今年1月に行ったプレビュー公演が好評だったミュージカル『ファリネッリ』の本公演が開幕し、4月21日にプレスコールが行われた。
『ファリネッリ』は、1994年の映画『カストラート』でも知られる、ソプラノ歌手のようなハイトーンボイスをもつ18世紀に実在したカストラート歌手、カルロ・ブロスキ=通称ファリネッリの劇的な半生をオペレッタ形式でドラマチックに描いた作品。今年1月に大学路アルコ芸術劇場で行ったプレビュー公演で、ファリネッリ役2人の驚異の声と熱演が話題となっていた。
本作の見どころは、何と言っても“天上の声”と呼ばれるカストラートの特長である高音の声を聴かせるカルロ役を演じる2人。一人は韓国でカウンターテナーの声楽家として活躍するルイス・チョイ(チェ)、そしてミュージカル『モーツァルト・オペラ・ロック』『マリア・マリア』などに出演経験があるグループ「フラワー」のシンガー、コ・ユジンだ。
制作会社HJ CULTURE代表のハン・スンウォン氏は、構想段階でまずルイス・チョイに電話をして出演を依頼し、もう一人のキャストを探している過程でコ・ユジンに出会ったという。「2人のキャスティングは運命だった」という代表に対し、コ・ユジンも「もしカストラートの物語がミュージカルとして制作されるならば、ずっと演ってみたいと思っていたが、韓国で創作ミュージカルとして制作されるとは思っていなかった」と語り、現代のカストラート的なハイトーンボイスを駆使するルイス・チョイも「代表的なカストラートであるファリネッリの物語をオペラで制作されたらいいと思い続けていたが、ミュージカルとして制作された。仲間たちにはこの作品で夢が叶ったようだと話した」と、ともに念願叶っての運命的な出会いだったという出演秘話を明かした。
また、ミュージカルは初挑戦となるルイス・チョイは「この作品の紹介を受けたときは高音だけ出せばいいのかと思っていました(笑)。演技のことは考えず、高音さえ出せばファリネッリというキャラクターを消化できると思って出演をOKしたが、歌うシーンは2、30%くらいであとは演技という大きな課題があった」と笑いながら語り、「オペラとミュージカルは似ているが、オペラは歌のみならず台詞も音楽が入るため、音楽に始まり、音楽に終わる。ミュージカルは演劇的要素が多く、ドラマに真正性が必要なので、共演者たちの力を借りて血のにじむような努力をした」と演技面では苦労した裏話を語った。
また本作の重要なキャラクターであるファリネッリの兄、リカルドを演じるイ・ジュニョクは「リカルドは天才に選ばれた中才(才能がカルロには及ばない人物)」であると説明。「映画でこの役を見たときはとても稚拙なキャラクターだと思ったので、プレビュー公演のときはそういうイメージで演じていたが、今回はもっと野望が前面に出てきて執着心が強くなる。本当にファリネッリを愛しているんじゃないか、演じながら同性愛的感情があるんじゃないかと錯覚する時がある」と新たな解釈を披露していた。
そしてファリネッリの恋人であり、男装のカストラート、アンジェロという難役に挑んでいるのは『フランケンシュタイン』『グルーミーデイ(死の賛美)』のアン・ユジン。まるで宝塚の男役のような颯爽とした姿が印象的だ。「稽古初日にキャストを見て、イケメンがいないと思ったので自分がイケメンにならなければと思い、ヘアメイクの先生と親しくなるなどして努力した(笑)」と笑わせ、「ルイス兄さんがオペラのレッスンをしてくれて、私が演技のレッスンをするなど、この数カ月間は家族のように過ごしてきた。長らくミュージカルをやってきたが、この作品のチームワークは格別」と語り、隣席にいたルイス・チョイらと笑顔を交わすなど、この作品への愛着を見せていた。
制作陣によれば、ファリネッリのハイライトとなるアリアを歌う部分は、コ・ユジンとルイス・チョイの声質に合わせて編曲を変え、それぞれの個性を生かしているという。ヘンデルの「サラバンド(사라방드/Sarabande)」「私を泣かせてください(울게하소서/Lascia Ch’io Pianga)」などクラシックファンにはおなじみの名曲を16名のオーケストラ+20名のコーラスという大編成でオペレッタのように重厚感溢れる音楽をミュージカルの舞台で堪能できるほか、アンサンブル16名によるダイナミックな群舞も魅力の一つとなっている。
『ファリネッリ』は5月10日までユニバーサルアートセンターで公演後、5月16、17日には議政府(ウィジョンブ)、5月30日には安養(アニャン)での地方公演も行われる。
【公演情報】
ミュージカル『ファリネッリ』
2015年4月18日~5月10日 ユニバーサルアートセンター
出演:コ・ユジン、ルイス・チョイ(チェ)、アン・ユジン、イ・ジュニョク、キム・ホソプ、ウォン・ジョンファンほか
プロデューサー:ハン・スンウォン、キム・ジョンソク/演出:キム・ミンジョン/脚本:キム・ソンミ/作曲:キム・ウニョン、オ・ソリン/振付:チョン・ドヨン/編曲・音楽監督:キム・ウニョン/舞台:シム・ジェウク/音響:キム・ジュハン/照明:キム・ジュンボム/衣装:ドヨン/扮装:ペク・ジヨン
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