ビョン・チョンジュ

[PLAY]水を媒介に本能的な人間の根源をさぐる―『変身物語:Metamorphoses』開幕

[PLAY]水を媒介に本能的な人間の根源をさぐる―『変身物語:Metamorphoses』開幕

 

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meta18『ヒストリーボーイズ』『ピローマン』など、優れた海外戯曲を韓国に紹介してきたNO NAME THEATER COMPANYの6番目の作品となる『変身物語:Metamorphoses』のプレスコールが、4月27日に行われた。

古代ローマの詩人オウィディウスが、ギリシャ・ローマ神話に登場する神々がさまざまな生き物などに変身していくエピソードを集めた名作古典を原作に、米・演劇界の重要人物、メアリー・ジンマーマンが現代的な戯曲に仕上げた作品だ。

15のエピソードから成る『変身物語』の原作から、「1:天地創造」「2:マイダス」「3:アルキオーネとケイクス」「4:エリュシクトン」…など、10のショートストーリーを抜粋し、9人の俳優がさまざまなキャラクターに“変身”して物語が進んでいく。
原作戯曲には“水”が本作の重要なファクターだと記されているそうで、本作でもひざ上まで漬かるほどの木枠でできたプールが舞台の中心を占めている。俳優たちが身につけている白い衣装は、撥水性の高い素材を使っているが、水に動きを取られながらも、各エピソードごとに登場するキャラクターに次々と変身していく様は、観客が想像する以上に過酷であろう。今回、制作費を捻出するにあたり、クラウドファンディングが実施されたが、広いプールに張った水は、観客の投資のおかげで毎公演新しい水を入れ替えることができたそうだ。
また俳優たちの芝居のみならず、エピソードによっては現代舞踏的な振付や、ステージ後方に侍う韓国の伝統音楽、国学をベースにしたフュージョンバンド「ゴレヤ」が奏でる無国籍的サウンドが彩りを添える。水を使った舞台、というだけでも十分に破格だが、ギリシャ神話と韓国的要素のコラボレーションも楽しめる斬新な作品だ。欲望と愛憎、エロスなど、人間が本来もつ本能を具現化したような俗物的なキャラクターたちの姿から、古代ローマ時代に創作された原作が、時間と空間を超越して現代でも有効だということを思い知らされる。
meta26 5月17日まで芸術の殿堂 自由小劇場で公演後、6月19日、20日には京畿道安山(アンサン)市にある、安山芸術の殿堂でも上演される。


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【公演情報】
演劇『変身物語:Metamorphoses』(변신 이야기:Metamorphoses)
2015年4月28日~5月17日 芸術の殿堂 自由小劇場
2015年6月19日、20日 安山(アンサン)安山芸術の殿堂 月見劇場(京畿道安山市)

出演:キム・ジュンウォン、チョン・テミン、ソン・ジユン、オ・ジョンテク、イ・ヒョンフン、チョン・ソンミン、イ・ヒョリム、ユ・ジュへ、キョン・ジウンほか

原作:メアリー・ジンマーマン(Mary Zimmerman)/演出:ピョン・チョンジュ/音楽:コ・レヤ/振付:クォン・リョンウン/舞台デザイン:ヨ・シンドン/照明デザイン:イ・ドンジン/衣装デザイン:ホン・ムンギ/扮装&小道具デザイン:チャン・ギョンスク

<フォトギャラリー>

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[PLAY]困難を乗り越え、人々の精神的な希望に~「第36回ソウル演劇祭」開幕!

[PLAY]困難を乗り越え、人々の精神的な希望に~「第36回ソウル演劇祭」開幕!

