土田真樹の「エーガな日々」Vol.1

 

「映画女優はアラサー全盛時代」

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映画「朝鮮美女三銃士」(韓国で2014年1月29日公開)に主演した、(写真左から)ガイン(Brown Eyed Girls)、ハ・ジウォン、カン・イェウォン ©Maki Tsuchida

長い不況に喘いできた韓国映画界だが、2013年はソン・ガンホ主演の『スノーピアサー』『観相師』『弁護人』が大ヒット。他にも多くのスマッシュヒット作品が登場したが、そのほとんどが男優主演の作品であり、主演とは名乗っているものの、女優は男優の当て馬、ヒロイン的な扱いがほとんどであり、女優が単独主演と呼べるのは、『かくれんぼ』のムン・ジョンヒくらいのものだ。

男優の影にあって、注目度がイマイチ劣る女優陣だが、いやいやそんなことはありません。彼女たちもがんばっているのです。しかもアラサーの範疇に入る女優たちが。

韓国映画界にも若手アイドルスターがいないわけではない。シン・セギョンやコ・アソンといった知名度のある女優はいるが、映画女優と呼べるほどのバリューには残念ながら至っていない。10年前に活躍した若手アイドル女優というと、キム・ハヌル、ソン・イェジン、チョン・ジヒョンらがいるが、彼女たちがアラサーとなった今、韓国映画界(女優部門に限る)を牽引しているといっても過言ではない。

それだけではない。遅咲きで注目される女優も少なくないのだ。キム・ギドク監督の映画『メビウス』に主演し、青龍映画賞新人女優賞にノミネートされたイ・ウンウは1980年生まれ、『アーティスト ポン・マンデ』主演のクァク・ヒョンファは1981年生まれと、いずれも遅咲きの新人女優といえるが、20代の女性にも劣らない美しい肢体をスクリーンに惜しみなく披露している。

ではなぜ、アラサーがもてはやされているのか。

自分が年をとったせいとは思いたくないが、アラサーの女性は男目線から見ても可愛いのだ。二十歳以上は法的には大人ではあるが、昨今の若者を見ると精神的な成長が追いついていないように思える。そう思うことそのものが年寄りのヒガミであると言われればそれまではあるが、ともあれアラサー女優は元気なのである。

そして、今をときめく(?)アラサー女優がスクリーンをところ狭しと闊歩しているのが、1月29日に韓国で公開された『朝鮮美女三銃士』。三銃士といっても銃を扱うわけではなく、アメリカの人気ドラマ『チャーリーズ・エンジェル』の韓国題が「美女三銃士」であったため、朝鮮時代が背景ということでタイトルをもじっただけである。

主演は、ハ・ジウォン、カン・イェウォン、ソン・ガインと今をときめくアラサー女優が出演。ベリーダンスやサングラスなど時代錯誤的なアイテムも登場するが、そこはおちゃらけ娯楽映画。アクションにお色気少々と3人の女優の魅力を最大限に引き出している。

話は飛ぶが、『エヴァンゲリオン』の主人公の年齢が子供とと少女の境界ともいる14歳であったとするならば、アラサーというのは少女から大人、そして熟女の域に入るやもしれない危うげなお年頃であるといえる。アラサー女優は過ぎ行き時間に刻まれる年齢に抗うことはできない。若手女優の台頭に期待したいところだが、暫くはアラサー女優全盛の勢いは衰えることはないと思われる。

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