ヨ・シンドン

[PLAY]気鋭の創作集団ヤンソンプロジェクトの新作『フォックスファインダー』開幕

[PLAY]気鋭の創作集団ヤンソンプロジェクトの新作『フォックスファインダー』開幕

 

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主人公のコベイ夫妻を演じたヤン・チョア(左)とソン・サンギュ

ドゥサンアートセンターが若手クリエイターの舞台制作を支援する「創作者育成プログラム」に選定された、ヤンソンプロジェクト(양손프로젝트)の新作『フォックスファインダー(FOXFINDER)が開幕を前にプレスリハーサルを公開した。

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シンプルなセットのなかに独特の色合いの照明が印象的

ヤンソンプロジェクトは、演出家パク・ジヘと、俳優ソン・サンギュ、ヤン・チョア、ヤン・ジョンウクという4人で構成される演劇創作集団だ。全員が企画・作品選定の段階から参加するという、韓国ではあまりない共同制作システムを取っている。ドゥサンアートセンターとは2009年から共同企画作品を発表しており、昨年「創作者育成プログラム」アーティストに選定された第1作『死と乙女(죽음과 소녀)』(⇒紹介記事)で、パク・ジヘは2014東亜演劇賞新人演出賞を受賞している。

今年、創作者育成プログラムの第2弾として発表した『フォックスファインダー』はイギリスの女流作家ドーン・キングが2011年に発表した戯曲が原作。物語は“キツネ”が自然災害や伝染病を引き起こし、人間の精神さえも錯乱させる存在だと信じられている世界が舞台となっている。豪雨や病虫害の被害に悩まされていたサミュエルとジュディスのコベイ夫妻が営む農場に「フォックスファインダー(キツネ探索捜査員)」の青年ウィリアムが派遣されてきたことで、夫婦のみならず村人とも摩擦が生じ始め、徐々に登場人物たちの欲望や葛藤があらわになっていくのだ。

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ヤン・ジョンウク演じる”フォックスファインダー”のウィリアムは完璧なまでの潔癖さをもつが、自らを鞭打って快感を覚えるという性癖を持つ謎の青年

パク演出家は本作を通じて「自分と他人の信頼が共存できない時、何が起こるのか、他人の信頼が自分を脅かして攻撃してきた時、どんな武器を取り出すのか」と考えたそうだ。劇中では、慎ましく暮らしているように見えるコベイ夫妻が抱える闇や、一見するとストイックな宣教師のようなフォックスファインダーのウィリアムの裏の顔など、少しずつ種明かしをしながらジリジリするような緊迫感が見るものを圧倒する。

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ウィリアムは機械的に質問を次々と投げかけ、夫婦を追い詰めていく

いくつかのちいさなベンチ以外には白い床と二本の柱のみというシンプルなセットだが、見ようによっては黄緑にも、オレンジにも見える照明が、物語を支配する違和感を煽るような不気味さを醸し出している。
本作で美術を担当するヨ・シンドンは、同劇場で初演出した『サボイサウナ』や、国立劇団で上演した青少年演劇『飛行少年KW4839』など演出家としても頭角を現している舞台デザイナーだ。彼は独創的かつアーティスティックな舞台美術を得意としているが、今回は極限までミニマムに抑え、客席が舞台を挟むような空間を生かしたセットも印象的だった。

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ウィリアムの登場に、妻ジュディスは心を揺さぶられる

問題を抱える夫婦に危機をもたらす、外からやってきた男、という3人の関係は、昨年同劇場で上演した『死と乙女』と人間関係の構図がリンクするところもあり、俳優たちの持ち味とも相まってヤンソンプロジェクトならではのカラーがよく出ている作品だ。
公演は11月28日まで、ドゥサンアートセンター Space111で上演される。


foxfinerposter【公演情報】
演劇『フォックスファインダー(폭스파인더)
2015年11月13日~11月28日 ドゥサンアートセンター Space111

<出演>
●サミュエル・コベイ役:ソン・サンギュ
●ジュディス・コベイ役:ヤン・チョア
●ウィリアム・ブルア役:ヤン・ジョンウク
●サラ・バックス役:チェ・ヒジン
作:ドーン・キング(Dawn King)/翻訳:ソン・スジョン/演出:パク・ジヘ/美術:ヨ・シンドン/照明:ソン・ミリム/衣装:オ・ヒョンヒ/小道具:チョン・イドゥン/音楽:チョン・ジェイル/グラフィックデザイン:ポンダンデザイン/写真:ソウル写真館

