日本との相互交流が定期的に行われている韓国演劇界で、6月は日本作品&戯曲の上演ラッシュが続き注目を集めている。
6月21日まで上演中の『ウェルズロード12番地(웰즈로도 12번지)』は、演劇だけでなくテレビドラマ、映画と幅広いジャンルで脚本執筆を手掛ける土田英生(つちだひでお)が自身の英国留学体験をもとに書下ろし、2013年に上演した作品。原作では物語の舞台はロンドン生活に馴染めない日本人たちが集まる和食レストランという設定だったが、今回はすべて韓国バージョンに脚色して上演される。演出は2008年に土田と組んで『悔しい女』を上演し、好評を得たパク・ヘソン。5年ぶりに再び土田作品を手掛けるとあって、韓国の観客たちにも期待されている。
6月10日から大学路の芸術空間ソウルで上演される『亀、もしくは…(거북이 혹은…)』は、北海道の劇団「札幌座」の代表作を日本オリジナルキャストで上演する来韓公演。物語の舞台はとある精神科サナトリウム。見学研修に訪れた医学生と医師、看護師、そして自分を亀と思っている患者の4人が繰り広げる会話を通して正常と異常、出演者と観客の境界を問うブラックコメディだ。ソウル公演を終えたあとは、13日~15日まで大田(テジョン)公演を実施する。
同じく6月10日からドゥサンアートセンターSpace111で上演される『背水の孤島(배수의 고도)』は、劇団TRASHMASTERSを主催する中津留章仁が作・演出し、2011年、12年に上演された作品。東日本大震災で被災し、仮設住宅に暮らす父子3人家族を中心に、一家を取り巻く厳しい環境と人間模様、登場人物たちの立場が変化している12年後の姿が濃密に描かれる。『アリバイ年代記』で今年東亜演劇賞の作品賞や戯曲賞を受賞した劇団ドリームプレイを主催するキム・ジェヨプが演出。ソン・ジョンナム(『雄鶏たちの闘い_COCK』『デモクラシー』)、イ・ユンジェ(『歌うシャイロック』『小説家久保氏の1日』)、キム・ソジン(『かつて愛していた女性に送った旧ソ連宇宙飛行士の最後のメッセージ』『あの日々』)など、登場人物すべてが役柄に合った絶妙なキャスティング。3時間弱という上演時間ながら、時間の経過を忘れるほど韓国演劇俳優たちの演技力を改めて実感する見ごたえある作品だ。
そして6月19日からは芸術の殿堂 自由小劇場にて『秋の蛍(가을 반딧불이)』が3度目の再演を行う。原作は『焼肉ドラゴン』『僕に炎の戦車を』などで韓国にもファンが多い鄭義信(チョン・ウィシン)の戯曲。女性と駆け落ちした父・文平に捨てられたタモツと叔父・修平が営む貸しボート屋に、失業した中年男のサトシや修平の子を妊娠中という女・マスミが転がり込み、それぞれに傷を抱えている4人が一緒に暮らすうちに疑似家族となっていくさまを繊細に描いた人情喜劇だ。
今回の再演では、ミュージカル『女神様が見ている』に出演中のチン・ソンギュ、演劇『柔道少年』に出演中のオ・ウィシク、チョン・ヨンら劇団「公演配達サービスカンダ(공연배달서비스 간다)」の俳優陣や、『アガサ』でタイトルロールを演じていたヤン・ソミンが参加するなど新キャストが多く、前2回とはまた違った味わいの公演になりそうだ。
いずれも日本公演時には、作品性を高く評価されたものばかり。6月に韓国を訪れる方は、ぜひ劇場に足を運んで欲しい。
■公演情報■
『ウェルズロード12番地』 ⇒日本公演時サイト
⇒Interpark公演情報
6月6日~21日 大学路・ジョンボ小劇場
『亀、もしくは…』 ⇒日本・札幌座公式サイト
●ソウル公演:6月10日、11日 芸術空間ソウル
●大田(テジョン)公演:6月13日~15日 カトリック文化会館アートホール ⇒Interpark公演情報
『背水の孤島』 ⇒日本・劇団公式サイト
⇒Interpark公演情報
6月10日~7月5日 ドゥサンアートセンター Space111
『秋の蛍』 ⇒日本公演時サイト
⇒Interpark公演情報
6月19日~7月20日 芸術の殿堂 自由小劇場
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