本から駆け付けた原作者土田英生も参加した。「この作品は数年前に書いたものですが、日本は韓国ともいろんな問題がありましたけども、当時中国との領土問題があった時でした。その頃に仕事で中国に行って、現地の演劇人と人間的な素晴らしい交流をしたのですが、日本に帰ってきたら、国内がとても保守化している感じがしました。僕たちは(作品を通じて)表現をしている人間ですので、それを政治的ではなく、人間対人間の言葉を使って、それをどうにか表現できないかなと思いました」と、作品を生み出したきっかけを語った。また、「役者ひとりひとりがとても魅力的で、そうすると自分が目立とう、誰が目立とう、みたいなことになりがちなんですが、チームワークがとても良いと思いました」と、小劇場から大劇場作品へと大きく飛躍した韓国版に好印象を持っているようだった。

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(写真左から)キム・ヨンミン、イ・ソクジュン、ユ・ビョンフン、ユ・ソンジュ

本作に登場するのは、それぞれが一人でも十分に芝居を牽引できる実力派の人気俳優ばかり。劇中で血の気の多い肉体派キャラのジャンチャンを演じているイ・ソクジュンは、「“キム・グァンポ社団”と呼ばれる俳優が集まっただけに、アンサンブルがどうなるか僕も心配でした。しかし先輩方から後輩まですべての俳優が(自身のエゴを)置いて作業したようです。キム演出家からは稽古の最初から“配慮”という言葉をずっと聞きました」と言えば、キム演出家も「主役級の俳優が揃っているだけに、アンサンブルをどううまく合わせるかが一番の課題でした」と裏話を披露した。

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(写真左から)イム・チョルス、イ・スンジュ、ハ・ドンギュ、ユ・ヨンス

キム演出家は、各キャストを俳優陣の性格も考慮して起用したという。途中から入所してくる新人スチョルを演じたキム・ヨンミンは「人間の稚拙さが僕たちのなかにも潜んでいることを演出家に見抜かれたようです」と言えば、イ・ソクジュンは「演出家は俳優を起用するときに、本来見せていない姿を引き出されますが、僕はこんな愚かなキャラクターではないです。ミスキャストだと思います(笑)」と語り、どっちつかずの気弱なキャラクター、イグを演じているイ・スンジュも「自分の中にもあるかもしれないバカバカしい部分を引き出されたようで、それをうまく表現しようと努力しています」と言って笑わせた。

「イケメン俳優がバカっぽい演技を見せたらより面白いでしょう?」と最後に語ったキム演出家の言葉のように、俳優たちがこれまで見せていなかった姿を披露している新鮮さも見どころのひとつだ。本作は11月18日まで、LGアートセンターで上演される。


sukoshiposter【公演情報】
演劇『少しはみ出て殴られた』(살짝 넘어갔다가 얻어맞았다)
2015年 11月5日~18日 LGアートセンター

<出演>
●ギョンボ役:ユ・ヨンス
●スチョル役:キム・ヨンミン
●ヤンガプ役:ユ・ビョンフン
●ジャンチャン役:イ・ソクジュン
●グンジョン役:ユ・ソンジュ
●テギ役:ハン・ドンギュ
●イグ役:イ・スンジュ
●ジャス役:イム・チョルス
原作:土田英生/演出:キム・グァンポ/翻訳:イ・ホンイ/脚色:キム・ウンソン/舞台:ファン・スヨン/照明:キム・チャンギ/衣装:ホン・ムンギ/小道具:チャン・ユンジョン/ヘアメイク:イ・ドンミン/音楽:チャン・ハンソル

ポスター写真提供:LGアートセンター ©韓劇.com All rights reserved. 記事・写真の無断使用・転載を禁止します。


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[PLAY]土田英生 原作『少しはみ出て殴られた』韓国版 11月上演!

[PLAY]土田英生 原作『少しはみ出て殴られた』韓国版 11月上演!

