日韓の制作者、俳優の共同作業により、今年誕生した新作演劇2作品が東京で開催中の舞台芸術フェスティバル「フェスティバル/トーキョー15」で上演される。
11月18日に開幕した岡田利規作・演出による『God Bless Baseball』は韓国・光州市に新しく開館した「国立アジア文化殿堂(국립아시아문화전당 Asian Culture Complex)」内にある「アジア芸術劇場(아시아예술극장)」 のオープニングフェスティバルで先行上演された作品だ。
演劇ユニット「チェルフィッチュ」を主宰し、国内外で高い評価を得ている岡田が初めて韓国とのコラボレーションに挑んだ作品のテーマは「アメリカ」。日本と韓国に共通して浸透しているスポーツ=野球をキーワードに、野球文化のみならず、あらゆる面で両国に大きな影響をもたらしてきたアメリカという国の存在に改めて気づかされる作品だ。
翻訳、ドラマトゥルクとして本作に参加したイ・ホンイが、当サイト韓劇.comの連載にて、韓国公演までのエピソードや作品詳細を紹介したコラムを公開中だ。観劇予定の方はご一読を。
11月26日~29日の3日間上演される『颱風奇譚』は、10月に韓国の安山(アンサン)文化芸術の殿堂(安山市)と南山(ナムサン)芸術センター(ソウル市)で先行上演された。
2013年に韓国で初演した『가모메(カルメギ)』で韓国で最も歴史ある演劇賞「東亜演劇賞」3部門を受賞した東京デスロックの多田淳之介と、第12言語演劇スタジオのソン・ギウンが再びタッグを組んだ作品だ。
『가모메(カルメギ)』では、チェーホフの『かもめ』を、韓国では日帝強占期と呼ばれている日本統治時代に舞台を移し、大胆に脚色して評価を得た二人が、今回挑んだのはシェークスピアの『テンペスト』。原作では、弟アントーニオによって絶海の孤島に追放された元ミラノ大公プロスペローが、島の妖精に命じて嵐を起こし、弟らが乗った船を遭難させるところから始まるが、本作では朝鮮を追われ、南シナ海のとある島で一人娘と暮らす老王族イ・スン(李崇)を主人公に物語が展開する。
『テンペスト』では魔術を身に着けてまで復讐心を燃やしていたプロスペローの顛末が物語に深い意味をもたらしているが、日本統治時代に設定を置き換えた本作では、それをどのように描写し、結着させるのかが最大の見どころとなりそうだ。
主人公イ・スンを演じるのは、日本ではドラマ「冬のソナタ」のサンヒョクの父親役で広く知られているチョン・ドンファン。『ダンテの神曲』『メフィスト』など、韓国では古典劇を中心に圧倒的な存在感を見せている演劇界の重鎮だ。一方、日本からは西大寺兼保(さいだいじかねやす)役に小田豊が参加するなど、まさに日韓演劇界の大ベテランを中心に、多田とソン・ギウンそれぞれが主宰する劇団作品ではおなじみのキャストが名を連ねている。
上演期間中には、それぞれ公演終了後のアフタートークも予定されている。日韓の演劇に興味をもつ人ならば、クリエイター自身から直接制作の裏話を聞ける絶好の機会となるだろう。
【公演情報】
フェスティバル/トーキョー15
2015年10月31日~12月6日 東京芸術劇場、あうるすぽっと、にしすがも創造舎ほかで開催
公式サイト:http://www.festival-tokyo.jp/
●岡田利規 作・演出『God Bless Baseball』
2015年 11月18日~29日 あうるすぽっと(池袋)
出演:イ・ユンジェ、捩子ぴじん、ウィ・ソンヒ、野津あおい
※アフタートーク:11月21日(土)17時公演終了後(岡田利規)/11月26日(木)15時公演終了後(岡田利規、出演者全員)
●多田淳之介演出/ソン・ギウン脚本『颱風奇譚』(태풍기담)
2015年11月26日~29日 東京芸術劇場 シアターイースト
出演:チョン・ドンファン、チョン・スジ、パク・サンジョン、佐山和泉、小田豊、永井秀樹、山崎皓司、大石将弘、夏目慎也、ペク・ジョンスン、マ・ドゥヨン、チョ・アラ、伊東歌織
※アフタートーク:11月27日(金)15時公演終了後(多田淳之介×岡田利規)/11月28日(土)18時公演終了後(ソン・ギウン×多田淳之介×島 次郎(『颱風奇譚』美術))
※12月4日~6日は、多田淳之介が芸術監督を務める富士見市民文化会館きらり☆ふじみ(埼玉県)でも上演あり。
<God Bless Baseballトレーラー動画>
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