木村典子の「お隣の演劇」Vol.1 

 

「2013韓国演劇プレイバック」

「アリバイ年代記」 国立劇団&劇団ドリームプレイ(作/演出キム・ジェヨプ) 写真提供/国立劇団、撮影/パク・ジョンミョン
「アリバイ年代記」
国立劇団&劇団ドリームプレイ(作/演出キム・ジェヨプ)
写真提供/国立劇団、撮影/パク・ジョンミョン

今年も面白い芝居に出会えますように!と願いつつ、2013年韓国演劇界を振り返ってみたいと思います。毎年年末になると、各種演劇賞が発表されますが、これら受賞作に注目すれば、翌年活躍する劇団や演劇人の顔が見えてきます。

(以下、公演タイトルのリンクは公式サイトおよびPlay DBの作品紹介ページに飛びます)

月刊『韓国演劇』(韓国演劇協会刊)が選ぶ「2013公演ベスト7」

<演劇部門>

<再演部門>

<海外公演部門>

  • ロシア・チェーホフ・フェスティバル『テンペスト』 <템페스트>

韓国演劇評論家協会主催の「2013今年のベスト3」

この中でも、圧倒的な支持で注目されたのが『アリバイ年代記』と作/演出のキム・ジェヨプ(43)です。この作品は、作家が父と兄、そして自分、家族の物語と歴史を淡々と描いた秀作です。1930年植民地時代に日本で生まれて教育を受け、祖国に戻り、1955年定年になるまで大邱中央高校で数学教師として勤めた父キム・テヨンをドキュメンタリー的に回想しつつ、父親の年代記を通じて韓国近現代史の暗部が告白されていきます。丁寧に深く個人の人生を掘り下げることで歴史を描き出す手法は、韓国演劇における政治劇に新しい可能性を見せたと評価されました。

そして、もう一本注目されたのが1977年に旗揚げされ今も話題作を公演し続けている劇団演友(ヨヌ)舞台『七軒梅』(イ・ヤング作、ムン・サンファ演出)。米軍キャンプ近くの‘基地村’のクラブで働いていた七人の女性たちが年をとって七つの小さな部屋を借りて姉妹のように同居する物語を通して、‘基地村’に象徴される不条理な社会構造と不条理さの中で生きるしかないそれぞれの人生を描いています。

韓国演劇の面白さは何か?と聞かれたら、上記の二作品のように市井の人々の中にあるそれぞれのドラマとそこから韓国の社会や歴史が見えてくる点だと答えるでしょう。ここ数年、演劇界の停滞が指摘されてきた中、四十代の演出家たちが韓国演劇の面白さを再認識させてくれた2013年でした。今年も期待したいと思います。

mozart【おまけ】韓国演劇評論家協会が主催する「今年のベスト3」の授賞式は、大学路・アルコ芸術劇場小劇場の向かいにある「ギャラリーカフェ・モーツアルト」で、評論家と演劇人が集まり、まるで小さな忘年会のようにアットホームな雰囲気でおこなわれています。「モーツアルト」は、最近コーヒーチェーン店が増えた大学路で古くからある隠れ家的な喫茶店。大学路の喧騒に疲れたら、クラシック音楽が流れるここでで静かに一息つくのもいいですよ。私のオススメは「しょうが茶」です。

ギャラリーカフェ「モーツァルト」(갤러리카페 모짜르트)

住所:ソウル市鍾路区大学路8街道119(서울특별시 종로구 대학로8가길 119 )

地図: NAVER地図

営業時間:12:00~22:00(月曜休業)

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