 

engeki4今年で36回目を迎える「ソウル演劇祭」が開幕を控え、4月2日 大学路の良い公演紹介所多目的ホールで記者懇談会が行われた。
「演劇は時代の精神的希望だ」をスローガンに、4月4日から約1カ月間開催される演劇祭は、「公式参加作」7作、若手制作者の作品を選定した「未来よ盛り上がれ」部門11作をはじめ、計31作品が上演される。また会期中には大学路一帯の稽古場、カフェ、駱山公園の野外舞台などを利用した「創作空間演劇祭」や演劇市民サークルとともに制作する「ソウル市民演劇祭」など、さまざまな市民参加型のイベントも並行して実施される。

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ナム・ミョンリョル ソウル演劇協会副会長(左)とパク・ジャンリョル ソウル演劇祭実行委員長

パク・ジャンリョル実行委員長が「この時代の片隅で、堂々と生きる人たちの話を盛り込み、役者たちの努力を通じて観客と意思の疎通を図りたい」と抱負を述べれば、ベテラン俳優のナム・ミョンリョル ソウル演劇協会副会長は「演劇は、人間が言葉と身体を使うため、メッセージが最もダイレクトに伝わるジャンル。いまこの時代を大衆がどう生き延びていくのか、もっともリアルに語ることができるのが演劇ではないか」とアピールしていた。その一方で、国立劇場や明洞芸術劇場などの公的劇場で上演する数作品分の予算で、演劇祭のすべてをまかなわねばならないという厳しい状況もあり、「演劇祭を通じて、その年の最高の作品を生み出したいと思うが、この10年間ほとんど変わらない予算額では、新たに才能ある者を導くには弱い部分がある」と本音も吐露していた。

近年、演劇のメッカ大学路では大手の資本が投入された新しい劇場が次々と開館し、人気俳優が出演する商業演劇に観客が集中する一方で、大学路の観劇文化を築き上げてきた老舗劇場は閉館を余儀なくされ、小劇団は活動継続が困難になってきている。ソウル演劇祭に限らず、韓国の演劇人は時代の流れにどう拮抗し、商業性とどう折り合いをつけていくのか、いま、大きな課題を突き付けられている。

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2015年 ソウル演劇祭広報大使のイ・ソクジュン(左)とキム・ホジョン

2015年の広報大使は、まもなく演劇『M.Butterfly』の主演が控えるイ・ソクジュンと、イム・グォンテク監督の新作映画『ファジャン』の出演が話題となっているキム・ホジョンが任命された。
特にミュージカルと演劇の両方で精力的な活動を続けているイ・ソクジュンは「俳優として双方の世界に大きな差はないと思うが、ミュージカル俳優が演劇に出演したいと思っても、なかなか接点がない。それを橋渡しできるものが必要ではないか」と実体験を踏まえて語り、「最近痛感しているのは公演界の競争相手は観客ではなく、スマートホンなどのデジタル機器。自分は俳優自ら、作品のためにポスター貼りをした最後の世代だが、そんな時代はもう終わった。文化を創るのも重要だが、それを多くの人にどう知らせるかが重要だ」と、いまや情報や知識をインターネットを通じて得ている、次世代の若者たちにどう訴えるか、努力が必要だと鋭い指摘をしていた。

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公式/自由参加作品の演出家たち(写真左から)『私は風』マ・ドゥヨン/『盗まれた本』ビョン・チョンジュ/『満州戦線』パク・グニョン/『6.29が送る予告訃報』ムン・ソッポン

演劇祭の開幕作となるパク・グニョン作・演出の『満州戦線』は、3月に新宿のタイニィアリスでも上演された作品。テーマ的に日本で理解されるのは難しいのでは? という問いに「戦時中に祖父母世代が満州にいたという人は多いと聞いた」と、日本でも作品が受け入れられ手ごたえを感じたようだ。また、近年話題作を次々と世に送り出しているビョン・チョンジュ演出家は『盗まれた本』で今回初めて自由参加作品部門にエントリーされた。「演劇祭に参加できたことは、演劇界の先輩や関係者に認められたことでもある」と嬉しさを覗かせていた。

祝祭の開会を華々しく宣言する場でありたい懇談会だが、登壇者たちの表情は残念ながら一概に曇りがちだった。30年以上の歴史を誇り、韓国を代表する演劇祭であるソウル演劇祭だが、昨年11月、毎年開・閉会式を行い、主要作品を上演してきた大学路のアルコ芸術劇場の定期貸館選定から脱落するという問題が起きた。それから文化芸術委員会と協議し、結局今年1月に公式参加作など3作が上演されることになったが、演劇祭開幕前日の3日からアルコ芸術劇場は守備点検と補修の名目で5月17日まで緊急閉館している。これはソウル演劇祭が現政権に批判的な姿勢を見せていたことへの報復措置ではないかとみられており、国との葛藤はまだまだ続きそうな様相を呈している。昨年からメディアにおける報道統制や、芸術作品の展示拒否など、日本と同様に水面下で圧力がかけられていることが奇しくも浮かび上がった一例と言えるだろう。

