[PLAY]困難を乗り越え、人々の精神的な希望に~「第36回ソウル演劇祭」開幕!

 

engeki4今年で36回目を迎える「ソウル演劇祭」が開幕を控え、4月2日 大学路の良い公演紹介所多目的ホールで記者懇談会が行われた。
「演劇は時代の精神的希望だ」をスローガンに、4月4日から約1カ月間開催される演劇祭は、「公式参加作」7作、若手制作者の作品を選定した「未来よ盛り上がれ」部門11作をはじめ、計31作品が上演される。また会期中には大学路一帯の稽古場、カフェ、駱山公園の野外舞台などを利用した「創作空間演劇祭」や演劇市民サークルとともに制作する「ソウル市民演劇祭」など、さまざまな市民参加型のイベントも並行して実施される。

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ナム・ミョンリョル ソウル演劇協会副会長(左)とパク・ジャンリョル ソウル演劇祭実行委員長

パク・ジャンリョル実行委員長が「この時代の片隅で、堂々と生きる人たちの話を盛り込み、役者たちの努力を通じて観客と意思の疎通を図りたい」と抱負を述べれば、ベテラン俳優のナム・ミョンリョル ソウル演劇協会副会長は「演劇は、人間が言葉と身体を使うため、メッセージが最もダイレクトに伝わるジャンル。いまこの時代を大衆がどう生き延びていくのか、もっともリアルに語ることができるのが演劇ではないか」とアピールしていた。その一方で、国立劇場や明洞芸術劇場などの公的劇場で上演する数作品分の予算で、演劇祭のすべてをまかなわねばならないという厳しい状況もあり、「演劇祭を通じて、その年の最高の作品を生み出したいと思うが、この10年間ほとんど変わらない予算額では、新たに才能ある者を導くには弱い部分がある」と本音も吐露していた。

近年、演劇のメッカ大学路では大手の資本が投入された新しい劇場が次々と開館し、人気俳優が出演する商業演劇に観客が集中する一方で、大学路の観劇文化を築き上げてきた老舗劇場は閉館を余儀なくされ、小劇団は活動継続が困難になってきている。ソウル演劇祭に限らず、韓国の演劇人は時代の流れにどう拮抗し、商業性とどう折り合いをつけていくのか、いま、大きな課題を突き付けられている。

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2015年 ソウル演劇祭広報大使のイ・ソクジュン(左)とキム・ホジョン

2015年の広報大使は、まもなく演劇『M.Butterfly』の主演が控えるイ・ソクジュンと、イム・グォンテク監督の新作映画『ファジャン』の出演が話題となっているキム・ホジョンが任命された。
特にミュージカルと演劇の両方で精力的な活動を続けているイ・ソクジュンは「俳優として双方の世界に大きな差はないと思うが、ミュージカル俳優が演劇に出演したいと思っても、なかなか接点がない。それを橋渡しできるものが必要ではないか」と実体験を踏まえて語り、「最近痛感しているのは公演界の競争相手は観客ではなく、スマートホンなどのデジタル機器。自分は俳優自ら、作品のためにポスター貼りをした最後の世代だが、そんな時代はもう終わった。文化を創るのも重要だが、それを多くの人にどう知らせるかが重要だ」と、いまや情報や知識をインターネットを通じて得ている、次世代の若者たちにどう訴えるか、努力が必要だと鋭い指摘をしていた。

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公式/自由参加作品の演出家たち(写真左から)『私は風』マ・ドゥヨン/『盗まれた本』ビョン・チョンジュ/『満州戦線』パク・グニョン/『6.29が送る予告訃報』ムン・ソッポン

演劇祭の開幕作となるパク・グニョン作・演出の『満州戦線』は、3月に新宿のタイニィアリスでも上演された作品。テーマ的に日本で理解されるのは難しいのでは? という問いに「戦時中に祖父母世代が満州にいたという人は多いと聞いた」と、日本でも作品が受け入れられ手ごたえを感じたようだ。また、近年話題作を次々と世に送り出しているビョン・チョンジュ演出家は『盗まれた本』で今回初めて自由参加作品部門にエントリーされた。「演劇祭に参加できたことは、演劇界の先輩や関係者に認められたことでもある」と嬉しさを覗かせていた。

祝祭の開会を華々しく宣言する場でありたい懇談会だが、登壇者たちの表情は残念ながら一概に曇りがちだった。30年以上の歴史を誇り、韓国を代表する演劇祭であるソウル演劇祭だが、昨年11月、毎年開・閉会式を行い、主要作品を上演してきた大学路のアルコ芸術劇場の定期貸館選定から脱落するという問題が起きた。それから文化芸術委員会と協議し、結局今年1月に公式参加作など3作が上演されることになったが、演劇祭開幕前日の3日からアルコ芸術劇場は守備点検と補修の名目で5月17日まで緊急閉館している。これはソウル演劇祭が現政権に批判的な姿勢を見せていたことへの報復措置ではないかとみられており、国との葛藤はまだまだ続きそうな様相を呈している。昨年からメディアにおける報道統制や、芸術作品の展示拒否など、日本と同様に水面下で圧力がかけられていることが奇しくも浮かび上がった一例と言えるだろう。

作品と演劇人の力で、さまざまな困難を乗り越えることを期待したい、第34回ソウル演劇祭は、5月10日まで大学路の各劇場で上演される。

engeki6【公演情報】
『2015 第34回 ソウル演劇祭』
2015年4月4日~5月10日 大学路自由劇場、東洋芸術劇場、芸術空間ソウルほか
<公式参加作>
●劇団コルモッキル『満州戦線』4月4日~15日 大学路自由劇場(演出:パク・グニョン)
●劇団風のプール『シルム』4月4日~12日 東洋芸術劇場2館(演出:パク・ジョンソク)
●劇団クジラ『不良青年』4月23日~5月3日 大学路自由劇場(演出:イ・ヘソン)
ほか全7作品

<公式サイト> http://www.stf.or.kr/

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