チョ・サンウン

[コラム]ミュージカル『1976 ハーラン・カウンティ』レビュー

[コラム]ミュージカル『1976 ハーラン・カウンティ』レビュー

 

主人公ダニエル役のチョ・サンウン、ソ・スンウォン、キム・ダヒョン

日本はゴールデンウイーク10連休突入でこの記事をご覧になる方も少ないと思いますが、2019年上半期のベスト創作ミュージカルとなりそうな作品を見てきました。

実はこの作品、5月5日(日)で閉幕します。すでにご覧になった方には「何を今ごろ!」と言われそうですが、もしGWに韓国にいらっしゃる方は可能であれば、ぜひ見ておいてほしい! と思い、遅ればせながら記事にした次第です。

『1976ハーラン・カウンティ』は、1976年制作の米ドキュメンタリー映画『ハーラン・カウンティUSA』をモチーフにした創作ミュージカルです。
原作映画はケンタッキー州南東部にあるハーラン郡で起きた炭鉱労働者のストを追った内容でしたが、これに奴隷解放から100年以上経っても当時のアメリカ南部には根強く残っていた黒人労働者差別の物語を交錯させ、オリジナルストーリーに仕上げています。
釜山文化財団の青年演出家製作支援事業の支援作に選定され、2年ほどの準備期間を経て、今年1月に釜山でショーケースが行われたあと、4月からソウル公演が始まっています。

作・演出は『三銃士』の武術監督からスタートし、『ロビンフッド』『オール・シュック・アップ』などのワン・ヨンボム演出作品での助演出などを担当していたユ・ビョンウン。
彼は2016年に初の作・演出を手掛けた『ザ・アンダードッグ』という作品で、ひとり立ちしていたのですが、この作品は制作会社に問題が生じて早期終了してしまい、不運なデビューとなっていました。その後表立った活動をしていないなと思っていたのですが、この新作を準備していた、というわけですね。
そういえば『ザ・アンダードッグ』も、人間の都合で捨てられた犬たちを主人公にした物語でした。彼はまだ30代の若い演出家ですが、社会問題に切り込むような作品を好んで生み出しているようです。

主人公の白人青年ダニエル役は、釜山初演から引き続き出演しているソ・スンウォン、チョ・サンウンに加え、キム・ダヒョンが新加入。演技スタイル、歌声、ルックスと全く個性の異なるトリプルキャストとなっています。
この3人が、韓国公演情報サイトPlayDBで揃ってインタビューに答えています。
●「なかなかない作品、どんな俳優で見ても同じ感動を与えたい」(PlayDB)

●ソ・スンウォン単独インタビュー(ニュースカルチャー)

●チョ・サンウン単独インタビュー(ニュースカルチャー)

ダニエルは両親を亡くした自分を、長年親代わりのように面倒を見てくれた聾唖の黒人男性ライリーが自由に生きられるよう、ニューヨークへ向けた旅に出ます。
一方、ケンタッキー州の炭鉱の町ハーラン郡では、会社の暴挙に反発した鉱夫たちの労働組合が激しいストを敢行中。しかし鉱夫たちを率いていた労働組合長モリソンが何者かに襲われます。モリソンは死の直前、旅の途中で偶然居合わせたダニエルとライリーにある物を託すのです。

「私たちが生きていく世界」(ソ・スンウォン主演Ver.)

この事件をきっかけに、ダニエルはモリソンの娘エレナや鉱夫たちと出会い、彼らの労働運動に加担せざるをえなくなっていくのですが、とにかく驚いたのが鉱夫を演じるアンサンブルを含めた合唱シーンの声の厚さ。それもそのはず。実はこの作品、さまざまな作品で助演やアンサンブルを多数経験済みの百戦錬磨のメンバーが揃っているのです。
鉱夫たちがストを起こすミュージカル、と聞いて『ビリー・エリオット』を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。本作には組合長モリソン役のオム・ジュンシク、鉱夫役のコ・チョルスンと2017年の『ビリー・エリオット』でも鉱夫を演じていた俳優が起用されているのです。
ほかにも鉱夫のリーダー的存在ながら、会社側におもねるベイジル役のワン・シミョンは『タイタニック』『ゴースト』『ジキル&ハイド』などに出演。ベイジルWキャストのイ・ギョンスは劇団四季出身で、持ち前の歌声を買われ、ヤン・ジュンモ演出の小劇場オペラ『リタ』にチェ・ジェリムと共に主演していました。

