フィエロ

[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<前編>

[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<前編>

 

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2012年~13年に初の韓国キャスト版を上演した『レ・ミゼラブル』のマリウスを演じて、一躍ライジングスターとなったチョ・サンウンさん。日本のミュージカルファンには劇団四季で活躍していた三雲肇(みくもはじめ)さんとしておなじみの若き実力派俳優です。
丸1年シングルキャストでマリウス役を演じきったあとは、昨年『ウィキッド』で、緑の魔女エルファバと恋に堕ちるフィエロ役で新たな魅力を披露。世界にその名を轟かせる2大ライセンスミュージカルのロングラン出演を経て、次に彼が出演を決めたのは意外にも大学路の中劇場で上演する岩井俊二監督の同名映画を舞台化した『ラブレター』でした。劇中では持ち前の透明感溢れる歌声を聞かせ、ヒロインの初恋の人となる高校生、藤井樹(ふじいいつき)を好演しています。
日本とは何かと縁が深い彼に一度お話を伺ってみたいと思っていたのですが、待望のインタビューが実現。取材は全編日本語で答えてくれました。

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8L6B8366●『レ・ミゼラブル』『ウィキッド』と大劇場のライセンスミュージカルにメインキャストで出演された後に『ラブレター』に出演されると知ったときは正直驚きました。てっきり次も大劇場作品だと思っていたので(笑)。
「大学路の作品に出るのは今回が初めてですけど、自分は大劇場とか小劇場作品だとか、ぜんぜん関係ないんです。ミュージカルだけじゃなくて、演劇もチャンスがあったら絶対やりたいし、自分は基本的に俳優ですから、俳優として演技をすることはすべてやってみたいです。実際に友達や周りの人たちにも“今度は大劇場じゃないの?”と言われたりもしましたけど、そういう時は“関係ないよ”って。“主役とかそういう役(の大きさ)も関係ないよ”って言ってたんです」

●サンウンさんご自身は映画『ラブレター』に愛着があったりしたんですか?
韓国では、例えばテレビのお笑い番組なんかで「オゲンキデスカ~!」って言えば、“『ラブレター』の真似をしている”っていうのがみんな分かるくらい知られていますよね?
「韓国で公開されたのは1995年ですから、僕はまだ小学生くらい? なので大学時代に遅れて見たんですけども、だいぶ昔なのであまり記憶にはなかったです。出演を決めたのは、『ラブレター』の音楽監督さんが去年『ウィキッド』を見にいらしたときに“あなたに似合う役があるよ”と言われたんです。それと、演出家のビョン・チョンジュさんと個人的に一度仕事をしてみたかったんです。去年『私に会いに来て(날 보러와요)』という演劇を見て、良い作品だなと思って。自分はずっと外国の演出家と一緒にやってきて、やっぱり一度韓国の演出家と仕事をしてみたいな、と思っていたので、それが大きかったです。あとは今回が韓国初演だし、原作映画や台本にも力がありました。やっぱりいくら俳優が頑張っても、作品に力がないと駄目だというのは、劇団四季時代に浅利(慶太)先生から学んだことです。“舞台は台本が大事。そしてミュージカルだから音楽も大事だよ”っていうのを自分も“その通りだ”とずっと思ってきましたから」

●稽古に入ってからはどうでしたか? 大劇場ミュージカルと違う部分はありましたか?
「システムですか? うーん、システム的な部分は違うところもありますけど、稽古は同じ人間が演ることですから、そんなに違いはないですね。むしろもっと家族的な雰囲気ですごく良い部分がたくさんありました。(秋葉役の)パク・ホサンさんは、もう20年近くいろんな作品に出ている方じゃないですか? そのホサンさんが“今回の稽古場の雰囲気が一番良い”って、他の俳優さんやスタッフさんもみんな良いって言ってるんです。もちろん僕も良いなとは感じていたんですけど、それほどまでに良いとは予想してなかったです。みんな優しいし、お互い助け合いながらやっています」

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寡黙なイケメンでクラスの女子にモテモテの樹

●サンウンさんが演じている藤井樹は、不愛想でツンとした感じのミステリアスなイメージがありましたが……。
「あ、そうですか? 僕は普段は優しいですよ(笑)」

(笑)。はい、もちろん知っていますが(笑)。普段はこうしてとても優しい雰囲気なのに、樹のキャラクターはまったく逆のイメージですよね? 演じてみていかがでしたか?
「映画でも樹はあまり出てこないし、喋らないじゃないですか? だから喋れば喋るほどマイナスになるキャラクターだと思うんですけど、セリフがあって、ミュージカルだから歌も歌わなきゃいけないので、とにかく台本を読んで、この子はどんな性格かな? とか考えながらビョン演出家と一緒に作っていった感じです。でもこれで終わりじゃなくて、いまも上演しながら少しずつ変えているというよりは、感じたことをそのまま素直に表現する、もっと深く考えてみよう、と毎回やっています。それが自分でもとても面白いです」

