[MUSICAL]第9回「ザ・ミュージカルアワーズ」受賞結果発表

 

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今年のミュージカル賞『キンキーブーツ』の一場面より

韓国の2大ミュージカル賞のひとつである「ザ・ミュージカルアワーズ」の第9回受賞結果が発表された。
今年は、2014年5月から、今年4月まで上演された作品のうち、ライセンス、創作(韓国オリジナル)を含めた出品作26本のなかから選定された。昨年は、韓国フェリー沈没事故(通称:セウォル号事件)の影響で、例年行われていた華やかな受賞式は自粛されていたが、今年も韓国ミュージカル協会から、受賞結果のみが発表されることになった。

受賞結果は以下のとおり。

■今年のミュージカル賞 『キンキーブーツ』(킹키부츠)
■今年の創作ミュージカル賞 『ファリネッリ』(파리넬리)
■主演男優賞 『キンキーブーツ』カン・ホンソク
■主演女優賞 『ONCE』(원스)チョン・ミド
■助演男優賞 『プリシラ』(프리실라)コ・ヨンビン
■助演女優賞 『ブラッド・ブラザーズ』(블러드 브라더스)チェ・ユハ
■男優新人賞 『ファリネッリ』ルイス・チョイ
■女優新人賞 『Zorro(ゾロ)』(조로)キム・ヨジン
■作曲・作詞賞 『ザ・デビル』(더 데빌)Woody Park、イ・ジヘ、イ・ジナ
■脚本賞 『アガサ』(아가사)ハン・ジアン
■演出賞 『ラブレター』(러브레터)ビョン・チョンジュ
■振付賞 『Zorro』ホン・ユソン
■音楽監督賞 『ファリネッリ』キム・ウンギョン
■衣装賞 『マリー・アントワネット』(마리 앙투아네트)生澤美子(いけざわよしこ)
■照明賞 『根の深い木』(뿌리 깊은 나무)シン・ホ
■音響賞 『ザ・デビル』キム・ピルス

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『キンキーブーツ』で主演男優賞を受賞したカン・ホンソク(写真中)

今年の“顔”ともいえる作品賞は、昨年12月から今年2月まで上演した『キンキーブーツ』が獲得した。CJ E&Mががブロードウェイ作品に初めて本格投資して制作し、韓国版も見事大ヒットに導いた本作は、同名映画を原作に、倒産寸前の靴工場をドラァグクイーン御用達のきらびやかなブーツ工場に生まれ変わらせて危機を救うというヒューマンコメディだ。劇中で靴工場に革命をもたらすドラァグクイーンのローラを熱演して作品を大いに盛り上げたカン・ホンソクが主演男優賞を受賞という観客も納得の結果となった。

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主演女優賞を受賞した『ONCE』のチョン・ミド(写真右)

一方、主演女優賞は、アイルランド映画『ONCE ダブリンの街角で』が原作の『ONCE』でヒロインを演じたチョン・ミドが初受賞した。秀作と名高い映画版同様、丁寧な作品づくりと俳優たちが生演奏で繰り広げたライブ感溢れるサウンドで、『キンキーブーツ』のような派手さはないものの上質な心温まる作品に仕上がっていた。チョン・ミドは元来評価の高い演技力に加え、劇中で最も印象深い曲「Falling Slowly」を歌うシーンでピアノを弾くために、演奏をいちから学んで役に挑んだ努力も評価されたようだ。

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『ファリネッリ』で男優新人賞を受賞したルイス・チョイ

最多受賞となる3部門で受賞したのは、今年1月から行われた「創作産室」という創作ミュージカルの新作上演プロジェクトから誕生した『ファリネッリ』。去勢された男性歌手=カストラートのファリネッリの劇的な生涯を舞台化した本作は、4月末には早くも再演されるなど、プロジェクトの上演作のなかでは群を抜いた完成度を見せていた。“カストラートの再来”と呼ばれるほど、驚異の歌声を聴かせて大ヒットの立役者となったカウンターテナーの声楽家、ルイス・チョイが男優新人賞を受賞している。

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『ザ・デビル』のシーン写真より

作曲・作詞賞、音響賞受賞と、サウンド面では昨年8月から11月に上演された『ザ・デビル』が大きく評価された。『ヘドウィグ』『ジーザス・クライスト・スーパースター』など、ロックミュージカルの演出に定評のあるイ・ジナが、ゲーテの「ファウスト」を題材にオリジナル作品として制作。悪魔に魂を売って成功をものにした男と、彼を愛する女、そして二人を破滅に導くデビルの危険な関係を描き、韓国のミュージカルマニアに固い支持を得ていた作品だ。この作品に出演していたマイケル・リーが推薦したという音楽家Woody Parkの作曲によるダイナミックなロックサウンドとともに、ステージにバンドとコーラスを入れたショーミュージカル形式で上演された本作は、韓国では過去に類を見ない世界観を見せていた作品だった。

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『マリー・アントワネット』より

そして日本人にとってうれしいのは『マリー・アントワネット』の衣装デザイナー、生澤美子の衣装賞受賞だ。昨年11月から韓国初演した本作は、一時は栄華を極めながらもフランス革命のさなか、断頭台の露と消えたマリー・アントワネットの波乱の生涯を舞台化したもの。幼少期からフランス王室へ嫁ぐまでの華やかでゴージャスなドレス、革命運動が始まって囚われの身となり凋落した姿……と、マリーの栄枯盛衰を池澤は衣装で見事に表現していた。日本ではミュージカル『レディ・ベス』ですでに披露されていたが、改めて韓国でもその実力を認められる結果となった。

昨年は、セウォル号事件や制作会社の相次ぐ倒産など韓国ミュージカル界はさまざまな危機を迎えた1年と言われていたが、そんな厳しい環境のなかでも着実に成果を残した作品、および俳優が受賞を果たした内容となった。
受賞者・作品のラインナップは、公式サイト(http://www.themusicalawards.co.kr/)で確認できる。

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