●ベイジル役イ・ギョンス単独インタビュー(Stage Talk)

ほかにも、エレナ役は『女神様が見ている』の元祖女神様イ・ジスク。鉱夫たちに圧力をかける悪役ピーターソン役には『三銃士』のジュシャク役を長年演じていたキム・サンヒョン。鉱山会社社長トニー・ボイル役は『風月主』『レッド・ブック』『ファリネッリ』などで見せた一癖あるサブキャラクターが上手いウォン・ジョンファン……などなど、韓国のミュージカルファンに、その実力を認められている「信じて観る俳優(믿고 보는 배우)」たちが揃っているのです。

tbsの番組「公演に熱くハマった」解説映像

●稽古場映像 「誤解」(キム・ダヒョン)

●稽古場映像 ダニエルソロナンバー(ソ・スンウォン)

●NAVER生中継ハイライト(チョ・サンウン主演Ver.)

劇中でダニエルと聾唖者のライリーが交わす会話には必ず手話を付けていたのがとても新鮮に映りました。この部分を除けばユ・ビョンウン演出家の演出スタイルや物語の進めかたは、極めてベーシック。ストーリーの流れに破綻した部分などはなく、初めて見た人にも分かりやすく入り込めるようエピソードを繋げてありました。シリアスなストーリーのなかに時折、思わず吹き出すようなセリフやシーンも盛り込んであり、それも良い具合に息抜きになっていたのではないかと思います。
また、最近の新作創作ミュージカルは曲が練られておらず、マイナーコードを多用し、キツめのストリングスが入った似たようなメロディーの楽曲が散見されるのですが、本作の場合は過度にドラマチックにしたり、妙な転調を入れたりもせず、スタンダードながら大劇場でも十分成立するナンバーが多かったのも好印象。助演陣にもソロナンバーが与えられ、難度の高い曲もしっかりと演じ歌いこなしていて、とても安心して見ることができました。これも、キャリアを重ねている俳優が多いからできたことだと思います。

ベイジル役の見せ場となったソロナンバー「夢を見る」稽古場映像(ワン・シミョンVer.)

日本の多くの方がご覧になったことがあるであろう、大劇場ミュージカルで見られるような甘いロマンスや豪華な舞台、きらびやかな衣装などとは対極にある作品ですが、じんわりと深い感動が残りました。
カーテンコールでは筆者を含む多くの観客が、“ご贔屓への義理”や“前が見えないから”立つのではなく、心からのスタンディングオベーションで俳優を出迎えていました。
残念ながら、この作品は上演期間が約1カ月と短いため、プロモーションもあまりできていなかったせいか、満席とはいかない状態でしたが、残りわずかな公演をご覧になれる方は今すぐチケッティングを! そして、将来再演された際にはぜひ観劇してみてください。

カーテンコール映像(キム・ダヒョン主演Ver.)


【公演情報】
ミュージカル『1976ハーラン・カウンティ』〈1976 할란카운티〉
2019年4月2日(火)~5月5日(日) 弘益大大学路アートセンター 大劇場

<出演>
●ダニエル役:キム・ダヒョン、ソ・スンウォン、チョ・サンウン
●ライリー役:キム・ユンホ、イ・ジュンヨン
●エレナ役:イ・ジスク、イ・ハギョン
●ジョン役:キム・ヒョンギュン、ユン・ソグォン
●ナタリー役:リュ・スハ、グ・オクブン
●ベイジル役:イ・ギョンス、ワン・シミョン
●ピーターソン役:カン・ソンジン、キム・サンヒョン
●トニーボイル役:ウォン・ジョンファン
●フランク役:キム・ユル、パク・サムソプ
●モリソン役:オム・ジュンシク
●オリバー役:ソン・イル
●アンバー役:キム・ミンソル、チョ・へイン
●アンサンブル:コ・チョルスン、イ・ドクジェ、イ・ジンソン、キム・ヒョビン、シン・ウンジョン、イム・チャンヨン、ウ・ジニョン、チョン・ウンジ