●いち観客としては、折角サンウンさんが出演しているのに、登場するシーンも歌うシーンもあまり多くないので、それがちょっと残念でした。
「でも逆に『レミゼ』とか『ウィキッド』をずっと見てくれていた人も、“今回が一番良い。良く似合ってる”と言ってくれる人もいるんです。自分で言うのはヘンかもしれないけど、樹は神秘性もあるし、最初から最後まで全体的に藤井樹にまつわる話じゃないですか? それがとても観客の心に残るみたいです。正直、最初は色々と心配もあったんですけど、結果的には良い作品になって、評判も良いのでそれが一番うれしいです。大学路でいま上演している作品のなかで『ラブレター』が一番良いんじゃないかなと思います」

●舞台を拝見したときに、実は『バンジージャンプする』を思い出したんですよ。
「はい、そういう話も良く聞きます。原作も同じく映画ですし、雰囲気も音楽も近いものがありますよね」

8L6B8478●ダブルキャストで樹役を演じているのはカン・ギドゥンさんですね。2人はまったく違う雰囲気をお持ちですが、サンウンさんが独自の樹を表現するために、何か努力された部分はありますか?
「基本的には台本にのっとって演じていますけど、同じ表現をしても演じる人間が違うから、自然と違った魅力が出てくると思います。稽古場で見ていてもギドゥンさんはとても魅力的だし、彼はミュージカルはほぼ初めてだけど、元々演劇はたくさんやっていた人なので演技も上手いし、すごく良い俳優です。稽古のときも2人で助け合いながら、ひとつの役を創っていったという感じです」

●樹が歌うパートで、一番好きな曲はどの場面の曲ですか?
「自分がやっぱり好きなのは『ひと目惚れという言葉(첫눈에 반한다는말)』(⇒プレスコール公式映像で、大人になってからの姿で歌う曲が一番好きです。歌詞が好きなのは(樹が桜の木の下で歌う)『サクラ(벚꽃)』(⇒稽古風景公式映像です。曲の歌詞に深い意味があるんです」

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「サクラ」を歌うシーンでのサンウンさん

●チョ・サンウン演じる藤井樹の魅力、見どころを紹介するとすれば?
「自分ですか? いや~、う~~ん(笑)」

●個人的には、サンウンさん、とても学生服が似合っていると思いました(笑)。
「あ~(笑)、似合ってますか!? 最近は学生の雰囲気を出すために、髪もこういう風に切ったりして(笑)。似合っていると言ってくださってありがとうございます(笑)。本当は31歳なのに…」

●31歳で学生服がこんなに似合う人はいないのでは? と(笑)。
「もう、これが最後です(笑)。もう学生服は見られないかもしれないです(笑)」

●大学路で上演している作品は学生が主人公のものが結構多いですけど、もしオファーが来たらどうしますか?
「それは……作品が良かったら、出ますけど。でも『ラブレター』ほど制服が似合う作品は他にないんじゃないかな? ははは(笑)」

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詰襟が似合いすぎる驚異の31歳(笑)。写真右がカン・ギドゥンさん

⇒インタビュー後編 では、俳優チョ・サンウン誕生秘話に迫ります。

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[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<後編>

[SPECIAL INTERVIEW]Vol.4 チョ・サンウン<後編>

 

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●韓劇.comの読者のなかには、サンウンさんが劇団四季で活動されていた時代をご存知ない方も結構いらっしゃるようなので、後半はこれまでの経歴についてお伺いしたいと思うんですが……。
釜山出身ですよね? そもそも俳優を志したきっかけは何でしたか?

「小さいときからドラマとかを見て、ずっと“俳優になりたいな”と思っていたんです。自分は他の夢を持ったことがないです。だからやらなきゃいけないんです。これしか出来ないんで」

8L6B8343●俳優になれれば、映画でもドラマでも何でも良かった?(笑)
「はい。最初は。でも、もともと歌うことも好きだったんです。高校の時には合唱団で活動したりもしました。それから大学に入ったんですけども、演技もやれる、歌も歌える、踊りも踊れるのはミュージカルじゃないか、と気づいて。そのころちょうど、2004年に初演したチョ・スンウさんの『ジキル&ハイド』を見て、自分も演りたいなと思ってからは、僕のアンテナが全部ミュージカルのほうに向いたんです」

●釜山で通っていた大学(慶星大学)にはミュージカルを学ぶ環境があったんですか?
「大学は演劇映画科で演技しか学べなかったので、歌とかは個人レッスンを受けたり、作品を観たりして自分で勉強していました」

●ミュージカルを始めたのは劇団四季の『ライオンキング』が最初になるんですよね?
「はい、そうですね。2006年に“韓国初演の『ライオンキング』のオーディションがあるよ、というのを友達から聞いて。その友達は先に劇団四季に入っていたんですけども、『ライオンキング』を見たときにシンバが出てきたら“あれ? これサンウンがやったらピッタリの役じゃない?”と思ったらしくて、連絡してくれたんです。でも僕はまだ学生だったし、準備が出来ていないと思ったんだけど、友達が“一応、受けてみて”って言うから、“よし、じゃぁわかった。受けてみるよ”って、シャーロッテ劇場でオーディションを受けたんです。そうしたら浅利(慶太)先生が、“あ、シンバだ”って言ってくださって、オーディションに合格したんです」

