俳優チョ・ジェヒョンが主催するスヒョンジェシアターで7月から上演する名作演劇『おやすみ、かあさん』の制作発表会が6月18日、スヒョンジェシアターで行われた。
演劇『おやすみ、かあさん』は、1982年にオフブロードウェイで初演。映画『ミザリー』で強烈な印象を残したキャシー・ベイツが主演し、翌1983年にピューリッツァー賞ドラマ部門を受賞している。物語の主人公は、夫と別れ、一人息子は家出をしたまま戻らない癇癪持ちの娘ジェシー。母セルマはそんな出戻り娘を受け入れ、2人で暮らしていた。ある日の週末、ジェシーは亡き父が所有していたショットガンを探し始め「自殺する」と母に宣言。セルマは娘の話は狂言だと信じていなかったが、ジェシーはまるで遺言を残すように、死後ひとり残される母のためにあらゆる準備をし始めるのだ。
母と娘の近すぎる存在ゆえに分かり合えない悲哀を見事に切り取った本作は、チョ・ジェヒョンが「50作以上プロデュースしてきた演劇のなかで、演技を見る醍醐味を味わえる作品を選ぶとしたら、この作品を指折る」と語るほど、再演を熱望していたという。2008年にチョ・ジェヒョンがプログラムディレクターを務めた演劇シリーズ「演劇列伝2」での上演は延長公演まで行われるほどの好評を博していた。当時母親テルマ役を好演して客席を涙の海に包んだナ・ムニが7年ぶりの再登板。ダブルキャストにはナ・ムニ同様、テレビドラマを中心に活躍しているキム・ヨンリムが約10年ぶりに演劇舞台に立つことになった。
1987年の韓国初演でテルマを演じたキム・ヨンリムは「2008年の公演でもジェヒョンさんに出演を打診されたが、テレビの仕事があまりにも多くて断った。すると“いつまでドラマばかり出ているのか”と言われた(笑)。日ごろから共演する若い俳優たちには“必ず演劇舞台に立たねばならない”と勧めているので、後輩に恥ずかしくない先輩になれるよう、舞台に立つ決心をした」とかなり大きな決意をもって出演を決めたことを明かした。
一方、2008年公演以来再びテルマ役に挑むナ・ムニは「舞台に立つこと自体がとても力が必要なこと。それでもこのような良い作品に出会うことはそう多くないので、再演があれば何度でも出演したい。今回は7年前よりさらにいい舞台をお見せできそうだ」と自信を見せていた。
娘ジェシー役を演じるのはイ・ジハとヨム・ヘラン。東亜演劇賞をはじめ数々の演技賞を受賞しているイ・ジハは『タンポポ風になって』『ミス・フランス』『欲望という名の電車』などチョ・ジェヒョンプロデュース作品に多数出演してきた。当日会見前にも稽古をしてきたそうで「“おかあさん”という言葉を聞いただけでも涙が出そうだ」と冗談めかしていたが、深い闇を抱えるジェシーというキャラクターの重さに、Wキャストのイム・ヘランの稽古を見ていても「まるで10トントラックが通るよう」と表現。自殺を準備する娘という複雑なキャラクターを演じるプレッシャーを稽古で克服しようと努力しているそうだ。
一方のヨム・ヘランは、チョ・ジェヒョンに「演劇界には舞台の上で怪物になる人がいるが、彼女はそのうちのひとり」と紹介されていた。「初めての経験が多い作品で、先生方との初共演や出産後初めての作品。創作演劇に多く出演してきたので翻訳劇の難しいところがある。演劇界では女優は子供を産むと演技がよくなるという説があるので一生懸命に稽古している」と語り、久々復帰舞台に向け“怪物”に化ける準備をしているようだった。
キム・ヨンリムは、この作品の母娘の関係は「いちばん近くて遠い、遠くて近い間柄。母娘がもつ愛情と愛憎を表現できたら」と、解説。チョ・ジェヒョンも「20代の観客中心の作品が多いなか、大人や年配の方が楽しめる作品は少ないと感じ、家族で見られるような作品選びを心掛けている」そうで、まさに親子や家族で見れば、お互いの大切さを再確認できるような作品になっている。
MERSの余波で、公演の中止・延期も増えているが、「感染の状況に応じて、医者や看護婦を常駐させるなど対応も検討している」というチョ・ジェヒョンが、名優たちと万全の準備をして贈る『おやすみ、かあさん』は7月3日から開幕する。チケットはインターパークで発売中。
【公演情報】
演劇『おやすみ、かあさん』(잘자요, 엄마 ’night, Mother)
2015年7月3日~8月16日 スヒョンジェシアター
出演:キム・ヨンリム、ナ・ムニ、イ・ジハ、ヨム・ヘラン
原作:マーシャ・ノーマン(Marsha Norman)/プロデューサー:チョ・ジェヒョン/演出:ムン・サンファ(空想集団突飛 공상집단 뚱딴지)
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