プロデューサー:シム・ムンソプ、カン・ホウォン/芸術監督:ソ・ビョング/作・演出:ユ・ビョンウン/作曲・音楽監督:カン・ジンミョン/振付:ユ・ナレ/小道具:キム・ジョンヒ/ヘアメイク:チェ・リラ/技術:イ・ユウォン/舞台監督:キム・ボムシク/助演出:チン・ソユン/音楽助監督:イ・ヘス/制作総括:イ・スギョン/制作PD:カン・ヒョミ/カンパニーマネジャー:パク・ミソ

●公式Facebook⇒https://www.facebook.com/2ternaljourney/

●インターパーク⇒(韓国語サイト) (グローバル日本語サイト)


文:さいきいずみ(韓劇.com)

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[PLAY]人気作家が突然の失踪…その理由は?『盗まれた本』開幕

[PLAY]人気作家が突然の失踪…その理由は?『盗まれた本』開幕

 

人気脚本家ソ・ドンユン役のイ・シフ(左)と彼を拉致した元アシスタント、チョ・ヨンラク役のチョ・サンウン

『ピローマン』『私に会いに来て』『報道の指針』などの話題作を手掛け、韓国の演劇ファンに支持されているビョン・チョンジュ演出家が実力派俳優を揃えておくる『盗まれた本』が4度目の再演初日を前にプレスコールを開催した。

ビョン・チョンジュ演出家

『盗まれた本』は映画『コ死-二番目の話』『ミスター主婦クイズ王』などを作・演出したユ・ソンドン監督が、2011年に「大韓民国ストーリー公募」で大賞を受賞した同名映画シナリオが原作となっている。
長らくスランプに陥っていた脚本家ソ・ドンユンが、才能ある作家志望の若者チョ・ヨンラクが書いたシナリオを盗んだことから巻き起こる拉致事件と、その背景を描き出したスリラー作品だ。

劇中映し出されるアニメーションを芝居とシンクロさせたユニークな演出も見どころの本作。ビョン・チョンジュ演出家は、9月に上演した3度目の再演からさらにバージョンアップし、今回の上演をVer.3.5と呼んでいる。「前回と大きな変化はありませんが、一番最後のシーンにアニメーションを追加しました。原作にはなく、この原作を基にしたウェブトゥーン(ウェブ漫画)にあるシーンですが、原作とウェブトゥーン、演劇が互いに影響を受けつつ構成できて個人的には満足しています」と今回のバージョンに手ごたえを感じているようだった。

確かな演技力で存在感を見せるイ・シフ

長年の沈黙を破って脚本を執筆した映画が大ヒットしたものの、映画賞の授賞式後に拉致され、で一気に栄光から奈落の底に落ちるソ・ドンユン役には今年ソウル芸術団から独立後、ミュージカル、演劇と精力的に出演しているイ・シフが新たに加わった。
「ドンユン役はほとんど出ずっぱりで退場するシーンがないので、稽古に入る前は“ああ、どうやって進行させよう?”と強迫観念に囚われていましたが、一旦芝居が始まってヨンラクとやり取りし始めたら、ある瞬間からそんな心配は忘れて芝居に入り込んでしまいます」と、体調管理に気を付けてひたすら役に没頭するだけだと語っていた。

穏やかな面持ちだが、時に狂気を見せるヨンラクを演じるカン・ジョンウ

劇中ではヨンラク以外のサブキャラクターを一人多役で演じるチョ・サンウン

自身が執筆した脚本を盗んだドンユンを拉致監禁し、脚本執筆をさせようとするチョ・ヨンラク役はトリプルキャスト。プレスコールでは、9月公演にも出演していたチョ・サンウンと今回初出演となるカン・ジョンウが出席した。

カン・ジョンウは「誰かを閉じ込めたり、傷つけたりしてみたいとちょっとでも思ったことがある人がいたら、悪いことはせずにこの作品を見に来てストレス発散してほしいです」とユニークな推薦コメントを。一方チョ・サンウンは「9月の公演よりもよりこなれた演技を舞台と近い距離で見られると思います。すべての俳優がそれぞれに違ったカラーを持っているので、すべてのペアの公演を見に来てくださればありがたいです」とアピールしていた。