公式サイト:http://doosanartcenter.com/

ポスター写真提供:ドゥサンアートセンター ©韓劇.com All rights reserved. 記事・写真の無断使用・転載を禁止します。


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[REVIEW]思春期の混沌をアーティスティックに表現 演劇『飛行少年KW4839』

[REVIEW]思春期の混沌をアーティスティックに表現 演劇『飛行少年KW4839』

 

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開演前は空港にいるようなアナウンスが流れ、観客は飛行機に搭乗するような感覚に

『バンジージャンプする』『ヒストリー・ボーイズ』『メフィスト』『愉快な下女マリサ』『ステディ・レイン』『ピローマン』『背水の孤島』『RED』『洗濯(パルレ)』『木蘭姉さん』……近年手掛けた作品だけでも、ゆうに10作を超える舞台デザイナーのヨ・シンドン。斬新かつ独自の美学をもつ舞台デザインが高く評価され、受賞歴も多数。韓国公演界でひっぱりだこの存在だ。昨年ドゥサンアートセンターSpace111で上演した初演出作品『サボイ・サウナ』に続き、演出2作目となる『飛行少年KW4839』が6月13日~20日までペク・ソンヒ チャン・ミンホ劇場で上演された。

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劇場入口には鳥の巣箱のオブジェ。画面右側奥に偶然写っているのが作・演出のヨ・シンドン

国立劇団が5月から上演している青少年演劇シリーズの1作として上演された本作。劇場に入ると、プロジェクターやライティングを駆使して空間全体を空港~飛行機に搭乗するような演出がなされていた。搭乗客である観客を案内していた乗務員たちが制服を着替えて学生となって登場。11人の生徒たちは真面目なガリ勉キャラから、オタク系、不良少女に無気力キャラなど。それぞれのキャラクターを象徴するような小物が用意され、さすがは細部までディテールにこだわるヨ・シンドンらしさが随所に感じられた。
もっともユニークだったのは、青少年と大人の世代間ギャップを表現していた部分。ドイツ語で語る若者の告白に合わせ韓国語字幕つきのイメージ映像を出したり、さまざまな世代に最近の青少年について訊いたインタビューコメントを、老人⇒女学生が、主婦⇒男子学生が、という風に逆のジェンダーの俳優に完璧なリップシンクをさせて語らせていたシーンは大ウケしていた。だが、冒頭では女子高生がアニメキャラに扮して歌うなど明るい雰囲気で始まった芝居が、次第に一人一人の内面の告白へと移っていき、混沌としていくさまは、現代の若者像を見ているようだった。

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劇場に入ると、飛行機搭乗前の入国管理(?)ブースで俳優に年齢や職業、幼い頃の夢などをインタビューされる

そしてクライマックスは机に臥せってばかりいたある男子生徒がぽつりと語り始めた独白から始まる。
「私には限界が悩みです。私にとって限界という単語は、とても恐ろしい感じがします。私は自分に限界を感じようが、背後に限界を感じようが、どんな部分でも限界を感じたら、私は終わってしまうだろうと考えてきました。しかし、限界を認めてしまえばその程度のことだという話を聞いたときに、本当にバカなことを悩んでいたということを悟りました。まだ味わってもいない限界と悩みを急いで味わい、投げ捨てた自分自身が恥ずかしかったです」
このセリフを、一人、また一人と生徒たちが繰り返し輪唱しはじめ、最後は11人全員で力いっぱいに絶叫していくのだ。このシーンは圧倒的で、多くの観客が涙をぬぐう様子が見られた。パンフレットにあった演出家のインタビューを読むと、この作品は青少年向けに作ったという意識はそれほどなかったそうだが、若い世代のみならず、いまは大人になってしまった世代でも、かつては抱えていたはずの言葉にできない思春期の葛藤や混乱を呼び起こされるような感覚に陥ったようだった。

hikouC演出1作目『サボイ・サウナ』ではセリフはほとんどなく外国人俳優や全裸の男優をまるでオブジェのように登場させるなど、演劇というよりはインスタレーションやアートパフォーマンスに近いアプローチだったが、この2作目ではそこから一歩踏み込み、ドラマ性を持たせた作品になっていた。スタッフクレジットを見ると、『サボイ・サウナ』でも起用していた構成作家チョン・スジン、音楽監督チョン・ジェイルなど、過去にヨ・シンドンが手掛けた数々の話題作でともに作業した気鋭のスタッフがズラリ。わずか1週間程度の公演を、こうして贅沢に上演できる環境を羨ましく感じるとともに、演出3作目への期待がますます高まった公演だった。