『冬のソナタ』日本放送20周年!狂乱の日々を回顧する…の巻
配信サイトの発達で、現地と同時間視聴できる作品も急増し、ますます世界的にも注目を集める韓国ドラマ。次々と登場する新作を追いかけるなかで、ご贔屓の俳優や制作陣の過去作が気になる! という方も多いようです。
そこで、旧作の魅力を紹介しつつ、近年の新作への道もガイドする連載記事をスタートします。
案内役に、00年代から韓流取材の経験豊富なライターの青木久美子さんと杉本真理さんをお迎えし、韓劇.com主宰さいきいずみとともに、韓ドラウォッチャー歴20年の3人が視聴ポイントや取材エピソードなども紹介します。
第1回のテーマは、日本で驚異的な韓流ブームの起爆剤となった『冬のソナタ』(겨울연가)。
作品関連情報や映像へのリンクも多数! ご興味ございましたら少々ユルめな韓ドラトークをご堪能ください。
※文中の俳優名は敬称略で表示。作品関連トークにはネタばれを含みます。
※作品へのリンクは、主にYouTubeで公開中の韓国放送局公式映像を中心に紹介しています。
<ライタープロフィール>
青木久美子
テレビ誌編集、香港映画専門誌の発行などを経て、現在はライターとして情報誌を中心に韓国・中国・台湾などアジアンエンタメの魅力を紹介。「韓流ぴあ」(ぴあ)、「韓国TVドラマガイド」(双葉社)、「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」(キネマ旬報社)等に寄稿中。好きなジャンルはSF、コメディ、時代劇……に加えてキラキララブストーリーも。好きなアーティストはSHINHWA、RAIN。最近ハマったドラマは『還魂』パート1。
杉本真理
出版社勤務を経て、充電期間中に韓国ドラマに出合い、この道へ。現在は「韓国TVドラマガイド」(双葉社)の編集を中心に活動。「韓国テレビドラマコレクション」(キネマ旬報社)を監修。好きなジャンルは時代劇・長編・サスペンス、ときどきロマンス。最近ハマったのは『その恋、断固お断りします』、アイドル再生サバイバル番組『PEAK TIME』
さいきいずみ
テレビ誌編集者・ライターとして2004年から韓流取材に携わる。その後大学路で観劇にハマり、2011年から韓国舞台情報を紹介する韓劇.comを主宰。好きなジャンルは『ミセン-未生-』『刑務所のルールブック』などの演技派舞台俳優が出ているヒューマンドラマとシットコムなどのベタなコメディ。最近ハマったドラマは『財閥家の末息子』(祝・日本配信開始)。
<解説>『冬のソナタ』とは?
韓国KBSで02年に制作された全20話のドラマ。監督ユン・ソクホ 脚本ユン・ウンギョン、キム・ウニ
高校時代の初恋の相手、チュンサン(ペ・ヨンジュン)を事故で亡くし、傷心を抱えたまま10年の月日が流れたヒロインのユジン(チェ・ジウ)。成人後、建築デザイナーとなり、幼なじみのサンヒョク(パク・ヨンハ)との婚約を控えていた彼女だが、仕事相手としてチュンサンに瓜二つのミニョン(ペ・ヨンジュン)が現れ、動揺と困惑のなかで彼と共にスキーリゾート開発を手掛けることになる。
ユン・ソクホ監督の2000年作『秋の童話』を皮切りに『冬のソナタ』(02年)、『夏の香り』(03年)、『春のワルツ』(06年)と制作された4作は合わせて“四季シリーズ”と呼ばれている。
『冬ソナ』旋風で韓流ライターが誕生!?
今年の4月3日で『冬のソナタ』(以下『冬ソナ』)が日本初放送から20周年だったそうです。私が韓ドラ取材を始めたのが、2004年に初来日したパク・ヨンハのインタビューでして。それまでは韓国はおろかアジアンエンタメとの接点がほとんどなく、韓国語も全く解せないのにいきなり韓流仕事を始めてしまったという……無謀極まりない状況だったんですが、それから気が付けば20年経っていました(笑)。 この3人のなかでは青木さんがライターとしては一番早く韓流取材されてたんですよね?
私の場合はそれまで香港映画の仕事が多かったのですが、当時はとにかく、中国も韓国もアジアものは一括りされていたので、韓国映画の仕事もたまにあったんです。そこから自然に。でも『冬ソナ』の前は韓流ライターっていなかったよね?