芝居とアニメーションをシンクロさせた演出が見もの

9月の上演ではドンユンとヨンラクのペアを固定していたが、今回は2人のドンユン役と、3人のヨンラク役がランダムに出演し、組み合わせの妙が楽しめるとのこと。
拉致事件の裏に隠されていた秘密を紐解く醍醐味と、実力派俳優たちによる熱演が堪能できる『盗まれた本』は、大学路芸術劇場 木と水(旧、木と水(나무와 물)劇場)で、2月26日まで上演される。


【公演情報】
演劇『盗まれた本』(도둑맞은 책)
2016年12月16日~2017年2月26日 大学路芸術劇場 木と水

<出演>
●ソ・ドンユン役:パク・ホサン、イ・シフ
●チョ・ヨンラク役:カン・ジョンウ、イ・ギュヒョン、チョ・サンウン

プロデューサー:チョン・ユラン/原作:ユ・ソンドン/演出・脚色:ビョン・チョンジュ/音楽:オム・ブレ/イラスト:イ・ギュヒ/映像:シン・ジョンヨプ/舞台・小道具:チョン・スギャン/照明:イ・ジュウォン/衣装:オ・ヒョニ/音響:チャン・ギヨン/写真:チェ・ヨンソク/助演出:パク・ジュニョン

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[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<前編>

[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<前編>

 

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2012年~13年に初の韓国キャスト版を上演した『レ・ミゼラブル』のマリウスを演じて、一躍ライジングスターとなったチョ・サンウンさん。日本のミュージカルファンには劇団四季で活躍していた三雲肇(みくもはじめ)さんとしておなじみの若き実力派俳優です。
丸1年シングルキャストでマリウス役を演じきったあとは、昨年『ウィキッド』で、緑の魔女エルファバと恋に堕ちるフィエロ役で新たな魅力を披露。世界にその名を轟かせる2大ライセンスミュージカルのロングラン出演を経て、次に彼が出演を決めたのは意外にも大学路の中劇場で上演する岩井俊二監督の同名映画を舞台化した『ラブレター』でした。劇中では持ち前の透明感溢れる歌声を聞かせ、ヒロインの初恋の人となる高校生、藤井樹(ふじいいつき)を好演しています。
日本とは何かと縁が深い彼に一度お話を伺ってみたいと思っていたのですが、待望のインタビューが実現。取材は全編日本語で答えてくれました。

*      *      *

8L6B8366●『レ・ミゼラブル』『ウィキッド』と大劇場のライセンスミュージカルにメインキャストで出演された後に『ラブレター』に出演されると知ったときは正直驚きました。てっきり次も大劇場作品だと思っていたので(笑)。
「大学路の作品に出るのは今回が初めてですけど、自分は大劇場とか小劇場作品だとか、ぜんぜん関係ないんです。ミュージカルだけじゃなくて、演劇もチャンスがあったら絶対やりたいし、自分は基本的に俳優ですから、俳優として演技をすることはすべてやってみたいです。実際に友達や周りの人たちにも“今度は大劇場じゃないの?”と言われたりもしましたけど、そういう時は“関係ないよ”って。“主役とかそういう役(の大きさ)も関係ないよ”って言ってたんです」

●サンウンさんご自身は映画『ラブレター』に愛着があったりしたんですか?
韓国では、例えばテレビのお笑い番組なんかで「オゲンキデスカ~!」って言えば、“『ラブレター』の真似をしている”っていうのがみんな分かるくらい知られていますよね?
「韓国で公開されたのは1995年ですから、僕はまだ小学生くらい? なので大学時代に遅れて見たんですけども、だいぶ昔なのであまり記憶にはなかったです。出演を決めたのは、『ラブレター』の音楽監督さんが去年『ウィキッド』を見にいらしたときに“あなたに似合う役があるよ”と言われたんです。それと、演出家のビョン・チョンジュさんと個人的に一度仕事をしてみたかったんです。去年『私に会いに来て(날 보러와요)』という演劇を見て、良い作品だなと思って。自分はずっと外国の演出家と一緒にやってきて、やっぱり一度韓国の演出家と仕事をしてみたいな、と思っていたので、それが大きかったです。あとは今回が韓国初演だし、原作映画や台本にも力がありました。やっぱりいくら俳優が頑張っても、作品に力がないと駄目だというのは、劇団四季時代に浅利(慶太)先生から学んだことです。“舞台は台本が大事。そしてミュージカルだから音楽も大事だよ”っていうのを自分も“その通りだ”とずっと思ってきましたから」