●へぇぇぇ! 最初からそれは凄い! あの浅利先生から。
「でも、劇団四季のシステムがありますから、アンサンブルから始めて、その後でシンバを演ったんです」

●アンサンブルとして合格したときはパク・ウンテさんなどと一緒だったんですよね?
「ウンテさんと僕がサイの前足と後足担当だったんです」

●それは今考えると豪華すぎるサイですね!(笑) ほかにアンサンブルに合格して、いま活躍している俳優はどんな方がいらっしゃいますか?
「当時は無名だったけど、いまはみんな有名になられましたね。パク・ウンテさんもそうだし、キム・ジュンヒョンさんも一緒でしたし、チャ・ジヨンさん、カン・テウルさんなど、いろんな俳優がいました」

8L6B8414●それからシンバ役を演じるようになったのは?
「2007年の初めからですね。それからその年の11月に『ライオンキング』の上演が終わって、まだ若かったから劇団四季の良いシステムの中で学びたいな、と思って、オーディションを受けて日本の劇団四季に入ったんです」

●その時はすでに日本語を話せていたんですか?
「いえ。日本に行って、イチから勉強しました。『ライオンキング』でシンバ役を半年くらいやりながら。動線や歌は韓国でずっとやっていたので分かってましたから、最初はとにかく日本語のセリフだけを覚えて、出演しながら日本語の勉強をやっていったんです」

●そして、2009年日本初演の『春のめざめ(スプリング・アウェイクニング)』に、韓国版ではチョ・ジョンソクさんなどが演じた、モリッツ役で出演されたんですね。
「実は『春のめざめ』のオーディションのときに、ブロードウェイから演出家さんもいらしたんですけど、その演出家さんはもちろん日本語が分からないじゃないですか? 僕が日本人か韓国人かなんて分からないはずだから、逆にそれは僕にとってチャンスだ。と思って、自分が持っているパッションを全部お見せしたんです。本当は候補の3番目か4番目くらいだったんですけど、演出家さんが“モリッツはサンウンに演ってほしい”と、おっしゃったらしくて、出演が決まったんです。それからはさらに頑張って日本語も勉強もしたし、役の研究もしたりと一生懸命勉強しましたね」

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『ウィキッド』では、りりしいフィエロ役で観客を魅了!(2013年11月 『ウィキッド』プレスコールより)

●その後で『コーラスライン』や『キャッツ』にも出演されたそうですが、劇団を辞めたのはいつごろでしたか?
「2012年の3月です。大きな地震があったじゃないですか? そのころは『ライオンキング』に出演してたんですけど、両親が心配したのもあって韓国に帰ってきたら、ちょうど『レ・ミゼラブル』の初演が決まっていて。まだマリウス役に合格した人がいないというのを聞いて、オーディションを受けてみないか、と誘われたんです」

●それで1年間マリウスを演じられて、『ウィキッド』のフィエロまで、と華々しい経歴が続いたわけですね。『レミゼ』も『ウィキッド』も日本でとても人気がある作品ですし、これから日本でも活動したいとは思いませんか?
「はい。日本のミュージカルに出演してみたいと僕も思っています。日本でコンサートがあるんですけど(※2月1日に終了)、これをきっかけに日本でコンサートなども、もっと出来たらいいなと思っています」

 

●日本語がお上手ですから、いまこのまま日本に行かれても、すぐ舞台に立てると思いますよ。
「いやいや、日本語はまだまだ勉強しなきゃいけないですけど、機会があったら日本の舞台にも立ちたいですね」

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終始柔らかな笑顔が印象的だったサンウンさん。取材時には、次の出演作はまだ決めていないとのお話でしたが、彼ほどの実力があれば、いろんな作品から引く手あまたでしょう。そして最後にお話くださった、日本の舞台に立つ日もそう遠くはないかもしれません。

サンウンさんが『レ・ミゼラブル』に出演中の2013年、ミュージカル俳優のトークショー「イヤギショー」に出演されたのを見たときに、今でも忘れられないエピソードがあります。サンウンさんは『レミゼ』の稽古中、毎日毎日誰よりも早く稽古場に来て、ウォーミングアップや発声練習をしていたんだそうです。「稽古場に来ると、まずサンウンさんの声を聴くことになる」と共演者たちは冗談めかして話していましたが、こうして見えないところで人一倍の努力をしている人だからこそ、当時韓国ではほぼ無名だったにもかかわらず、マリウス役を射止めることができたんだな、と感心しました。
韓国のみならず日本でも……と、無限の可能性を秘めたサンウンさん。さらなるご活躍を期待しつつ、これからも応援していきたいと思っています。

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