80年代香港ノワール映画を代表する『英雄本色(邦題:『男たちの挽歌』)』を原作に、韓国で世界初となるミュージカルが制作される。
1986年に制作された『英雄本色』は、警察官を志す弟キットのため、偽札製造組織から足を洗おうとする兄ホー、そしてホーの親友マークとの堅い絆という任侠映画のような人間ドラマに、スローモーションを駆使した華麗なガンアクションを盛り込んで描き、今日まで“香港ノワール”と呼ばれるスタイルを築いた歴史に残る名作だ。
韓国で香港俳優の名前は漢字語と同様に読まれるため、マーク役のチョウ・ユンファ(周潤發)はチュ・ユンバル(주윤발)、キット役のレスリー・チャン(張國榮)はチャン・グギョン(장국영)、ホー役のティ・ロン(狄龍)はチョク・リョン(적룡)と呼ばれる。
なかでもチョウ・ユンファの人気は絶大で、『英雄本色』のマークの特徴であるロングコートにサングラス、楊枝をくわえた姿は、いまでもバラエティ番組などでパロディにされ“誰もが元ネタを知っている”ほどの認知ぶり。また、現在の韓国ノワール映画の下地を作った80~90年代の韓国映画に与えた影響も絶大だ。
今回制作されるミュージカル版では、映画と同様にジャホ(子豪/자호/兄ホー)とジャゴル(子杰/자걸/弟キット)、そしてマーク(馬克/마크)を中心にしたドラマチックなストーリーラインとアクションシーンのみならず、レスリー・チャンが主題歌を歌った映画の楽曲も活用。原作映画の華やかさと抒情性を生かしつつ、映画よりも映画のような舞台になるという。
演出は『フランケンシュタイン』『ベン・ハー』をはじめ、『三銃士』『ジャック・ザ・リッパー』など日本でも知られるミュージカルを手掛けてきたワン・ヨンボム。加えて、ワン演出家作品になくてはならない作曲家イ・ソンジュンが音楽監督を努める。
このヒットメーカーコンビが手掛けるとあって、現在上演中の『ベン・ハー』でも見せていたように、映画的な演出とスコアが堪能できる作品になりそうだ。しかし、原作映画が有名であればあるほど舞台化へのハードルが高くなるのも事実。ましてや『英雄本色』は根強いファンが多い作品だけに、観客の期待に応えられる作品になるのか注目される。また、今年は韓国で『無間道(『インファナル・アフェア』)』原作のミュージカルも上演予定されており、大ヒットした香港名作映画の舞台化の波が来ているのを感じさせる。
主人公のキャスト発表が待たれるミュージカル『英雄本色』は、12月17日より、ソウル南部の瑞草(ソチョ)区にある韓電(ハンジョン)アートセンターで開幕する。
【公演情報】
ミュージカル『英雄本色』(영웅본색)
2019年12月17日~ 韓電(ハンジョン)アートセンター
演出:ワン・ヨンボム/音楽監督:イ・ソンジュン/衣装:ハン・ジョンイム
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