●稽古に入ってからはどうでしたか? 大劇場ミュージカルと違う部分はありましたか?
「システムですか? うーん、システム的な部分は違うところもありますけど、稽古は同じ人間が演ることですから、そんなに違いはないですね。むしろもっと家族的な雰囲気ですごく良い部分がたくさんありました。(秋葉役の)パク・ホサンさんは、もう20年近くいろんな作品に出ている方じゃないですか? そのホサンさんが“今回の稽古場の雰囲気が一番良い”って、他の俳優さんやスタッフさんもみんな良いって言ってるんです。もちろん僕も良いなとは感じていたんですけど、それほどまでに良いとは予想してなかったです。みんな優しいし、お互い助け合いながらやっています」

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寡黙なイケメンでクラスの女子にモテモテの樹

●サンウンさんが演じている藤井樹は、不愛想でツンとした感じのミステリアスなイメージがありましたが……。
「あ、そうですか? 僕は普段は優しいですよ(笑)」

(笑)。はい、もちろん知っていますが(笑)。普段はこうしてとても優しい雰囲気なのに、樹のキャラクターはまったく逆のイメージですよね? 演じてみていかがでしたか?
「映画でも樹はあまり出てこないし、喋らないじゃないですか? だから喋れば喋るほどマイナスになるキャラクターだと思うんですけど、セリフがあって、ミュージカルだから歌も歌わなきゃいけないので、とにかく台本を読んで、この子はどんな性格かな? とか考えながらビョン演出家と一緒に作っていった感じです。でもこれで終わりじゃなくて、いまも上演しながら少しずつ変えているというよりは、感じたことをそのまま素直に表現する、もっと深く考えてみよう、と毎回やっています。それが自分でもとても面白いです」

●いち観客としては、折角サンウンさんが出演しているのに、登場するシーンも歌うシーンもあまり多くないので、それがちょっと残念でした。
「でも逆に『レミゼ』とか『ウィキッド』をずっと見てくれていた人も、“今回が一番良い。良く似合ってる”と言ってくれる人もいるんです。自分で言うのはヘンかもしれないけど、樹は神秘性もあるし、最初から最後まで全体的に藤井樹にまつわる話じゃないですか? それがとても観客の心に残るみたいです。正直、最初は色々と心配もあったんですけど、結果的には良い作品になって、評判も良いのでそれが一番うれしいです。大学路でいま上演している作品のなかで『ラブレター』が一番良いんじゃないかなと思います」

●舞台を拝見したときに、実は『バンジージャンプする』を思い出したんですよ。
「はい、そういう話も良く聞きます。原作も同じく映画ですし、雰囲気も音楽も近いものがありますよね」

8L6B8478●ダブルキャストで樹役を演じているのはカン・ギドゥンさんですね。2人はまったく違う雰囲気をお持ちですが、サンウンさんが独自の樹を表現するために、何か努力された部分はありますか?
「基本的には台本にのっとって演じていますけど、同じ表現をしても演じる人間が違うから、自然と違った魅力が出てくると思います。稽古場で見ていてもギドゥンさんはとても魅力的だし、彼はミュージカルはほぼ初めてだけど、元々演劇はたくさんやっていた人なので演技も上手いし、すごく良い俳優です。稽古のときも2人で助け合いながら、ひとつの役を創っていったという感じです」

●樹が歌うパートで、一番好きな曲はどの場面の曲ですか?
「自分がやっぱり好きなのは『ひと目惚れという言葉(첫눈에 반한다는말)』(⇒プレスコール公式映像で、大人になってからの姿で歌う曲が一番好きです。歌詞が好きなのは(樹が桜の木の下で歌う)『サクラ(벚꽃)』(⇒稽古風景公式映像です。曲の歌詞に深い意味があるんです」

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「サクラ」を歌うシーンでのサンウンさん

●チョ・サンウン演じる藤井樹の魅力、見どころを紹介するとすれば?
「自分ですか? いや~、う~~ん(笑)」

●個人的には、サンウンさん、とても学生服が似合っていると思いました(笑)。
「あ~(笑)、似合ってますか!? 最近は学生の雰囲気を出すために、髪もこういう風に切ったりして(笑)。似合っていると言ってくださってありがとうございます(笑)。本当は31歳なのに…」