作品と演劇人の力で、さまざまな困難を乗り越えることを期待したい、第34回ソウル演劇祭は、5月10日まで大学路の各劇場で上演される。

engeki6【公演情報】
『2015 第34回 ソウル演劇祭』
2015年4月4日~5月10日 大学路自由劇場、東洋芸術劇場、芸術空間ソウルほか
<公式参加作>
●劇団コルモッキル『満州戦線』4月4日~15日 大学路自由劇場(演出:パク・グニョン)
●劇団風のプール『シルム』4月4日~12日 東洋芸術劇場2館(演出:パク・ジョンソク)
●劇団クジラ『不良青年』4月23日~5月3日 大学路自由劇場(演出:イ・ヘソン)
ほか全7作品

<公式サイト> http://www.stf.or.kr/

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[PLAY]NO NAME THEATER COMPANYの新作は『変身物語』をアジア初演!

[PLAY]NO NAME THEATER COMPANYの新作は『変身物語』をアジア初演!

 

metamorphoses『ヒストリーボーイズ』『ピローマン』『ステディ・レイン』『雄鶏たちの闘い-COCK』『家族という名の部族―TRIBES』と、韓国未発表の優れた海外戯曲を卓越した演技力をもつ俳優たちとともに紹介してきたNO NAME THEATER COMPANY。6番目の作品となる『変身物語:Metamorphoses』のポスターとキャストが公開された。

原作の『変身物語』は、古代ローマの詩人オウィディウスが、ギリシャ・ローマ神話に登場する神々がさまざまな生き物などに変身していくエピソードを集めた古典文学。この作品をメトロポリタンオペラの演出なども手掛けた米・演劇界の重要人物、メアリー・ジンマーマン(Mary Zimmerman)が再構成して現代的な戯曲に仕上げた。最初はメアリーが席を置いていた学校でのトライアル公演として上演。舞台の真ん中に大きなプールを設置して、水を変身の媒介にするという驚きの演出が話題を集め、2001年にはオフブロードウェイに、翌年にはブロードウェイに進出し、トニー賞演出賞をはじめ、多数の演劇賞を受賞している。

原作では15あったエピソードのなかから10個を抜粋して、人間が元来持っている、愛と欲望によって登場人物たちが変身していく様がつづられる。今回初となる韓国公演でもステージには大きなプールがあり、俳優たちはその中に膝の深さまで浸かって演技するという。女性が水に沈められるようなポスターのイメージは、この作品世界を予告しているようだ。

劇中には、なんと75ものキャラクターが登場し、一人あたり7~8つの役をこなさねばならないそうだが、多様なキャラクターも着実に消化できそうな、本カンパニー作品にはおなじみの出演陣が揃った。

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(写真左から)キム・ジュンウォン、ソン・ジユン、チョン・テミン

キム・ジュンウォンは、NO NAME THEATER COMPANYの評価を高め、彼の代表作にもなった『ピローマン』を筆頭に3作に主演し、もはや看板俳優と呼んでも過言ではない実力派俳優だ。チョン・テミンは2012年にキム・ジュンウォンと共に『ピローマン』に出演経験あり。これまで、多くの作品で主演を張ってきたソン・ジユンは昨年『雄鶏たちの戦い-COCK』で、キム・ジュンウォンと共演済みだ。

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(写真左から)イ・ヒョンフン、チョン・ソンミン、オ・ジョンテク

イ・ヒョンフンとオ・ジョンテクは『ヒストリーボーイズ』で昨年共演済み。また、イ・ヒョンフンとチョン・ソンミンは昨年、野田秀樹の『半神』日韓公演に出演していたため、日本で2人の演技を見たという人も多いだろう。そして 『バンジージャンプする』のイ・ヒョリム、『ラブレター』のユ・ジュへら3人は、当カンパニーおよび演出家が手掛けた作品で頭角を現してきた新人たちだ。