 

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(写真上段左から)ユ・ヨンス、キム・ヨンミン、ユ・ビョンフン、イ・ソクジュン (写真下段左から)ユ・ソンジュ、ハン・ドンギュ、イ・スンジュ、イム・チョルス

韓国で、いま一番忙しい演出家とも言われているキム・グァンポが、昨年LGアートセンターと初コラボした『社会の柱』に続き、第2弾となる演劇『少しはみ出て殴られた』を11月に上演決定。バラエティに富んだ出演者が発表された。

『少しはみ出て殴られた』は、京都を活動拠点にしている劇団MONOの代表を務める、劇作家・演出家、俳優の土田英生(つちだひでお)が2012年に発表した戯曲が原作。土田は数々の演劇のみならず、「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」「斉藤さん」など、多数のドラマ脚本も手掛けている人気作家だ。今回の公演で、土田作品が初めて韓国に上陸することになる。

物語の舞台は、軽犯罪の常習犯を収監しているある刑務所。6人の囚人と2人の看守が、ある日お遊びで刑務所内に一本の線を引いて国境をつくったところ、それまで平和的に刑務所生活を送っていた彼らが、この線のために不自由を強いられ始めるというシニカルなブラック・コメディだ。「政治的、社会的システムについて語るまえに、人間自体に興味を持ちたい」という土田の言葉どおり、たった一本の線により変わっていく人間関係をコミカルかつ辛辣に描いている作品だ。

このシュールな作品を韓国で舞台化するにあたり、キム・グァンポ作品ではおなじみの男優を中心に、8人が集結した。
ユ・ヨンス、ユ・ソンジュ、ハン・ドンギュ、イ・ソクジュン、キム・ヨンミン、イ・スンジュは昨年、LGアートセンターが制作・上演した『社会の柱』や、ドゥサンアートセンターで上演していた演劇列伝作品『M.Butterfly』にも出演していた、“キム・グァンポ組”とも呼べる常連俳優たちだ。加えて、今回キム・グァンポ作品に初参加するユ・ビョンフンは、『青い日に』『ホンド』や、ミュージカル『アリラン』など話題作を次々と世に送り出している劇作家・演出家のコ・ソンウンが代表を務める劇工作所「魔方陣(マバンジン)」の作品や、劇団ドリームプレイを率いるキム・ジェヨプが東亜演劇賞を受賞した『アリバイ年代記』など、近年の話題作に出演してきた俳優だ。そして、イム・チョルスはミュージカル『女神さまが見ている』『共同警備区域JSA』と、北朝鮮兵役を好演して一躍人気を集めた、いま注目の若手俳優だ。

国やジャンルを問わず、バラエティに富んだ戯曲を観客に分かりやすく分析、演出し、手掛けた作品は軒並みヒットさせているキム・グァンポ。勝手知ったる実力派俳優たちとともに、土田作品の世界を韓国の観客にどう見せていくのか、その手腕が期待される。

韓国版『少しはみ出て怒られた』は、11月5日~18日にLGアートセンターで上演される。


【公演情報】
演劇『少しはみ出て怒られた』(살짝 넘어갔다가 얻어맞았다)
2015年 11月5日~18日 LGアートセンター

出演:ユ・ヨンス、キム・ヨンミン、ユ・ビョンフン、イ・ソクジュン、ユ・ソンジュ、ハン・ドンギュ、イ・スンジュ、イム・チョルス
原作:土田英生/演出:キム・グァンポ/翻訳:イ・ホンイ/脚色:キム・ウンソン

チケットは、インターパーク、YES24、LGアートセンターホームページなどで発売中。

写真提供:LGアートセンター ©韓劇.com All rights reserved. 記事・写真の無断使用・転載を禁止します。

[PLAY]パク・ホサン、イ・ソクジュン出演 演劇『フローズン』全公演完売で追加公演実施

[PLAY]パク・ホサン、イ・ソクジュン出演 演劇『フローズン』全公演完売で追加公演実施

 

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女優ウ・ヒョンジュを代表に、チョン・ミドら女性メンバーが多数所属する劇団「メンシアター」の新作演劇『フローズン-Frozen』が全公演完売の快挙を成し遂げ、観客の声に応えて追加公演を実施する。

frozen4戯曲の選定眼と、俳優たちの安定した演技、クオリティーの高い美術や衣装で、韓国演劇ファンの間でも評価の高い「メンシアター」作品だが、当初6月9日~28日までの約20日間の上演を予定していたものの、発売直後に全公演のチケットが完売。改めて動員力を実証した。

演劇『フローズン-Frozen』は、英国の女性劇作家ブライオニー・ラヴェリー(Briony Lavery)が1988年に発表。2004年にはトニー賞作品賞にもノミネートもされるなど、彼女の代表作となっている。
物語の舞台はイギリス。幼い少女が誘拐され、のちに死体で発見されるという無残な殺人事件が起きる。犯人は小児性愛者の連続殺人犯ラルフ。そして娘を失い、深い哀しみに陥る母親ナンシーが登場する。そこにニューヨークからラルフを研究するためにやってきた精神分析医のアグネーシャが加わり、3人の内面の葛藤と変化が描かれる。それぞれのモノローグから他の2人を浮き彫りにしていきながら、観客は3人の交錯するストーリーを見ることになる。

