■ Lemino編 ■
Leminoは、NTTドコモのdTVから名称変更して2023年4月からサービス開始。韓ドラは作品を厳選して新作を独占配信している印象です。タイミングによっては作品の一部、もしくは全話無料配信していることもあるので、配信情報を常にチェックしておくといいと思います。
Leminoサービス開始時の看板作品のひとつだったのが『財閥家の末息子』。個人的には2023年に視聴した全韓ドラのなかでマイベストでした。
ソン・ジュンギ、イ・ソンミン共に、出演作を必ずヒットさせる「不敗神話」を見事更新しましたよね。
主人公ユン・ヒョヌが、死後1987年の財閥スニャングループ一族の末孫チン・ドジュンに転生するんですが、ソン・ジュンギは高校生や大学生を演じても何の違和感もないのが凄かった。今年38歳、驚異のアラフォーですよ(笑)。現代と35年前を無理なく演じられたのは究極の童顔ソン・ジュンギだからでしょう。
そう! まさに私も『英雄時代』を思い出しながら見てました(笑)。いま改めて見比べると面白いかもしれないですね。1988年のソウル五輪、1997年のIMF危機、2001年の9.11米同時多発テロなど、近代史の節目的な出来事も絶妙にストーリーに絡めてある。ソン・ジュンギとシン・ヒョンビンのロマンスの鍵となるのが、ソ・テジのカムバックというのも面白かった。
さすがは文化大統領(笑)。韓国でソ・テジのカムバックは歴史的事件と並ぶくらい重要な出来事だったってことなんでしょうね。
ドラマのオープニングでは毎回「実在の人物とは関係ありません」的なクレジットが出るんですけど、スニャン一族はサムスン家をベースに、実在する財閥家のエピソードを色々混ぜてストーリーに盛り込んである。だから韓国の人たちは暗に「あの家の話だな」と分かって見ていたわけです。唯一未来で起きる出来事を知っているソン・ジュンギが、財閥家の横暴をかわしつつも着実にのし上がっていくので、サイダードラマ1的な痛快さもあったと思います。
イ・ソンミンは昨年の第59回「百想芸術大賞」で最優秀演技賞を受賞してましたが、一代で財閥を築き上げたチン・ヤンチョル会長のカリスマ性と、その後の老いていく姿まで演じきっていたのがさすがでした。会長の子息役も、ユン・ジェムンとかキム・シンロクとか曲者揃いでしたね。
ソン・ジュンギのライバルとなる長孫ソンジュン役のキム・ナムヒが大人気で、バラエティ番組に出て話題になったりもしてました。
韓国では結末の描き方に賛否が分かれたそうなんですけど、改めて思ったのは『英雄時代』、『ジャイアント』(2010年SBS)など、これまでにも高度成長期を舞台にした作品ありましたが、この時代自体がすごくドラマチックなんですよね。久々にダイナミックな見ごたえある作品を見た、という感じでした。
実は『財閥家の末息子』と並ぶくらい、おすすめしたいドラマが『パク・ハギョンの旅行記』です。「消えてしまいたいときに出かけるたった1日の旅」というコンセプトで、ソウル在住の高校教師の週末小旅行を追ったオムニバスドラマです。釜山とか済州島など毎話違う都市が舞台になっていて、名物を食べたり、観光地を訪れたりするので見ていると自分も地方旅に行きたくなってくる(笑)。なんでも、制作陣は日本の『孤独のグルメ』を参考にしたそうで、確かに、イ・ナヨンは劇中でいつもホンパプ(혼밥=一人ごはん)しています(笑)
1話には韓国でカリスマ的な人気を誇るシンガー、ソヌ・ジョンアが出てきたりと、毎話ゲストスターが個性的で、みな一癖あるキャラクターで登場するのが面白いんですよ。全体的にほんわかとした温かい雰囲気がありながら、妙齢独身女性の生きづらさ、みたいなシビアな部分も盛り込んであるので、特に女性は共感する部分がたくさんあると思います。これはぜひ見ておいてほしい作品ですね。
私は『輝くウォーターメロン~僕らをつなぐ恋うた~』を楽しく見ました。『コッソンビ熱愛史』のリョウンと『弱いヒーロー Class1』、『D.P.』シーズン2のチェ・ヒョヌクというライジングスター2人が共演してるのがいいですね。
脚本は『太陽を抱く月』、『キルミー・ヒールミー』のチン・スワンですが、元々KBSの『学校』シリーズという青少年ドラマで名を挙げた人なので、こういう青春ものが上手いんですね。幼い頃から家族のために頑張ってきたウンギョルが、ギターを演奏することで自分を解放していくところにグッときました。
ウンギョルが突然1995年にタイムスリップして、当時高校生だった父と出会う。言ってみれば映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいな展開なんですけれど、真面目一辺倒の現在の姿とは違う、ヤンチャな同級生だった父親とバンドを組む、恋のライバルにもなっちゃう、爽やかな青春ドラマとしても楽しめましたよね。
リョウンは1998年生まれの25歳、チェ・ヒョヌクが2002年生まれの22歳。いま彼ら世代の新人が次々と登場していますが、2人は一歩抜け出している感があるので、今後もっと活躍しそうですよね。
