光州

[MUSICAL]韓国ミュージカルをオンライン視聴!③『光州』

[MUSICAL]韓国ミュージカルをオンライン視聴!③『光州』

 

今年下半期の注目新作のひとつ、ミュージカル『光州(クァンジュ)』が、10月9日の開幕を控えて9月29日に行われたショーケースの模様をオンライン無料配信する。


『光州』トレイラー①(制作会社LIVE 公式YouTubeチャンネルより)

ミュージカル『光州』は、韓国で5.18(オーイルパル)民主化運動と呼ばれる光州事件から今年40年を迎えて国や光州市の主催で上演される新作で「『あなたのための行進曲』大衆化、世界化事業」の一環として制作された。この「あなたのための行進曲」とは、光州事件の翌年1981年に光州で作られた民衆歌謡で、現在は5.18記念式典で歌われていることから、民主化運動を象徴する運動歌として韓国のみならずアジア各地でも歌われているという。

ホ・イング役イ・ジョンヨルが、光州の5.18民主化広場で「あなたのための行進曲」を歌うミュージックビデオ

『マリー・キュリー』『ファンレター』など多数の創作ミュージカルを生み出したLIVEが制作を担当し、制作陣には舞台シーンのトップクリエイターを揃えた。脚本、演出は東亜演劇賞を受賞した演劇『趙氏孤児、復讐の種』のほか、ミュージカル『ウェルテル』『光化門恋歌』の脚本家としても知られる劇作家、演出家のコ・ソンウン(劇団「劇工作所・魔方陣(マバンジン)」主宰)。作曲はソウル大学作曲科教授で、オペラ、現代音楽の作曲も多数手掛けるチェ・ウジョン。そして音楽監督はミュージカル『フランケンシュタイン』『ベン・ハー』の作曲家としても知られるイ・ソンジュンなど、豪華面々が名を連ねている。


『光州』トレイラー②

物語の舞台は1980年5月。独裁者の死に乗じてクーデターを起こした軍部が、民主化運動を展開する光州市民をスパイに扇動させられた暴徒とみなすため、市民になりすましてデマを流布させる特殊部隊“便衣隊”を送り込む。
軍部の謀略に立ち向かう光州市民たちの姿を描く『光州』は、コ・ソンウン演出家曰く、史実や実在の人物を基にしつつもあえてフィクションとし、ミュージカル作品として成立するよう構成したという。

(上段左から)パク・ハンス役:ミン・ウヒョク、Tei、ソ・ウングァン(下段左から)ユン・イゴン役:ミン・ヨンギ、キム・チャンホ

現代韓国の礎を築いた歴史的事件の物語ゆえに出演者の多くが、起用されたことを“光栄だ”と語る。ミン・ウヒョク、Tei、ソ・ウングァン、チャン・ウナ、チョン・インジ…と出演者は、韓国舞台シーンを支える実力派俳優が見事に揃っている。今回の無料配信では彼らがシッツプローブ(オーケストラ、出演者が揃った歌稽古)形式で行ったショーケースをNAVER TVとV LIVEで見ることができる。

(上段左から)チョン・ファイン役:チャン・ウナ、チョン・インジ/ムン・スギョン役:チョン・ユジ(下段左から)ムン・スギョン役:イ・ボムソリ、チェ・ジヘ

本公演は、10月9日からソウルで約1カ月上演された後、12月には光州でも上演される。日本から公演を見に行くのはまだまだ難しい状態だが、『タクシー運転手』などの韓国映画を通して、光州事件や韓国の民主化運動に興味を持った人ならば本作を十分に堪能できるだろう。


【配信情報】
ミュージカル『光州』ショーケース 録画中継(無料配信)
2020年10月2日(金)夜7時から

●視聴サイト
NAVER TV「公演」チャンネル⇒ https://tv.naver.com/l/56430
V LIVE⇒ https://www.vlive.tv/video/214602


【公演情報】
ミュージカル『光州』(광주)
●ソウル公演 2020年10月9日~11月8日 弘益大 大学路アートセンター大劇場
●光州公演 2020年12月11日(金)~13日(日)光州光の町市民文化館

<出演>
●505部隊便衣隊員パク・ハンス役:ミン・ウヒョク、Tei、ソ・ウングァン(BTOB)
●夜学教師ユン・イゴン役:ミン・ヨンギ、キム・チャンホ
●ファンサ音楽社主人チョン・ファイン役:チャン・ウナ、チョン・インジ
●夜学教師ムン・スギョン役:チョン・ユジ、イ・ボムソリ、チェ・ジヘ
●505部隊特務隊長ホ・イング役:イ・ジョンヨル、パク・シウォン
●司祭オ・ファル役:ソ・ヒョンチョル、イ・ドンジュン
●熱血市民軍イ・ギベク役:キム・デゴン、チュ・ミンジン
●街の天使役:キム・アヨン、キム・グッキ
●市民軍平和派キム・チャンソク役:キム・テムン
●夜学生チャン・サムニョン役:ムン・ソンイル
●夜学生オ・ヨンス役:イ・ボムジュン
●光州市民役:キム・ボヒョン、キム・ウンジュ、カン・ハナ、ホ・スンミ、ムン・ギョンチョ、キム・ミンジョン、ソ・ウンジ、キム・チャンジョン、パク・ソヨン、イム・サンヒ
●便衣隊員役:ペク・シホ、キム・ユンハ、チョン・ウテ、チュ・グァンホ、パク・ビョンフン、キム・ミンジュ、キム・ハンギョル