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小児性愛者のラルフを演じるパク・ホサン(左)とイ・ソクジュン

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精神分析医アグネーシャ役のチョン・スヨン(左)と母親ナンシー役のウ・ヒョンジュ

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韓国初演となる『フローズン』は、劇団「メンシアター」の看板女優であるウ・ヒョンジュとチョン・スヨン、さらに劇団外の作品にも多数出演して安定した演技力を誇るパク・ホサン、イ・ソクジュンというベテラン男優2人も出演するとあって、観客の期待を膨らませる豪華キャストが揃っている。

さらに、錚々たる顔ぶれの制作陣にも注目だ。演出は演劇『M.Butterfly』を大ヒットさせ、7月にはソウル芸術団の新作ミュージカル『神と共に-チョ・スンピョン』の演出も話題のキム・グァンポ。潤色のコ・ヨンオクは、キム・グァンポが主宰する劇団「晴雨(청우 チョンウ)』の作品、『私の名前は川』『主人がいらっしゃった』などで長年タッグを組んできた女性劇作家だ。そして舞台美術は『レベッカ』『モーツァルト!』『フランケンシュタイン』などの大作ミュージカルで見せた独特のデザインに評価が高いチョン・スンホ、照明を『家族という名の部族』『雄鶏たちの闘い』などNONAME THEATER COMPANYの作品を手掛けたチャン・ハンソルが担当する。

今回も争奪戦が必至の追加公演は6月30日~7月5日までの6日間、7公演分のみ。チケットは、5月26日(火)午後3時よりインターパークで発売開始される。


frozen7【公演情報】
演劇『フローズン Frozen』
2015年6月9日~7月5日 アルコ芸術劇場 小劇場

出演:ウ・ヒョンジュ、パク・ホサン、イ・ソクジュン、チョン・スヨン

演出:キム・グァンポ/翻訳:チャ・ヨンファ/潤色:コ・ヨンオク/舞台:チョン・スンホ/照明:イ・ドンジン/音楽:チャン・ハンソル/衣装:パク・ソヨン/扮装:ペク・ジヨン

写真提供:劇団メンシアター ©韓劇.com All rights reserved. 記事・写真の無断使用・転載を禁止します。

<俳優インタビュー映像>

[PLAY]イ・ソクジュン&パク・ホサン 劇団メンシアターの新作『フローズン』に出演!

[PLAY]イ・ソクジュン&パク・ホサン 劇団メンシアターの新作『フローズン』に出演!

 

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(写真上左から)ウ・ヒョンジュ、パク・ホサン(写真下左から)イ・ソクジュン、チョン・スヨン

海外の名作戯曲を独自のセレクトと世界観で上演し、演劇ファンに根強い人気をもつ劇団メンシアターが、新作『フローズン Frozen』を6月に上演する。

劇団メンシアターは 、Menという言葉の意味を踏まえ、“ただの人”という意味をもつという2006年に旗揚げした劇団だ。今年『ハロルド&モード』で主人公ハロルドの母親を演じていた女優、ウ・ヒョンジュを代表に『M.Butterfly』に出演中のチョン・スヨン、『青い日に』『彼と彼女の木曜日』に出演したチョン・ジェウン、『サム・ガールズ』などに出演したパク・ホヨンと、メンシアターという名前ながら、創立メンバーはいずれも韓国演劇界で屈指の美貌を誇る女優4人だ。
創団以降、『サム・ガールズ』『ディナー』『カモメ』『14人(in)チェーホフ』『秘密の喜び』『桜の園』『愉快な下女マリサ』などを上演してきたが、毎回セットや衣装デザインにもこだわりを見せていて、女性中心の劇団ならではのセンスを感じさせる作品を上演し続けている。

韓国初演となる新作『フローズン』は、NTLiveで9月に日本上映予定の『宝島』の脚本も手がけている英国の女性劇作家ブライオニー・ラヴェリー(Briony Lavery)が1988年に発表し、バーミンガム・レパートリー・シアターで初演された。その後、2004年にはトニー賞作品賞にもノミネートもされるなど、彼女の代表作となっている。日本では、2012年に上演歴がある作品だ。