スカパー!のKNTVが、まだ日本語字幕をほとんどつけずに放送してる頃に、言葉はよく分からないけど観てましたね(笑)。『冬ソナ』がNHK-BSで初放送された頃に雑誌「月刊スカパー!」からSHINHWAの取材依頼が来たのが韓流取材の始まりと言えるかな。当時はまだそれほど知識はなくて。同じころ台湾F4が好きな友達がSHINHWAに激ハマりしてて、家に遊びに行った時に懇々とレクチャーを受けたりしてたんです(笑)
私の場合は、ちょうど映画『JSA』(00年)がDVDになる頃、DVD誌の編集部にいました。おそらく、02年の東京国際ファンタスティック映画祭に『火山高』(01年)の出演者が来日したときが、初韓国もの取材だったと思います。雑誌的にもノワールとかアクションとか男性目線の作品がメインだったので、どちらかというと韓国=いかつい印象だったんですよね。そこに『フレンズ』の放送があって。で「ウォンビン、むちゃくちゃ美男じゃないですか! え?何者?」って、編集部の女性たちがざわつきまして(笑)。その後、ウォンビンが出演している映画『ガン&トークス』や、チョン・ウソン、チュ・ジンモの『MUSA -武士-』(いずれも01年/日本公開は03年)など日本公開が決まると、日本の俳優に例えて「韓国版の○○です」って宣伝がはじまったと記憶しています。
じゃぁその頃からじわじわと韓国イケメン俳優推しが始まってたと。
それ以前は『旅人は休まない』(88年)とかコリアンエロスな『桑の葉』(86年)や『シバジ』(87年)などの韓国映画が日本でDVD化されたていたり、その後に『シュリ』(99年)『JSA』(00年)とかアクションものが公開されたりしていたので韓国映画は男性ファンのほうが多かった。でもやっぱり大きなきっかけは2002年の日韓共催サッカーワールドカップ(以下、W杯)じゃないかな。
私はW杯のころは、テレビ誌で音楽ページ編集担当だったので、CHEMISTRYやリナ・パーク(パク・ジョンヒョン)などで結成したVoices Of KOREA/JAPANの公式ソングを紹介したり、その後CHEMISTRYに取材したりしてました。
SHINHWAもNHKの歌謡番組に出たりしてたの(笑)。『フレンズ』もその関係で作られたと思うし、W杯でいろんな人が韓国に興味を持ち始めたなかで、いま韓国で流行ってるドラマっていうことで『冬ソナ』が放送されたと思うんですよね。NHKでの放送ということもあって、女性が反応したのは『冬ソナ』からだと思う。
それまでは男臭い作品が多かったのに、『冬ソナ』はいきなり美しい映像とピュアな恋物語が展開されるので最初はちょっと面食らいましたね(笑)
●参考映像:『冬のソナタ』日本で初放送開始を伝えるニュース映像(KBS News公式YouTubeより)
ザ・韓ドラ、『冬ソナ』ワールドの衝撃
実は私は昔から東海テレビの昼ドラマニアで(笑)。昼ドラブームのころテレビ誌で特集を組んだりしてたんです。なので『冬ソナ』を見た最初の印象は「何これ?東海の昼ドラみたいじゃん!」って思いました(笑)。当時から『冬ソナ』はよく大映ドラマや昼ドラと比較されてたし、視聴者層も丸かぶりしてると言われてたんですよね。で、私はパク・ヨンハが演じたサンヒョク派で(笑)。(ペ・ヨンジュンが演じた)チュンサン(ミニョン)には肩入れできなかったんですよ。そこにちょうど初来日したパク・ヨンハに取材できて、サンヒョクのイメージそのままに素朴な感じがすごく良かったですね。日本での人気を訊いたら「テゲテゲシンギ~(되게되게 신기/とっても不思議)」と照れくさそうに答えてくれたのを今でも覚えています。
私も初来日のとき取材したけど、初々しくてとても可愛かったよね~。でも私は逆にサンヒョクが最初嫌いだったの(笑)。「しつこ過ぎる!」ってイラッとしながら観てて(笑)。でもだからといってペ・ヨンジュンにハマったわけでもなく、チェ・ジウが可愛いな、ってチェ・ジウ目線で観ていたかも? だからミニョンじゃなくて、ユジンとチュンサンの関係で観てましたね。でも周りに意外とサンヒョク派が多くて、確かにサンヒョク目線で観ると、これはかなり切ないな、と。パク・ヨンハにはそれから、何回かインタビューしたんですけど、日本で取材慣れしてきてからは、ちょっと気分屋さんなところが出てきて、核心部分は話してくれないのに、それ以外のことはすごいおしゃべりだったり(笑)。そんな素の部分を見せてくれるところも私的には魅力的でしたね。