『模範タクシー』は、シーズン1を見たときに、まず思い出したのが80年代の米ドラマ『ナイトライダー』で。イ・ジェフンが乗っている内部スペック満載の模範タクシーが、『ナイトライダー』で人工知能を搭載した「ナイト2000」っていうスーパーカーぽいんですよ。タクシーが疾走するシーンのBGMも『ナイトライダー』風(笑)。なので、『ナイトライダー』と比較して見るのも面白いと思います。※『ナイトライダー』はHuluで配信中。
秘密基地の地下に格納されている模範タクシーが出動するシーンは『サンダーバード』みたいですもんね(笑)。脚本家さん、米ドラママニアかな?(笑)
米ドラマテイスト+『必殺仕事人』シリーズみたいに、チームで社会的弱者の無念を晴らすという、勧善懲悪ストーリーが好評を受けてのシーズン2です。昨年末イ・ジェフンが『悪鬼』のキム・テリとSBS演技大賞を共同受賞してましたね。2023年の地上波金土ドラマ(SBS、MBC)の中でもダントツの視聴率でした。
シーズン1よりトーンが明るく痛快度が増したのも好調の理由かも。アクションもかっこいいんですけど、事件ごとに変装するイ・ジェフンが見事で! 主人公のドギは陸軍特殊部隊出身の凄腕なんですが、もともとは役者志望だったというキャラ設定が本当に効いてると思います。まさに「当たり役」ですよね。
イ・ジェフンって、これまではシリアスなキャラクターを多く演じてきた人なので、ここまでコミカルな演技が上手いとは思ってませんでした。本人もすごく楽しんで演じてるのが伝わってくる。それに、上に貼ったトーク番組で「実際に被害に遭われた方に恥ずかしくない作品にしようと思った」と言ってるんですが、そういう彼の真摯なスタンスがシリーズの人気にもつながっていると思います。
シーズン2ではゲストスター的に『イルタ・スキャンダル~恋は特訓コースで~』で注目されたシン・ジェハが出ていて良いアクセントになっていました。既にシーズン3の制作も決まっているので、次はどんな俳優が客演するのかも楽しみです。
Leminoでほかに面白かったのは、こちらもタクシーがらみの作品なんですが、昨年日韓同時配信された『運の悪い日』はイ・ソンミン、ユ・ヨンソク、イ・ジョンウン、と名優が揃ったスリラー。お人よしなタクシー運転手が、謎めいた男を客として乗せたばっかりに最悪な状況に巻き込まれていきます。普段は温厚ないい人イメージが定番のユ・ヨンソクが血も涙もないシリアルキラーを演じているのがとても新鮮でした。
『奇跡の兄弟』は『復活』、『魔王』、『サメ~愛の黙示録』、『記憶~愛する人へ~』のパク・チャンホン監督&キム・ジウ脚本家コンビの最新作。私は以前からこの制作コンビのファンなんですが、脚本家独特の詩的な表現や緻密なストーリー展開は本作でも堪能できます。監督は演技の上手い俳優がお好きなので舞台出身俳優を積極的に起用するんです。この作品でもオ・マンソク、カン・マルグムをはじめ、演技派俳優がたくさん出演しているのでチェックしてほしいですね~。
■ WATCHA編 ■
WATCHAは定額で視聴できる見放題作品以外に、「都度課金」の単品購入ができる作品が多いのが特徴。作品紹介や視聴者の口コミなどを見られるWATCHA PEDIAという別サイトと連動しているのは、WATCHAならではのサービスです。
韓ドラに関しては、個性的なオリジナル作品が魅力。なかでも昨年の個人的イチオシは『今日は少し辛いかもしれない』でした。出演作選びにはかなり慎重だと言われているハン・ソッキュが、初めて配信作品に出演したヒューマンドラマです。
原作は、人文学者カン・チャンレが闘病中の妻のために作った料理日記をノベライズ化したもの。著者は当初ラーメンくらいしか作れないほど料理経験がなかったそうです。それもあって、前半ではハン・ソッキュがぎこちない手つきで料理する姿が、長年のファンなら萌えどころではないかと(笑)。劇中、彼の温かい声のナレーションで淡々と調理手順が説明されるのもいいんですよね。
ダジョン役のキム・ソヒョンはクールでカッコいい役を演じることが多いですが、今作では末期がんの妻の葛藤や苦痛を抑えた演技で見せていて、胸に迫るシーン多数。夫婦仲はすっかり冷えきっていたはずの2人が、食事を通して互いを見つめなおす過程を静かに描いてあって、毎回ジーンとしながら見ていました。
本作はWATCHA以外にも、FODや、Amazon プライムビデオでも視聴可能なので、見られる環境にある方はぜひ見ておいてほしいです。
- 韓国ではサイダーの炭酸が消化を促すと言われており、緑色の缶の「七星(チルスン)サイダー」は飲食店でも定番の飲み物。「爽快、痛快」という意味の形容詞として、よく「サイダー(사이다)〇〇」と表現される。 ↩︎
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