[MUSICAL]『マタ・ハリ』を上回るスケール!『笑う男』全貌を公開

 

(写真左から)美術オ・ピリョン、衣装グレゴリー・A・ポプリク、演出ロバート・ヨハンソン、オム・ホンヒョンEMK代表、キム・ジヒョンEMKプロデューサー、ヘアメイク キム・ユソン ©EMKミュージカルカンパニー

オム・ホンヒョンEMK代表/総括プロデューサー ©EMKミュージカルカンパニー

EMKミュージカルカンパニー(以下EMK)が『マタ・ハリ』に続き2番目のオリジナル作品に挑む、『笑う男』の制作陣が作品の概要を紹介する制作発表記者会見が、3月12日開催された。

準備に5年をかけ、ついに今年本公演となる『笑う男』だが、実はEMKが2016年に初の創作ミュージカルとして上演した『マタ・ハリ』よりも先に企画を進めていた作品だったという。最初に登壇したオム・ホンヒョン代表は「まだ稽古を始めてはいないが、衣装からセットまで現時点で90%以上完成させている。ワールドプレミアにふさわしく完成度の高い公演にしなくてはいけないと準備している」と挨拶し、『マタ・ハリ』以上に世界を狙う作品に仕上がりつつある自信をのぞかせた。

脚本・演出のロバート・ヨハンソン ©EMKミュージカルカンパニー

 

 

 

 

本作は『レ・ミゼラブル』『ノートルダム・ド・パリ』の原作者として知られるヴィクトル・ユゴーが1869年に発表した同名小説を原作にしている。脚本・演出のロバート・ヨハンソンが偶然飛行機の機内で見た『笑う男』のフランス版映画にいたく感動したことが制作のきっかけとなった。「機内にいるのに涙が止まらず、この作品をミュージカルにしてはどうかと思いついた。飛行機を降りてすぐに(作曲家の)フランク(・ワイルドホーン)に電話し、“この映画を見て”と伝えた。するとフランクも映画の魅力にはまって作曲に取り掛かり、数曲を仕上げてきた。それからオム代表らEMKのプロデューサーに舞台化を提案して本格的に制作が始まった」という。ロバートは振付のジェイミー・マクダニエルと共にヴィクトル・ユゴーが最後に暮らした家を訪ねるなどして準備を重ねたほか、彼が幼いころに親しんだ古典文学をコミック化した児童書シリーズの写真をスクリーンに映して「そのなかでも『笑う男』が一番好きだったことを後で思い出した」と、原作との運命的な縁も語っていた。

制作発表会の進行は、日本で女優・MCとして活躍するキム・テイが務めた。会場前方左側には、美術オ・ピリョンデザインのセットの模型も展示されていた。©EMKミュージカルカンパニー

本作の主人公は貴族の子息として生まれたが、対抗勢力に父を殺され、口角を切り割かれて顔に笑ったような傷を刻まれた青年グウィンプレン。盲目の少女デアとともに興行師に拾われ、サイドショー(見世物小屋)の芸人となり、決して幸せな境遇ではなかったが相思相愛のデアと過ごす日々を糧に生きていた。しかしある日、幼いころの彼を知る貴族が彼の存在に気づき、女王に報告。やがて貴族へ身分を回復したグウィンプレンだが、彼にはさらなる試練が待っているのだ。

作曲家フランク・ワイルドホーン インタビュー映像(EMK公式YouTubeより)

原作にもある「裕福な者たちの楽園は、貧しい人々の地獄の上に建てたものだ(부유한 자들의 낙원은 가난한 자들의 지옥으로 지은 것이다)」という一文は本作のテーマとして、台本の1ページ目にも記されているという。17世紀英国を舞台にしているが、現代の格差社会にも通じる“クラス(階級)”への鋭い批評と風刺が根底にあるこの物語で、どん底から這い上がろうとするグウィンプレンの姿は共感を呼ぶだろう。
ロバートは、昨年末に主要キャストを揃えて進行したワークショップでは「参加した皆が泣いた」と語り、物語を彩るフランク・ワイルドホーンの楽曲は「『ジキル&ハイド』以降で最高のスコア」と絶賛するなど、すでにスタッフ間でもクオリティの高さは検証済みのようだ。

作詞家ジャック・マーフィー インタビュー映像(EMK公式YouTubeより)

