ミュージカル俳優ヤン・ジュンモが演出家デビューして昨年話題を呼んだ、小劇場オペラ『リタ』が1年ぶりにカムバックし、プレスコールが11月10日に行われた。
オペラ『リタ』は19世紀初期に活躍したイタリアのオペラ作曲家、カエターノ・ドニゼッティがグスタフ・ヴァエズ(Gustav Vaez)の脚本をもとに、1841年に初演した作品。主人公リタは類まれなる美貌をもちながら、あまりにも気が強すぎるゆえ夫ベッペに暴力をふるうのも日常茶飯事。二人が営むカフェに、リタが死んだと思っていた元夫ガスパロが現れ、現夫ベッペとともに彼女を“押し付けあう”様をコミカルに描いた喜劇だ。
大学では声楽を専攻した俳優ヤン・ジュンモは「以前からオペラへの出演オファーもあって、再び舞台に立つのは夢ですが、それにはミュージカルの仕事を一旦やめて準備しなくてはなりません。忠武アートホールでは毎年大型オペラを上演していますが、もう少し大衆的な作品はできないかということで、ミュージカル俳優として活動している私が演出を担当することになりました」と、演出家に変身した秘話を披露した。「誰もが気軽に見れるような、ミュージカルのファンたちも見にきてくれるような作品にしたかった」というヤン・ジュンモの言葉通り、ワイヤレスマイクの使用や、セリフをすべて韓国語にするなど、通常のオペラ作品にはないミュージカル的な方法も導入し、親しみやすさを心がけて作品を創り上げたという。
主人公リタの元夫と現夫を演じたミュージカル男優の二人は昨年に続き出演。ともに歌唱力には定評があるだけに、オペラ歌手顔負けの歌を聴かせてくれる。
なかでも今年は『ジーザス・クライスト・スーパースター』でユダ、ジーザスの両方を演じ、飛躍の1年となったチェ・ジェリムは複数の作品へを掛け持ちしながら『リタ』への出演となった。「昨年初演に参加して、作品を創る過程がとても楽しかったんです。音楽は伝統的なオペラですが、演技的な部分やストーリーはみんなで一緒に創作したものなので、並々ならぬ愛情があります。俳優として思いっきり楽しく演じられる作品にまた戻れて嬉しいですし、観客の皆さんにもその楽しさを届けられるよう頑張ります」と、作品への愛着を見せていた。
昨年はヤン・ジュンモ自身が演じていたドニゼッティ役を、今年はチョ・スンチャンが引き受けた。二人はチェ・ミンチョル、キム・デジョンと4人でワイルドさと歌唱力が魅力の「セクシー童顔クラブ」というミュージカル俳優のグループを結成しているほどの仲。ミュージカルファンたちからはヤン・ジュンモと顔が似ているともっぱらの評判だ。わざわざヤン・ジュンモの席まで駆け寄り「似ているとよく聞きますが、本当に似てますか?」と言って記者たちを笑わせた彼は「『レ・ミゼラブル』のため出演できないので、自分と見た目が似ていて、同じように表現できる俳優が必要だと冗談ぽく演出家から電話がありました(笑)。長年同い年の友達として付き合いがありましたがそんな依頼を受けたのは初めてで、ジュンモを助ける、というよりも一緒に久々に楽しくやりたいという気持ちがありました。オペラに出演するのも初めてで新鮮ですし、とても楽しいです」と今回の初参加を楽しんでいるようだった。
昨年と比較して内容的に大きく変化したところはないそうだが「昨年は2日間のみの公演だったので、昨年見れなかった観客にもう一度しっかりと作ったものを見せたかった」というヤン・ジュンモ演出家。日本のファンたちも見たがっていると伝えると「『リタ』はオペラのなかでもそれほど有名な作品じゃないのに『レ・ミゼラブル』で日本公演中に聞いたところによると、声楽を専攻した共演者が日本でも上演したことがあるそうです。キャラクターにぴったりな日本の俳優がいるので、この作品を日本でも公演したらどうだろう? と思っています。韓国まで見にいらっしゃるのは大変だと思うので、日本でも上演できればいいなと思います」と将来に期待が膨らむ嬉しい回答をしてくれた。
声楽家並みの驚異的な歌声をもつイ・ギョンスは劇団四季出身のミュージカル俳優だ。リタに翻弄される気弱な夫がはまり役だが、ここまでコミカルな役柄は初めてだという。「台本にある通り演じているだけ」と謙遜していたものの「これほど出ずっぱりな作品はあまりないので10公演以上あったら死にそうになるかも」と笑っていた。そして唯一、本職のオペラ歌手であるリタ役のチャン・ユリは「私は韓国人ですが、韓国語で歌を歌うことがこんなに難しいとは思わなかったです(笑)。テンポも速いので歌詞を伝えるのがとても大変なんです。発声はベルカントで歌っていますが、言葉を投げるような唱法が最初はとても負担でした。それに演技の上手い俳優と共演したことで、演技というのはとても繊細で大変なことなんだなと感じました」と、ミュージカル俳優との共演により、学ぶ部分が多かったことを実感を込めて語っていた。
本公演では昨年以上にコメディ度がアップした印象で、特にチェ・ジェリムはガスパロのジゴロぶりをより大胆に演じて客席のファンを虜にしていたようだった。ヤン・ジュンモは「まだ決定したことは何もないが、今後ほかの作品へとシリーズ化したいと劇場スタッフと話している」ということで、“オペラ演出家”としての今後の活躍にも期待大だ。
【公演情報】
オペラ『リタ』(리타)
2015年11月10日~15日 忠武アートホール 中劇場ブラック
<出演>
●リタ役:チャン・ユリ
●ベッペ役:イ・ギョンス
●ガスパロ役:チェ・ジェリム
●ドニゼッティ役:チョ・スンチャン
演出:ヤン・ジュンモ/音楽:メン・ソンヨン/脚本・韓国語詞:ハン・ジアン/監修:イ・ジへ/舞台:チェ・ヨンウン/衣装:チョ・ムンス/ヘアメイク:キム・ミンギョン/制作監督:Zakky
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