物語の舞台はイギリス。幼い少女が誘拐され、のちに死体で発見されるという無残な殺人事件が起きる。犯人は小児性愛者の連続殺人犯ラルフ。そして娘を失い、深い哀しみに陥る母親ナンシーが登場する。そこにニューヨークからラルフを研究するためにやってきた精神分析医のアグネーシャが加わり、3人の内面の葛藤と変化が描かれる。それぞれのモノローグから他の2人を浮き彫りにしていきながら、観客は3人の交錯するストーリーを見ることになる。

ナンシー役には劇団代表のウ・ヒョンジュ、そして幼少期に性的虐待を受けたトラウマを抱えている殺人犯ラルフを、「メンシアター」作品の常連男優であるパク・ホサンとイ・ソクジュンがWキャストで挑むほか、良心の呵責なしに罪を犯す連続殺人犯を研究しているアグネーシャをチョン・スヨンが演じる。4人は劇団内外の作品でも多数共演している気心の知れた同世代の俳優だけに、今回も抜群の呼吸を見せてくれそうだ。

そして演出は『M.Butterfly』が上演中のキム・グァンポ。昨年LGアートセンターで上演された演劇『社会の柱』にもメンシアターの女優陣やイ・ソクジュンも出演しており、キャストとの相性はバッチリ。またパク・ホサンも出演していた『ジュリアス・シーザー』で、2014年度の「東亜演劇賞」の演出賞も受賞するなど、いま最も忙しい演出家が合流したことで、観客にさらなる期待を抱かせている。

まさに“信じて見る”俳優と演出家が見事に揃った『フローズン』は、6月9日~28日まで大学路のアルコ芸術劇場で上演される。


【公演情報】
演劇『フローズン Frozen』
2015年6月9日~28日 アルコ芸術劇場 小劇場

出演:ウ・ヒョンジュ、パク・ホサン、イ・ソクジュン、チョン・スヨン

演出:キム・グァンポ/翻訳:チャ・ヨンファ/潤色:コ・ヨンオク/舞台:チョン・スンホ/照明:イ・ドンジン/音楽:チャン・ハンソル/衣装:パク・ソヨン/扮装:ペク・ジヨン

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[PLAY]2014年度 韓国2大演劇賞 受賞結果発表

[PLAY]2014年度 韓国2大演劇賞 受賞結果発表

 

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大賞・作品賞受賞『風変りな物語を読む趣味をもつ人たちへ』ポスター

韓国演劇界の1年を締めくくる、2大演劇賞の受賞結果が発表された。

まずは12月22日午後、大学路のアルコ芸術劇場・大劇場で「第7回 大韓民国演劇大賞」の授賞式が行われた。
大賞、作品賞を受賞したのは9月に東国大学のイ・へラン芸術劇場で上演された、劇団大学路劇場の『風変りな物語を読む趣味をもつ人たちへ』。再開発を控えたソウルの貧民街にあるビルの屋上部屋に一人で暮らす脳性麻痺(に見える)青年チュンボクと、腎不全で余命いくばくもない息子を抱えた女エジャが出会って起こる物語を描いた作品だ。また、作品賞6作品中、唯一商業性の高い作品である『ヒストリーボーイズ』が再演にもかかわらず作品賞を受賞し、作品性と観客の支持の高さを反映した結果となった。

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大韓民国演劇大賞 作品賞を受賞した『ヒストリーボーイズ』

【第7回大韓民国演劇大賞受賞結果】

●大賞
『風変りな物語を読む趣味をもつ人たちへ(색다른 이야기 읽기 취미를 가진 사람들에게)』(劇団大学路劇場 극단 대학로극장)

●作品賞
『風変りな物語を読む趣味をもつ人たちへ(색다른 이야기 읽기 취미를 가진 사람들에게)」(劇団大学路劇場 극단 대학로극장)
『楽しいボクヒ(즐거운 복희)』(劇団白手鉱夫 극단 백수광부)
『ヒストリーボーイズ(히스토리 보이즈)』(Noname Theatre Company )
『ウンミ(은미)』(劇団青い棘 푸른가시)
『赤い詩(빨간시)』(劇団クジラ 극단 고래)
『必死(죽기살기)』(劇団チアク舞台 극단 치악무대)