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(写真左から)イ・ヒョリム、ユ・ジュへ、キョン・ジウン

演出は『ピローマン』『私に会いに来て』『盗まれた本』やミュージカル『ラブレター』のビョン・チョンジュ。加えて、舞台デザインのヨ・シンドン、照明デザインのイ・ドンジンとともに当カンパニー作品を多数手がけてきたスタッフだ。また、今回は音楽が重要な位置を占めるそうで、韓国の伝統楽器と現代の楽器をモダンなスタイルでミックスしているグループ「Coreyah」が、劇中ライブで演奏するそうだ。

韓国には「信じて見る」という表現があるが、本作には俳優も制作陣もまさに観客が「信じて見る」面々が揃い、期待が膨らむ『変身物語』は、4月28日から芸術の殿堂 自由小劇場で開幕する。


 

【公演情報】
演劇『変身物語:Metamorphoses』(변신 이야기:Metamorphoses)
2015年4月28日~5月17日 芸術の殿堂 自由小劇場

出演:キム・ジュンウォン、チョン・テミン、ソン・ジユン、オ・ジョンテク、イ・ヒョンフン、チョン・ソンミン、イ・ヒョリム、ユ・ジュへ、キョン・ジウンほか

原作:メアリー・ジンマーマン(Mary Zimmerman)、演出:ピョン・チョンジュ、音楽:コ・レヤ、振付:クォン・リョンウン、舞台デザイン:ヨ・シンドン、照明デザイン:イ・ドンジン、衣装デザイン:ホン・ムンギ、扮装&小道具デザイン:チャン・ギョンスク

写真提供:NO NAME THEATER COMPANY ©韓劇.com All rights reserved. 記事・写真の無断使用・転載を禁止します。

[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<前編>

[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<前編>

 

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2012年~13年に初の韓国キャスト版を上演した『レ・ミゼラブル』のマリウスを演じて、一躍ライジングスターとなったチョ・サンウンさん。日本のミュージカルファンには劇団四季で活躍していた三雲肇(みくもはじめ)さんとしておなじみの若き実力派俳優です。
丸1年シングルキャストでマリウス役を演じきったあとは、昨年『ウィキッド』で、緑の魔女エルファバと恋に堕ちるフィエロ役で新たな魅力を披露。世界にその名を轟かせる2大ライセンスミュージカルのロングラン出演を経て、次に彼が出演を決めたのは意外にも大学路の中劇場で上演する岩井俊二監督の同名映画を舞台化した『ラブレター』でした。劇中では持ち前の透明感溢れる歌声を聞かせ、ヒロインの初恋の人となる高校生、藤井樹(ふじいいつき)を好演しています。
日本とは何かと縁が深い彼に一度お話を伺ってみたいと思っていたのですが、待望のインタビューが実現。取材は全編日本語で答えてくれました。

*      *      *

8L6B8366●『レ・ミゼラブル』『ウィキッド』と大劇場のライセンスミュージカルにメインキャストで出演された後に『ラブレター』に出演されると知ったときは正直驚きました。てっきり次も大劇場作品だと思っていたので(笑)。
「大学路の作品に出るのは今回が初めてですけど、自分は大劇場とか小劇場作品だとか、ぜんぜん関係ないんです。ミュージカルだけじゃなくて、演劇もチャンスがあったら絶対やりたいし、自分は基本的に俳優ですから、俳優として演技をすることはすべてやってみたいです。実際に友達や周りの人たちにも“今度は大劇場じゃないの?”と言われたりもしましたけど、そういう時は“関係ないよ”って。“主役とかそういう役(の大きさ)も関係ないよ”って言ってたんです」