EMK作品を長年支えてきた音楽の要であるキム・ムンジョン音楽監督は「メインテーマ曲をはじめ、バイオリンの旋律が特徴的な楽曲となる。実際にバイオリニストが舞台に登場して、主人公の感情を代弁するような役割となるだろう」と予告。また、「フランクの楽曲の最大の魅力は大衆性。甘く抒情的なメロディーが特徴だが、今回はジプシー音楽をギターやマンドリンも入ったフルオーケストラで表現する楽曲もある」と語り、フランクのポップス作曲家としての利点も生かしたスコアが聴けそうだ。

キム・ムンジョン音楽監督(左)とオ・ピリョン舞台美術デザイナー ©EMKミュージカルカンパニー

舞台美術担当のオ・ピリョンは、台本にある一文にインスピレーションを受け“傷”をキーワードに視覚化した。「一部の金持ちの享楽のために子供の口を裂き、傷を与えて喜びを得る。貧しい者たちの世界は傷だらけだ。一方金持ちは傷があってもそれを覆い隠そうし、誇張されてより分厚くなっている」と独自の作品感を語っていた。どのシーンも世界を表す円形が特徴的なセットとなっており、会場に小型の模型も持ち込んでコンセプトを紹介していた。

主人公グウィンプレンの口を象徴するようなメイン舞台(左)と、グウィンプレンが貴族階級に復権後のシーン(右)©オ・ピリョン

『ファントム』に続き、EMK作品の衣装を担当することになったグレゴリー・A・ポプリクは、「時代を特定させたくないというロバートのリクエストに応え、バレンシアガからヴィヴィアン・ウエストウッドまでたどりつつ、様々な時代の要素を取り入れて185体の衣装を制作した」という。女王の衣装には白、金、銀などの色使いで貴族の高貴さを表現する一方、見世物小屋の芸人などにはブードゥー的イメージを持たせたモノトーンの衣装スケッチを披露していた。

衣装コンセプトを説明するグレゴリー・A・ポプリクデザイナー ©EMKミュージカルカンパニー

そしてヘアメイク担当のキム・ユソンは「最近は人の口元ばかり見ている」と話しはじめて笑いを誘った。グウィンプレンの特徴的な“割けた口”の特殊メイクのテスト版イメージ写真を公開しつつ、「俳優のカッコよさは生かしつつ、歌を歌う際の妨げにならないようにどう作るかに苦心している」と語っていた。

ドクター・コンクエスト(左)と、興行師ウルシュスの衣装スケッチ ©グレゴリー・A・ポプリク

制作費は『マタ・ハリ』の125億ウォンを上回る175億ウォンが投じられる。テレビ局SBSとインターパークが主な出資企業だそうだが、初演のみならず、今後の再演や海外へのライセンス販売などを通して収益を回収していく長期的展望があるそうだ。7月からの芸術の殿堂オペラ劇場での公演は、芸術の殿堂の開館30周年記念作のひとつとして上演。その後、9月からブルースクエア インターパークホールに会場を移して10月末まで上演される。初演作ながら、2会場で計4カ月にわたる長期公演が実施されるのは異例だが、今後大型創作ミュージカルを制作するうえで、試金石となる重要な作品となりそうだ。

キャストは4月に公開予定。会見当日も助演俳優のオーディションを終えてきたという制作陣は、主演のみならず端役までも役柄や楽曲に合う人材を探すオーディションを行い、さらに完成度を高めるために努力しているそうだ。


【公演情報】
ミュージカル『笑う男』(웃는 남자)
2018年7月10日~8月26日 芸術の殿堂オペラ劇場
2018年9月4日~10月28日 ブルースクエア インターパークホール

総括プロデューサー:オム・ホンヒョン/プロデューサー:キム・ジウォン/脚本・演出:ロバート・ヨハンソン/作曲:フランク・ワイルドホーン/作詞:ジャック・マーフィー/編曲・オーケストレーション:ジェイソン・ハウランド/韓国語歌詞・協力演出:クォン・ウナ/音楽監督・指揮:キム・ムンジョン/振付:ジェイミー・マクダニエル/協力振付:ホン・セジョン/舞台:オ・ピリョン/衣装:グレゴリー・A・ポプリク/衣装スーパーバイザー:アン・ヒョンジュ/ヘアメイク:キム・ユソン/照明:グ・ユニョン/映像:ソン・スンギュ/小道具:チョ・ユニョン/舞台監督:チョン・ウニョン

写真提供:EMKミュージカルカンパニー
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『笑う男』メインテーマ曲 ティーザー映像(EMK公式YouTubeより)