●戯曲賞 『赤い詩』イ・ヘソン(이해성)
●舞台芸術賞 『楽しいボクヒ』ソン・ホソン(손호성)
●女性演技賞 『赤い詩』カン・エシム(강애심)
●新人演技賞 『大人の童話 鶴の恩返し(성인동화 은혜갚은 학)』イム・ヨンジュ(임연주)、「ウンミ」ユン・ミスン(윤미순)
●新人演出賞 『必死』クォン・オヒョン(권오현)
●雑誌「韓国演劇」選定、2014年ベスト7
『満州戦線(만주전선)』(劇団コルモッキル 극단 골목길)
『恵慶宮洪氏(혜경궁 홍씨)』(国立劇団 국립극단)
『環都列車(환도열차)』(芸術の殿堂 예술의전당)
『ホンド(홍도)』(九里アートホール&劇工作所魔方陣 구리아트홀&극공작소 마방진)
『変態(변태)』(劇団人魚 극단 인어)
『筆風(붓바람)』(劇団破綻税 극단 하땅세)
『MUSASHI』(LGアートセンター/ホリプロ  LG아트센터 & 일본 호리프로)

 

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東亜演劇賞 作品賞など3冠に輝いた『ジュリアス・シーザー』 ©明洞芸術劇場

一方、昨年50周年の節目を迎えた、韓国で最も権威のある演劇賞「第51回東亜演劇賞」は12月24日に受賞結果が発表された。今年も大賞は該当作がなかったが、明洞芸術劇場で5~6月に上演された『ジュリアス・シーザー』が作品賞と演出賞、視覚デザイン賞の3冠を獲得した。同作は『ピローマン』『私に会いに来て』などでいぶし銀の名演を見せ、本年度下半期に社会現象的大ヒットとなったドラマ『未生(ミセン)』のマ部長役で憎々しいヒールぶりが話題となっていたソン・ジュンハクがシーザーを演じていた。加えて、チョン・テファ、ユン・サンファ、パク・ホサンなど演劇界の重鎮から実力派までズラリと揃い、骨太でダイナミック展開が見ごたえある作品だった。視覚デザイン賞を受賞した、メタリックでモダンなセットも作品の世界観に彩りを添えていた。
そのほか、『家族という名の部族―TRIBES』で、聾唖の青年ビリーを渾身の演技で魅せたイ・ジェギュンの新人演技賞や、パンソリの天才ソリクン(歌い手)でありながら、現代的なバンドサウンドとパンソリのコラボレーション作品などを精力的に発表しているイ・チャラムが新概念の演劇賞を受賞している点は東亜演劇賞に新風を吹き込んだと言えるだろう。

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『家族という名の部族―TRIBES』で東亜演劇賞 新人演技賞を受賞したイ・ジェギュン(写真左)と、新概念の演劇賞、新人演技賞を受賞した 『醜物/殺人』公演の模様(写真中、右) ©ドゥサンアートセンター

 【第51回東亜演劇賞受賞結果】

●大賞 該当作なし
●作品賞
『ジュリアス・シーザー(줄리어스 시저)』(明洞芸術劇場 명동예술극장)
『自転車―Bye Cycle(자전거-Bye Cycle)』(劇団城北洞の鳩 극단 성북동비둘기)
●戯曲賞 チャン・ウジェ(장우재)『環都列車(환도열차)』(芸術の殿堂 예술의전당)
●演出賞 キム・グァンポ(김광보)『ジュリアス・シーザー』
●視覚デザイン賞 『ジュリアス・シーザー』
●演技賞
イ・ヨンギュ(이연규)『遠いところから来る女(먼 데서 오는 여자)』(劇団ゾウの漫歩 극단 코끼리만보)
ヤン・ヨンミ(양영미)『ホンド(홍도)』(九里アートホール&劇工作所魔方陣 구리아트홀&극공작소 마방진)
●ユ・インチョン新人演技賞
イ・ジェギュン(이재균)『家族という名の部族―TRIBES(가족이란 이름의 부족)』(Noname Theatre Company)
キム・ソジン(김소진)『醜物(추물)』(ドゥサンアートセンター)
●新人演出賞 パク・ジヘ(박지혜)『死と乙女(죽음과 소녀)』『醜物/殺人(추물 / 살인)』(ドゥサンアートセンター 두산아트센터)
●新概念の演劇賞 イ・チャラム(이자람)『醜物/殺人(추물 / 살인)』(ドゥサンアートセンター 두산아트센터)
●特別賞 ソン・スジョン(성수정 翻訳家)『星群(별무리)』

韓国の演劇賞は伝統と芸術性を重んじるあまり、劇場街大学路で大勢を占めている、人気俳優を起用し、公費の支援よりも興収に依っている所謂「商業演劇」はノミネートにさえ上がらない場合が多い。そんななか、これまで商業演劇寄りに見られていたNoname Theatre Companyの作品(『ヒストリーボーイズ』『家族という名の部族―TRIBES』)が両賞で入賞できたのは大きな成果だと言えるだろう。