●31歳で学生服がこんなに似合う人はいないのでは? と(笑)。
「もう、これが最後です(笑)。もう学生服は見られないかもしれないです(笑)」

●大学路で上演している作品は学生が主人公のものが結構多いですけど、もしオファーが来たらどうしますか?
「それは……作品が良かったら、出ますけど。でも『ラブレター』ほど制服が似合う作品は他にないんじゃないかな? ははは(笑)」

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詰襟が似合いすぎる驚異の31歳(笑)。写真右がカン・ギドゥンさん

⇒インタビュー後編 では、俳優チョ・サンウン誕生秘話に迫ります。

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[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<後編>

[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<後編>

 

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●韓劇.comの読者のなかには、サンウンさんが劇団四季で活動されていた時代をご存知ない方も結構いらっしゃるようなので、後半はこれまでの経歴についてお伺いしたいと思うんですが……。
釜山出身ですよね? そもそも俳優を志したきっかけは何でしたか?

「小さいときからドラマとかを見て、ずっと“俳優になりたいな”と思っていたんです。自分は他の夢を持ったことがないです。だからやらなきゃいけないんです。これしか出来ないんで」

8L6B8343●俳優になれれば、映画でもドラマでも何でも良かった?(笑)
「はい。最初は。でも、もともと歌うことも好きだったんです。高校の時には合唱団で活動したりもしました。それから大学に入ったんですけども、演技もやれる、歌も歌える、踊りも踊れるのはミュージカルじゃないか、と気づいて。そのころちょうど、2004年に初演したチョ・スンウさんの『ジキル&ハイド』を見て、自分も演りたいなと思ってからは、僕のアンテナが全部ミュージカルのほうに向いたんです」

●釜山で通っていた大学(慶星大学)にはミュージカルを学ぶ環境があったんですか?
「大学は演劇映画科で演技しか学べなかったので、歌とかは個人レッスンを受けたり、作品を観たりして自分で勉強していました」

●ミュージカルを始めたのは劇団四季の『ライオンキング』が最初になるんですよね?
「はい、そうですね。2006年に“韓国初演の『ライオンキング』のオーディションがあるよ、というのを友達から聞いて。その友達は先に劇団四季に入っていたんですけども、『ライオンキング』を見たときにシンバが出てきたら“あれ? これサンウンがやったらピッタリの役じゃない?”と思ったらしくて、連絡してくれたんです。でも僕はまだ学生だったし、準備が出来ていないと思ったんだけど、友達が“一応、受けてみて”って言うから、“よし、じゃぁわかった。受けてみるよ”って、シャーロッテ劇場でオーディションを受けたんです。そうしたら浅利(慶太)先生が、“あ、シンバだ”って言ってくださって、オーディションに合格したんです」

●へぇぇぇ! 最初からそれは凄い! あの浅利先生から。
「でも、劇団四季のシステムがありますから、アンサンブルから始めて、その後でシンバを演ったんです」

●アンサンブルとして合格したときはパク・ウンテさんなどと一緒だったんですよね?
「ウンテさんと僕がサイの前足と後足担当だったんです」

●それは今考えると豪華すぎるサイですね!(笑) ほかにアンサンブルに合格して、いま活躍している俳優はどんな方がいらっしゃいますか?
「当時は無名だったけど、いまはみんな有名になられましたね。パク・ウンテさんもそうだし、キム・ジュンヒョンさんも一緒でしたし、チャ・ジヨンさん、カン・テウルさんなど、いろんな俳優がいました」

8L6B8414●それからシンバ役を演じるようになったのは?
「2007年の初めからですね。それからその年の11月に『ライオンキング』の上演が終わって、まだ若かったから劇団四季の良いシステムの中で学びたいな、と思って、オーディションを受けて日本の劇団四季に入ったんです」

●その時はすでに日本語を話せていたんですか?
「いえ。日本に行って、イチから勉強しました。『ライオンキング』でシンバ役を半年くらいやりながら。動線や歌は韓国でずっとやっていたので分かってましたから、最初はとにかく日本語のセリフだけを覚えて、出演しながら日本語の勉強をやっていったんです」

