デスノート

イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.18

イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.18

 

今ここでしか見られない『デスノート』2017ソウル版!


1月3日からいよいよ、ソウル芸術の殿堂オペラハウスにてミュージカル『デスノート』が再演されます。そして今回も私は稽古場で通訳として活動しています。

ライト役のハン・チサン ©CJeSカルチャー

すでに多くの方がご覧になったと思いますが、制作発表会とショーケースコンサート、ミュージックビデオなどを通して初演とはまた違った公演になることが予告されました。特に、再演で初めて合流したライト、ライトの父である総一郎、ミサミサ、刑事たちのほかアンサンブルは、自分だけのキャラクターを作り出すために、力いっぱい稽古をしています。主要なキャラクター全員が単独キャストで出演するからでしょうか? 俳優たちが作品とキャラクターに集中する姿は、どの現場よりも真剣で強烈です。
日本の同名漫画を原作にしたミュージカル『デスノート』は、フランク・ワイルドホーンの美しい音楽も有名ですが、何よりも”ノートに名前が書かれると死ぬ”という奇抜な設定で、善と悪の境界を行き来する二人の天才の頭脳対決が魅力的なドラマを構築します。

L(エル)役のキム・ジュンス ©CJeSカルチャー

 

この世界を描くために、今回新しくライトを演じるハン・チサン(한지상)は、ミュージカル『フランケンシュタイン(프랑켄슈타인)』『ザ・デビル(더 데빌)』、演劇『レッド(레드)』などで演技力と歌唱力の両方を認められた俳優です。彼は劇全般にわたって少しずつ現れる、ライトの変化を繊細に表現しています。高音が得意な俳優なので、特にLを演じるキム・ジュンス(김준수)と、互いに正体を隠してテニスをするシーンでは、こんな歌だったっけ!? と驚くほど、初演の時には味わえなかったエネルギーを感じられると思います。

一方、兵役に行く前の最後の作品ということで、誰よりも負担と期待を抱えているキム・ジュンスは、初演当時、原作のLのキャラクターを超えて、キム・ジュンスしか出せないユニークな人物像を誕生させたと評価されました。初演に作り上げたLをまた丁寧に蘇らせながら、同時に新メンバーたちと細かい部分を共有しながら、新たな発見をしていく演じ方は無邪気です。こんな様子は2年後には、もう見られないかもしれない姿ですね。

海砂(ミサミサ)役のBEN ©CJeSカルチャー

新メンバーの中で、原作キャラクターと100%のシンクロ率を見せるのは、人気アイドル、ミサミサ役の歌手BEN(벤)です。ミュージカルは初挑戦だそうですが、彼女のそばにはいつも死神レム役のパク・ヘナ(박혜나)がいます。稽古からミサの傍らで彼女を見守ってあげているレム……二人の切なくて美しいシーンは、間違いなくこの作品をより豊かにするでしょう。

もう一人の死神リュークは、今回もやはりカン・ホンソクが務めますが、今回は少し変わったリュークを見られるのではないかと思います。いつも通り愉快な姿の裏に、死神としての恐ろしい一面が時々現れるからです。一方、とても優しいライトの父である総一郎役のソ・ヨンジュ(서영주)は、優しさとともに持っているカリスマ性を発揮し、出番は少ないにもかかわらず、強い存在感を見せると思います。
準備は万全です。これからは客席の反応を待つことだけが残っています。

日本の皆さんもご存知のように、10月から韓国社会は混乱の中に落ちています。あちこちの劇場から観客がいないと心配の声が聞こえています。映画よりももっと映画のようなニュースが毎日流れていて、市民たちは劇場ではなく街に出ています。それは単純に、誰か一人に対する憎悪のためではありません。悪い事故はいつでも起こるし、悪い人はいつでも過ちを犯します。問題は誰もそれを防ぐことも処罰することもできなかったことです。悲惨な事故が起こっても誰も救ってくれない状況が繰り返されていて、検察、法律、国家システムへの信頼が崩れてしまい、市民たちはそれが見ていられなくなったのです。

死神レム役のパク・へナ(左)と死神リューク役のカン・ホンソク ©CJeSカルチャー

現在の状況を考えると、「本当の正義はどこだ!」と叫んでいるライトとLと群衆の声に力が入っているように聞こえるのは、当然のことかもしれません。実際に、稽古場の中でも休憩時間になると、例外なく誰もが携帯でニュースを見ていたし、稽古が早く終わる土曜日には、ロウソクデモに参加するために光化門広場に向かう人もいました。まさに、“もし今ソウルの光化門にデスノートが落ちるとしたら……?” そんな想像をしながら、『デスノート』2017ソウル版は作られているのです。
いろんな意味で今回の『デスノート』は、今のここ韓国じゃないと見られない公演になるでしょう。この機会を逃さないように、そしていつもよりももっと期待していただけたらと思います。


【公演情報】
ミュージカル『デスノート』(데스노트)
2017年1月3日~1月26日 芸術の殿堂オペラ劇場

<出演>
●夜神月(やがみライト)役:ハン・チサン
●L(エル)役:キム・ジュンス
●弥海砂(あまねみさ)役:BEN
●死神レム:パク・へナ
●死神リューク:カン・ホンソク
●夜神総一郎:ソ・ヨンジュ
●夜神粧裕(やがみさゆ):イ・スビン

プロデューサー:ぺク・チャンジュ/音楽:フランク・ワイルドホーン/脚本:アイヴァン・メンチェル/作詞:ジャック・マーフィー/演出:栗山民也/助演出:オ・ルピナ/音楽監督:キム・ムンジョン

写真提供:CJeSカルチャー ©韓劇.com All rights reserved. 記事・写真の無断使用・転載を禁止します。


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イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.4

イ・ホンイの「ソウルde演劇めぐり」Vol.4

 

韓国版『デスノート』、ついに幕が上がる!