そうでしたね~。いつも穏やかで印象は全く悪くないんですけどインタビューは回を重ねるごとになかなか思うような答えが返ってこないときもあって、取材難しかったな…って良いコメントを引き出せなかった自分にへこんだこともありましたね。
私が『冬ソナ』、というか韓ドラを観たときの印象は、往年の大映ドラマみたいだな。でした。出生の秘密とか記憶喪失とか、いわゆるザ・韓ドラな定番要素なんですが、それをきれいに美しく描いている! うちの母なんかは『君の名は』(1953年の映画)の真知子と春樹みたいだ、と言ってましたね。だからそういう世代にも郷愁のようなものを感じさせつつ大映ドラマ的なドロドロもあり、それを美しい季節の風景を織り交ぜながら見せるっていうのは逆に新しいなと思いました。
『冬ソナ』は登場人物全員自己主張が激しいというか(笑)、日本人だと曖昧な表現が多いので、キャラクターがはっきりしているところが新鮮で面白かった。今でこそ韓ドラのセオリーみたいなのをわかっているけど、当時は全く免疫なかったから、ドラマを観ながらいちいち素直に驚いてました(笑)。「え! ここで主人公が死んじゃうの??」って(笑)。「チュンサンにそっくりな人は誰なの?」と、毎回謎がどうなっていくのか興味津々で楽しく観てました。あとは内容がドロドロなのに爽やかで美しいの。これは“ユン・ソクホマジック”だと思う。映像の美しさだけでも世界観に入れるところがあって、特に最初の高校時代のところは映像としてすごく好き。
日本の昼ドラとかだと、そこで映像もギラギラさせちゃう感じがあるんですよね。目から炎見えちゃうぐらい力入った表情とか、赤や黒、金などゴージャスで少し重たい色使いだったり、陰影が強かったり。でも、『冬ソナ』って真逆じゃないですか。なんていうかキラキラしてた。そして、ソフトだった。
突然やってきた転校生がカッコよくて数学の天才で寡黙なのにバスケも上手くてピアノまで弾けるっていう(笑)、少女漫画の世界なんだけど、日本じゃないからファンタジーとして余計に入りこめたのかな?
あとね、日本語吹替の声がとにかく優しかった。あれがまた、すとんと落ちたんですよね。あとから本人の声バージョンで見たら、さらに、「なあにこのイケボっ♥」ともなりましたし。それでいて、どんでん返しが多くて、次が気になるから止められない!絶妙でした!
当時『冬ソナ』にハマった多くの人が、そういう劇的な反転ストーリーにハラハラしながら観てたのかもしれないですね。しかし今回改めて『冬ソナ』を見直してみて思ったんですが……みんなそれほど演技が上手いわけではない(笑)。結構ぎごちないシーンもあって、今だったらパルヨンギ(발연기 :足で演技しているように下手だという意味)って視聴者に怒られるレベルかも?
それもある意味“ユン・ソクホマジック”だと思ってて、あえてたどたどしい感じをOKにしてると思う。
そういえば『秋の童話』『夏の香り』とか他のユン・ソクホ作品も俳優の演技は似たような感じですもんね。
あとは『冬ソナ』を観ながら韓国の文化がいろいろ気になって。一番気になったのは「なんでお店のなかでコートを着てるんだろう?」って(笑)。普通日本だと飲食店とか入ったらコート脱ぐじゃない? 実際そのあと韓国に行ってみて分かったんだけど、寒いんだな!って(一同爆笑)。昔の『冬ソナ』記事を読み直してみたら、高校でチュンサンがピアノを弾く場面とか、スキーリゾートのシーンはみんな凍死するんじゃない?っていうくらい寒かったらしくて、撮影スタッフから「俳優が(寒すぎて)かわいそう!」っていう声が上がってたらしいです。
ミニョンが仕事終わりにキム次長とバーに行って飲んでるときも、コートにマフラーしてましたもんね(笑)
韓国で友達と食事に行ったときも、つい癖で上着を脱いでたら後で寒くなってまた着たり。劇場に行っても、みんなコートとか着たままだったけど、着てないと寒くて観ていられないんだな、って。
そういや、真冬に大学路の小劇場に演劇を見に行ったら、劇場に一切暖房が入ってなくて凍えながら観たことがありました(笑)。近年は冬でもあまり雪が降らなくなってるし、室内では暖房やオンドルがしっかり効いてたりするけど、昔は本当に寒かったんでしょうね。
『冬のソナタ』でザ・韓ドラワールドの洗礼を受け、私たちと同様に韓ドラファンとして視聴を続けている方も多いはず。次ページのパート②では、作品の魅力や当時の取材秘話を公開します。⇒パート②記事へ
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