[PLAY]岩井秀人作『ヒッキー・ソトニデテミターノ』韓国版を上演!

 

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登美男役のチェ・グァンイル

2013年にスタートし、毎年ひとつのテーマをもとに、劇場での公演、講演会、映画上映会に加え、アートギャラリーでの展示もリンクさせ、ドゥサンアートセンターの空間を活用して行われる企画プログラム「ドゥサン人文劇場(두산인문극장)」が開催中。今年は「例外(예외)」というテーマで6月末まで実施されている。

なかでも人気が高いのが、小劇場Space111で上演する新作演劇の上演で、現在は天安門事件を追う米国記者の視点から事件を浮き彫りにしていく『チャイメリカ(차이메리카)』を5月16日まで上演中。次に上演されるのが、日本原作の『ヒッキー・ソトニデテミターノ』だ。

『ヒッキー・ソトニデテミターノ』は2012年に吹越満主演で、パルコ劇場にて初演された作品。作・演出の岩井秀人が、この作品に先駆けて自身のひきこもり体験をもとに発表した第1作、『ヒッキー・カンクントルネード』(2003年)の続編的な作品だ。
10年もひきこもっている主人公、登美男のために母親がカウンセラーの“出張お兄さん”を依頼したことで巻き起こる人間模様を描いた第1作から、今作では“元ひきこもり”としてカウンセラーになった登美男が新たなひきこもりの青年や家族などに出会う物語となっている。

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吹越満主演の日本公演の様子 ©Wakana Hikino

このユニークな作品の韓国版演出を担当するのは、『青春礼賛』『そんなに驚くな』『満州戦線』など日本でも多数の上演歴をもつ劇団コルモッキルの代表パク・グニョン。市井の人々のひきこもごもを描き続けてきた演出家は、岩井秀人も演出部に所属する青年団をはじめ、日本の劇団や俳優とも長年の交流があるため、原作がもつ独特の世界観やニュアンスをしっかりと韓国の観客に見せてくれそうだ。

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鈴木太郎役のキム・ドンウォン(写真中)と、父きよし役のユン・サンファ、母かなこ役のファン・ジョンミン

主人公の登美男役には多数の演劇のみならず『ワニとジュナ』『破壊された男』など映画にも多数出演しているチェ・グァンイル。そして登美男がカウンセリングすることになるひきこもりの青年、鈴木太郎を劇団コルモッキル作品ではおなじみのキム・ドンウォン、その父きよし役に昨年の主演作『ジュリアス・シーザー』が東亜演劇賞作品賞を受賞したユン・サンファ、母かなこ役を『地球を守れ!』『怪しい彼女』などの映画でも知られる劇団木花出身の女優ファン・ジョンミンが演じる。また40代のひきこもり、斉藤和夫役をベテランのイ・ナムヒが演じるなど、韓国演劇界ではそれぞれ主役を張る実力派俳優が見事に揃っており、日本作品ならではのちょっとコミカルでシュールな人間関係をどう再現してくれるのか期待される。

韓国でも“ひきこもり”という単語が一般にも普及しているほど、社会問題化しつつあるなか、「例外」という人文劇場のテーマにピッタリなこの作品を、韓国の演出家と俳優たちがどのように消化して表現するのか、日本人の立場から見てみるのも一興だろう。
『ヒッキー・ソトニデテミターノ』は5月26日からドゥサンアートセンターSpace111で開幕する。

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40代で引きこもりを続ける斉藤和夫役のイ・ナミ

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hikkiposter【公演情報】
演劇『ヒッキー・ソトニデテミターノ』
(韓国語題『ひきこもり外に出た(히키코모리 밖으로 나왔어)』

2015年5月26日~6月20日 ドゥサンアートセンター Space111
出演:森田登美男役:チェ・グァンイル/黒木役:カン・ジウン/鈴木かなこ役:ファン・ジョンミン/鈴木きよし役:ユン・サンファ/鈴木太郎役:キム・ドンウォン/ベテラン寮生役:ぺ・スベク/森田綾役:シム・ジェヒョン/斉藤よしこ役:キム・へガン/斉藤和夫役:イ・ナムヒ

演出:パク・グニョン(劇団コルモッキル)

●『ヒッキー・ソトニデテミターノ』 公式サイト
●岩井秀人主宰「ハイバイ」公式サイト⇒ http://hi-bye.net/
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