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制作発表での2ショット ホン・グァンホ(左)とキム・ジュンス ©CJeS Culture

いよいよ明日のプレビューからミュージカル『デスノート』が開幕します! 本公演は、6月20日から8月9日まで、約1800席の座席数を誇る、京義道・城南(ソンナム)市にある、城南アートセンターのオペラハウスにて上演されますが、チケット発売日にあっという間に全席完売を記録し、すでに韓国では上半期最高の話題作になっています。栗山民也演出、フランク・ワイルドホーン作曲、ジャック・マーフィー歌詞、アイヴァン・メンチェル脚本といった豪華なクリエイターたちとともに、夜神月(ヤガミライト、以下ライト)役にホン・グァンホ、L(エル)役にはキム・ジュンスがキャスティングされ、いま城南アートセンターには、まさにアメリカ、日本、韓国のミュージカル界のスターたちが集結しているのです。

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夜神月(ヤガミライト)役のホン・グァンホ ©CJeS Culture

作品のクオリティは4月に東京・日生劇場で上演された日本版ですでに証明されましたが、韓国版を制作するにあたり、少々変更された部分もあります。音楽の面ではキーが変わったり、弦楽器がさらに追加されたりしましたし、振付も俳優の役作りに合わせて修正したところがあります。この細かな変化を加えるために、日本版に参加していたスタッフたちがブロードウェイや東京から、ソウルに来ていたのです。そのため、今回私は久しぶりに通訳スタッフに変身して制作に参加しました。これまでコラムでは私が翻訳した作品を紹介してきましたが、それに負けないくらいの愛情を込めて本作品をお勧めします!

何より本作品はミュージカル化されることで、ストーリーはシンプルに、その代わりキャラクターはより鮮明になったと思います。まるでキャラクターの力でドラマが展開されるかのような気までしています。韓国版では登場人物を演じる俳優それぞれの個性によって作品の印象も大きく変わるでしょう。

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L(エル)役のキム・ジュンス ©CJeS Culture

例えば、少年のような明るさと集中する時の鋭さを両方持っているホン・グァンホさんは、「そこまで自分の信念に確信を持てるか」と思わせるライトの性格を、観客が納得できる方向に作り上げています。加えて、ライトの衣装は韓国にいるごくふつうの男子学生とそれほど変わらないため、普遍的な“目の前にいるひとりの人間”としても、リアリティのある人物像を感じさせます。一方、日本語がとても上手で日本の演出部とも自由に意見を交わしていたキム・ジュンスさんは、実存しないようなキャラクターをとても繊細に描いています。Lに感情が入っていくことで、彼の純粋さと狂気は客席の隅から隅まで届くことでしょう。この二人が自分の中の確かな何かを信じながら「我こそ正義(ネガジョンイダ/내가 정의다)」と歌い出すとき、それぞれの違う音色はパワフルな争いを連想させ、劇的な効果を生みだすはずです。

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爆発的なエネルギーに期待! 死神リューク役のカン・ホンソク ©CJeS Culture

ほかにも、死神リュークを演じるカン・ホンソクさんは、彼特有のはつらつとした愉快な人柄を生かし、ライトのパートナーになります。それからアイドル・スター、弥 美砂(アマネミサ)役のチョン・ソナさんと彼女を守るもう一人の死神レム役のパク・へナさんのケミストリー(化学反応)も絶対逃してはいけない見どころです!

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韓国版ミサミサはかなり大人っぽいキャラに? 弥美砂役のチョン・ソナ ©CJeS Culture

最高のエンターテインメントを見せてくれるはずの韓国版『デスノート』。しかしこの作品は「このような腐った世界を作った神」と「世の中の腐っている人たちを審判するキラ」のうち、どちらが正しいのか? という質問を投げかけ、今まで護られていた「正義」と「信念」という言葉に疑いを持たせます。現キャストの組み合わせでは今後見たくても見られない幻の舞台になるかもしれない韓国版『デスノート』ですが、超満席になっている客席を想像しながら、「ハラハラ、ドキドキ!」幕が上がることを楽しみにしております。

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韓国のイディナ・メンゼルの異名を持つ歌唱力に期待 死神レム役のパク・ヘナ ©CJeS Culture


【公演情報】
ミュージカル『デスノート』(데스노트)韓国版
2015年6月19日(プレビュー公演)、6月20日~8月9日(本公演)
城南アートセンター(⇒会場までのアクセス、劇場紹介)

出演:ホン・グァンホ、キム・ジュンス、チョン・ソナ、カン・ホンソク、パク・ヘナ、イ・ジョンムン、イ・スビンほか
演出:栗山民也/作曲:フランク・ワイルドホーン/作詞:ジャック・マーフィー/脚本:アイヴァン・メンチェル/音楽監督:キム・ムンジョン

写真提供:CJeS Culture ©韓劇.com All rights reserved. 記事・写真の無断使用・転載を禁止します。


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