「女神様(ヨシンニム)」5つの鑑賞ポイント

 

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来日公演で初めて観る方も、韓国語が分からない方も“ココ”を押さえておけば間違いない! 作品をより楽しめる5つのポイントを伝授します。

①戦争ものなのに、なぜかほっこり。ヒーリング効果は絶大!

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スンホ(右)に女神様の話を聞かせるヨンボム

物語の舞台は朝鮮戦争真っ只中の1952年、釜山近海。北朝鮮の捕虜を移送中の船が嵐で遭難し、かろうじて無人島に流れ着いたものの、南北の兵士の立場は逆転して、韓国軍兵士のヨンボムとソックは逆に囚われの身に。2人は命の危機にさらされるのかと思いきや、ヨンボムは機転を利かせてスンホを取り込み、北の兵士たちの固い心のガードを緩めていくのです。厳格で怖そうに見えていた兵長チャンソプをはじめ、女神様の存在をスンホに信じさせるため、躍起になるうちに素朴で純粋な素顔を見せはじめる北の兵士たちの姿が笑いを誘います。俳優たちと一緒に笑って泣いて、最後はジーン……見た後で胸の中に温かさが残り、癒される感覚はこの作品の最大の魅力です。

南北の兵士が国境を超えて友情を築く作品としては、今年ミュージカル版も大ヒットしたイ・ビョンホン、ソン・ガンホ主演の映画「JSA」(2000年)やチョン・ジェヨン、シン・ハギュン主演の「トンマッコルへようこそ」(2005年)が有名です。「女神様」とは切り口が違いますが、この2作を鑑賞しておけば、作品世界をより深く理解する手助けになると思います。

 ②よ~く聞いてみて! 南北の“なまり”の違い

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チャンソプ(写真中)の独特の話し方に注目

南のヨンボムとソック、そして北のチャンソプら4人は軍服の色やデザインはもちろん、イントネーションや語尾の表現が違います。字幕なしには意味が分からない、という方でもニュアンスの違いは感じ取れると思うので、注意してセリフを聞くと一段と面白くなりそうです。なまりは韓国語で사투리(サトゥリ)と言いますが、北の兵士を演じる俳優はみな、北朝鮮なまり(북한 사투리)のレッスンをして役に挑んだそうですよ。

 

③オープニングからドキドキ! 秀逸なスコアに感動!!

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女神様が見ているので、日常生活で気をつけなければいけないことを歌う「君が見ているから」

「女神様が見ている」が高い評価を受けたもうひとつの理由が、素晴らしい音楽です。すでにリーディングの時点で主要な曲のほとんどは完成しているのは、当時の動画からも分かると思います。すべてピアノがベースのサウンドですが、冒頭からぐいぐいと作品世界に引き込まれてしまいます。巧妙なブレイクを使い、ドラムのビートが効いたオープニングナンバー「誰のために(누구를 위해)」、スンホが祈るように歌う崇高なメロディーが素晴らしい「悪夢に祈る(악몽에게 빌어)」、思わず一緒に踊り出したくなるキュートなナンバー「君が見ているから(그대가 보시기에)」、美しいメロディーが切なさを倍増させる「つぼみ(꽃봉오리)」そしてメインテーマの「女神様が見ている(여신님이 보고 계셔)」などなど……。どの曲ひとつとっても外せないバリエーション豊かな名曲揃い。ハン・ジョンソク脚本家とイ・ソンヨン作曲家が二人三脚で度重なる修正やアレンジを加えながら創り上げただけあって、ストーリーに寄り添い、流れるような展開のスコアに魅了されるはずです。

④出番がないシーンもじっと後ろに

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後ろにいる間は微動だにしません(笑)

各キャストが自分が演じるシーンではないときには、後方にある木に背中をつけてじっと控えています。2013年の初演ではステージがとても狭い小劇場だったこともあり、次のシーンにスムースに移行するために工夫されたアイデアだったようですが、兵士たちがなす術もなく無人島生活をおくる虚無感も表現されているようで、とても斬新な演出でした(ただし、出演している役者さんたちは袖に引っこんで休む暇がないため、なかなか大変なようでしたが)。今年劇場をグレードアップしても、この演出は引き続き残っているので、なぜ後ろに? と思った方、後ろで耐えている俳優たちの努力も注目してほしいです。

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ソックの恋物語を見守る仲間たち

⑤みんなが主役! それぞれのビハインドストーリーに涙。

無人島に漂着後、立場が逆転して途方に暮れるヨンボムの独白を皮切りに、少しずつ兵士ひとりひとりの背景が明かされていきます。とくに架空の“女神様”が登場してからの恋や家族愛のエピソードには胸が締め付けられるほど。いずれも印象深く、キャスト全員が主役と言っても過言ではないのです。
戦場では兵士の彼らも故郷に帰れば平凡な一市民……物語の根底には、平和に見えても、いまも“休戦中”である両国の現実が横たわっています。そんななかでも、南北の兵士が友情を築いていく様は希望の光を見ているようです。また、ストーリー同様に俳優たちの仲の良さや信頼関係が演技からも滲みでているのが客席まで伝わってきて、カーテンコールでは感動倍増! なのです。

これ以外にも、まだまだ語り尽せない魅力が満載! 日本の劇場で堪能できる貴重な機会をみなさんどうぞ逃さないでほしいです!

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