●サンウンさんご自身は映画『ラブレター』に愛着があったりしたんですか?
韓国では、例えばテレビのお笑い番組なんかで「オゲンキデスカ~!」って言えば、“『ラブレター』の真似をしている”っていうのがみんな分かるくらい知られていますよね?
「韓国で公開されたのは1995年ですから、僕はまだ小学生くらい? なので大学時代に遅れて見たんですけども、だいぶ昔なのであまり記憶にはなかったです。出演を決めたのは、『ラブレター』の音楽監督さんが去年『ウィキッド』を見にいらしたときに“あなたに似合う役があるよ”と言われたんです。それと、演出家のビョン・チョンジュさんと個人的に一度仕事をしてみたかったんです。去年『私に会いに来て(날 보러와요)』という演劇を見て、良い作品だなと思って。自分はずっと外国の演出家と一緒にやってきて、やっぱり一度韓国の演出家と仕事をしてみたいな、と思っていたので、それが大きかったです。あとは今回が韓国初演だし、原作映画や台本にも力がありました。やっぱりいくら俳優が頑張っても、作品に力がないと駄目だというのは、劇団四季時代に浅利(慶太)先生から学んだことです。“舞台は台本が大事。そしてミュージカルだから音楽も大事だよ”っていうのを自分も“その通りだ”とずっと思ってきましたから」

●稽古に入ってからはどうでしたか? 大劇場ミュージカルと違う部分はありましたか?
「システムですか? うーん、システム的な部分は違うところもありますけど、稽古は同じ人間が演ることですから、そんなに違いはないですね。むしろもっと家族的な雰囲気ですごく良い部分がたくさんありました。(秋葉役の)パク・ホサンさんは、もう20年近くいろんな作品に出ている方じゃないですか? そのホサンさんが“今回の稽古場の雰囲気が一番良い”って、他の俳優さんやスタッフさんもみんな良いって言ってるんです。もちろん僕も良いなとは感じていたんですけど、それほどまでに良いとは予想してなかったです。みんな優しいし、お互い助け合いながらやっています」

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寡黙なイケメンでクラスの女子にモテモテの樹

●サンウンさんが演じている藤井樹は、不愛想でツンとした感じのミステリアスなイメージがありましたが……。
「あ、そうですか? 僕は普段は優しいですよ(笑)」

(笑)。はい、もちろん知っていますが(笑)。普段はこうしてとても優しい雰囲気なのに、樹のキャラクターはまったく逆のイメージですよね? 演じてみていかがでしたか?
「映画でも樹はあまり出てこないし、喋らないじゃないですか? だから喋れば喋るほどマイナスになるキャラクターだと思うんですけど、セリフがあって、ミュージカルだから歌も歌わなきゃいけないので、とにかく台本を読んで、この子はどんな性格かな? とか考えながらビョン演出家と一緒に作っていった感じです。でもこれで終わりじゃなくて、いまも上演しながら少しずつ変えているというよりは、感じたことをそのまま素直に表現する、もっと深く考えてみよう、と毎回やっています。それが自分でもとても面白いです」

●いち観客としては、折角サンウンさんが出演しているのに、登場するシーンも歌うシーンもあまり多くないので、それがちょっと残念でした。
「でも逆に『レミゼ』とか『ウィキッド』をずっと見てくれていた人も、“今回が一番良い。良く似合ってる”と言ってくれる人もいるんです。自分で言うのはヘンかもしれないけど、樹は神秘性もあるし、最初から最後まで全体的に藤井樹にまつわる話じゃないですか? それがとても観客の心に残るみたいです。正直、最初は色々と心配もあったんですけど、結果的には良い作品になって、評判も良いのでそれが一番うれしいです。大学路でいま上演している作品のなかで『ラブレター』が一番良いんじゃないかなと思います」

●舞台を拝見したときに、実は『バンジージャンプする』を思い出したんですよ。
「はい、そういう話も良く聞きます。原作も同じく映画ですし、雰囲気も音楽も近いものがありますよね」

8L6B8478●ダブルキャストで樹役を演じているのはカン・ギドゥンさんですね。2人はまったく違う雰囲気をお持ちですが、サンウンさんが独自の樹を表現するために、何か努力された部分はありますか?
「基本的には台本にのっとって演じていますけど、同じ表現をしても演じる人間が違うから、自然と違った魅力が出てくると思います。稽古場で見ていてもギドゥンさんはとても魅力的だし、彼はミュージカルはほぼ初めてだけど、元々演劇はたくさんやっていた人なので演技も上手いし、すごく良い俳優です。稽古のときも2人で助け合いながら、ひとつの役を創っていったという感じです」