●そして、2009年日本初演の『春のめざめ(スプリング・アウェイクニング)』に、韓国版ではチョ・ジョンソクさんなどが演じた、モリッツ役で出演されたんですね。
「実は『春のめざめ』のオーディションのときに、ブロードウェイから演出家さんもいらしたんですけど、その演出家さんはもちろん日本語が分からないじゃないですか? 僕が日本人か韓国人かなんて分からないはずだから、逆にそれは僕にとってチャンスだ。と思って、自分が持っているパッションを全部お見せしたんです。本当は候補の3番目か4番目くらいだったんですけど、演出家さんが“モリッツはサンウンに演ってほしい”と、おっしゃったらしくて、出演が決まったんです。それからはさらに頑張って日本語も勉強もしたし、役の研究もしたりと一生懸命勉強しましたね」

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『ウィキッド』では、りりしいフィエロ役で観客を魅了!(2013年11月 『ウィキッド』プレスコールより)

●その後で『コーラスライン』や『キャッツ』にも出演されたそうですが、劇団を辞めたのはいつごろでしたか?
「2012年の3月です。大きな地震があったじゃないですか? そのころは『ライオンキング』に出演してたんですけど、両親が心配したのもあって韓国に帰ってきたら、ちょうど『レ・ミゼラブル』の初演が決まっていて。まだマリウス役に合格した人がいないというのを聞いて、オーディションを受けてみないか、と誘われたんです」

●それで1年間マリウスを演じられて、『ウィキッド』のフィエロまで、と華々しい経歴が続いたわけですね。『レミゼ』も『ウィキッド』も日本でとても人気がある作品ですし、これから日本でも活動したいとは思いませんか?
「はい。日本のミュージカルに出演してみたいと僕も思っています。日本でコンサートがあるんですけど(※2月1日に終了)、これをきっかけに日本でコンサートなども、もっと出来たらいいなと思っています」

 

●日本語がお上手ですから、いまこのまま日本に行かれても、すぐ舞台に立てると思いますよ。
「いやいや、日本語はまだまだ勉強しなきゃいけないですけど、機会があったら日本の舞台にも立ちたいですね」

*      *      *

終始柔らかな笑顔が印象的だったサンウンさん。取材時には、次の出演作はまだ決めていないとのお話でしたが、彼ほどの実力があれば、いろんな作品から引く手あまたでしょう。そして最後にお話くださった、日本の舞台に立つ日もそう遠くはないかもしれません。

サンウンさんが『レ・ミゼラブル』に出演中の2013年、ミュージカル俳優のトークショー「イヤギショー」に出演されたのを見たときに、今でも忘れられないエピソードがあります。サンウンさんは『レミゼ』の稽古中、毎日毎日誰よりも早く稽古場に来て、ウォーミングアップや発声練習をしていたんだそうです。「稽古場に来ると、まずサンウンさんの声を聴くことになる」と共演者たちは冗談めかして話していましたが、こうして見えないところで人一倍の努力をしている人だからこそ、当時韓国ではほぼ無名だったにもかかわらず、マリウス役を射止めることができたんだな、と感心しました。
韓国のみならず日本でも……と、無限の可能性を秘めたサンウンさん。さらなるご活躍を期待しつつ、これからも応援していきたいと思っています。

⇒インタビュー前編へもどる

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[PHOTO]ミュージカル『Love Letter』プレスコール

[PHOTO]ミュージカル『Love Letter』プレスコール

 

ミュージカル『Love Letter』プレスコール
12月4日 トンスンアートセンター トンスンホール

渡辺博子/藤井樹役(二役):キム・ジヒョン/クァク・ソニョン
秋葉茂役:パク・ホサン/ユン・ソグォン
(少年)藤井樹役:チョ・サンウン/カン・ギドン
(少女)藤井樹役:ユ・ジュへ/アン・ソヨン
母役:カン・ジョンイム
祖父役:イ・ソファン

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[PHOTO]ミュージカル『Love Letter』制作発表会

[PHOTO]ミュージカル『Love Letter』制作発表会

 

ミュージカル『Love Letter』制作発表会
10月28日(火) トンスンアートセンター トンスンホール
出演:キム・ジヒョン、クァク・ソニョン、チョ・サンウン、
カン・ギドン、パク・ホサン、ユン・ソグォン、ユ・ジュへ、
アン・ソヨン、カン・ジョンイム、イ・ソファンほか

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