総括プロデューサー:カン・ビョンウォン/責任プロデューサー:コ・ガンミン/芸術監督:ユ・ヒソン/作曲:チェ・ウジョン/劇作:アン・ピルダン/劇作・演出:コ・ソンウン/振付:シン・ソンホ/音楽監督:イ・ソンジュン/編曲:ハン・ジウォン、イ・ソンジュン、カン・テック/美術:キム・ジョンソク/照明:リュ・ベッキ/映像:イ・ウォノ/音響:クォン・ジフィ/小道具:クォン・ミニ/衣装:チェ・インスク/ヘアメイク:キム・ユソン/技術:イ・ユウォン/舞台監督:キム・ボムシク/制作監督:イ・ヨンジュン/企画PD:パク・ソヨン/「あなたのための行進曲」作曲:キム・ジョンリュル

写真提供:(株)LIVE

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イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.7

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野球を通して「アメリカ」を語る『God Bless Baseball』

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国立アジア文化殿堂全景 ©韓劇.com

9月4日、韓国南西部にある町、光州市に「国立アジア文化殿堂(국립아시아문화전당 Asian Culture Complex)」が開館しました。5つの文化施設で構成されているなか、先行してオープンした「アジア芸術劇場(아시아예술극장)」では、9月20日まで開幕フェスティバルが行われ、世界各国から33の作家や団体が参加しました。日本からは映画監督足立正生の新作『断食芸人』、御年90歳というフランスの演出家クロード・レジと日本の俳優によるメーテルリンク原作の『室内』、作・演出家の岡田利規が初めて日韓共同製作プロジェクトに挑む『God Bless Baseball』などが上演されました。アジア文化殿堂のオープニングにふさわしく、普段はなかなか見られない作品に出会えるフェスティバルになったのです。

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ウィ・ソンヒ(左)と野津あおい ©Asian Arts Theatre (Moon So Young)

今回は、開幕フェスティバル参加作のなかから、私が翻訳・通訳・ドラマトゥルクとしてかかわった『God Bless Baseball』(以下GBB)をご紹介したいと思います。岡田利規はチェルフィッチュという劇団の主宰であり、作・演出家、そして小説家としてもよく知られていますね。今まで彼の作品は、『3月の五日間』、『ホットペッパー、クーラーそしてお別れの挨拶』、『現在地』、『地面と床』が韓国で上演されたことがあり、4作品すべてがとても好評を得ました。本作品は5番目の韓国上演作となるわけですが、韓国人俳優との作業は今回が初めてです。去年の夏に行われたオーディションを通して、韓国からは劇団「第12言語演劇スタジオ」所属のイ・ユンジェとダンサーで振付家のウィ・ソンヒが選ばれました。そして日本からはダンサーの捩子(ねじ)ぴじんと劇団「サンプル」の野津あおいが参加しましたが、韓国のみならず、日本人キャストも岡田とは初めての作業になりました。

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©Asian Arts Theatre (Moon So Young)

そして現代美術作家の高嶺格(たかみねただす)氏が舞台美術として参加し、シンプルながら強烈な印象の舞台を作ってくださいました。特に、彼の美術作品『God Bless America』が、『GBB』の創作にインスピレーションを与えたこともあり、彼の存在はとても大きかったと思います。『God Bless America』は粘土で巨大なオブジェを作るプロセスを撮影し編集した作品でしたが、『GBB』では方式が異なり、パラボラアンテナのような(あるいはスピーカーのような)巨大な造形物が登場します。そして白い線やホームベース、二つの電光掲示板(劇中では日本語、韓国語、英語の字幕掲示版として使われます)など球場のような舞台美術もあります。

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©Asian Arts Theatre (Moon So Young)

お芝居は、野球のことが全く分からない二人の女の子の話で始まります。彼女たちの前にある「男」が現れ、一生懸命に野球を説明しますが、彼女たちにはどうしても理解できません。そのとき、イチローに似ているもう一人の男が登場します。彼もやはり、野球とは何かを教えようとするのですが、それから物語は意外な方向に展開していきます。
本作は、野球に関する父親との記憶から出発した岡田利規の小さな発想をモチーフにし、その父子関係はアメリカと日本の関係を連想させ、またそれはアメリカと韓国との関係にも繋がります。野球が人生のアレゴリー(比喩)に例えられるように、イチローの背番号51の話は思いもよらないところに至るなど、観客が爆笑したり涙を流したりしている間に、さまざまなエピソードの断片をパズルのようにつなぎ合わせ、まるで元々そこに存在していたかのように物語を完成させます。従来の岡田作品とは異なった、ダイレクトに伝わる作品の世界観も見どころですが、俳優たちの美しい動きによって、一つの美術作品を見ているような錯覚に陥るのも気持ちいい体験になると思います。
長い準備期間の間、不思議なほど順調に一歩一歩進めながら作り上げたこの作品は、今年の11月19日~29日までフェスティバル/トーキョー15(F/T15)参加作として、池袋のあうるすぽっとで上演され、その後、来年の1月から2月にはアメリカで5都市ツアーが予定されています。本作品で描かれている日米韓の関係は、日本やアメリカの観客にはどのように受け止められるでしょうか。ご期待をお願い致します。

●『God Bless Baseball』のドラマトゥルク金山寿甲による舞台裏レポート「ウラGBB!」もお楽しみください。
http://ura-gbb.tumblr.com/


GBBposter【公演情報】
F/T15 『God Bless Baseball』
2015年11月19日~26日 あうるすぽっと(東京・池袋)

●出演:イ・ユンジェ、捩子ぴじん、ウィ・ソンヒ、野津あおい

●作・演出:岡田利規/翻訳:イ・ホンイ/舞台美術:高峰格 /衣裳:藤谷香子(FAIFAI)/ドラマトゥルク:金山寿甲(東葛スポーツ)、イ・ホンイ

写真提供:Asian Arts Theatre (Moon So Young) ©韓劇.com All rights reserved. 記事・写真の無断使用・転載を禁止します。


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