●樹が歌うパートで、一番好きな曲はどの場面の曲ですか?
「自分がやっぱり好きなのは『ひと目惚れという言葉(첫눈에 반한다는말)』(⇒プレスコール公式映像で、大人になってからの姿で歌う曲が一番好きです。歌詞が好きなのは(樹が桜の木の下で歌う)『サクラ(벚꽃)』(⇒稽古風景公式映像です。曲の歌詞に深い意味があるんです」

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「サクラ」を歌うシーンでのサンウンさん

●チョ・サンウン演じる藤井樹の魅力、見どころを紹介するとすれば?
「自分ですか? いや~、う~~ん(笑)」

●個人的には、サンウンさん、とても学生服が似合っていると思いました(笑)。
「あ~(笑)、似合ってますか!? 最近は学生の雰囲気を出すために、髪もこういう風に切ったりして(笑)。似合っていると言ってくださってありがとうございます(笑)。本当は31歳なのに…」

●31歳で学生服がこんなに似合う人はいないのでは? と(笑)。
「もう、これが最後です(笑)。もう学生服は見られないかもしれないです(笑)」

●大学路で上演している作品は学生が主人公のものが結構多いですけど、もしオファーが来たらどうしますか?
「それは……作品が良かったら、出ますけど。でも『ラブレター』ほど制服が似合う作品は他にないんじゃないかな? ははは(笑)」

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詰襟が似合いすぎる驚異の31歳(笑)。写真右がカン・ギドゥンさん

⇒インタビュー後編 では、俳優チョ・サンウン誕生秘話に迫ります。

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[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<後編>

[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<後編>

 

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●韓劇.comの読者のなかには、サンウンさんが劇団四季で活動されていた時代をご存知ない方も結構いらっしゃるようなので、後半はこれまでの経歴についてお伺いしたいと思うんですが……。
釜山出身ですよね? そもそも俳優を志したきっかけは何でしたか?

「小さいときからドラマとかを見て、ずっと“俳優になりたいな”と思っていたんです。自分は他の夢を持ったことがないです。だからやらなきゃいけないんです。これしか出来ないんで」

8L6B8343●俳優になれれば、映画でもドラマでも何でも良かった?(笑)
「はい。最初は。でも、もともと歌うことも好きだったんです。高校の時には合唱団で活動したりもしました。それから大学に入ったんですけども、演技もやれる、歌も歌える、踊りも踊れるのはミュージカルじゃないか、と気づいて。そのころちょうど、2004年に初演したチョ・スンウさんの『ジキル&ハイド』を見て、自分も演りたいなと思ってからは、僕のアンテナが全部ミュージカルのほうに向いたんです」

●釜山で通っていた大学(慶星大学)にはミュージカルを学ぶ環境があったんですか?
「大学は演劇映画科で演技しか学べなかったので、歌とかは個人レッスンを受けたり、作品を観たりして自分で勉強していました」

●ミュージカルを始めたのは劇団四季の『ライオンキング』が最初になるんですよね?
「はい、そうですね。2006年に“韓国初演の『ライオンキング』のオーディションがあるよ、というのを友達から聞いて。その友達は先に劇団四季に入っていたんですけども、『ライオンキング』を見たときにシンバが出てきたら“あれ? これサンウンがやったらピッタリの役じゃない?”と思ったらしくて、連絡してくれたんです。でも僕はまだ学生だったし、準備が出来ていないと思ったんだけど、友達が“一応、受けてみて”って言うから、“よし、じゃぁわかった。受けてみるよ”って、シャーロッテ劇場でオーディションを受けたんです。そうしたら浅利(慶太)先生が、“あ、シンバだ”って言ってくださって、オーディションに合格したんです」

●へぇぇぇ! 最初からそれは凄い! あの浅利先生から。
「でも、劇団四季のシステムがありますから、アンサンブルから始めて、その後でシンバを演ったんです」

●アンサンブルとして合格したときはパク・ウンテさんなどと一緒だったんですよね?
「ウンテさんと僕がサイの前足と後足担当だったんです」

●それは今考えると豪華すぎるサイですね!(笑) ほかにアンサンブルに合格して、いま活躍している俳優はどんな方がいらっしゃいますか?
「当時は無名だったけど、いまはみんな有名になられましたね。パク・ウンテさんもそうだし、キム・ジュンヒョンさんも一緒でしたし、チャ・ジヨンさん、カン・テウルさんなど、いろんな俳優がいました」

