[PLAY]2014年度 韓国2大演劇賞 受賞結果発表

 

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大賞・作品賞受賞『風変りな物語を読む趣味をもつ人たちへ』ポスター

韓国演劇界の1年を締めくくる、2大演劇賞の受賞結果が発表された。

まずは12月22日午後、大学路のアルコ芸術劇場・大劇場で「第7回 大韓民国演劇大賞」の授賞式が行われた。
大賞、作品賞を受賞したのは9月に東国大学のイ・へラン芸術劇場で上演された、劇団大学路劇場の『風変りな物語を読む趣味をもつ人たちへ』。再開発を控えたソウルの貧民街にあるビルの屋上部屋に一人で暮らす脳性麻痺(に見える)青年チュンボクと、腎不全で余命いくばくもない息子を抱えた女エジャが出会って起こる物語を描いた作品だ。また、作品賞6作品中、唯一商業性の高い作品である『ヒストリーボーイズ』が再演にもかかわらず作品賞を受賞し、作品性と観客の支持の高さを反映した結果となった。

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大韓民国演劇大賞 作品賞を受賞した『ヒストリーボーイズ』

【第7回大韓民国演劇大賞受賞結果】

●大賞
『風変りな物語を読む趣味をもつ人たちへ(색다른 이야기 읽기 취미를 가진 사람들에게)』(劇団大学路劇場 극단 대학로극장)

●作品賞
『風変りな物語を読む趣味をもつ人たちへ(색다른 이야기 읽기 취미를 가진 사람들에게)」(劇団大学路劇場 극단 대학로극장)
『楽しいボクヒ(즐거운 복희)』(劇団白手鉱夫 극단 백수광부)
『ヒストリーボーイズ(히스토리 보이즈)』(Noname Theatre Company )
『ウンミ(은미)』(劇団青い棘 푸른가시)
『赤い詩(빨간시)』(劇団クジラ 극단 고래)
『必死(죽기살기)』(劇団チアク舞台 극단 치악무대)

●戯曲賞 『赤い詩』イ・ヘソン(이해성)
●舞台芸術賞 『楽しいボクヒ』ソン・ホソン(손호성)
●女性演技賞 『赤い詩』カン・エシム(강애심)
●新人演技賞 『大人の童話 鶴の恩返し(성인동화 은혜갚은 학)』イム・ヨンジュ(임연주)、「ウンミ」ユン・ミスン(윤미순)
●新人演出賞 『必死』クォン・オヒョン(권오현)
●雑誌「韓国演劇」選定、2014年ベスト7
『満州戦線(만주전선)』(劇団コルモッキル 극단 골목길)
『恵慶宮洪氏(혜경궁 홍씨)』(国立劇団 국립극단)
『環都列車(환도열차)』(芸術の殿堂 예술의전당)
『ホンド(홍도)』(九里アートホール&劇工作所魔方陣 구리아트홀&극공작소 마방진)
『変態(변태)』(劇団人魚 극단 인어)
『筆風(붓바람)』(劇団破綻税 극단 하땅세)
『MUSASHI』(LGアートセンター/ホリプロ  LG아트센터 & 일본 호리프로)

 

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東亜演劇賞 作品賞など3冠に輝いた『ジュリアス・シーザー』 ©明洞芸術劇場

一方、昨年50周年の節目を迎えた、韓国で最も権威のある演劇賞「第51回東亜演劇賞」は12月24日に受賞結果が発表された。今年も大賞は該当作がなかったが、明洞芸術劇場で5~6月に上演された『ジュリアス・シーザー』が作品賞と演出賞、視覚デザイン賞の3冠を獲得した。同作は『ピローマン』『私に会いに来て』などでいぶし銀の名演を見せ、本年度下半期に社会現象的大ヒットとなったドラマ『未生(ミセン)』のマ部長役で憎々しいヒールぶりが話題となっていたソン・ジュンハクがシーザーを演じていた。加えて、チョン・テファ、ユン・サンファ、パク・ホサンなど演劇界の重鎮から実力派までズラリと揃い、骨太でダイナミック展開が見ごたえある作品だった。視覚デザイン賞を受賞した、メタリックでモダンなセットも作品の世界観に彩りを添えていた。
そのほか、『家族という名の部族―TRIBES』で、聾唖の青年ビリーを渾身の演技で魅せたイ・ジェギュンの新人演技賞や、パンソリの天才ソリクン(歌い手)でありながら、現代的なバンドサウンドとパンソリのコラボレーション作品などを精力的に発表しているイ・チャラムが新概念の演劇賞を受賞している点は東亜演劇賞に新風を吹き込んだと言えるだろう。

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『家族という名の部族―TRIBES』で東亜演劇賞 新人演技賞を受賞したイ・ジェギュン(写真左)と、新概念の演劇賞、新人演技賞を受賞した 『醜物/殺人』公演の模様(写真中、右) ©ドゥサンアートセンター

 【第51回東亜演劇賞受賞結果】

●大賞 該当作なし
●作品賞
『ジュリアス・シーザー(줄리어스 시저)』(明洞芸術劇場 명동예술극장)
『自転車―Bye Cycle(자전거-Bye Cycle)』(劇団城北洞の鳩 극단 성북동비둘기)
●戯曲賞 チャン・ウジェ(장우재)『環都列車(환도열차)』(芸術の殿堂 예술의전당)
●演出賞 キム・グァンポ(김광보)『ジュリアス・シーザー』
●視覚デザイン賞 『ジュリアス・シーザー』
●演技賞
イ・ヨンギュ(이연규)『遠いところから来る女(먼 데서 오는 여자)』(劇団ゾウの漫歩 극단 코끼리만보)
ヤン・ヨンミ(양영미)『ホンド(홍도)』(九里アートホール&劇工作所魔方陣 구리아트홀&극공작소 마방진)
●ユ・インチョン新人演技賞
イ・ジェギュン(이재균)『家族という名の部族―TRIBES(가족이란 이름의 부족)』(Noname Theatre Company)
キム・ソジン(김소진)『醜物(추물)』(ドゥサンアートセンター)
●新人演出賞 パク・ジヘ(박지혜)『死と乙女(죽음과 소녀)』『醜物/殺人(추물 / 살인)』(ドゥサンアートセンター 두산아트센터)
●新概念の演劇賞 イ・チャラム(이자람)『醜物/殺人(추물 / 살인)』(ドゥサンアートセンター 두산아트센터)
●特別賞 ソン・スジョン(성수정 翻訳家)『星群(별무리)』

韓国の演劇賞は伝統と芸術性を重んじるあまり、劇場街大学路で大勢を占めている、人気俳優を起用し、公費の支援よりも興収に依っている所謂「商業演劇」はノミネートにさえ上がらない場合が多い。そんななか、これまで商業演劇寄りに見られていたNoname Theatre Companyの作品(『ヒストリーボーイズ』『家族という名の部族―TRIBES』)が両賞で入賞できたのは大きな成果だと言えるだろう。