8L6B8414●それからシンバ役を演じるようになったのは?
「2007年の初めからですね。それからその年の11月に『ライオンキング』の上演が終わって、まだ若かったから劇団四季の良いシステムの中で学びたいな、と思って、オーディションを受けて日本の劇団四季に入ったんです」

●その時はすでに日本語を話せていたんですか?
「いえ。日本に行って、イチから勉強しました。『ライオンキング』でシンバ役を半年くらいやりながら。動線や歌は韓国でずっとやっていたので分かってましたから、最初はとにかく日本語のセリフだけを覚えて、出演しながら日本語の勉強をやっていったんです」

●そして、2009年日本初演の『春のめざめ(スプリング・アウェイクニング)』に、韓国版ではチョ・ジョンソクさんなどが演じた、モリッツ役で出演されたんですね。
「実は『春のめざめ』のオーディションのときに、ブロードウェイから演出家さんもいらしたんですけど、その演出家さんはもちろん日本語が分からないじゃないですか? 僕が日本人か韓国人かなんて分からないはずだから、逆にそれは僕にとってチャンスだ。と思って、自分が持っているパッションを全部お見せしたんです。本当は候補の3番目か4番目くらいだったんですけど、演出家さんが“モリッツはサンウンに演ってほしい”と、おっしゃったらしくて、出演が決まったんです。それからはさらに頑張って日本語も勉強もしたし、役の研究もしたりと一生懸命勉強しましたね」

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『ウィキッド』では、りりしいフィエロ役で観客を魅了!(2013年11月 『ウィキッド』プレスコールより)

●その後で『コーラスライン』や『キャッツ』にも出演されたそうですが、劇団を辞めたのはいつごろでしたか?
「2012年の3月です。大きな地震があったじゃないですか? そのころは『ライオンキング』に出演してたんですけど、両親が心配したのもあって韓国に帰ってきたら、ちょうど『レ・ミゼラブル』の初演が決まっていて。まだマリウス役に合格した人がいないというのを聞いて、オーディションを受けてみないか、と誘われたんです」

●それで1年間マリウスを演じられて、『ウィキッド』のフィエロまで、と華々しい経歴が続いたわけですね。『レミゼ』も『ウィキッド』も日本でとても人気がある作品ですし、これから日本でも活動したいとは思いませんか?
「はい。日本のミュージカルに出演してみたいと僕も思っています。日本でコンサートがあるんですけど(※2月1日に終了)、これをきっかけに日本でコンサートなども、もっと出来たらいいなと思っています」

 

●日本語がお上手ですから、いまこのまま日本に行かれても、すぐ舞台に立てると思いますよ。
「いやいや、日本語はまだまだ勉強しなきゃいけないですけど、機会があったら日本の舞台にも立ちたいですね」

*      *      *

終始柔らかな笑顔が印象的だったサンウンさん。取材時には、次の出演作はまだ決めていないとのお話でしたが、彼ほどの実力があれば、いろんな作品から引く手あまたでしょう。そして最後にお話くださった、日本の舞台に立つ日もそう遠くはないかもしれません。

サンウンさんが『レ・ミゼラブル』に出演中の2013年、ミュージカル俳優のトークショー「イヤギショー」に出演されたのを見たときに、今でも忘れられないエピソードがあります。サンウンさんは『レミゼ』の稽古中、毎日毎日誰よりも早く稽古場に来て、ウォーミングアップや発声練習をしていたんだそうです。「稽古場に来ると、まずサンウンさんの声を聴くことになる」と共演者たちは冗談めかして話していましたが、こうして見えないところで人一倍の努力をしている人だからこそ、当時韓国ではほぼ無名だったにもかかわらず、マリウス役を射止めることができたんだな、と感心しました。
韓国のみならず日本でも……と、無限の可能性を秘めたサンウンさん。さらなるご活躍を期待しつつ、これからも応援していきたいと思っています。

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